かく‐ぶんれつ【核分裂】
【核分裂】(かくぶんれつ)
ウランやプルトニウムといった一部の放射性物質に中性子がぶつかり、原子核が分裂する核反応の一種。
原子核が分裂する時、いくばくかの質量が減少するが、その分はエネルギーに変換されて外部に放出される。
これを兵器として使用したものが核兵器(原子爆弾)である。
発電や艦艇の動力源として使う場合、中性子を吸収する素材で作られた制御棒で炉内の中性子の数を調整し制御する。
核分裂
英語表記:nuclear fission
核反応(nuclear reaction)の一種で、ウラン(他にトリウム、プルトニウムなど)の重い原子核の中には、ほぼ等しい質量をもつ2つの(まれに3つ以上)原子核片に分裂するものがある。これを核分裂と呼ぶ。
核分裂には、自発核分裂(spontaneous fission)と誘導核分裂(induced fission)がある。
誘導核分裂は、ウランー235に外部から中性子などが当たると核分裂が起こり、同時に中性子が2~3個放出され別のウラン原子核にこれが当たると次々に核分裂を引き起こす(この現象を核分裂連鎖反応ともいう)。
自発核分裂は、中性子の衝撃やエネルギーを加えなくても、自発的に核分裂を起こすものをいう、例としてカリフォルニウム-252は、α崩壊(96.9%)と自発核分裂(3.1%)を起こすので中性子線源として利用される。
核分裂
核分裂
核分裂反応
(核分裂 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/22 09:55 UTC 版)
核分裂反応(かくぶんれつはんのう、英: nuclear fission)とは、原子核が分裂して同程度の大きさの原子核に分かれること。核分裂または原子核分裂ともいう。1938年に、オットー・ハーンとフリッツ・シュトラスマンらが天然ウランに低速中性子(slow neutron)を照射し、反応生成物にバリウムの同位体を発見した。この結果をリーゼ・マイトナーとオットー・ロベルト・フリッシュらがウランの核分裂反応であると解釈し、fission(核分裂)の語を当てた[1]。
注釈
出典
- ^ 小田稔ほか編、『理化学英和辞典』、研究社、1998年、項目「nuclear fission」より。ISBN 978-4-7674-3456-8
- ^ 三澤毅ほか、『原子炉物理実験』付録1A「原子炉物理の基礎知識」より。京都大学学術出版会 ISBN 978-4-87698-977-5
- ^ 山本義隆『新・物理入門 増補改訂版』駿台文庫、2004年、319頁。ISBN 978-4-7961-1618-3。 C7342
- ^ “2017年度の家庭のエネルギー事情を知る ~家庭でのエネルギー消費量について~”. 環境省. 2021年4月29日閲覧。
- ^ E. Rutherford (1911). “The scattering of α and β particles by matter and the structure of the atom”. Philosophical Magazine 21 (4): 669–688. Bibcode: 2012PMag...92..379R. doi:10.1080/14786435.2011.617037 .
- ^ “Cockcroft and Walton split lithium with high energy protons April 1932”. Outreach.phy.cam.ac.uk (1932年4月14日). 2012年9月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年1月4日閲覧。
- ^ Chadwick announced his initial findings in: J. Chadwick (1932). “Possible Existence of a Neutron”. Nature 129 (3252): 312. Bibcode: 1932Natur.129Q.312C. doi:10.1038/129312a0 . Subsequently he communicated his findings in more detail in: Chadwick, J. (1932). “The existence of a neutron”. Proceedings of the Royal Society A 136 (830): 692–708. Bibcode: 1932RSPSA.136..692C. doi:10.1098/rspa.1932.0112 .; and Chadwick, J. (1933). “The Bakerian Lecture: The neutron”. Proceedings of the Royal Society A 142 (846): 1–25. Bibcode: 1933RSPSA.142....1C. doi:10.1098/rspa.1933.0152.
- ^ E. Fermi, E. Amaldi, O. D'Agostino, F. Rasetti, and E. Segrè (1934) "Radioattività provocata da bombardamento di neutroni III," La Ricerca Scientifica, vol. 5, no. 1, pages 452–453.
- ^ Richard Rhodes (1986). The Making of the Atomic Bomb, Simon and Schuster, pp. 267–270, ISBN 0-671-44133-7.
- ^ Hunter, H F, and Ballou, N E. FISSION-PRODUCT DECAY RATES. N. p., 1951. Web.
- ^ 日本アイソトープ協会 編『アイソトープ手帳11版』丸善、2011年、126-127頁。ISBN 978-4-89073-211-1。
- 1 核分裂反応とは
- 2 核分裂反応の概要
- 3 核分裂生成物
- 4 脚注
核分裂
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/09 00:46 UTC 版)
「放射性同位体熱電気転換器」の記事における「核分裂」の解説
RTGと原子炉は、全く異なった原子核反応を利用している。原子炉は制御された核分裂のエネルギーを利用する。ウラン235やプルトニウム239の原子が分裂すると、中性子が放出され、それが引き金となり、中性子吸収剤で制御された速度の連鎖反応でさらなる核分裂を引き起こす。需要に応じて出力を変更でき、管理のために完全に停止できるというメリットがあるが、危険な高出力での暴走が起きないように保守が必要というデメリットがある。 RTGでは連鎖反応は起こらず、同位体の量とその半減期のみに依存した、完全に予測可能で安定的に減少する速度で熱が生産される。事故的な暴走は原理的に起こりえない。一方、熱生産の量を需要に応じて変化させることができず、不必要な時にも停止できない。過剰需要時には、蓄電池等の補助的な電源供給が必要であり、打上げ前や初期飛行段階も含めて全ての段階で適正な冷却が必要である。 プルトニウム238には核拡散のリスクはない。その高い出力から、RTG燃料には向いているが、核兵器には使えない。プルトニウム238は、「核分裂可能」ではあるが、「核分裂性」ではない。まれにアルファ崩壊の代わりに自発的に核分裂することはあり、また核分裂で出る高速中性子によって分裂を誘起されることはあり得るが、核兵器に必要な持続的な連鎖反応は起こらない。核分裂性のプルトニウム239よりも比較的高い頻度で自発的に分裂するため、プルトニウム238の混入は、核兵器を劣化させ、不完全核爆発の可能性を高める。
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核分裂
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/08 00:45 UTC 版)
核分裂の際には通常数個の中性子が外部に放出される。そのため、核分裂を起こす物質が隣接して大量に存在する場合には、核分裂で放出された中性子を別の原子核が吸収してさらに分裂する、という反応が連鎖的に起こることがある。このような反応を核分裂の「連鎖反応」と呼ぶ。核分裂性物質の量が少ない場合には連鎖反応は短時間で終息するが、ある一定の量を超えると中性子の吸収数と放出数が釣り合って連鎖反応が持続することになる。この状態を「臨界状態(あるいは単に臨界)」といい、臨界状態となる核分裂性物質の量を臨界量と呼ぶ。発電等に用いられる原子炉ではこの臨界状態を維持する様に制御して一定のエネルギー出力を得ている。原子爆弾に用いられる場合は、核分裂性物質を制御された短時間で臨界状態にする必要がある。 核分裂性物質が臨界量を大幅に超えて存在する場合には、分裂反応を繰り返すごとに中性子の数が指数関数的に増加し、反応が暴走的に進む。この状態を「超臨界状態」(物性物理学における超臨界とは意味が異なることに注意)、または臨界超過と呼ぶ。極わずかな超臨界状態であれば制御可能な領域も存在する(そうでなければ原子炉の起動も出来ない)が、一定以上の超臨界状態の制御は不可能であり兵器としても実用にならない。 原子爆弾は起爆前の保管・運送中に核分裂連鎖反応が始まってしまうと暴発するか使用不能になる。如何に構造を工夫しようとも、暴発を避けて収容できる核分裂性物質の量には限界があり、そのため実現できる核出力には自ずと上限がある。後に水素爆弾が実用化されたことで、核分裂性物質の増量によって核出力を高める動機は失われた。
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核分裂
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/24 09:06 UTC 版)
アインスタイニウムは核分裂率が高く、結果として持続的な核連鎖反応の臨界質量が低くなる。この質量は254Es同位体の裸球(bare sphere)の場合は9.89kgであり、厚さ30cmの鋼製中性子反射体を加えることで2.9kgに、水から作った厚さ20cmの反射体を使用することで2.26kgに下げることができる。しかし、この小さい臨界質量でさえこれまでに分離されたアインスタイニウムの総量、特に希少な254Es同位体の総量を大幅に超えている。
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核分裂
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/24 16:41 UTC 版)
シラードはアメリカにおいて安定した地位を持っておらず、僅かな収入に頼って生活しなければならなかった。1938年10月にはミュンヘン協定によってズデーテン地方がドイツに割譲され、このニュースはシラードにイギリスの命運がつきたのだと思わせた。一方、年末までにはニューヨークでの実験でインジウムも安定であることが明らかとなり、このころシラードは連鎖反応は実現不可能なもので、自分は時間を無駄にしただけだと思うようになっていた。 失意のうちにイギリス海軍へ特許の機密指定解除を願い出る手紙を送った直後、シラードは旧知のウィグナーからドイツのオットー・ハーンらによる核分裂という新たな現象の発見を伝え聞くこととなった。マイトナーと甥のフリッシュ (Otto R. Frisch) の解釈によれば、このとき中性子の照射によってウランは2つの核に別れ、それに伴って莫大なエネルギーが放出される。こうしてシラードの予想とはやや違った形で突如としてウランによる連鎖反応の可能性が浮上した。シラードはあわてて前の手紙を取り消す電文を送るとともに、ナチスが原子爆弾を先に完成させるのではないかという強い危機感を抱くようになった。 ウランによる連鎖反応というアイデアはイタリアから亡命しコロンビア大学へ移ったばかりのエンリコ・フェルミの頭にもひらめいていた。シラードはイジドール・ラビとともにフェルミに連鎖反応の実験を促したものの、フェルミは実現の可能性は 10 % ほどだとし、気乗りしてはいなかった。ラビは「それで死ぬかもしれないのなら、10 % はわずかな可能性ではない」としてフェルミを説得している。1939年3月、シラードのグループとフェルミのグループはコロンビア大学でそれぞれ別の装置を用いてウランの核分裂実験を行い、ともに複数の高速な二次中性子が放出されることを確認することとなった。シラードはこの日のことを後に次のように記している「私たちがしなければならなかったのは、背もたれに寄りかかりスイッチを入れることだけだった…。〔オシロスコープに〕輝きが現れ、それを10分ほど見つめてから…家へと戻った。その夜、私は世界が悲しみへと向かっていることを知った。」 シラードはこうして確認された結果を秘密にして置くよう強く主張した。しかし、前例のないこうした訴えを受け入れてもらうことは難しいものであった。このことが論議されているうちにフランスのフレデリック・ジョリオ=キュリーらがシラードの要請を断って同様の実験を公表したため、大学の公的地位のなかったシラードの主張はフェルミや大学の関係者に押し切られる形となり、結果はともに公表された。こうして早くもこの年の4月末には、ウランの同位体が分離できさえすれば、一つの都市を吹き飛ばす爆弾になりうるというセンセーショナルな記事が新聞を賑わせることになった。
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核分裂
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/21 01:30 UTC 版)
核分裂は、第二次世界大戦前後に現れたエネルギー源である。蒸気機関や内燃機関が基本的には化学物質の燃焼であるのに対して、原子核分裂では核分裂反応を利用しているために、莫大なエネルギーを取り出すことが可能である。核分裂は、当初原子爆弾などの軍事用途に用いられていたが、戦後は発電用途(原子力発電)でも用いられるようになる。しかし、核分裂反応では放射性廃棄物が発生するために、特に原子力発電では放射性廃棄物の処分が問題となることも多い。
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核分裂
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/22 06:47 UTC 版)
1934年のエンリコ・フェルミによる中性子衝突実験の化学的証拠(この実験からフェルミは超ウラン元素が生成された可能性があると仮定した)を正しく批判した。この理論は数年間広く受け入れられた。しかし、ノダックの論文"On Element 93"は多くの可能性を示唆したが、フェルミが鉛だけではなく、自身の照明においてウランより軽い元素を全て化学的に取り除くことができなかったことに焦点をあてた。この論文は今日では、単にフェルミの化学的証拠の欠陥を正しく指摘しただけではなく、「核がいくつかの大きな断片に分裂することが考えられ、これは勿論既知の元素の同位体であるが照射する元素の隣ではない」可能性を示唆したため、重要であると考えられている。このようにすることで数年後に核分裂として知られるようになるものを予言した。しかし、ノダックの理論はこの可能性の実験的証拠または理論的根拠を示していなかったため、正しいにもかかわらず論文は概して無視され嘲笑を受けた。オットー・ハーンなど何人かのドイツの科学者はノダックの研究を「ばかげている」と見なしていた。1929年のウォール街における大暴落により、職場での女性の地位は何年もの間低下し続けていた。1932年、ヨーロッパの他の人々を複製するドイツの法律が施行され、男性が就ける多くの職ができるために、既婚女性は仕事を辞めて主婦になることを強制された。ノダックは「無給の協力者」としての地位によりこの法律を免れることができた。 ノダックの核分裂の考えは、ずっと後になるまで確認されなかった。1938年にイレーヌ・ジョリオ=キュリー、フレデリック・ジョリオ=キュリー、Pavle Savićがフェルミと同様の実験を行ったところ、想定していた超ウラン元素が隣接する元素の特性ではなく希土類の特性を示したときに、いわゆる「解釈の難しさ」が生じた。最終的に1938年12月17日にオットー・ハーンとフリッツ・シュトラスマンは、それ以前に推定された超ウラン元素がバリウムの同位体であるという化学的証拠を提供し、ハーンはこれらの刺激的な結果を亡命した同僚のリーゼ・マイトナーに書き、このプロセスをウラン原子核の軽い元素への「破裂」として説明した。マイトナーとオットー・ロベルト・フリッシュはFritz Kalckarとニールス・ボーアの液滴仮説(最初1935年にジョージ・ガモフにより提案された)を使用して、フリッシュが核分裂と造語したものの最初の理論モデルと数学的証明を提供した。フリッシュはまた、霧箱を用いて核分裂反応を実験的に検証し、エネルギー放出を確認した。したがって、ノダックの元の仮説が最終的に受容された。
※この「核分裂」の解説は、「イーダ・ノダック」の解説の一部です。
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核分裂
「核分裂」の例文・使い方・用例・文例
- 核分裂.
- 核分裂物質.
- 核分裂は莫大なエネルギーを供給する.
- 核分裂プロセスの間に粒子は崩壊した
- 核分裂させる、または粒子を失わせる
- 原子爆弾への使用に適さない状態にするために、(核分裂物質に)非核分裂性物質を加える
- (特に核分裂性物質の) 反応の速度が増加するくらいの方法で連鎖反応を支えることができます
- 大規模な破壊を引き起こすテロ集団による核兵器の使用、あるいは核分裂性の放射性物質の使用(または使用の脅威)
- 核分裂を起こすことのできる
- 核分裂性の核小体
- 核分裂性物質
- 核分裂できない
- 核分裂により生産される葉緑素のない単細胞、非細胞球形、渦巻き状の、あるいは棒状の有機体
- 核分裂に続く細胞の細胞質分裂の、または、核分裂に続く細胞の細胞質分裂に関する
- 核分裂(重要素(ウラニウム235またはプラトニウム239)の核を分裂させること)によって莫大なエネルギーが放出される核兵器
- エネルギーを生成するために、制御された核分裂を使用する原子炉
- 核分裂
- 原子炉が燃焼させたものよりも多くの核分裂性物質を生成する原子炉
- 反応が起こる核分裂性物質が入っている原子炉の小室
核分裂と同じ種類の言葉
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