核出力限度
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/01 07:01 UTC 版)
核出力質量比は、核兵器の質量と核出力の総計を比較したものである。水素爆弾の理論上の最大核出力質量比は、質量1 tあたり核出力6 Mt (6 Mt/t) である。現実的に達成できる限界は、それよりも幾分低く、約5.2 Mt/tほどである。現在のアメリカ合衆国の核兵器の核出力質量比は600 kt/t (2.5 TJ/kg) から2.2 Mt/t (9.2 TJ/kg) である。いくつかの核兵器の核出力質量比を比べてみると、デイビー・クロケットの核出力質量比は0.4 - 40 kt/t (0.002 - 0.167 TJ/kg) 、リトルボーイは4 kt/t、ツァーリ・ボンバは2 Mt/t (8 TJ/kg) (実はこの倍の出力が予定されていたが、故意に半分に減らされている)、Mk-41は5.2 Mt/tである。 これまでに造られた純粋な核分裂爆弾で最大のものは500 ktの核出力を持っていたが、これが同様の設計での限界の域にある。核融合増幅はそのような兵器の効率を相当上げることができたであろうが、結局のところ、すべての核分裂に基づく兵器には臨界量に対処することの難しさがあるために核出力にはおのずと限度がある。しかしながら、核融合爆弾(水素爆弾)には現在わかっている範囲では核出力の限界がない。原理的には、水素爆弾は数千 Mt、つまりギガトン (Gt) 級の核出力を持ち得たのである。 理論上の最大核出力質量比がおよそ6 Mt/tで、達成できる比率が最大5.2 MT/tであるので、核兵器の航空運搬には実際的な制限がある。例えば、アントノフAn-225の250 tのペイロードをすべて核兵器の搭載に用いることができるならば、当該航空機で運搬できる核兵器の核出力限度は250 t× 5.2 Mt/t、つまり1,300 Mtである。同様に、ミサイルに搭載される核兵器の最大の核出力限度もミサイルのペイロード能力によって決まる。ロシアの大型のR-36M (SS-18) ICBMには7,200 kgのペイロード能力があり、搭載できる核弾頭の計算上の最大核出力は37.4 Mtである。事実、単弾頭のSS-18 mod 1の核出力がおよそ24 Mtである。最近は、所定の総核出力又はペイロード能力に対してより小さなMIRV弾頭(多弾頭方式)のほうがより広範囲の破壊効果を得られるため、単独の大型弾頭はあまり使われなくなっている。
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