1971年度の調査
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/18 03:43 UTC 版)
「十六島ホタルエビ発生地」の記事における「1971年度の調査」の解説
葉書アンケート (依頼文)螢エビの調査に御協力下さい 千葉県佐原の小川には、夏の暑い夜、全身が青白く螢のように光るエビがいました。 この光るエビは3センチぐらいで、世界にも例がなく、国の天然記念物に指定されています。 この螢エビは利根川流域・長生郡の小川、霞ケ浦周辺にもいたのですが、現在、どのようになっているのか不明です。 そこで御多用中恐縮ですが、下記の事項を御記入の上、この葉書を御投函いたゞきたく、もし、今採集された方は電話で御一報下されば幸いです。 よろしく御願い申し上げます。横須賀市博物館長羽根田 彌太 (回答文) おたずね 1.螢エビを見たことのある方はA どこで B いつ 年 月 2.今、見た方は 次に電話を下さい。(注:ここには横須賀市博物館の電話番号が記載されていた。) ホタルエビの現状調査 - 1971年 ホタルエビの出現には、0.5パーセント程度の塩分を必要とする発光バクテリア Vibrio Yasakii、ヌカエビ、弱アルカリ性の水の澱んだ場所、そして真夏の高温が必要である。 このうち発光バクテリア Vibrio Yasakiiそのものは、海から利根川を介して運ばれた塩分濃度の低い水域に慣らされた特殊なバクテリアであり、天然記念物指定エリア外のヌカエビの生息する範囲を調査することにより、たとえ1匹でもホタルエビを発見することができれば、Vibrio Yasakiiの純粋培養による保存株をつくることができる。 このことは、これが人工的であっても世界的に珍しいホタルエビを増殖させることにつながり、学術的にも地域社会にとっても活用面で意義のあることと考えられ、調査主体の千葉県教育委員会や調査管理団体の佐原市などが中心となり天然記念物指定十六島のホタルエビ発生地におけるホタルエビ保護増殖事業が立ち上げられた。 現地調査に先立つ1971年(昭和46年)6月には、地域住民に広く協力を求めるため、アンケート調査用官製はがき(右記参照)を1,000枚印刷し、600枚を利根川沿いの千葉県下に、400枚を茨城県側に配布した。なお千葉県内の600枚は、指定地に隣接した佐原市津宮、向津地区住民にくわえ、佐原市立新島小学校、同、北佐原小学校、同、東大戸小学校(石納分校)、県立佐原高等学校といった学校を中心に配布された。 「保護増殖の基礎調査」として始まった本格的な現地調査は同年8月1日から8月17日にかけて行われ、利根川水系の漁業協同組合やエビ網漁やウナギ釣漁に携わる漁師への聞き取り調査にくわえ、夜間に舟を出してヌカエビを漁獲してホタルエビの有無を確認するというものであった。 指定エリア以外の調査個所は、十六島に隣接する草林地区、与田浦、外浪逆浦、県境をまたいだ茨城県行方郡牛堀町(現・潮来市)、潮来町十番地区、十六島地区から利根川を下流に向かった千葉県香取郡東庄町、更には印旛沼や、調査過程で得られた長生郡の沼地などでホタルエビが発生したという過去(1940年・昭和15年)の新聞記事をもとに、東金・茂原方面にまでおよんだ。 調査の結果、ホタルエビの採集、発見には至らなかったが、ヌカエビそのものは多数採取された。その調査過程でホタルエビの目撃情報が複数得られた。与田浦ではエビを餌にしてウナギ釣りを営む複数人より、夜間光るエビを見るという証言が得られ、牛堀町のエビ漁師からも目撃証言を得ることができた。 その一方で東庄町笹川地区の調査では利根川からの水門に通じる小川では、地区の漁師から数年前までホタルエビが出現したという話を多数得られたものの、調査した時点ではこれらの小川の水は船の重油で真っ黒になっており、ホタルエビはおろか淡水魚の生息できる状態ではないことが確認された。また、足を延ばした印旛沼や東金・茂原方面でも各漁業協同組合で聞き取り調査を行い、いずれも1955年(昭和30年)頃までは見かけたが、今では全く見られなくなったことがわかった。 また、葉書アンケートは1,000枚配布した中で21通の回答が寄せられた。それらによればホタルエビを目撃した大多数が1965年(昭和40年)以前で、目撃場所は佐原付近がほとんどであった。1965年(昭和40年)以後にホタルエビを目撃した回答は次の4通であった。 佐原市砂場在住I氏 目撃場所、佐原市砂場の水路 日時、1965年(昭和40年)8月 佐原市加藤洲在住M氏 目撃場所、常陸利根川 日時、1966年(昭和41年)7月 佐原市佐原在住I氏 目撃場所、横利根川 日時、1970年(昭和45年)8月 佐原市磯山在住H氏 目撃場所、北利根川 日時、1971年(昭和46年)9月 これらのアンケート結果と現地での目撃証言と合わせ、佐原周辺のホタルエビは極めて数が少ないものの、出現条件のそろった地区が完全に消滅したとは断定できないことがわかった。 保護増殖、採集へののぞみをかけ、引き続き千葉県教育委員会では翌年度も追跡調査を行うことになった。
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