主人公とその周辺の人物
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 08:19 UTC 版)
桜(さくら) 声 - 榎本温子 本作の主人公。14歳。命字は「滅」。和泉の国にある、王良親王の別邸で女房達と暮らす少女。髪は明るい茶色。「会ったこともない人の妻になるのはイヤ」と、当初は青葉のことを拒絶していたが、後に好きになった。 心優しい性格と一度決めたらなかなか譲らない強い意志を持ち、自分の主張を通すためには木も登る。そのため、周囲の人間が自分の持つ運命に巻き込まれて命を落とすことに苦しむ。一日五食食べないと体がもたない(この時代は一日二食が普通)。きつい香りが苦手で、貴族の女性のたしなみである衣に香を焚き染めることも、室内に香炉を置くこともしない。 両親は幼い頃亡くなっており、たった一人の兄も都に上った際に流行病で亡くなったと聞かされていた。後に槐と兄・戒が同一人物だったことを知る。 実は、月から来たかぐや姫の孫で、月の血故に不老不死であり、秘剣「血桜」を使い妖古を倒すことができる。母親は妖古に取り憑かれたため帝に殺されたとされていた。しかし青葉によると、実際には母親は妖古になって「血桜」に貫かれて亡くなったらしい。かぐや姫の孫であることから、満月を通して妖古に居場所が知られてしまうため、長い間満月を見ることを禁じられていた。 「血桜」を使う時は、普段の単衣姿から月の国特有の衣装に変身し、引きずるほど長い薄茶の髪も腰までの長さの銀髪になる。変身しなくても「血桜」を出すことはできる。 青葉の屋敷で暮らすようになってから、帝のもとに参内した際に、罠にかけられて水牢に入れられ、月の血によって発狂しそうになる。しかし女房の姿で潜入していた槐に救われ、お守りとして持っていた青葉の御紙を、自分の御紙と共に奪われてしまった。その後、屋敷に攻め入ってきた、朱里の毒によって正気を失った槐によって桜の御紙が焼かれ、一時は死を覚悟するが、運命に打ち勝つため、自ら焼け落ちかけたそれを破る。 そして、槐が解放し不完全な形で復活してしまったかぐや姫と戦い、白夜の術によって血桜から呼び出された淡海・右京・朝霧・瑠璃条たちの力も借りてかぐや姫を倒すと、白夜とともに月泉水の湧き出る不死山へ向かい、それを血桜で封じて果てた。 しかし3年後、血桜に取り込まれた朝霧たちの力で普通の人間として蘇生し、青葉に約束したとおり、和泉の屋敷の桜の木の下で再会する。その際、竹取物語でかぐや姫がおじいさんに発見された時のように桜の木が光を放ったため、青葉が履いていた刀で斬ったところ、切った場所から幹がはがれ、桜の袿をまとい黒髪となった桜が出てきた。 青葉(あおば) / 王良親王(おうらしんのう) 声 - 岸尾だいすけ 17歳。自称「口が悪くて雷使いの色男」。命字は「生」。 桜の婚約者・王良親王の使いと名乗って現れたが、後に親王本人である事が判明する(「青葉」という名前は彼の幼名)。札を矢に変えて放ったり、白夜に習った「雷呼」という術で雷を落としたりすることができる。 幼い頃から桜と戒を遠くから見るため、何度か和泉に来ていた。白夜との約束で、桜の心を守る者の1人になることを決意したが、未来の帝として育ったため愛国心が強く、当初は月の住人である桜が妖古となって国を滅ぼすのではないかと考え命を狙っていた。しかし、彼女の優しさに触れるうちに想いを寄せる。 先帝が妖古に殺された際、混乱に乗じて前の東宮であった兄を暗殺され、自身も狼の血を混ぜた毒を盛られて生死の境をさまよった。そのため朝霧と同じく血の呪いを受けており、白い狼になることが出来る上、嗅覚が鋭くなっている。度々我を忘れて狼の姿で暴走しており、ほぼ全身がアザに侵されているためその余命は幾ばくかしかないと思われる。なお、彼が東宮に立てなかったのは、毒殺未遂の際の物忌で後見者の権力が弱まったことに起因する。 琥珀・疾風(後述)は、彼が静養のために訪れることがあった忍の里での幼馴染で友人。度々琥珀たちの修行にも交じっていた。 帝に、40代の大納言に桜を渡すか、右大臣家の百合姫を側室として娶るかの二択を迫られ、桜を手放す選択が出来ず、百合姫を娶ることが決まった。しかし、東宮・藤紫が百合姫に求婚したことで難を逃れる。 なお、彼を苦しめていた呪いは、かぐや姫との決戦の直前に、朝霧と約束した槐に斬られて一度命を落としたことで解けた。 朝霧(あさぎり) 声 - 仙台エリ 桜の友人(本人としては桜に仕えているつもりらしい)。桜の手に乗るくらいの大きさで、肩先程度の長さの髪に鈴を2つ飾っている(白夜がくれたお守りらしい)。命字は「優」。 桜が幼少の頃、通りがかった人買いから自分の袿と引き替えに譲り受けた女の子で、優しい性格。しかしその反面、恋人・右京との戦いで狂気的な一面も見せる。淡海からは「物の怪」と呼ばれ嫌われていた。 その正体は一寸子の血を飲んだ雪女。雪女の村である「雪夜村」の出身だが、村が代々祀ってきた神が妖しであり、村の周囲をうろつく、餓鬼婆(がきばあ)と呼ばれる、眼の見えない老婆が神への生贄にされた雪女だと知ってしまったため、力が暴走してしまい、妖しを倒すも、村が壊滅した。御神木から脱出する際に、供物の中にあった一寸子の血を飲んで小さくなり、災害をやり過ごす。この際に血の呪いを受けた。 村の壊滅後は、小さな姿のまま見せ物として人買いに利用されており、人間のことが信じられなかったが、桜と出会ってからは彼女に心を開くようになった。彼女が自分を解放する際に人買いに売った袿を何とか取り戻すことが夢で、姫様第一主義。 普段は小さな姿で生活していて、本来の、人間と同じくらいの背格好になることもできる(その際は髪が伸び、鈴も相応の大きさへ変化する)が、その際に雪女の力を使うと、一寸子の血の呪いによって背中に受けたあざが広がり、命が削られてしまうらしい。このことは白夜に口止めされているため、桜の目の前で元の姿に戻ることはなかったが(桜が崖から水中に落ちた際、彼女を助けるべく元の姿に戻っているが、桜は意識が朦朧としていたため気づいていない。)、修羅幽玄殿における右京との戦いで、桜の目の前で元の姿に戻り、力を使っている。意識を封じられた桜に右京を斬られてから一時的に上手く会話できなくなった。 その後、槐にさらわれ、雪夜村の神であったかぐや姫の髪と目を蘇生させるため、その生気を奪われ、呪いを進行させると同時に視力を失った。瑠璃条と入れ替わってやってきた桜に見つかって助け出されるが、脱出中に現れた槐によって呼び出された妖古と桜が戦闘に突入。その隙に多量の月泉水を飲まされて妖古化したところを戦闘中の桜によって血桜で斬られ、桜の花びらと化す。その際、死と同時に解ける血の呪いが解けて雪女の姿に変化。視力が戻り、血の呪いの解き方に気づくも、疾風とともにその場に追いついてきた青葉に伝えることは出来ず、桜に「生きて」と願いを託した。 その後、かぐや姫との最終決戦の際に白夜によって召喚され、血桜に蓄えられた力を解放する。そして月泉水を封じた後の血桜の中で桜と再会し、桜に生きている意味が分かったかと問う。その答えを聞いた朝霧は、「ずっと傍にいて守っているから」と、自分にとって「命よりも大切なもの」のひとつである桜を、血桜に宿る仲間達の最後の力で現世へ送り返した。 白夜(びゃくや) 声 - 京田尚子 老齢の巫女。普段は各地の妖古を封印して回っている。命字は不明。桜の相談相手でもあり、彼女の出自などを当人よりも知っている。朝霧に桜の出自を話し、「姫のそばにいて欲しい」と頼んだ。桜の許嫁として王良親王を選んだ張本人でもある。見た目の美しさにこだわり見た目の醜さを否定する舞々をよく思っておらず、彼に容赦のない攻撃を仕掛けた。 ある術を使うことで、巫女装束をまとった美女に変身することが出来、舞々との戦闘の際は、現在桜しか扱えないはずの血桜を呼び出してみせるなど、謎の多い人物。 その正体は桜やかぐや姫よりも古い時代の月の主であり、月の宮の創始者である。老齢の巫女の姿を取っていたのは正体を隠すためであり、血桜は彼女の肉で、月泉水は彼女の涙で作られた物だった。 月泉水と血桜を封印し、長く生き過ぎて妖古となった月の者を滅ぼすため下界に降り、月の者と人間、両方の血を引く桜に血桜を託して、剣の力が満ちるのを待っていたのだという。最後は不死山の月泉水が血桜に封じられたことで桜と共に桜の花びらとなり、血桜の中に魂を宿す。月泉水封印の際、自らを滅ぼしてまで役目を果たした桜を「最後にして最上の月の姫」と評した。 淡海(おうみ) 声 - 矢澤喜代美 和泉からついてきた、桜のお付きの女房。命字は「信」。 もともとは下級貴族の娘だったが、家族と屋敷を失ってから、遠縁である中納言に引き取られ、青葉の紹介で桜の下へ来た。両親を妖古に殺された過去から物の怪を激しく嫌っている(桜と仲の良い朝霧でさえ「物の怪」と呼び嫌悪感を示す)。そのため、青葉との結婚の夜に桜の命字を記した御紙を青葉に持って行くという、桜への裏切りとも思える行動を起こした。 桜の正体を知った時、彼女に「化け物」と言ってしまい、それ以来口を利かなくなる。その後、毒蛇を青葉にけしかけたのが中納言だと知ってしまったため、槐によって妙なモノを飲まされて「死にたくなければ桜を連れて来い」と脅されるが、桜を槐の下へ連れて行くことはなく、彼女に自分の過去を明かし、彼女と和解する。そして中納言のことを桜に伝えた直後、槐が飲ませたモノによって妖古化し、現れた槐に崖の下へ落とされた挙句、白夜たちによって火を放たれる。その後も燃え盛る炎の中でかろうじて生きていたが、最後は桜によって斬られることとなった。 その後、桜の意識が血桜の中に落とされた際、光の球として現れ、桜が落とされた精神世界の「もう1人の主」についての情報と槐の目的を伝え、瑠璃条の妨害が原因で不安になる桜を勇気づけたりして、血桜の中から脱出する手助けをした(最後は生前の姿を桜に見せている)。 琥珀(こはく) 忍の里八代目頭領の娘。語尾に「ござる」がつき、特徴的な笑いかたをする。青葉の事を兄の様に慕っている。疾風に思いを寄せるが、彼を蛙の姿にしてしまったことを悔いており、元の姿に戻れるまで思いを告げることはなかった。 9人兄弟の末っ子だが、兄姉を皆流行病や任務で亡くしたため次期頭領と目されている(最終話で正式に次期頭領に選ばれる)。忍者としては優秀らしいが、大事なところでしばしばドジを踏む。 当初は幼馴染ともいえる青葉に仕えており、青葉が桜の命を狙っている事を知っていたが、怪我を負った桜と出会い彼女の優しさに心を打たれて以来、青葉を一時裏切ってでも桜の身を護る事を誓った(後に、青葉も桜を守る道を選んだため、結果的に裏切りにはならなかった)。 疾風、朱里、青葉と、幼馴染が男の子ばかりだったため、桜は初めてできた同性の友人である。 疾風(はやて) 琥珀の幼なじみの忍者。琥珀よりは2歳年上。蛙ではなかったら次期頭領らしい。青葉とは乳兄弟。 幼い頃琥珀に掛けられた術により蛙の姿をしているが、満月の夜にだけ(そこから次の日の夜まで)人間に戻る事が出来る。琥珀は、彼が蛙の姿を嫌っていて、仲の良い青葉とも再会を躊躇していると思っていた。だが、疾風自身は蛙の姿も気に入っている。 水浴びをしに行った川で瑠璃条と再会し、自分に似た部分を持つ彼女に惹かれるようになる。その後、瑠璃条の手助けにより蛙の術が解け、それを知った琥珀に愛の告白を受けるが、瑠璃条に心うつりしたためその告白を断った。 桜が不死山へ去った後、改めて琥珀に告白するが、「ふざけるな」と突っぱねられたため修行の旅に出てしまう。が、桜の蘇生直後に朱里とともに帰って来た。 藤紫(ふじむらさき) 東宮(後に即位)。命字は「欲」。このため誕生時から「欲深い人間に育つ」と誤解され、見捨てられてしまったが、東宮だった青葉の兄が暗殺され、他の親王たちも暗殺されるか権力争いに負けてしまったため東宮位を押し付けられた。邸宅は九条院。 青葉の叔父だが彼とは仲が悪い(とはいえ、桜が帝に謀られた際など、行動を共にすることもある)。当初は軽薄でいい加減なところが目立つが、桜の命を狙っていた青葉の本心を見抜く、桜の兄・戒の幽閉場所を突き止めるなど洞察力は鋭い。忍や陰陽師、検非違使たちを使って修羅幽玄殿を見つけ出し、爆破するなどの采配能力にも長ける。 親族から見捨てられ、その上体が弱かったこともあってか、野心もなく、何に対しても魅力を感じない性格だが、初めて「欲しい」と思ったのが桜。しかし桜に拒絶され、青葉と桜の想いが重なっていることを確認すると、百合姫に求婚の文を送った。 帝が槐によって殺されたため、後日即位した。朱里が流す槐一派の動向に関する情報を受け取る立場となったため、組織を分裂させ内部から崩壊させるよう、他の忍を介して朱里に命じている。 全てが終わった後はりりとでんの姉弟を自分の指導下の元に更生させることになった。 百合(ゆり) / りり 右大臣家の姫。裏表のある性格。腹黒い策士で、青葉を我が物にしようと策を練る。父親である右大臣は、青葉と桜の関係をよく思っていない人物の筆頭。命字は「美」。 「美しいもの」を追求し、女房たちの手抜きも許さない。貴族の姫としての常識を知らない桜を侮蔑の眼差しで見ているが、表向きは友人関係。また偶然出会った舞々とは美を追求する者同士、通じ合っている。 実は右大臣家の正妻が産んだ百合は病弱だったため幼くして他界しており、浮気性で愛人が多く滅多に屋敷に戻ってこない右大臣にそれを知られぬため、女房の茜が正妻の命を受けて人買いから買ってきた「りり」という名の里娘だった。それを知るのは今は亡き正妻と茜のみであり、入内が近づいてからその秘密を桜に明かし、舞々との密会に協力してもらう。なお、茜はある理由から後に屋敷を追い出されている。 5歳のときに、3歳で他界した百合の代わりに右大臣家に入ったので、「百合」としては14歳だが、実年齢は16歳。弟と仲良く暮らしていた頃から、火傷痕のせいで疎まれている弟を守れるよう下級貴族と結婚するか、その女房になるのが夢だった。 同じ命字を持っていたことで、舞々が実の弟である事を知り、舞々が激情に任せて屋敷を去った後桜から事情を聞く。そして入内を翌日に控えた晩に、髪を切り、桜に身代わりを頼んで屋敷を飛び出し、琥珀から頭領を介して情報を得た朱里に見送られて、弟と共に都から旅立つ。しかし、桜の危機に弟とともに駆けつけ、その後、藤紫と「りり」として友人関係になった。そのあと、弟同様藤紫のもとで今までの罪を償うようになった。
※この「主人公とその周辺の人物」の解説は、「桜姫華伝」の解説の一部です。
「主人公とその周辺の人物」を含む「桜姫華伝」の記事については、「桜姫華伝」の概要を参照ください。
- 主人公とその周辺の人物のページへのリンク