複数の民事訴訟における敗訴と損害賠償金額30億円以上の未払い
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「西村博之」の記事における「複数の民事訴訟における敗訴と損害賠償金額30億円以上の未払い」の解説
ひろゆきは2ちゃんねるに関連する多数の民事訴訟と多額の賠償債務を抱えている。本人曰く「2日に1回ほど東京地裁に行くという生活を約5年」「1日に3回の裁判を受けるトリプルヘッダーもやった」と語るなど、当初は裁判に対応していたが、全国各地で起こされた民事訴訟を東京地裁に移送する申請が全て却下され、2003年7月には自身発行のメールマガジンの記載にもとづき起こされたDHCによる名誉毀損裁判で敗訴し、途中から被告としての主義主張を展開せず、法廷徹底無視の姿勢を貫くようになった。それにより原告の主張がほぼ認められる欠席裁判となり、その多くで管理責任を問われる判決を受けている(=敗訴)。 ひろゆきは自身の立場について「あくまで自分は匿名掲示板の管理人に過ぎず、犯罪の責任は書き込みを行った本人にある」「投稿を消すかどうかは法が決めるべきで、一介のユーザーやら管理人やらが決めるべきではない」と主張しており、賠償金を踏み倒す理由については次のように述べている。 僕は沖縄から北海道まで訴えられているので、自腹で日本中を回るか、1件100万円以上払って弁護士をつけるかなんです。でも「(裁判を)やらない」という選択肢をとったら何も起きなかった。これが現状。勝とうが負けようが、払わなければ一緒なんですよ。もし僕に金を払わせたいなら、国会議員に言って、そういう法律を作ればいい。 — 早稲田祭2006「2ch管理人ひろゆき キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!〜2ちゃんねるから見た情報社会〜」(2006年11月4日) 僕は、2ちゃんねるに関連する多くの裁判を抱えています。ですが、そのすべてに出席することはできません。(中略)僕は以前、大阪で起きた裁判に出席できないので、東京地裁に移管するように申請を出したのですが、却下されました。また東京と沖縄で、同じ日に裁判が行われることもあり、そもそも全部に出席するのが不可能なのです。物理的に出席できなかった場合でも、自動的に敗訴になり、賠償金支払い命令が出るというのが、現在の民事訴訟なのです。処理できない量の訴訟を起こしてしまえば、自動的に賠償金が認められてしまうというルールなのです。変なルールだとは思うのですが、そういったルールがある以上、従うしかないわけです。 そして変なルールだと思うものの中に、「賠償金に関しては支払わなくても刑事罰が発生することはない」というものがあります。変なルールだとは思うものの、僕はルールの上で決まった結果に対して、ルールの上で認められた行為をしているわけです。 自動的に敗訴という仕組みも、賠償金を払わなくていいという仕組みも、ルールとしては問題があると思うのですが、悪法も法という言葉があるように、とりあえずは決められたルールの中で、対処するしかないのです。 — ひろゆき『2ちゃんねるはなぜ潰れないのか?』扶桑社新書, 2007年6月, pp.132-133 また、ひろゆきは掲示板という場を提供しただけの管理人に責任が追求されることを、Winny事件を例に挙げて次のように述べている。 2002年、東大で助手をしていた金子勇さんによって、無料ファイル共有ソフトの「Winny」が開発された。そこで用いられた「P2P」という技術は、仮想通貨の基となるブロックチェーン技術を生み出し、これからの社会を築く基盤となっている。しかし、一部のユーザーがWinnyで不正ファイルをやりとりしていたことで、なぜか、開発者である金子さんが逮捕されてしまった。管理している人がいなくなったことで、ますますWinnyは無法地帯となってしまったのだ。その後、裁判所は「違法行為を助長するために作ったものではない」と判決を出し、無罪が確定したが、金子さんは開発に戻ることなく、2013年に心筋梗塞で亡くなってしまった。たとえば、包丁を使った殺傷事件が起きたとする。そのとき、「包丁が悪い」「包丁をなくせ」と言う人はいない。 2000年代のインターネットのように、新しい技術が生まれると、社会の理解が追いつかず、「Winnyが悪い」「2ちゃんねるをなくせ」と言い出す人が現れる。包丁くらいに生活に浸透してしまえば潰されないのだが、中途半端に出てしまった杭は打たれてしまう。ただ、それは新しい技術の誕生の可能性を潰してしまうことになりかねない。 — 西村博之『1%の努力』エピソード3「なくなったら困るもの――『ニーズと価値』の話」より抜粋 ちなみにアメリカでは、ほぼ無制限の言論の自由を認めた通信品位法230条(プロバイダ免責)の規定に基づき、プラットフォーム管理者は第三者の発言に対して原則的に責任を負わない。そのため4chanの前管理人で米国版ひろゆきことmootは、ひろゆきのような民事訴訟は起こされなかった。 毎日新聞によると2006年12月時点で賠償額は総額4000〜5000万円ほど。ただし、ひろゆきの年収は1億円以上あり、支払能力の有無に関わらず払う気はなく時効まで放置するつもりであると見られている。また時効成立のころには「飽きて別のことをやってるかも」とも語っている。 板倉宏・日本大学大学院教授によると、裁判所の強制執行があれば賠償金は回収できるが、被告の資産を調べるのは原告がしなければならない。訴訟を担当してひろゆきの資産を回収しようとした弁護士は「(ひろゆきの自宅マンションにあったのは)生活必需品ばかりで差し押さえができなかった」「収入が入る金融機関の口座を突き止めることができなかった」ことを明かしている。なお、ひろゆきは「10年たつと時効だから(賠償金が)ゼロになる。払うよりも逃げ切った方が得」「お金はあるけど(相手が)ここにあるぞと分からない限り取れない。不動産やマンションを持っていたら取られるけど、そういうのは持っていない」と述べている。 2007年1月12日、ひろゆきに対して約500万円の債権を持つ東京都の男性会社員が「制裁金が累積500万円に達するもなお放置しており債務不履行である」として東京地裁に対し、2ch.netのドメインを含むひろゆきの全財産を仮差押えする申請を行なった。これを夕刊フジが「2ちゃんねる停止」と大々的に報じたため、ひろゆきは「2ch閉鎖って書くとまた、新聞が売れるということじゃないかと。狼少年の寓話を彷彿とさせますよね。よい子の皆さんは真似しないでね」と反論し話題となった。この閉鎖騒動により2chトップページの壺に「賠償金滞納処分差押物件」という赤札が表示され、ニュース速報板では名無しさんの名前が「〜が差し押さえられそうです」となり、ニュース速報VIP板でも名無しさんの名前が「閉鎖まであと ○○日 ○○時間」となった。さらにスレッドストッパーは「赤羽地方裁判所」(当然実在しない)となり、本文が「差し押さえました」となった。 2007年1月29日、元2ch.net副管理人の「切込隊長」こと山本一郎が起こした、ひろゆきに対する名誉毀損裁判に珍しく出廷した。ひろゆきは「基本的には出ない(注:「出廷しない」の意)のですが、今回は知り合いなので、面白いかなと思ったんです。原告がどんな顔をしてくるのか知りたかったんです」とコメントしている。口頭弁論は2007年9月までに5回行われ、そのなかで山本がひろゆきに対し「ハゲ」と投稿したことについてひろゆきが言及した。2008年2月、ひろゆきの敗訴に終わる。過去ログ削除と80万円の支払い命令(請求200万円)。 2007年2月、ひろゆきが経営する会社と彼自身に課された税金(所得税と法人税)の一部が滞納され続けていることを受け、東京国税局査察部が調査を開始したと夕刊フジが報じる。翌3月には読売新聞で“債務4億円、50件以上民事で提訴され43件で敗訴確定”と報じられた。また、3月20日には賠償金の債務が約5億円に上ると報道され、質問を受けた報道陣に対し「支払わなければ死刑になるのなら支払うが、支払わなくてもどうということはないので支払わない」「踏み倒そうとしたら支払わなくても済む。そんな国の変なルールに基づいて支払うのは、ばかばかしい」と、支払いの意思がないことを明らかにした。なお、当時の制裁金は1日あたり88万円で、2009年時点の賠償金は単純計算で10億円以上に膨らんでいることになる。 2010年1月、2ちゃんねるのスレッドを基にした書籍『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』(ISBN 978-4104715213)の印税が新潮社からひろゆきに支払われていることに着目し、印税を差し押さえることで初めて損害賠償金が回収される。 その後、プロバイダ責任制限法などインターネット上の法制度整備が進んだこと、通報による書き込みの削除に掲示板が積極的に取り組んだこと、ひろゆきが2ch.netの管理人を退いたこともあって、新たに裁判を起こされることはなくなっていった。しかし、賠償金は延滞により膨らみ続けており、最終的な賠償債務は本人すら全体像を把握していないというが、推定30億円ほどになったという。 2017年5月、AbemaTVのバラエティ番組に出演時、「(損害賠償請求に従わない場合は)1日5万円払えっていう判決が出たりするんですよ。面倒くさいから放っておくと、1日5万円がすごい増えるんですよ。それが何件もあるから、累積で30億はいったと思うんですけど、ただ10年たつと時効だからゼロになるんですよ」と告白し、すべての時効が成立したと述べている。 2022年3月、弁護士の北村晴男はひろゆきの賠償金踏み倒しについて「民事裁判で賠償金支払いの命令を無視されている場合、強制執行という手続きが必要になる。いくら相手がお金持ちだとわかっていても『どこに資産があるかわからない』状態だと差し押さえができない」「2015年からフランス・パリに移住しており、現地の資産を差し押さえることも不可能ではないが、フランスの弁護士に依頼し、現地の裁判所で承認を得る必要があるなど手続きが複雑で、費用も日本よりはるかに高額になる」「ひろゆき氏が賠償金を一銭も払っていないのだとすれば、海外での資産差し押さえの手続きが『よくわからない』『費用がかかりすぎる』といった理由で(債権者側が)『だからやらない』ということになっていたのかも」「テレビの出演料がどこから(テレビ局や制作会社など)支払われているかを特定するといった手段でギャラを差し押さえることなどは可能」と解説している。 一連の報道についてジャーナリストの渡邉正裕は「11億円(当時)の債務踏み倒しを公言しつつ、役員としてニコニコ動画を手掛け、本も出し、雑誌に連載もやって、と活発に仕事をする神経の図太さは、なかなかマネできない。著書によると何事もロジカルに考え徹底的に調べるというから、現在の法体系では支払わなくとも問題ないことを確認済みということだろう」と述べている。また、バトルウォッチャーの哭きの竜も次のように語っている。 あの時のあめぞうさんでは能力的に巨大掲示板を維持することができなかった。ひろゆきは行動力と無責任さでそれをクリアした。巨大匿名掲示板には非常に高い訴訟リスクがある。ひろゆきはこの問題を出廷せずに敗訴し、損害賠償を踏み倒すという荒業でクリアしている。まず、この荒業は企業には絶対にできない。訴訟リスクが大きすぎるのだ。2chの運営には裁判に負けても損害賠償を払わないで、ぜんぜん平気でいられる特殊な資質が必要になる。また、かなり怖い人や危ない人から脅されても平然としていられる図太さも必要だ。要するに数億円規模の巨大な訴訟リスクをたったひとりで背負いこめる資質である。あれだけの度胸と才覚があって、かつ巨大匿名掲示板の管理人になるひろゆきは稀有の人材であり、変わり者であるとわたしは確信している。西村博之みたいな男が日本に二人もいたら大変であろう、両津勘吉が二人いる様なモノである。
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