ガラパゴス化 工業製品・規格のガラパゴス化

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ガラパゴス化

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/10/20 21:32 UTC 版)

工業製品・規格のガラパゴス化

パーソナルコンピュータ

1980年代後半の世界では、PC/AT互換機が業界標準として普及していたが、日本語表示の出来ないPC/AT互換機は日本ではほとんど売れず、日本では日本独自の機種であるPC-9800シリーズ日本電気、以下NEC)が日本国内で圧倒的シェアを占めており、X68000シャープ)・FM TOWNS富士通)など日本独自仕様のアーキテクチャを持ったパソコンが普及していた。これは日本語の表示データをハードウェアに組み込むことによって日本語の表示と入力の効率を高めるなど、日本独特のニーズに応える商品開発を行っていたからである。この結果、日本のパソコンは1990年代初頭にはPC/AT互換機との価格差が顕著となった。海外製のパソコンではソフトウェアのみで日本語の表示と入力(ソフトウェアIME)を実現したMacintoshも存在したが、ハードウェア(日本ではなぜかアメリカ以上に高値が付けられていた)や、日本語に対応したソフトウェアが高価であったことから普及は進まなかった。

ところが、1990年代に入るとDOS/VMicrosoft Windowsの登場により、PC/AT互換機においてもソフトウェアのみでの日本語表示が実現された。これにより、安価で高性能なPC/AT互換機が一気に日本市場に流れ込み、日本の市場を席巻する。逆に、WindowsはあくまでPC/AT互換機を基本に設計しているため、PC-9800シリーズでの対応は次第に困難となり、NECからもPC/AT互換機のPC98-NXシリーズが発表されるに及んで、PC-9801より続いた独自アーキテクチャは幕を引くことになった。

2010年代初頭の世界のパソコン市場では、ラップトップに強い東芝(後に同社のPC事業は子会社の東芝クライアントソリューションへ移管。dynabook(←DynaBook)。外国ではTecra、Portégé、EQUIUM、KIRAbook)がかろうじて5%のシェアを占め、ようやく5位のシェアを保っていた。なお、東芝は1980年代からIBM互換のノート型パソコンを製造しており、逆に日本規格が日本市場で寡占状態の時には日本でのシェアは少なかった。つまり、東芝というメーカーがガラパゴス化していなかったために2010年ごろまでの世界シェアがあったともいえる[11]。しかしながら、同社は、円高の進展とPCのコモディティ化に伴う低価格化と競争激化についていけず、その後、PC事業は赤字化した。2014年9月には、一般消費者向けのBtoC分野を大幅に縮小し、ビジネス向けのBtoB分野に注力する旨を発表した。[12]現在のパソコン市場は、コモディティ化が極度に進んだ結果、ほぼ中国を拠点とする企業で占められており、2015年1月のガートナーによる調査では、2014年度におけるPC世界出荷台数のトップ5は、LenovoHPDellAcerASUSとなっており(HP・Dellは米国資本、Acer・ASUSは台湾資本だがいずれもPC事業の拠点は中国本土である)、もはや東芝は、トップ5には含まれていない。[13]

携帯電話

日本における携帯電話

SoftBank 923SH。後に「ガラパゴスケータイ」(ガラケー)と呼ばれる超高機能携帯電話の例。日本でiPhoneが発売された2008年7月当時のフラッグシップモデルだった

日本における携帯電話は、その初期から世界最先端の独自技術を多く採用し、その性能や機能は世界最高水準であった。しかし、日本の携帯電話は海外市場ではほとんど売れず、その特異現象からガラパゴス化という用語が生まれその原因と将来的帰結が議論されるようになる。

まず、日本の携帯電話のガラパゴス化の背景として、携帯電話の普及と発展を奨励するため取られた産業政策があげられる。例えば、欧米の多くの国では携帯電話の通話に使われる周波数は国家がその使用権を競売にかけ、その収益を国の財源とする方式をとったが、日本においては携帯電話の通話に使う周波数を国が無償で携帯電話事業者に貸与する政策がとられた。海外の携帯電話事業者は周波数の獲得に何百億円もの費用を費やさねばならなかったため、そのぶん技術開発および価格戦略において日本に大いに遅れをとったが、このような費用負担のない日本の携帯電話事業者は、その浮いた費用を携帯電話網の設備更新や端末販売奨励金の原資に費やすことができ、日本では最先端の携帯規格や技術が世界に先駆けて普及し、通信事業各社が独自の規格を開発しその設置および普及につとめるという現象が起きた。

さらに日本においては、業界優遇政策の一環として携帯事業者による消費者の囲い込みが長らく許容されていた。独占禁止法や公正取引規制によって消費者の選択の自由を保護する政策を採用した国では、契約変更後も電話番号を変える必要がない[注釈 5]だけでなく、同じ通話契約のまま携帯電話のSIMカードを他の携帯電話に入れ替えて[注釈 6]使うなどの携帯電話端末および通話サービスの選択の自由があるほか、プリペイドなどの携帯サービスも充実していた。日本はこのように消費者の権益を守る法的整備を欠いたため、携帯電話事業者がキャリアメール、SIMロック端末、独自コンテンツサービス、携帯契約などの様々な障壁を積み重ねることによって消費者を強固に囲い込むことが可能であり、結果として既存顧客の流動性が極端に低い状態におちいった。

このような背景のもと、それぞれの通話業者は顧客一人からの月間収入(ARPU)を上げて利益を上げるため高度で多機能なサービスを提供する一方で、ARPUの低いプリペイドサービスなどは廃止もしくは縮小されていく。さらに通信事業者が消費者を強力に囲い込んでいるため、携帯電話メーカーが通信事業者に従属するという状態の中で、メーカーは携帯電話事業者の要望に沿い、多機能だが世界的には類を見ず、かつ商品寿命の短い一社専用ハイエンド携帯電話に重点をおいて開発することとなり、日本国内の電話仕様は、世界的な標準とは大幅に乖離していく。一方で、海外では周波数獲得に膨大な費用がかかることや、消費者の流動性が極めて高い状態にあったなどの事情から、設備投資と開発費を節約するため通信の規格統一がいち早く行われる。特に通話品質などでは劣るが比較的にコストが安価であるGSM陣営側では、通信基本仕様は、GSMでGCF(グローバル・サーテフィケーション・フォーラム)をパスする、データ仕様はOMA(オープンモバイルアライアンス)仕様準拠というのがスタンダードで、その標準仕様からそれぞれの事業者に応じたカスタマイズが可能であったため、短期間でGSMは事実上の世界標準となる。しかし日本は独自のPDC方式による独自の端末やサービスが普及していたことで、海外の携帯電話機メーカーと携帯電話事業者の日本進出を阻むとともに、日本の携帯電話機メーカーにとっても世界進出が困難となっていた。このような世界市場との隔絶および日本市場の規模の小ささ(年間4,000万台程度の端末需要を事業者が更に分割して専用電話の開発が必要)から、モトローラ、ノキア、ボーダフォンといったグローバル市場を重要視する企業では、日本から撤退する動きが続き、そのことが一層ガラパゴス化の進展を促進した。

韓国における携帯電話

韓国では、2.5世代と定義されるアメリカのクアルコム (Qualcomm)社のcdmaOne (IS-95)という方式を全面的に採用して孤立状態から脱却したのを契機に、サムスン電子LG電子などが北米市場の参入に成功し現在の成功のもととなった。さらに、3Gの時代になって、日本と諸外国で共通のエアインタフェースが使われるようになっても日本メーカーの世界進出は極めて不振であり、デンソー三菱電機パナソニック東芝(後に同社の携帯電話事業は富士通東芝モバイルコミュニケーションズを経て富士通モバイルコミュニケーションズへ移管)、NEC、カシオ計算機などは撤退に追い込まれた[14]。日本は韓国に比べておおよそ2倍強の市場規模であったが、これが裏目に出た。

携帯電話等の通信規格競争

携帯電話の通信規格の分野においては、アナログ方式である1Gでは各国独自の規格が展開されていたが、日本国内において2G以降、日本独自規格であるPDCに対し米国独自規格のcdmaOneが流入し競争となった。また同時期、世界でのデファクト(欧州におけるデジュリ)はGSMであった。3G以降はIMT-2000として国際規格化(真のデジュリ)化が図られ、日本独自規格はほぼ一掃された。

3GにおいてはW-CDMAが世界でデファクト化したが、これは欧州の携帯電話事業者と日本のNTTドコモが主導した規格である。米国由来のCDMA2000と派生規格は日本国内でも3.5Gまでは採用されたが、3.9G以降は方式に差異こそあれLTEにほぼ収斂した。

簡易携帯電話としてスタートしたPHS(公衆モード)も日本独自規格であり、高度化PHS、次世代PHS(XGP:eXtended Global Platform)、AXGPと独自の進化を遂げたが、PHS(公衆モード)が中国、台湾で一部普及しただけであり(いずれもサービス終了)、日本でもPHS(公衆モード)および高度化PHSが2018年3月で新規契約受付終了となり[15]、XGPはITU-R M.1801に採用されたがほとんど普及せず、AXGPのみがSotfbank 4Gとして継続している。

なお、無線アクセス分野では国際規格のモバイルWiMAX(および後継規格)が主流である。PHS、高度化PHSにおいてもモバイルデータ通信定額制等、無線アクセス的サービスも提供されていた。

スマートフォンの躍進

前述のように日本の携帯電話におけるインターネット接続サービスは、携帯電話では世界初となる「iモード」や競合事業者の類似サービスにより、フィーチャー・フォン上にて独自仕様として提供されていたが、スマートフォンの流入により終焉を迎える事になる。

2007年6月に、アップル社がAppストアによるアプリケーション市場の開放によって、スマートフォンを再定義したiPhoneで、まず北米で携帯電話市場に参入した。アップル社は、単に携帯電話市場に参入しただけではなく、iPhoneの持つ圧倒的な商品力を背景に、携帯電話産業の産業構造を変えることに成功した。すなわち、リベニュー・シェアリングモデル、携帯電話仕様決定権の事業者からの完全奪取、Appマーケットでのビリングおよび機器アクティベーションのアップル社管理などに代表される、従来のビジネス慣行の完全な書き換えである。このiPhone第一世代モデルは、GSMサポートのみであったため、日本への影響はほぼ皆無であった。しかし、2008年7月に第二世代モデルであるiPhone 3Gが世界同時発売され、日本においてもソフトバンクモバイル(現・ソフトバンク(新))によるSIMロック付きでの独占販売がはじまると、iPhoneの普及が始まった[注釈 7]。アップル社は日本国内の出荷数を公表していないが、市場調査会社MM総研によれば、2008年7月から2010年3月まででiPhone 3GとiPhone 3GSを合わせた累計出荷数は約230万台であった。アップル社は、ソフトバンクモバイルに対しても同じくビジネスモデルの書き換えを要求し、実現させた。

2008年10月に、Googleが開発するAndroidプラットフォームによる最初の携帯電話、T-Mobile G1(HTC製)がアメリカ合衆国で発表された。日本では、ドコモよりHT-03AHTC Magicのドコモ版)が2009年7月より発売されたが、この携帯電話はNTTドコモ独自の仕様を満たしておらず、逆に、NTTドコモはガラパゴス色の抜けた新サービス体系であるspモードを導入する必要があった。Androidはオープンソースであったため、携帯電話メーカーの参入が続き、外来的なAndroid携帯電話が、その後ソフトバンクモバイルとNTTドコモより多数発売された。これらの外来的Android携帯電話の多くは、特定のキャリアのみに通用するような特殊仕様がほとんど除かれている。最後まで残ったKDDI沖縄セルラー電話連合(各au)も、同キャリアのみの仕様を搭載させることのできる国内メーカーの協力により2010年11月26日に発売されたIS03(CDMA SHI03・シャープ製)で、ようやくスマートフォンを導入した。

三大事業者からスマートフォンが販売されるに及んで、従来の国内一社専用モデルの多機能携帯電話(ガラパゴスケータイ。以下ガラケー)からスマートフォンへの需要のシフトは、より鮮明となった。MM総研による2010年度の国内携帯電話出荷台数推計では、スマートフォンは総計855万台で、前年比3.7倍、シェアは22.7%であった。[16]同社では2011年度について、国内スマートフォン出荷台数総数は1986万台で、携帯電話出荷総数4050万台に対し49.0%の比率を占めると予測している。さらに2015年度には、スマートフォン比率が、実に74%になるとも予測している[17]

しかし、スマートフォンが主流になった現在においても本質的な意味でのガラケー需要はなくなっているとは言えない。実際、近年ではスマホにガラケーの特徴を取り入れたガラパゴススマートフォン(ガラスマ)いうカテゴリーも出現(逆の意味として「グローバルスマートフォン」がある)しており、スマホ登場時には搭載されていなかった(ガラケーに搭載されていた)各種ガジェット類(おサイフケータイ)が実装されている。またスマホの抱える問題(バッテリーの持ちや維持費、タッチパネルへの抵抗感など)から、ガラケーの需要は依然として根強く残っており[18]、細々とではあるが、各社ともラインナップを残している。

一方、ガラケーの長所はそのままに、Androidを搭載し、4G LTE、WiFi、テザリングにも対応する(ただし、WiFiとテザリングの対応に関しては一部機種に限り例外あり)など、スマホ特有とされていた機能を取り込んだ「ガラホ」も登場している[19]

Android

Googleが中心となって開発が進められているAndroidを搭載した携帯端末(スマートフォンタブレットなど)が近年多くのメーカーから発売されているが、端末の製造メーカー側では多くの場合Androidをベースに独自にカスタマイズを加える。ただ、最近は特に中国メーカーを中心に、他メーカーのAndroid端末と互換性がない独自実装を行うケースが増えており、中には「Google Play」などGoogleがAndroid向けに提供する各種サービスに未対応の端末も少なくないため、この点でガラパゴス化が懸念されている[20]

NOTTVは2016年6月30日にサービス終了、撤退したが、Android端末を「ガラパゴススマートフォン」化する事によりNOTTV対応端末としていたため、NTTドコモiPhoneに参入すると、不便な外付け端末併用を強いるほかなく、契約数が伸び悩み撤退に繋がったと言う。これはNOTTVそのものがガラパゴス化したと言うよりはむしろ、サービスの要素の一部をスマートフォンに依存していた事が主因。[21]

iPhoneの逆ガラパゴス化

2013年時点で、スマートフォンの世界市場におけるシェアはAndroidがiPhoneの約5倍となっている。その一方で、日本国内市場でのシェア差は、AndroidがiPhoneの約2倍程度にとどまっている[22]

また、2016年、Apple Payの日本国内展開において、アップルはFeliCaと言う日本国内のガラパゴス規格を採用した事により、国際規格(ISO/IEC 14443)をベースとするVisa payWaveAmerican Express Contactlessなどの採用を見送っている(非接触ICカードも参照)。Apple Payで対応できるクレジットカードは、国内イシュアのものの一部に限定されている(国際ブランドによる限定がある訳ではない)。[23]

PHS

携帯電話のように使える公衆PHSおよび固定回線電話機のコードレス子機として使える自営PHSとして日本独自規格のPHSが展開された。しかし家庭用電話機の子機としてのPHSの利用は縮小し、2.4GHz帯デジタルコードレス電話や、デジタルコードレス電話の新方式として、ヨーロッパの方式であるDECTや、3.9G携帯電話の一種TD-LTEの利用が進行中ないし計画中である。ただし、DECTやLTE方式の場合については、PHS向けの電波帯域を共用することから、日本向けの電波規制に対応すべく、一部改修された日本国内規格に則っており、日本国外の機器がそのまま利用できる訳ではない。[24][25][26]

親指シフトキーボード

1980年代、日本語ワードプロセッサーが家電メーカーから多数発売されたが、富士通は、自社のOASYSシリーズにおいて、JISキーボードのほかに、親指シフトキーボード、とよばれる独自のキー配列のモデルを投入した。ただし、国際的にはシフトキーを小指で押す習慣が多かったため親指シフトがすたれた。

デジタルテレビ放送

世界的にはDVBの採用国が多い。

日本のデジタルテレビの規格であるISDBは2010年現在、ブラジルペルーアルゼンチンチリベネズエラなど南米大陸で採用をふやしているほか[27][28]、アジアでもフィリピンで採用がきまり、国際的にみると順調に普及している。しかし、普及しているのは、映像のコーデックにH.264を採用するなど改良をくわえた、ブラジルから採用されたISDB-TBであり、衛星放送向けのISDB-S、地上デジタルテレビ向けのISDB-Tは事実上日本だけの規格となっている。

また日本の地上デジタルテレビ放送が限定受信システム(CAS)として採用しているB-CAS地上RMP方式は完全に日本独自の規格である。このため日本国外のメーカーが日本国内でテレビを販売することが非常に難しくなっており、非関税障壁の一種であるとこれらのCAS方式を糾弾する評論家もいる[29]

諸外国ではケーブルテレビセットトップボックスを通じてテレビをみることが一般的なため、テレビはモニターとしての性格が強く、日本のデジタルテレビのような高機能は必要とされていないため、同じ解像度でも日本市場価格の半額の機種が多い[30]

デジタルラジオ放送

海外でもガラパゴス化が発生するケースがあり、その典型例がデジタルラジオである。

日本はi-dioを推進しようという思惑があったが、市販端末が国内すべての家電店から姿を消し、携帯アプリもインストール率が低く苦戦を強いられている。結局、パーソナリティやプログラムすらまともに計画ができないので、空白時間はFMラジオのサイマル放送にしている局が多い。

海外デジタルラジオも諸規格が乱立[31]し、さらに端末が高額化したおかげで、リスナー数の確保には至っていない。ノルウェーは国営ラジオのみFMを全廃[32]したものの、地方ラジオはまだFM波の送信を続けており、電波塔の前で抗議の横断幕が掲げられ国民の不満は解消されていない。その一方でSangeanは高額端末の新モデル[33]を次から次へと投入しており、富裕層の趣味として細々と生き残っている。

カーナビゲーションシステム

日本は名前のない道路が多く、住所の記述から場所が明確に特定できないだけでなく、道路が狭く入り組んでおり、トンネルも多く高速道路が有料なためカーナビのニーズが高い。これを背景に日本が世界に先駆けてカーナビを商品化した。またこのような高いニーズを背景に日本では高価(数十万円)で高機能なインダッシュ型のカーナビゲーションシステムが圧倒的なシェアを近年まで保持しており、どのメーカーも国内市場に合わせてそのような商品開発に終始していた。

一方の欧米は全ての道に個別の名前や番号(wストリート、xアヴェニュー、yドライブ、zロード等、日本語では「**通り」「n番街」「**(番)道路」となる)が付いており、それぞれの住所はその道の東西南北の何番目という形で記述されている。さらに全ての家には日本の様な表札の代りに住所の番号が表示されている。市販の地図の索引にはどれどれの道は地図の何ページのどの区分にあると記述されているので、住所さえ分かれば確実に全ての住居や建物の正確な位置を特定できる。よって、普通の道路地図があればほとんどの場合はこと足りる[34]。北米はともかくヨーロッパでは道の入り組んだ古い町並みが存在するため、カーナビの用途は(地図を引く手間が省けるという程度)存在したが、日本の何十万円もする高価なカーナビは一部の高級車のオプションとしてしか普及しなかった。

2000年5月、米国国防総省GPS上のSA(Selective Availability、精度劣化措置)を停止。これにより、GPS単独での位置精度がそれまでの100m程度から10m程度へと飛躍的に向上した。これによってヨーロッパ市場では2005年ごろから、ガーミン、TomTomといったメーカーにより、GPSによる場所の特定と道順の指示だけで、トンネルに入ると機能しなくなると言った簡易的な機能を持つ、数万円程度のポータブルナビ(PND)が登場する。本体が小型軽量であり、自動車のダッシュボードへの取付け・取外しが容易にでき、持ち運びがしやすい。さらに、自動車に限らず自転車や歩行時にもナビ装置としての利用が可能である。まずヨーロッパで市場普及が進み、その後北米にも展開した[35]

結果として、高価で持ち運びのできない高級車のオプションとしての機器の普及に執着したほとんどの日本メーカーは、日本以外の市場においてはオプションとしてインダッシュ型も全く売れなくなり、世界市場の足がかりを失い、国内市場に封じ込められる状況となった[36]

さらに日本国内でも低価格PNDの流入や、国内メーカーの参入が相次ぎ、これまでの高級・高機能カーナビの市場を蚕食している。

さらに追い打ちをかけるように、携帯電話の市場では2010年代頃に入り、GPSや慣性航法センサ類を搭載した高機能なスマートフォンが席巻するとともに、Google マップ(無料提供)を代表格とする、簡易型カーナビを含めた統合ナビゲーションアプリが普及し、ビッグデータ分析による道路渋滞情報の提供と併せたルート検索機能が提供されている。

ポータブルナビ(PND)の流入や、スマートフォンによるカーナビの代替による市場蚕食により、従来の高級・高機能カーナビ市場はますますガラパゴス化の度合いを強めており、カーナビ専用機市場の今後の見通しが不透明さを増している[37][38]

道路交通情報通信システム

前述のカーナビゲーションシステムと連携し交通情報を提供するシステム、道路交通情報通信システム (VICS) についてもガラパゴス化が指摘されている[39]。FM多重放送や、路側設置の光ビーコン、果てはDSRCによるETC2.0など、官民一体となって日本独自の交通情報提供システムを構築しているが、多言語化を想定してないことや、世界的には交通情報提供におけるフォーマットはTPEG英語版などがあり、マルチメディア放送との絡みにおいて、互換性がない一連のVICSの方式はやはりガラパゴス化が予想されている[39]

非接触ICカード

急拡大を続ける日本の非接触ICカード(特に電子マネー)市場であるが、非接触ICカードによる電子マネーを運営する日本の会社の大半がFeliCaを採用している。しかしFeliCaは近距離無線通信 (NFC) の国際標準規格であるISO/IEC 14443(特にその中でも普及率の高いType A)と直接的な互換性を持たないため、ガラパゴス化が懸念されている[9][40]

FeliCaは性能面でも、日本のラッシュ時自動改札で乗客が滞留しないこと、複雑な連絡運輸にも対応し瞬時に料金が計算できることなど高い性能を持つが、逆に日本以外ではそこまでの高い性能は要求されないことが大半で、欧米ではバリューエンジニアリングの観点から過剰性能とみなされていることも指摘されている[41]

その結果、日本ではFeliCaとISO/IEC 14443 Type Aに対応させると予想されているのに対して、諸外国ではType Aしか対応しないとの主張がある[42]。実際ポストペイの世界では、MasterCard陣営が当初よりType AベースのPayPassを展開している他、VISA陣営も当初FelicaベースのVisa Touchを採用したものの、後の世界展開ではType AベースのVisa payWaveに乗り換えるなど、Type Aベースの決済が世界的に主流となっている。

しかしながら、FeliCaやISO/IEC 14443に対して上位互換となる国際標準規格としてISO/IEC 18092が制定されており、FeliCa自体も国際標準規格との互換性を獲得していることから、この懸念は杞憂との見方も一部にある(さらにその後ISO/IEC 21481へと発展)。

ゲームソフト

日本のゲーム業界はアーケードゲームで培ったノウハウを先駆けに、その後に任天堂が家庭用ゲーム機で世界を席巻し、一時期は世界のゲーム市場をほとんど牛耳るほどの勢いであった。しかし最近では日本のゲーム業界の停滞と行き詰まりが囁かれ、この理由の一つに日本のゲーム市場の特異性として、欧米ではリアルな戦争を描いたファーストパーソンシューティング(FPS)と呼ばれるタイプのゲームがヒットするが、日本ではアニメやマンガに近い世界観を描くロールプレイングゲーム(RPG)などが人気なことが挙げられている。いまだに日本はゲームの輸出大国であるが、一部では日本のゲームのガラパゴス化が危惧されている[43][44]。また、アニメや漫画などと同様、内輪受けに特化した「萌え」描写が、海外においてはポルノまがいの表現として捉えられ、性表現規制の対象となることがある。海外では過激な性描写のため発売中止となったゲームもある[注釈 8]

また、操作が「Aボタン、Bボタン、十字キー」のファミリーコンピュータや派生形のプレイステーションで根強いため、キーボードやマウスを使うエレクトロニック・スポーツが日本では主流にならない。

音楽業界

吹奏楽

新聞社が作品を公募して賞を授け、その作品を一年間にわたって全国の中学高校で演奏するという伝統を保持しているのは日本のみの現象である。近年は日本人の吹奏楽の国際コンクール受賞者も出現するなどガラパゴス化は創作の分野では脱しつつある[45]。しかし演奏分野においてはダブルリード族の楽器は諸外国に比べて非常に少なく、チェロとコントラバスセクションを両方有する作品やバリトンホーンとユーフォニアムセクションを両方有する作品が日本の中学と高校では一切コンクールで演奏できない。このため、チェロやバリトンホーンを持つ吹奏楽の名作は一切日本の業界で歓迎されないばかりか、マウリツィオ・ビッリ、フランチェスコ・サカレス・フォルト、キャロリン・ブリマーのような吹奏楽のマエストロの作品がかかる機会がほとんどない。サカレス・フォルトの作品が公的に世界初演されたのは日本では一回だけ[46]である。


  1. ^ なお当初から国際規格(または欧州など有力なブロック内規格)として制定、運用される場合にはデジュリスタンダードと言う。この文脈で表現する場合には以下、「」付きの『「デファクト」』として記述する。
  2. ^ 実際スズキ・ダイハツ主要車種の多く(アルト、ワゴンR、MRワゴン、ジムニー、キャリイ/エブリイ、ミラ、ムーヴ、ハイゼットなど)は輸出や現地ブランド(デーヴ国民車(現:韓国GM)マルチプロドゥアアジア(キアに吸収)等)による海外生産の実績がある。
  3. ^ 端的な例に餃子の王将の中国進出がある。餃子の王将のメニューは中国人が外食で食すということはほぼあり得ないにもかかわらず、中国進出を決行して頓挫した。
  4. ^ それまでも輸出仕様車には1600ccを設定していたが、韓国は課税額が変わる基準が日本と同じく500cc刻みであるため内需向けには1600ccよりも税金が1ランク低くなる1500cc車の需要があり、メーカー各社はそれぞれのエンジンを作る必要があった。それが1600ccに引き上げられたことにより必要がなくなった。
  5. ^ 日本でのMNPの導入は2006年10月。
  6. ^ キャリアのロックを解除するサービスが日本と違い合法で安価に存在する。SIMロックが諸外国にないということはない。
  7. ^ Apple社は世界での総数は発表しているが国別の出荷数は発表していない。日本のJAITAの統計は海外メーカーの出荷数を含んでいない。
  8. ^ ぎゃる☆がん』など。
  9. ^ ボディサイズはほぼ5ナンバー枠に収まっているが、その排気量の大きさのため実際には3ナンバーである。
  10. ^ 1970年代の死亡事故増加に対処するため、道路交通法を所管する警察庁交通局がとった措置による。


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