さんかく座
名称:さんかく座(三角座)
学名:Triangulum
小分類:北半球
構成する主な星雲、星団、恒星:M33(渦巻き星雲)/カプト・トリアングリー(アルファ星)
神話の主な登場人物:−
日本で観測できる時期:9月〜3月の約7ヵ月間
見ごろの季節:秋(20時正中は12月中旬)
古くからある星座で、秋の夜、天頂付近に細長い2等辺3角形を見つけることができます。形が整っているので、小さい割に見つけやすいのが特徴です。また3角形の頂点からややアンドロメダ座寄りに、渦巻き星雲M33を見ることができます。大きく明るい星雲ですので、小望遠鏡でもきれいな渦巻きを見ることができるでしょう。
1.見つけ方のポイント
秋の頃、天頂付近からやや東寄りの空、アンドロメダ座のちょうど腰の脇あたりに、3個の星が小さく細長い3角形を作っているのが見つかります。それがさんかく座です。小さく、さほど明るくもない星座ですが、形がまとまっているのでよく目立ちます。見つけやすいでしょう。
2.神話の内容について
神話とは関係なく、そのものずばり三角定規を表した星座です。しかし、歴史は古く紀元前1200年頃の古代ギリシャ、ヒッパルコスの時代には知られていました。ギリシャ文字のΔ(デルタ)に似ているため、「デルトトン」と呼ばれたこともあります。
3.同じ時期に見える星座について
秋の空の天頂付近に見える星座です。すぐ東にはアンドロメダ座とペガスス座、北にはペルセウス座やカシオペア座、南にはおひつじ座やうお座などを見ることができます。
4.主要都市での観測について
日本全国で良好に観測することができます。
※参考文献:「星座クラブ」沼澤茂美著(誠文堂新光社)、「星のポケットブック」(誠文堂新光社)、「星座天体観測図鑑」藤井旭著(成美堂出版)、「星座・夜空の四季」小学館の学習百科図鑑、「星座博物館・春」、「同・夏」、「同・秋」、「同・冬」、「同・星座旅行」瀬川昌男著(ぎょうせい)、「星空ガイド」沼澤茂美、脇屋奈々代著(ナツメ社)
さんかく座
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/11/03 22:16 UTC 版)
Triangulum | |
---|---|
属格形 | Trianguli |
略符 | Tri |
発音 | 英語発音: [traɪˈæŋɡj |
象徴 | 三角形[1][2] |
概略位置:赤経 | 01h 31m 27.9408s - 02h 50m 39.9523s[3] |
概略位置:赤緯 | +37.3470840° - +25.6050701°[3] |
20時正中 | 12月中旬[4] |
広さ | 131.847平方度[5] (78位) |
バイエル符号/ フラムスティード番号 を持つ恒星数 | 15 |
3.0等より明るい恒星数 | 1 |
最輝星 | β Tri(3.00等) |
メシエ天体数 | 1 |
確定流星群 | なし[6] |
隣接する星座 | アンドロメダ座 うお座 おひつじ座 ペルセウス座 |
この星座以外に三角と名前がつく星座にはみなみのさんかく座がある。また、恒星によって形作られる天球上の三角形のアステリズムとして、冬の大三角・春の大三角・夏の大三角があるが、これらは星座ではない。
主な天体
3等星のα・βと4等星のγが、二等辺三角形に近い形をした細長い三角形を形作っている。α から約5°西に見える渦巻銀河M33は、星座の名前を取って「さんかく座銀河」と呼ばれている。
恒星
2023年10月現在、国際天文学連合 (IAU) によって2個の恒星に固有名が認証されている[8]。
- α星:太陽系から約64 光年の距離にある、見かけの明るさ3.42 等、スペクトル型 F5III の巨星で、3等星[9]。変光星としては回転変光星の分類の1つ「回転楕円体変光星」に分類されており、0.01等の振幅で変光するとされている[10]。2016年8月にアラビア語で「三角」を意味する言葉に由来する[11]「モサラー[12](Mothallah[8])」という固有名が認証された。このほか、ラテン語で「三角形の頂点」を意味する「カプト・トリアングリ (Caput Trianguli)」と呼ばれることもあった[7]。
- HAT-P-38:太陽系から約821 光年の距離にある、見かけの明るさ12.51 等、スペクトル型 G 型の13等星[13]。IAUの100周年記念行事「IAU100 NameExoWorlds」でフィンランドに命名権が与えられ、主星はHorna、太陽系外惑星はHiisiと命名された[14]。
このほか、以下の恒星が知られている。
- β星:見かけの明るさ3.00 等[15]、スペクトル型 A5IV の準巨星で、3等星。さんかく座で最も明るく見える。分光連星で、3.5 M☉(太陽質量)の主星と1.4 M☉の伴星が、軌道長半径0.312 天文単位 (au) の軌道を31.39 日の周期で公転している[16]。1986年には、赤外線天文衛星IRASの観測により、連星系の周囲を取り囲む星周円盤の存在を示す赤外超過が確認され[17]、その後のスピッツァー宇宙望遠鏡の観測でも赤外超過が確認された[18]。
- γ星:太陽系から約117 光年の距離にある、見かけの明るさ4.00 等、スペクトル型 A1Vnn のA型主系列星で、4等星[19]。スペクトル型の「nn」は、高速の自転によって分光スペクトル中に非常に幅の広い吸収線が見られることを表しており、2007年の研究では毎秒254 キロメートルの猛スピードで自転しているとされた[19]。
- δ星:太陽系から約35.6 光年の距離にある[20]、見かけの明るさ4.87 等[21]、スペクトル型 G0.5VFe-0.5 のG型主系列星で、5等星[20]。約167″離れた位置に見える13.6 等のB星は見かけの二重星だが、A星自体が分光連星で、10.02 日の周期で互いに公転している[22]。
星団・星雲・銀河
18世紀フランスの天文学者シャルル・メシエが編纂した『メシエカタログ』に挙げられた銀河が1つ位置している[23]。
- M33:「さんかく座銀河[24](英: Triangulum Galaxy, Triangulum Pinwheel)[25]」の名で知られる渦巻銀河。1764年8月25日にメシエが発見したが、17世紀シチリア島の天文学者ジョヴァンニ・バッティスタ・オディエルナが1654年以前に発見していたとされる[26]。アンドロメダ銀河、天の川銀河に次いで、局所銀河群で3番目に大きな銀河である[26]。肉眼で見ることができる最も遠い天体とされるものの1つ[注 1]。天の川銀河との距離は算出手法によって約245万 光年(0.75 メガパーセク (Mpc))[28]から約303万 光年 (0.93 Mpc)[29]と大きな差が残るものの、およそ260万 光年 (0.8 Mpc) 前後の距離にあると考えられている。40億-50億年後にアンドロメダ銀河と天の川銀河が衝突・合体して1つの銀河「ミルコメダ」となったのち、さんかく座銀河も衝突・合体するものと考えられている[30]。
- 3C 48:クエーサー[34]。1960年9月に、ケンブリッジ電波源カタログに収録された電波源に対応する天体として初めて発見されたが、当時は銀河ではなく星状の天体として認識されていた[35]。1963年に z=0.367 と当時知られていた天体の中で最も大きな赤方偏移を示すことが発見されたことにより、最遠の天体とされた[36]。同じ頃に発見されたおとめ座の電波源3C 273とともに「準恒星状天体 (英: quasi-stellar object)」、通称「クエーサー」と呼ばれ、長年に亘って謎の天体とされてきたが、1982年に3C 48を取り巻く星雲状の構造が同じ赤方偏移を持つことが確認されたことにより、非常に遠くにある銀河であることが確定した[37]。
流星群
IAUの流星データセンター (IAU Meteor Data Center) で確定された流星群 (Established meteor showers) とされた流星群のうち、さんかく座の名前を冠するものは1つもない[6]。19世紀半ばに分裂・消滅した周期彗星ビエラ彗星 (3D/Biela) を母天体とし、毎年11月13日頃に極大を迎えるアンドロメダ座流星群は、アンドロメダ座に隣接するさんかく座とうお座に至るまで放射点が拡散しているとされる[38]。
由来と歴史
α・β・γが形作る三角形がギリシャ文字のデルタの大文字 (Δ) の形に似ていることから、古代ギリシア・ローマ時代には「デルトトーン (古希: Δελτωτόν[2])、デルトートン (羅: Deltoton[2][39])」と呼ばれていた[2]。2世紀頃のクラウディオス・プトレマイオスの天文書『ヘー・メガレー・スュンタクスィス・テース・アストロノミアース (古希: ἡ Μεγάλη Σύνταξις τῆς Ἀστρονομίας)』、いわゆる『アルマゲスト』では、三角形を意味する「トリゴノン (古希: Τρίγωνον, 羅: Trigonon) という星座名とされた[2]。
この星座の由来については、古代ギリシア・ローマ期から複数の異説が伝えられている。紀元前3世紀前半の詩人アラートスの詩編『ファイノメナ (古希: Φαινόμενα)』では、星座の形状について美しい二等辺三角形であると述べているものの、その由来については特に触れられていない[2][40]。紀元前3世紀後半の天文学者エラトステネースの天文書『カタステリスモイ (古希: Καταστερισμοί)』では、さんかく座の由来について2つの説を伝えている。1つは「ナイル川の三角州を表したものである」とする説[2][39][41]、もう1つは「Δ はゼウスの頭文字[注 2]であるため、この文字が目立つように明るい星のないおひつじ座の上(北側)にヘルメースが置いた」とする説である[39][41]。1世紀初頭の古代ローマの著作家ガイウス・ユリウス・ヒュギーヌスの『天文詩 (羅: De Astronomica)』では、これらの2つの説に加えて「シチリア島を表したものである」とする説を伝えている[39][41]。シチリア島は、3つの岬を持つことから「トリナクリア (Trinacria)」と呼ばれており、伝承では農業の女神デーメーテール[注 3]の縁の地であるとされていた[2][39]。さらにヒュギーヌスは「神々が世界を3つに分割したことを示すものである」とする説も伝えている[39][41]。
エラトステネースやヒュギーヌスはこの星座にある星の数を3つとした[41]が、プトレマイオスは現在のδ星を加えて[43]4つの星があるとした[41]。大きく時を下った17世紀初頭の1603年にドイツの法律家ヨハン・バイエルが編纂した星図『ウラノメトリア』では、さらにε星を加えた5つの星があるとされた[44][45]。
1627年に出版されたドイツの法律家ユリウス・シラーの星図『Coelum Stellatum Christianum』では、この三角形はキリスト教で司教がかぶる冠であるミトラに見立てられ、ラテン語で「教皇ペトロのミトラ」を意味する MITRÆ PONTIFICALIS S.PETRI という星座名が充てられた[46]。この星図は、バイエルの『ウラノメトリア』を当時最新の観測記録を元にアップデートするとともに、全ての星座をキリスト教に由来した事物に置き換えようという壮大な目論見の下にシラーとバイエルが製作を進めていたものであったが、完成を前にして両名が相次いで他界したため、ドイツの天文学者ヤコブス・バルチウスが二人の後を引き継いで出版したものであった[47]。このシラーの星図ではおひつじ座が「初代教皇ペトロ (SANCTI PETRI PRINCIPIS APOSTOLORVM)」とされており、さんかく座の3つの星は天使によってペトロに授けられようとする教皇冠を表すものとして描かれた[46][注 4]。
ポーランド生まれの天文学者ヨハネス・ヘヴェリウスは、1687年に製作した星図『Firmamentum Sobiescianum』の中で、さんかく座の3つの星の南側にある5等星3つを使った新星座「小三角座[48](Triangulum Minus[2])」を設け、さんかく座を「大三角座」を意味する「Triangulum Majus」と改名した[2]。19世紀末頃には小三角座は使われなくなった星座とされ[49]、さんかく座に取り込まれた。小三角座の3つの星は、現在のさんかく座6番星・10番星・12番星となっている[50]。
1922年5月にローマで開催されたIAUの設立総会で現行の88星座が定められた際にそのうちの1つとして選定され、星座名は Triangulum、略称は Tri と正式に定められた[51]。
中東
紀元前500年頃に製作された天文に関する粘土板文書『ムル・アピン (MUL.APIN)』では、さんかく座のα・β とアンドロメダ座のγ の3星は、牛馬に引かせて地面を掘り返す農具の「犂」を表す星座「MUL.APIN」とされた[52][53]。この粘土板文書の最初にこの言葉が書かれていたことから、粘土板文書そのものを指す言葉とされるようになった[54]。また、α は単独で狼を表す星座ともされた[52][53]。
中国
ドイツ人宣教師イグナーツ・ケーグラー(戴進賢)らが編纂し、清朝乾隆帝治世の1752年に完成・奏進された星表『欽定儀象考成』では、さんかく座の星は、二十八宿の西方白虎七宿の第二宿「婁宿」に配されていたとされる[55][56]。婁宿では、β・γ・δ の3星が、天上の大将軍を表す星官「天大将軍」に配された[55][56]。
神話
古代ギリシア・ローマ時代を通じて、特に伝承は伝わっていない[39][41]。
呼称と方言
世界で共通して使用されるラテン語の学名は Triangulum、日本語の学術用語としては「さんかく」とそれぞれ正式に定められている[57]。現代の中国でも、三角座[58][59]とされている。
明治初期の1874年(明治7年)に文部省より出版された関藤成緒の天文書『星学捷径』で「トリアングリュム」という読みと「三角[注 5]」という解説が紹介された[60]。また、1879年(明治12年)にノーマン・ロッキャーの著書『Elements of Astronomy』を訳して刊行された『洛氏天文学』でも「三角」と紹介された[61]。30年ほど時代を下った明治後期でも変わらず「三角」と呼ばれていたことが、1908年(明治41年)9月に刊行された日本天文学会の会報『天文月報』の第1巻6号に掲載された「九月の天」と題した記事で確認できる[62]。この訳名は、東京天文台の編集により1925年(大正14年)に初版が刊行された『理科年表』にも「三角(さんかく)」として引き継がれ[63]、1944年(昭和19年)に天文学用語が見直しされた際も「三角」が継続して使用されることとされた[64]。戦後も引き続き「三角」が使われ[65]、1952年(昭和27年)7月に日本天文学会が「星座名はひらがなまたはカタカナで表記する」[66]とした際に Triangulum の日本語名は「さんかく」とされた[67]。これ以降も継続して「さんかく」が用いられている。
方言
日本各地で伝わる星の呼称で「サンカクボシ」と呼ばれるものの多くは、おおいぬ座の δ・ε・ηの3星が形作る三角形を指すが、山形県小国町
脚注
注釈
- ^ 「肉眼で見える最遠天体」には諸説ある。たとえば、同じ局所銀河群に属するアンドロメダ座銀河 (M31) も肉眼で見える銀河であり、さんかく座銀河とどちらか遠くに位置しているかは定かではない。また、約1200万 光年とこれらの銀河よりもはるか遠くに位置するおおぐま座のボーデの銀河 (M81) も、恵まれた観測条件であれば肉眼で見ることができるとする報告もある[27]。
- ^ ギリシャ語の原文では Διὸς、ラテン語の原文では Deos と、いずれも頭文字が Δ (D) となる[42]。
- ^ ローマ神話ではケレース。
- ^ 原恵はこれを
カトリック教会の司教がかぶる三角形のずきん状のもの
と説明している[7]が、Coelum Stellatum Christianum では頭巾ではなく三段に冠を重ねた教皇冠(三重冠、羅: Triregnum)が描かれている。 - ^ 「角」の字は、中心の縦棒が突き出た形で記されている[60]。
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参考文献
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- 伊世同 (1981-04) (中国語). 中西对照恒星图表 : 1950.0. 北京: 科学出版社. NCID BA77343284
- 文部省 編『学術用語集:天文学編(増訂版)』(第1刷)日本学術振興会、1994年11月15日。ISBN 4-8181-9404-2。
さんかく座
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/09 21:40 UTC 版)
「星・星座に関する方言」の記事における「さんかく座」の解説
さんかく座 サンカクボシ・サンカクサマ(山形・新潟) 草下英明は「さんかく座には、これという和名は知られていない」としている。 『日本の星』139頁、『日本星名辞典』96頁、『星座手帖』160頁
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