プルトニウム238とは? わかりやすく解説

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プルトニウム238

別名:Pu-238
英語:plutonium

プルトニウム同位体一種放射性物質で、半減期は約87年

プルトニウム238が放つ放射線アルファ線であるため、容易に遮蔽できる。高純度のプルトニウム238は、原子力電池材料として利用されることがある原子核崩壊エネルギー利用して電力取り出しまた、長期にわたり電池交換をせずに駆動することができる。

プルトニウム238

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/15 09:04 UTC 版)

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プルトニウム238
惑星探査機のカッシーニガリレオに搭載された238PuO2のペレット。赤色は238Puの崩壊熱が原因である。
概要
名称、記号 プルトニウム238,238Pu
中性子 144
陽子 94
核種情報
天然存在比 0
半減期 87.7 ± 0.1 年
親核種 238Np (β-)
242Cm (α)
238Am (β+)
238U (β-β-)
崩壊生成物 234U
同位体質量 238.0495599(20) u
スピン角運動量 0+
余剰エネルギー 46164.7± 1.8 keV
結合エネルギー 7568.354 keV
α 5.593 MeV

プルトニウム238 (Plutonium-238・238Pu) は、プルトニウムの同位体の1つ。

概要

238Puは、半減期が87.7年の比較的寿命の短い放射性同位体である。これはプルトニウム同位体の中で5番目に半減期の長いものである[1]

238Puはそのほぼ100%がアルファ崩壊によって崩壊し、234Uになる。しかし、低確率ではあるが他の崩壊モードもある。0.00000019%(約5億分の1)は自発核分裂で崩壊し、0.000000000000014%(約7000兆分の1)は32Siを放出して206Hgに、0.000000000000006%(約2京分の1)は28Mgまたは30Mgを放出して210Pbまたは208Pbとなる。後者2つは自発核分裂とは異なり、放出する核種が決まっており、このような崩壊モードをクラスタ崩壊と呼ぶ。クラスタ崩壊が確認されているプルトニウムの同位体は他に236Puと240Puしかない。ほとんどの238Puは、最終的に206Pbに落ち着く[1]

歴史

238Puは世界で初めて合成・発見されたプルトニウムの同位体である。238Puは1940年12月に、グレン・シーボーグエドウィン・マクミラン、ジョセフ・ケネディー、アーサー・ワールらによって、カリフォルニア大学バークレー校にて238U重陽子を衝突させ238Npを合成し、それが半減期2.117日のベータ崩壊によって238Puが生ずる事を最終的に1941年2月23日に確認した[2][3]

RTG燃料として使われる238Puは二酸化プルトニウム (PuO2) の形で用いられている。

238Puは、ほとんどがアルファ崩壊によってのみ崩壊し、半減期も87.7年という適度な長さを持つ。この性質は、崩壊熱を利用しゼーベック効果によって電力を生み出す放射性同位体熱電気転換器 (RTG) には都合が良い。実際、238Puは最も良く使われているRTG燃料である。238Puの崩壊エネルギーは1kgあたり540Wであり、十分効率的である。また、放射線の外部漏洩を防ぐ防護壁の厚さは2.5mm以下で済み、適切な格納容器があれば防護壁が不要である場合が多い。熱量が大きく、適度な寿命と防護壁の不要性は、重量が厳しく制限される宇宙探査機の要望に応えるものである。また、ガンマ線中性子線もほとんど放出されない。RTG用の238Puは二酸化プルトニウム (PuO2) の形で用いられる[7]

238PuのRTGを利用した探査機はボイジャー1号ボイジャー2号パイオニア10号パイオニア11号ニュー・ホライズンズカッシーニなどである。2011年現在では、木星探査機のジュノーのような、太陽から遠方でもRTGを用いず太陽光パネルで電力をまかなう探査機も開発されている[8]が、一般的には木星より外側の太陽系の外側を探査する場合、太陽光パネルで電力を得るのには太陽光が弱すぎるため、238PuのRTGが電力として利用される場合が多い[9]。また、キュリオシティ以降の火星探査車も、砂嵐が多く砂塵が太陽電池の上に堆積しやすい火星環境下で、昼夜関係なく動作するために238PuのRTGを使用している[10][11]

なお、238PuのRTGは、1960年代に一部の埋め込み型の心臓ペースメーカーに使われていた事があるが、リチウム電池の性能が向上した1970年代からは使われなくなっている[12]

脚注

  1. ^ ただし、この式のみ簡略化の為一部を省略している。「+n」が上についている矢印は、1個の中性子を衝突させ中性子捕獲したという意味になる。

出典

[脚注の使い方]

関連項目

軽量:
237Pu
プルトニウム238は
プルトニウム同位体である
重量:
239Pu
238Np (β-)
242Cm (α)
238Am (β+)
238U (β-β-)

崩壊生成物
プルトニウム238
崩壊系列
234U (α)
(SF)
206Hg (32Si)
210Pb (28Mg)
208Pb (30Mg)

崩壊


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