1972年式とは? わかりやすく解説

1972年式

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/12 03:50 UTC 版)

フォード・トリノ」の記事における「1972年式」の解説

1972年トリノ第2世代確立した多く特徴引き継ぐ形でフルモデルチェンジ第3世代へと移行した。1972年式トリノロングノーズ・ショートデッキ特徴とするコークボトル・スタイリングをより一層強調されたものとなった。最も大きな変更点グラン・トリノにはフロントノーズに楕円形の開口部を持つ大型の升型フロントグリル(eggcrate grille)が設けられたことである。自動車ジャーナリストのトム・マカヒル(en:Tom McCahill)は、1972年式グラン・トリノスタイリング評して「まるで(映画en:Namu, the Killer Whale登場するシャチの)ナムー(en:Namu (orca))のようなグリル形状だ。」と述べた。しかし、「(顧客所有する)喜び与える、生真面目スタイリングである。」とも述べている。1972年式グラン・トリノヘッドライト周囲にクロームメッキ・ベゼルを有しており、フロントバンパーも升型フロントグリル形状合わせた衝撃吸収バー設けられ、これらの組み合わせによって、極めて斬新な印象与えるフロントフェイスに仕上がっていた。一方、同じ1972年式でもグラン・トリノではないベースモデルには升型フロントグリル採用されず、ヘッドライトまで取り囲む形状大型フロントグリル装着された。また、ベースモデルには衝撃吸収バー持たない専用バンパーエアスクープ持たないボンネット装着されベースモデルだけは1971年式以前雰囲気に近い、やや保守的な印象のフロントフェイスに仕上げられた。このようなベースモデルグラン・トリノとのフロントフェイスの差別化は、1974年式まで基礎デザイン踏襲しつつ引き継がれる事となったが、今日では様々な映像作品影響もあり、各年式グラン・トリノ印象余りにも強すぎるために、ベースモデルヘッドライト内包する大型フロントグリル基調とするフロントフェイスの存在については、余り広く知られていない傾向がある。 1972年式トリノフロントフェンダーは縁の部分がより積極的に広がるオーバーフェンダー形状となった。リアフェンダーには特徴的なフェンダーラインが設けられフロントウインドウ60度の角度取り付けられていた。ボディ構造1971年式似通っていたが、Aピラールーフはより薄くなっていた。リアビューのデザイン一新され、は両端に薄い長方形テールライト埋め込まれフルサイズリアバンパー基調したものになった。ウインドウガラスは全てフレームレスデザインとなり、4ドアモデルステーションワゴンからは三角窓廃止されトリノモデルにダイレクトエア換気システム標準装備された。1972年式全モデルには1972年新し連邦安全規則則った装備がされ、ドアハンドル埋め込み式となり、サイドドアビームも装備された。 1972年式のモデルラインナップは9種類で、14種類存在した1971年式よりも減少したコンバーチブル廃止され4ドアセダンと4ドアハードトップは統合され4ドア ピラードハードトップという名称に改められた。これはピラーを持つセダンにフレームレスドアガラスを組み合わせたものに対してフォード新たに名付けた名称であり、実質的な機能性4ドアセダンと同じ物である。他の全てのボディデザインは、ファストバックをスポーツルーフと呼び表す慣習と共に1971年式から引き継がれた。トリノはベースグレードの名称として引き継がれたが、前述通りこのグレードのみフロントフェイスが異なっていた。そして中級グレードトリノ500グラン・トリノ(Gran Torino)という名前に改められた。トリノ・ブロアムは単一グレードとしては廃止されグラン・トリノのオプションパッケージの地位後退トリノGTはグラン・トリノ・スポーツという名称に改められた。トリノグラン・トリノ4ドアセダンと2ドアハードトップで展開され、グラン・トリノ・スポーツは2ドアハードトップ/スポーツルーフの2種類用意された。ステーションワゴンラインナップトリノグラン・トリノ、グラン・トリノ・スクワイアの3種であったこの年式からはトリノラグジュアリー方面傾倒した商品展開となっていき、高出力象徴であったトリノ・コブラは廃止された。 1972年式の最も大きな変化は、シャーシ構造1971年式までのモノコックから、ボディ・オン・フレームに変更された事である。新しシャーシトリノにより静かで、より振動少な乗り心地与え為に設計が行われた。前方からの衝撃吸収する為にフロントエンドS字形状となり、路面からの衝撃緩和するトルクボックス構造採用された。フレームボディの間には14個のゴムマウントが設けられ、各クロスメンバーにも5つのゴムマウントが配置された。フロントサスペンションには左右長さ異なコントロールアーム採用されコンピュータばね定数選択されコイルスプリングスタビライザーと共にロワーコントロールアームに取り付けられた。この構造フルサイズ車のフォードLTD(en:Ford LTD)で採用されいたものであったリアサスペンション車軸懸架式である事自体は変わらなかったが、スプリングコンピュータばね定数選択されコイルスプリングとされた、ステイブルの名を持つ4リンクサスペンションが採用された。この新しシャーシサスペンションにより、1971年式比較してトレッド少なくとも2インチ (51 mm)広くなった。モータートレンド誌は1972年式グラン・トリノ・ブロアム 4ドアモデル評して、「路面振動騒音低減素晴らしレベルである。」と絶賛したフォードは1972年式にもヘビーデューティコンペティション二つのサスペンションオプションを提供していた。ヘビーデューティサスはより強固なスプリングショックアブソーバー交換されるもので、コンペティションサスにはこれに加えてより大径化されたフロントスタビライザーと、リアスタビライザーが含まれていた。このオプショントリノにおけるリアスタビライザーの初採用でもあった。フロントディスクブレーキは1972年式トリノには全車標準装備となった1972年時点ではトリノ兄弟車でもあるマーキュリー・モンテゴ(en:Mercury Montego)を除いて他社中型車全てドラムブレーキ標準であり、極めて画期的な措置でもあった。ブレーキブースター429 cu in (7.03 L)以下のエンジンのセダン・ファストバックではオプション品であったが、429 cu in (7.03 L)エンジン搭載する全車及びステーションワゴン全車では標準装備とされた。パワーステアリング前年までのギアボックス・ブースターポンプの別体構造が、一体構造品に改められた。全てのトリノ14インチホイールが標準であったが、警察向け車両公用向け車両(en:Fleet vehicle)だけは15インチホイールが装備された。 1972年式の他の主要な変更点は、2ドア4ドア異なホイールベース採用された事である。1968年時点で既にゼネラルモーターズ中型車に於いて4ドア車2ドア車よりも広いホイールベース与える事を始めていた。これにより、車体デザイナー4ドア2ドア化する為に必要な設計変更をより柔軟に行う事を可能とした。クライスラー中型車クーペセダンボディパネル共有を行う事はしなかったものの、1971年からこうした変更行った。1972年式トリノ2ドア車に114インチ (2,900 mm)のホイールベース採用し4ドア車ステーションワゴン、そして兄弟車のフォード・ランチェロ(en:Ford Ranchero)に対して118インチ (3,000 mm)のホイールベース採用しGM中型車のように2ドア4ドアには多数共有ボディパネル用いていた。こうした変更により1972年式トリノそれまでよりもより長く、より低く、より幅広ボディ獲得したグラン・トリノを例に取ると、2ドア車は1インチ (25 mm)、4ドア車は5インチ (130 mm)それぞれ全長増加した。しかし、興味深い事にベースモデルトリノに関しては、セダン1インチ (25 mm)全長増加したが、2ドア逆に3インチ (76 mm)1971年式よりも全長短くなっている。これによりベースモデル4ドアステーションワゴン重量増加したが、2ドア限って重量増加最小限抑えられている。 標準エンジン250 cu in (4.1 L) 直6であったが、ステーションワゴンとグラン・トリノ・スポーツは302V8が標準エンジン採用された。オプション選択可能なエンジンは302V8、チャレンジャーV8系351V8または"Cleveland" V8351 cu in (5.75 L)・4バレル"コブラジェット" V8(CJ)、400 cu in (6.6 L)・2バレル429 cu in (7.03 L)・4バレルであった400・2バレルエンジンは1972年式からの新しエンジンであり、 351 Clevelandと同じ335 シリーズエンジンの一つでもあった。429・4バレルエンジンは前年までのコブラジェットエンジンのような高出力エンジンではなく低回転高トルク指向セッティングが行われていた。排出ガス規制及びガソリンの無鉛化燃費改善対応する為に、各エンジン性能悪影響及ぼし始めていた。少なくとも圧縮比トリノ全てのエンジン8.5:1以下にまで低められ、対応ガソリンレギュラーガソリンへと変化していた。これらの変化により1971年式エンジン比べ全てのエンジン出力性能低下した更には1971年から採用始まったカタログスペックネット表記(en:Horsepower#SAE net power)への全面移行により、必要以上に性能低下誇張されていた面もあった。全ての車体には3速MT標準装備されていたが、クルーズOマチック3速ATもオプション残されていた。しかし、351・2バレル400・2バレル429・4バレルエンジンを選択した場合には強制的にこの3速ATが組み合わされた。351・4バレルコブラジェットエンジンだけは、4速MTクルーズOマチック3速ATのどちらか選択する事が出来た。 1972年式の唯一の高出力エンジン3514バレルCJエンジンあり、かつての429CJ搭載トリノのようなスーパーカー級の高出力最早望めなくなった。しかし、3514バレルCJエンジンは1970-71年の351・4バレルエンジンにはない新し特徴多数盛り込んでいた。同エンジンには特製インテークマニホールドカムシャフト専用バルブスプリング流量750cfmのモータークラフト(en:Motorcraft)製キャブレター、4ボルトシリンダーブロック2.5インチ (64 mm)デュアルマフラーなどが組み込まれた。351CJはデュアルマフラーを装備し4速MT選択できる唯一のエンジンであった同時期の多くマッスルカーでは既に姿を消していたラムエアインテークは351CJと429エンジン引き続き選択する事が可能であった。ラムエアー仕様の351CJは良好な性能発揮しカー・アンド・ドライバー誌のテストでは351CJ、4速MT搭載、3.50:1最終減速比のグラン・トリノ・スポーツのスポーツルーフ車が用いられ0 - 60 mph (97 km/h)加速6.8秒の成績残した。同誌は1/4マイル計測値公表しなかったが、Cars誌は351CJ、C-6型3速MT搭載、3.50:1最終減速比のグラン・トリノ・スポーツのスポーツルーフ車を用い、1/4マイルにて15.4秒の成績記録している。 1972年式ではインテリア一新され、その構造多くABS樹脂多用しレイアウト新しくなったメーターパネル特色としていた。標準のメータークラスターには5つの同じ大きさのメーターポッドが装備されスピードメーター燃料計水温計各種警告灯が内蔵された。そして左端のメーターボッドはダイレクトエア換気システム排気口として稼働した時計標準のメータークラスターには装備されず、オプション品として提供された。全てのV8エンジン搭載モデル選択できたInstrumentation Groupメーターオプションは、ステアリング正面位置した2つ大きなメーターポッドが特徴で、オドメーター付きスピードメータータコメーター配置された。左端配置され3つ目の小さなメーターポッドはダイレクトエア換気システム排気口として稼働し電圧計燃料計油圧計時計セットになってダッシュボード中央独立して配置されていた。座席も1972年式では一新され標準装備ベンチシートでは左右にシート一体型ヘッドレスト装着されオプションのハイバック・バケットシートでも同様のヘッドレスト装備された。フォード従来ビニールシートよりも良好な通気性を持つcomfort weaveビニールシート地を引き続きオプション設定した。また、1971年式までオプション設定された4段調整ベンチシート代わり新たに6段調整パワーベンチシートが設定された。 グラン・トリノ・スポーツは2ドアハードトップとスポーツルーフの2種類用意された。全てのスポーツモデルにはボンネットエアスクープ装着されており、オプションラムエアインテーク取り付ける事が可能であったまた、ツートーンレーシングドアミラーや成形ドアパネル(スポーツモデルのみの装備)、ボディサイド及びホイールリップモールディング(en:molding (automotive))、F14-14サイズタイヤ(ハードトップはE14-14サイズ)も装備された。反射材のレーザーストライプもオプション残されたが、ボディサイド全体を貫くように全長改訂された。このオプション選択するとボディサイドモールディングがクロームメッキ仕上げの物に変更され、レーザーストライプ自体4色から選択する事が可能となった運動性重視するエンスージアスト為に、Rallye Equipment Groupというオプション用意された。このオプションにはInstrumentation Groupメーターオプションが含まれており、コンペティションサス、G70-14サイズのホワイトレタータイヤ、ハースト・シフター付き4速MT(4速MTを既に選択している場合)も装備された。Rallye Equipment Groupオプション3514バレルCJまたは429・4バレルエンジンを搭載したグラン・トリノ・スポーツのみ選択する事が出来た。1972年式のコンペティションサスはMechanix Illustrated誌(en:Mechanix Illustrated)のテスターでもあるトム・マカヒルからも賞賛を受ける出来であった同様にモータートレンド誌やカー・アンド・ドライバー誌での過酷なテストにも十分応えるものであり、過去トリノ高性能サスペンション比較して優れたハンドリング実現していた。モータートレンド誌は1972年式のコンペティションサスを評して、「過去モデルイヤーの超高レートスプリングと異なりフォード技術陣は乗り心地犠牲にせずに優れたコントロール性能実現した全てのトリノオーナーはこのサスペンション感動するであろう。」と述べている。トリノ新しく改良されシャーシサスペンション設計このような評価生み出した事が考えられる。 1972年式のステーションワゴン前年よりも遙かに大きな車体となった全長はトリノワゴンでは2インチ (51 mm)長くなり、グラン・トリノワゴンでは6インチ (150 mm)も長くなった。ホイールベースは4インチ (100 mm)長くなり、全幅も3インチ (76 mm)広くなり、重量大きく増大した荷室床面フラットとなり、テールゲート開口部もより低く改良され、4x8フィート合板そのまま積載する事が可能となった。1972年式ステーションワゴン荷室容量は83.5 cu ft(2,364 L)となり、幾つかのフルサイズステーションワゴンに匹敵するものとなった。サードシートを増設する事で、搭乗人数を6人から8人に増加させる事も出来た全てのステーションワゴンには3段開閉式のマジックドアゲートと高強度フレーム標準装備された。グラン・トリノ・スクワイアには荷室網棚標準装備され、木目調サイドパネル下地ボディカラー透けて見えるような半透明色の物が採用された。スクワイアにはヘビーデューティサスと高容量ラジエーター、高容量バッテリー、そしてトレーラー牽引意識した3.25:1の最終減速比標準装備された。6,000 lb (2,700 kg)の牽引能力提供するライトトレーラーパッケージもオプション設定されたが、このオプション選択すると高強度フレームと3.25:1最終減速比自動的に除外された。また、このオプションには351・2バレルエンジン以上の排気量エンジン必須とされた。 全体的には1972年式トリノは非常に大きな成功収め生産台数総計496,645台にも達した。これは1972年中型車全体見ても全メーカー最大売り上げであり、1964年以来フォード車がシボレー・シェベル販売台数追い抜いた初の事例でもあった。トリノ・コブラを欠く状況ありながら、1972年式トリノはより安全に、より静かに、より良いハンドリングブレーキ性能実現していた。全て新しくなった1972年式トリノは、全ての自動車雑誌多く肯定的な評価獲得し更にはConsumer Guide誌からはBest Buy評価得た。 なお、1972年式グラン・トリノ・スポーツの2ドアスポーツルーフは、映画『グラン・トリノ』においてクリント・イーストウッド監督ドライビング一躍有名になったほか、『ワイルド・スピード MAX』においてラズ・アロンソ演じフェニックスの手ドライブされており、メインライバルカーとして活躍した

※この「1972年式」の解説は、「フォード・トリノ」の解説の一部です。
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