サーカス (小説)とは? わかりやすく解説

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サーカス (小説)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/31 05:41 UTC 版)

サーカス』は、三島由紀夫短編小説掌編小説とみなされることもある[1]。団長がメインイベントとして仕込んだサーカスの花形的存在の少年少女の曲馬ペアが、パフォーマンスの只中で悲劇的な最期を遂げる物語。童話風の小品ながらも、愛と死(生を超えた愛)、「殺される王子」、「流竄の王子」といった三島的なモチーフが凝縮された短編で、入営即日帰郷となった頃や終戦期前後の三島の心境の様々が看取される一作である[2][3][4]。また、初稿から決定稿の異動過程に『仮面の告白』への前駆的方法論なども垣間見られる作品である[5][6]


注釈

  1. ^ 不採用となった初稿「サーカス」の代わりに、「エスガイの狩」が同年の『文藝』5・6月合併号(発行は8月下旬に遅延)に掲載された[7][12]
  2. ^ 創作ノートでは、〈R人〉のところが〈露助〉(ロシア人)となっている[14]
  3. ^ 未刊短編集はこの時点で未刊行の「煙草」「菖蒲前」「サーカス」「岬にての物語」「贋ドン・ファン記」の収録を見込んだものである[22]。〈佐藤先生〉の序文への御礼が記されており、佐藤春夫が序文を書いていたものと見られている[23]
  4. ^ 回覧学芸冊子『曼荼羅』創刊号には、林富士馬坊城俊民、三島由紀夫、太田菊雄、大塩麟太郎、麻生良方の作品を掲載予定であったが、予算上の事情により林の判断で64頁から8頁に割愛されたために三島の作品は載らなかった[32]
  5. ^ 『生活者』(1929年10月)に載った中原中也の詩は、1932年(昭和7年)に「サーカス」という題となった[21]
  6. ^ 加藤まさをの『消えゆく虹』は1929年(昭和4年)9月に大日本雄弁会講談社から刊行された[21]

出典

  1. ^ a b 田中美代子「〈三島由紀夫の遺したもの〉死の煌めき」(太陽 2010, pp. 142–145)
  2. ^ a b 小林和子「サーカス」(事典 2000, pp. 142–144)
  3. ^ a b c d 小埜 1997事典 2000, pp. 143–144
  4. ^ a b c d e 「6 『サーカス』と特攻隊――『サーカス』『昭和廿年八月の記念に』『重症者の兇器』」(田中 2006, pp. 44–48)
  5. ^ a b c d e f g h i j k l 井上隆史「新資料から推理する自決に至る精神の軌跡 今、三島を問い直す意味―『仮面の告白』再読―」(続・中条 2005, pp. 18–54)。「『仮面の告白』再読」として井上 2006, pp. 13–44に所収
  6. ^ a b c d e 裕也 2008中元 2009, p. 2
  7. ^ a b c d e f g h 「I 青春――『酸模』から『盗賊』へ――初恋」(村松 1990, pp. 53–77)
  8. ^ a b 「『サーカス』について」(平岡精二シックステットプログラム 1957年4月)。『現代小説は古典たり得るか』(新潮社、1957年9月)、29巻 2003, p. 505に所収
  9. ^ 井上隆史「作品目録――昭和23年」(42巻 2005, pp. 389–391)
  10. ^ a b c d e f 田中美代子「解題――サーカス」(16巻 2002, pp. 758–760)
  11. ^ a b c 山中剛史「著書目録――目次」(42巻 2005, pp. 540–561)
  12. ^ a b c d 野田宇太郎『灰の季節』(修道社、1958年5月)。事典 2000, p. 143、村松 1990, pp. 72ff、佐藤 2006, pp. 50–51、16巻 2002, p. 759
  13. ^ 久保田裕子「三島由紀夫翻訳書目」(事典 2000, pp. 695–729)
  14. ^ a b c d e 「『サーカス』創作ノート」(16巻 2002, pp. 659–680)
  15. ^ a b c 「第二章 戦時下の思春期」(年表 1990, pp. 31–52)
  16. ^ 「昭和20年1月-2月」(日録 1996, pp. 72–75)
  17. ^ 「第二章 戦中・戦後の苦闘」(佐藤 2006, pp. 39–72)
  18. ^ a b c 「解題――『サーカス』異稿」(20巻 2002, pp. 812–813)
  19. ^ 三谷信宛ての葉書」(昭和20年2月19日付)。三谷 1999, pp. 51–52、38巻 2004, pp. 910–911に所収
  20. ^ a b c d 「『サーカス』異稿」(20巻 2002, pp. 721–726)
  21. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r 中元 2009
  22. ^ a b c 「跋に代へて(未刊短編集)」(1946年夏に執筆)。26巻 2003, pp. 587–589に所収
  23. ^ a b 「解題――跋に代へて(未刊短編集)」(26巻 2003, p. 653)
  24. ^ 「八月十五日前後」(毎日新聞 1955年8月14日号)。28巻 2003, pp. 525–527に所収
  25. ^ a b c d e 「昭和廿年八月の記念に」(昭和20年8月19日付。新潮 1979年3月号)。26巻 2003, pp. 551–559に所収
  26. ^ a b 「終末感からの出発――昭和二十年の自画像」(新潮 1955年8月号)。28巻 2003, pp. 516–518に所収
  27. ^ 「I 青春――『酸模』から『盗賊』へ――恋の破局」(村松 1990, pp. 78–97)
  28. ^ 「作者の言葉(「仮面の告白」)」(1949年1月13日執筆)。付録として、復刻版『仮面の告白』(河出書房新社、1996年6月)に全文掲載。27巻 2003, pp. 176–177に所収
  29. ^ a b c 田中美代子「解題――仮面の告白」(1巻 2000, pp. 680–681)
  30. ^ a b c 「解説」(真夏・文庫 1996, pp. 289–294)。36巻 2003, pp. 202–207に所収
  31. ^ a b 「扮装狂」(1944年10月の回覧学芸冊子『曼荼羅』創刊号に掲載予定だった随筆)。没後30 2000, pp. 68–73に掲載。26巻 2003, pp. 445–453に所収
  32. ^ 田中美代子「解題――扮装狂」(26巻 2003, pp. 647–648)
  33. ^ 森晴雄「サーカス」(旧事典 1976, p. 165)
  34. ^ 渡部芳紀「三島由紀夫全作品解題」(『三島由紀夫必携』学燈社、1983年5月)。事典 2000, p. 143
  35. ^ 「会計日記」(昭和21年5月11日-昭和22年11月14日)。補巻 2005, pp. 508–630
  36. ^ 武井武雄の挿絵の数点は太陽 2010, pp. 144–145に掲載


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