はちぶんぎ座
名称:はちぶんぎ座(八分儀座)
学名:Octans
小分類:南半球
構成する主な星雲、星団、恒星:-
神話の主な登場人物:-
日本で観測できる時期:日本では見ることができません
見ごろの季節:秋(20時正中は10月上旬)
星と星の間の角距離を測る器具「八分儀」をなぞらえた星座です。18世紀半ばにフランスの天文学者ラカーユによって作られました。はちぶんぎ座には、天の南極があることで有名です。天の南極は星空の南の中心点で、そこを中心に星々が天をめぐります。ただ、天の北極には中心となる北極星がありますが、天の南極にはそれらしい星がありません。星座自体も暗いので、ちょっと淋しいのが残念です。
1.見つけ方のポイント
よく見るためには南半球へ行った方が良いでしょう。天の南極にあるので、一年中見ることができます。南の空を見るとケンタウルス座の2個の1等星と、小マゼラン雲の間あたりに、3角形の星の並びが見つかります。それがはちぶんぎ座ですが、暗い星ばかりなので見つけるのは難しいかもしれません。
2.神話の内容について
はちぶんぎ(八分儀)とは、星と星の間の角距離(空の星と星の間の距離を角度で表したもの)を測る昔の測定器具です。神話とは関係ありません。はちぶんぎ座は、18世紀半ばにイギリスのJ・ハドレーが発明した、反射鏡を使う新しい八分儀を記念して、1752年にフランスの天文学者ラカーユが設けた星座です。
3.同じ時期に見える星座について
天の南極にある星座ですので、南半球なら一年中南の空に見ることができます。同じ時期に見える星座は、南半球の秋(日本の春)なら、はちぶんぎ座をとりまいて、北にカメレオン座やはえ座、とびうお座、東にふうちょう座やみなみのさんかく座が見えます。また西には大マゼラン雲やかじき座、レチクル座やがか座、南には小マゼラン雲、みずへび座、きょしちょう座やくじゃく座が見えます。
4.主要都市での観測について
日本では見ることができません。見るためには南の土地へ行く必要があります。
※参考文献:「星座クラブ」沼澤茂美著(誠文堂新光社)、「星のポケットブック」(誠文堂新光社)、「星座天体観測図鑑」藤井旭著(成美堂出版)、「星座・夜空の四季」小学館の学習百科図鑑、「星座博物館・春」、「同・夏」、「同・秋」、「同・冬」、「同・星座旅行」瀬川昌男著(ぎょうせい)、「星空ガイド」沼澤茂美、脇屋奈々代著(ナツメ社)
はちぶんぎ座
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/01/14 02:53 UTC 版)
Octans | |
---|---|
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属格形 | Octantis |
略符 | Oct |
発音 | [ˈɒktænz]、属格:/ɒkˈtæntɨs/ |
象徴 | 八分儀 |
概略位置:赤経 | - |
概略位置:赤緯 | -74.30° - -90°[1] |
広さ | 291平方度 (50位) |
主要恒星数 | 3 |
バイエル符号/ フラムスティード番号 を持つ恒星数 | 27 |
系外惑星が確認されている恒星数 | 2 |
3.0等より明るい恒星数 | 0 |
10パーセク以内にある恒星数 | 0 |
最輝星 | ν Oct(3.728等) |
最も近い星 | HIP 113229;(28.1光年) |
メシエ天体数 | 0 |
隣接する星座 |
きょしちょう座 インディアン座 くじゃく座 ふうちょう座 カメレオン座 テーブルさん座 みずへび座 |
はちぶんぎ座(はちぶんぎざ、Octans)は、現代の88星座の1つ。18世紀半ばに考案された新しい星座で、航海や測量に用いられる八分儀をモチーフとしている[1][2]。最も明るいν星も4等星と暗く、目立つ天体もない。天の南極とその周辺を領域としており、日本からは星座の一部すら見ることができない。
主な天体
肉眼で見ることが可能な恒星としては21世紀現在最も天の南極の近くに位置するσ星には、ラテン語で「南極星」を意味する「ポラリス・アウストラリス (Polaris Australis)」という固有名が付けられている[3][4]。
恒星
2022年4月現在、国際天文学連合 (IAU) によって1個の恒星に固有名が認証されている[4]。
- σ星:見かけの明るさ5.42等の5等星で、たて座δ型に分類される脈動変光星[3]。21世紀現在、肉眼で見ることが可能な星としては天の南極の最も近くに位置しており、2017年9月にラテン語で「南極星」を意味する「ポラリス・アウストラリス[5](Polaris Australis[4])」という固有名が認証された[4]。
他に以下の天体がある。
- α星:見かけの明るさ5.13等の5等星[6]。ギリシア文字の「α」が付けられた星としては最も見かけの明るさが暗い。
- δ星:橙色巨星。土星の南極星。
- ν星:見かけの明るさ3.728等の4等星[7]。はちぶんぎ座で最も明るい恒星。
由来と歴史
この星座のモチーフとされた八分儀は、天体の水平線からの高度や離角を観測するために用いられた測角器である。角度45°の扇型の本体に2枚の平面鏡が取り付けられた構造となっており、1730年にイギリスのジョン・ハドリーによって発明された[2][8]。
はちぶんぎ座は、18世紀半ばにニコラ・ルイ・ド・ラカーユによって考案された[2][8]。初出は、1756年に刊行された1752年版のフランス科学アカデミーの紀要『Histoire de l'Académie royale des sciences』に掲載された星図で、八分儀の星座絵とフランス語で「反射式八分儀」という意味の l’Octans de Reflexion という名称が描かれていた[2][9][10]。天球上のこの領域は、16世紀末にペーテル・ケイセルやフレデリック・デ・ハウトマン、ペトルス・プランシウスらが考案したみずへび座の一部分とされていたが、ラカーユは天の南極の部分を切り取ってはちぶんぎ座の領域とした[11]。ラカーユの死後の1763年に刊行された著書『Coelum australe stelliferum』に掲載された星図の第2版では、ラテン語で「八分儀」を意味する Octans と変更された[2][12]。
は、1801年にドイツの天文学者ヨハン・ボーデが刊行した『ウラノグラフィア』では「航海用八分儀」を意味する Octans Nautica と改名された[13]が、1879年にベンジャミン・グールドが刊行した『Uranometria Argentina』では、ラカーユの Octans に戻されている[14]。
1922年5月にローマで開催されたIAUの設立総会で現行の88星座が定められた際にそのうちの1つとして選定され、星座名は Octans、略称は Oct と正式に定められた[15]。新しい星座のため星座にまつわる神話や伝承はない。
呼称と方言
日本では当初から「八分儀」という訳語が充てられていた。これは、1910年(明治43年)2月に刊行された日本天文学会の会誌『天文月報』の第2巻11号に掲載された、星座の訳名が改訂されたことを伝える「星座名」という記事で確認できる[16]。この訳名は、1925年(大正14年)に初版が刊行された『理科年表』にも「八分儀(はちぶんぎ)」として引き継がれた[17]。戦後の1952年(昭和27年)7月に日本天文学会が「星座名はひらがなまたはカタカナで表記する」[18]とした際に、Octans の日本語の学名は「はちぶんぎ」と定められ[19]、これ以降は「はちぶんぎ」という学名が継続して用いられている。
天文同好会[注 1]の山本一清らは、既にIAUが学名をOctansと定めた後の1931年(昭和6年)3月に刊行した『天文年鑑』第4号で、星座名を Octans Hadleianus 、訳名を「ハドレイの八分儀」と紹介し[20]、以降の号でもこの星座名と訳名を継続して用いていた[21]。
脚注
注釈
出典
- ^ a b “The Constellations”. 国際天文学連合. 2023年1月13日閲覧。
- ^ a b c d e Ridpath, Ian. “Octans”. Star Tales. 2023年1月13日閲覧。
- ^ a b "sig Oct". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2023年1月13日閲覧。
- ^ a b c d “IAU Catalog of Star Names”. 国際天文学連合. 2023年1月13日閲覧。
- ^ "alf Oct". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2022年1月13日閲覧。
- ^ "nu Oct". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2023年1月13日閲覧。
- ^ a b 村山定男 『キャプテン・クックと南の星』河出書房新社、2003年5月20日、47-48頁。ISBN 4-309-90533-1。
- ^ Ridpath, Ian. “Lacaille’s southern planisphere of 1756”. Star Tales. 2023年1月7日閲覧。
- ^ “Histoire de l'Académie royale des sciences” (フランス語). Gallica. 2023年1月7日閲覧。
- ^ Ridpath, Ian. “Hydrus”. Star Tales. 2023年1月13日閲覧。
- ^ “Coelum australe stelliferum / N. L. de Lacaille”. e-rara. 2023年1月7日閲覧。
- ^ “Uranographia Sive Astrorum. Plate 20. The Southern constellations.”. Linda Hall Library. 2020年5月17日閲覧。
- ^ Gould, Benjamin Apthorp (1879). “Uranometria Argentina: Brightness and position of every fixed star, down to the seventh magnitude, within one hundred degrees of the South Pole; with atlas”. Resultados del Observatorio Nacional Argentino 1: I-387. Bibcode: 1879RNAO....1....1G. OCLC 11484342 .
- ^ Ridpath, Ian. “The IAU list of the 88 constellations and their abbreviations”. Star Tales. 2023年1月5日閲覧。
- ^ 「星座名」『天文月報』第2巻第11号、1910年2月、 11頁、 ISSN 0374-2466。
- ^ 東京天文台 編 『理科年表 第1冊』丸善、1925年、61-64頁 。
- ^ 『文部省学術用語集天文学編(増訂版)』(第1刷)日本学術振興会、1994年11月15日、316頁。ISBN 4-8181-9404-2。
- ^ 「星座名」『天文月報』第45巻第10号、1952年10月、 13頁、 ISSN 0374-2466。
- ^ 天文同好会 編 『天文年鑑』4号、新光社、1931年3月30日、6頁。doi:10.11501/1138410 。
- ^ 天文同好会 編 『天文年鑑』10号、恒星社、1937年3月22日、4-9頁。doi:10.11501/1114748 。
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