1971年式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/12 03:50 UTC 版)
1971年式はフォードの中型車に対する機構上の改良はごく小規模に留まっていた。1971年式の最大の変化は、中型車のラインナップからフェアレーンの名称が完全に消え去った事である。同様にファルコンの名前も1971年式に残る事はなかった。この年はトリノが名実共にフォードの中型車としての完全な独立を果たした事を意味しており、トリノのラインナップは14車種に及んだ。ベースモデルはトリノで2ドアハードトップ、4ドアセダン/ステーションワゴンの3車種を設定。中級モデルはトリノ500で2ドアハードトップ/スポーツルーフ、4ドアセダン/ハードトップ/ステーションワゴンの5車種を設定。最上級モデルはトリノ・ブロアムで2ドア/4ドアハードトップの2車種となり、トリノ・スクワイアはブロアムと同等級のステーションワゴンとして設定された。トリノGTは2ドアスポーツルーフ/コンバーチブルのみで展開され、トリノ・コブラはスポーツルーフのみの設定であった。 スタイリングはトリムやグリルに僅かな仕様変更が見られるのみで、ボディラインの変化は無かった。1971年式のフロントグリルはコブラを除く全モデルが、グリルを分割するラインが中央に縦方向に設けられ、60年代のポンティアック・GTOの様な顔つきとなった。一方、コブラは1970年式と同じ形状のグリルを使用し続けた。コブラを除く全モデルは、この縦方向の分割ラインに改訂されたエンブレムが装着されていた。トリノ500、ブロアム、スクワイアワゴン、そしてGTには引き続きハイダウェイ・ヘッドライトがオプション設定された。ハイダウェイ・ヘッドライト装着車の場合、グリルの窪みが少なくなり、縦方向のグリル分割ラインが目立たなくなるフロントフェイスとなった。 エンジンのラインナップは1970年式と同一だった。殆どのモデルの標準エンジンは250・直6で、ブロアム、スクワイア、トリノGTの標準エンジンは302V8である。コブラの標準エンジンは351・4バレルV8にダウングレードされた。429エンジンと250・直6エンジンを除くエンジンでは、圧縮比が僅かに低下し、出力性能も若干低下した。フォードにとってはマッスルカーに対する自動車保険料の増大、強化されつづける排出ガス規制への対応が懸念材料となっており、こうした変更を行わざるを得なくなっていた。こうした傾向は他の自動車メーカーでも例外ではなく、トリノの主要な競争相手であったシボレー・シェベルも1971年式では全てのエンジンで圧縮比の低下措置が行われていた。シェベルSSは350 cu in (5.7 L)・2バレルキャブレターが標準エンジンであったが、このエンジンも圧縮比の低下が行われた。マッスルカーの先駆者でもあるポンティアック・GTOに至っては、圧縮比の低下のみならず、ラムエアーIII/IVやGTO・ジャッジの廃止、更には自動車保険査定の馬力表示規定を回避するためにエンジン出力表記をグロスからネットに移行させるなどの苦肉の策で生き残りを図るという情勢であった。しかしフォードの場合には1971年式にもラムエアー仕様はそのまま残され、351・4バレル、429 CJ、429 SCJで選択することが可能であった。 トリノ・ブロアムはトリノのラグジュアリー志向モデルとしての地位が維持された。このモデルにはブロアム・オーナメントや追加のトリム、フルホイールキャップ、遮音処理の追加、布製内装材などが奢られた。ハイダウェイ・ヘッドライトは標準装備ではなくなったが、オプションとしては引き続き残されていた。モータートレンド誌は1971年式トリノ・ブロアム 4ドアモデルを評して、「(シートの)クッション性とホールド性は素晴らしい。内装の品質もだ。」と述べた。トリノGTもスポーティモデルとして残され、ツートーンカラーレーシングドアミラー、GTエンブレム、ダミーエアスクープ、専用ホイールキャップとトリムリング、クロームメッキペダルパッド、ハニカムエフェクト・フルサイズテールランプ、そしてE70-14サイズタイヤ(コンバーチブルはF70-14サイズ)が標準装備された。 トリノ・コブラには285 hp (213 kW)の351・4バレルエンジン、ハースト・シフター付き4速MT、F70-14サイズタイヤ、コブラエンブレム、コンペティションサス、専用ホイールキャップ、そして黒色フロントグリルが標準装備された。コブラへの新しいオプションは、トリノGTに残されていたレーザーストライプであった。高出力の429 コブラジェットエンジンは1970年式と同様の性能で残されていた。しかしSuper Stock and Drag Illustrated誌を始めとするロードテストでは1971年式トリノ・コブラは不本意な結果を残すことになる。同誌はテスト車両に370 hp (280 kW)の429 CJ、C-6型3速AT、3.50:1の最終減速比を選択したが、ベスト記録でも1/4マイル15.0秒、最終地点では97 mph (156 km/h)の成績しか残せなかった。同誌では注記として「高性能の点火装置、より良いインテークマニホールド、より大きなキャブレターとエキゾーストマニホールドを組み合わせることに対応するだろう。」と記した。Cars誌は1971年式トリノ・コブラに370 hp (280 kW)のラムエアー版429 CJ、C-6型3速AT、3.50:1の最終減速比、そして幾らかの幸運にも恵まれ、4,100 lb (1,900 kg)のトリノで1/4マイル14.5秒、最終地点速度102 mph (164 km/h)の記録を残した。同誌のスタッフがいくつかの適切なチューニングを施した後に、前述の記録を得られるようになったという。 1971年式の生産台数は326,463台で、1970年式のトリノ/フェアレーン/ファルコンで構成されたフォード中型車全体生産数よりも低かった。トリノGTコンバーチブルは1,613台、トリノ・コブラは3,054台が1971年に製造された。 また、日本のテレビドラマである『西部警察』第47話にて、1970~71年式のトリノGTが犯人側車両(落書きが多数描かれたブライダルカー)として登場した。大門団長のマシンXと激しいカーチェイスを演じた末に、最後は犯人諸共爆発炎上するという結末であった
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