主人公とその周囲の人々
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/10 03:09 UTC 版)
私 主人公。被爆の少し前に妻が死去し、工場を経営する実家で親族と同居していることが述べられるなど、作者の分身と推測される描写がある。厠に入っていたところを原爆の閃光に襲われるが、家屋が堅牢な造りであったため大きな傷もなく命拾いをする。被爆直後「遂に来たるべきものが来た」と「さばさばした気持」で事態を受け入れる一方、作家として「このことを書きのこさねばならない」と決意するが、その後、避難の過程で想像を絶する被爆の実相を目の当たりにすることとなる。 妹 被爆する直前、起床が遅い「私」に小言をこぼしていたが、被爆後、兄の様子を心配しまっさきに駆けつけてくる。避難してきた川岸で「私」と再会し被爆時のことを語り合う。 シャツ一枚の男 工場の従業員。被爆直後「私」の前に現れ、「電話をかけなきゃ」とつぶやきながらどこかに消える。突然の事態を前にかなり動転した様子が見られる。 K 工場の事務員。被爆直後「私」の前に現れ、足を負傷していた。どこに避難するか判断が付かないほど動転しており、「私」とともに家を脱出するが途中で行方不明となる。 長兄 実家の工場を経営しており、事務室で被爆したが脱出、動員学徒や近所の人を救い出すため奮闘したのち避難してきた川岸で「私」と再会する。その後、妻の疎開先である郊外の廿日市町に向かい、「私」と妹、次兄一家が郊外の八幡村に避難するための馬車を調達してくる。 次兄 実家から独立して家を構えており、妻との間には少なくとも4人の子供がいる。当日は帰宅していたところを妻や女中とともに被爆。家族たちを救い出したのち「私」と行動を共にする。被爆による顔の火傷は最初のうちはほとんど目立たなかったが…。 次兄の家の女中 次兄の子である赤ん坊を抱いている時に閃光に襲われ、顔と胸と手に重い火傷を負った。「私」に付き添われて東照宮前の施療所に行くが、大した治療を受けられないまま次第に衰弱し、しきりに水を求めるようになる。一月後、腕の傷が元で、敗血症を発症し死亡する。 姪 次兄の幼い長女。女中と一緒に避難するがはぐれてしまい、翌日、避難所となっていた東照宮で両親と再会する。首に負った火傷の痛みに泣き叫ぶ。 文彦 「私」の甥(次兄の子)。市内の学校に通学しておりそこで被爆死したと思われる。八幡村へ避難中の両親が西練兵場近くで遺体を発見する。次兄は遺品として彼の死体から爪とバンドを持ち去った。作品中、具体的な名前が記されている唯一の登場人物である。 中学生の甥 次兄の長男(?)。市内の中学に通学しており学校で被爆。軽傷だったため級友とともに学校を脱出し、数日後、八幡村の避難先にやってくる。そののち謎の病状を発し次第に衰弱していくが持ちこたえる。
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