複数の漢字の結合と派生
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/08 04:39 UTC 版)
詳細は「熟語 (漢字)#熟語の形態論」を参照 日本語において「鉄棒」「思想」のように複数の漢字が連結して、それが一つの語彙単位として数えられる場合、「漢熟語」あるいは単に「熟語」と総称する。形態論においては、複数の単語(単純語)が複合した語を「複合語」と称するが、すべての漢熟語が、明確に複数の単語に分解できるとは言いがたい。先に例として挙げた語の場合、「鉄棒」の語は、明らかに「鉄(てつ)」と「棒(ぼう)」という二つの単語の複合とみなすことができる一方で、「思想」の語を構成する「思(し)」「想(そう)」は、通常一つの単語として存在することができない。「白馬(はくば)」「飲酒(いんしゅ)」などの語は、漢語や漢文の知識が多少あれば、それぞれ「しろいうま」「さけをのむ」と解することは容易であるが、やはり「白(はく)」「馬(ば)」「飲(いん)」「酒(しゅ)」が日本語文の中で一つの語として安定しにくい以上、複合語の形態として特殊である。 殊に漢語を構成する漢字の字音(いわゆる「音読み」)は、音節が短く、単独で意味を弁別する機能が低い。このため漢語は、漢字2字で初めて安定し、二字熟語を成すことが多い。一般的に用いられている漢字は、数千の単位で存在するため、考えられる二つの漢字の組み合わせは、理論上は天文学的な数になるであろう。しかし実際は、2字の組み合わせ方は、ある程度固定的であり、様々な概念をまかなうには限界がある。 一方で、既存の二字熟語にある種の漢字を接辞として付加させることによって、語彙を派生させるのは比較的容易である。例えば、「超大国」「表面化」という語は、それぞれ「超 - 」という接頭辞、「 - 化」という接尾辞を、既存の二字熟語に付加させた語構成となっている。また、意味が漠然とした漢字1字に、二字熟語を複合させることによって意味を補完することもある。例として「材」に「緩衝」を複合した「緩衝材」、「像」に「自画」を複合した「自画像」などが挙がる。実際、三字熟語の大部分は、このような二字熟語の派生や複合によって発生したものである。漢字の専門家である加納喜光は、「虚無感」「焼却炉」のような使用頻度の高い語でさえ、多くの国語辞書に掲載されていないことを指摘し、その理由として「既存の語の単なる派生や複合であり、意味が明瞭であること」「数が非常に多く、採用してはきりがないこと」などを挙げている。 さらに国語学者の野村雅昭は、「国際」「積極」といった、通例「 - 的」などの接辞を伴う語を例として挙げ、三字以上で初めて自立した語として安定する漢語の存在を指摘している。
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