あま‐ちゃ【甘茶】
あまちゃ (甘茶)
甘茶
甘茶
甘茶
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/04/07 16:26 UTC 版)
甘茶(あまちゃ)は、アジサイ科[1][注釈 1]の落葉低木(ヤマアジサイの変種[1])であるアマチャの若葉を採取し、それを蒸して揉捻し、乾燥させて煮出した飲料[2]。あるいはウリ科の多年草であるアマチャヅルに同様の加工を行って作った飲料である[2]。
なお、植物として甘茶の原料となるヤマアジサイの変種の一群(アマチャ群)をアマチャという[3][4]。また、アマチャヅルの異名として甘茶が用いられることもある[4]。
原料
アマチャ群
アジサイ属のうちヤマアジサイのグループの中で葉に甘みのあるものをアマチャ(アマチャ群)と呼んでいる[3]。その代表種としてアマチャ(Hydrangea macrophylla Seringe var. thunbergii Makino)やアマギアマチャ(Hydrangea macrophylla Seringe var. amagiana Makino)がある[3]。
飲料の甘茶は、黄褐色で甘味が感じられる。この甘味は、アマチャの生の葉に、フィロズルチンとイソフィロズルチンの配糖体が含まれているためである[注釈 2]。この配糖体が、アマチャの葉を乾燥させるなどの加工工程を踏んだ結果、加水分解されて、フィロズルチンとイソフィロズルチンが抽出されやすくなる。この抽出されたフィロズルチンとイソフィロズルチンが、甘味を感じさせる[注釈 3]。これらの甘味成分の甘さは、スクロースの400あるいは600 - 800倍[5][6]、サッカリンの約2倍である[7]。さらに、アマチャの葉には、例えば、フィロズルチンにグルコースが結合された配糖体が含まれる[注釈 4]。これが加水分解されているため、理屈の上では、グルコースの甘味も加わる。
利用
歴史的には甘味をもつ飲料(甘味料)として飲用にされてきたほか、防腐や防カビ作用をもつものとして醤油の醸造に利用された[3]。また、ノンカロリーの飲料として糖尿病患者の食事に甘味料として利用される[3]。このほか血液の循環をよくして体を温める効果があるとして海女にも飲用された[3]。
アマチャは昔から食用とされてきた植物であり、適度な濃さの甘茶を飲用しても害は無い。しかし、あまりに濃過ぎる甘茶を飲むと、中毒を起こして嘔吐する恐れがある。花祭りの際に濃過ぎる甘茶を飲んだ児童が、集団食中毒を起こした事例も報告されている。厚生労働省は濃い甘茶を避け、アマチャの乾燥葉2グラムから3グラム程度を、1リットルの水で煮出す甘茶の作り方を推奨している[8]。
薬用
アマチャやアマチャ末は、医療用も含めて一般的な漢方方剤には使用されない生薬ながら[9]、第15改正の日本薬局方にも収録された。
食品添加物
アマチャの抽出物は、日本で食品添加物の化学的合成品以外の食品添加物の中で、甘味料として用いられる場合がある[10]。アマチャ抽出物の使用基準は、定められていない[11]。
アマチャヅル
アマチャヅルを原料にした飲料も「甘茶」として供される[2]。その名は葉に甘味があることに由来するが、その甘味物質の単離を目的とする研究でギペノサイド(gypenoside)と呼ばれる多種ダンマラン系サポニンが単離された[12]。
甘茶と灌仏会
飲料としての甘茶は、江戸時代から灌仏会(花祭り)の際に、仏像に注ぎかけることが古くから行われてきた。これは、釈迦の生誕時に八大竜王が、これを祝って産湯に甘露を注いだという故事による風習である[13]。また、潅仏会の甘茶には虫除けの効果もあると信じられ、甘茶を墨に混ぜてすり、四角の白紙に「千早振る卯月八日は吉日よ かみさけ虫を成敗ぞする[14]」と書いて室内や厠の柱にさかさまに貼ると虫除けになるという風習が、かつて日本では見られた[13][注釈 5]。灌仏会が始まった8.9世紀、寺院、宮中では種々の香料を用いた香湯を使っていたが、鎌倉時代になって五香水・五色水になり、江戸時代になり甘茶になった。当時は、甘味の少ない時代であったので、この甘味は貴重だったのかもしれない。常盤津の「はやし詞」に「カッポレカッポレ、アマチャでカッポレ」がある。このカッポレは「活惚」とも書くこともある。
脚注
注釈
- ^ 新エングラー分類ではユキノシタ科[1]。
- ^ フィロズルチンとイソフィロズルチンには「ズルチン」と付くものの、人工甘味料として知られるズルチンとは全く異なる化合物である。
- ^ なお、植物中に含まれている配糖体のままでは、甘味は感じられない。
- ^ 具体的には、フィロズルチン-8-O-β-グルコシドなどが含有されている。
- ^ かみさけ虫(神下げ虫、紙下げ虫等)とは害虫・とくに蛆虫のことである。
出典
- ^ a b c 「神戸薬科大学薬用植物園レターVol.13 (PDF)」神戸薬科大学薬用植物園。2026年3月14日閲覧。
- ^ a b c 「花まつり」東白川村。2026年3月14日閲覧。
- ^ a b c d e f 藤井 敏男、吉田 智彦「アジサイ属におけるアマチャの特性」『日本作物学会紀事』第74巻第1号、日本作物学会、2005年。
- ^ a b 「甘茶」『精選版 日本国語大辞典』。コトバンクより2026年3月13日閲覧。
- ^ 瀬口 正晴、多田 洋、小関 佐貴代、衣笠 治子、道家 晶子、八田 一 著、瀬口 正晴、八田 一(編) 編『食品学各論』化学同人、176頁。 ISBN 978-4-7598-0473-7。
- ^ Kinghorn, A. Douglas; Compadre, Cesar, M. (2011). “Less Common High-Potency Sweeteners”. In O'Brien-Nabors, Lyn. Alternative Sweeteners (4th ed.). Boca Raton: CRC Press. p. 228. ISBN 978-1-4398-4614-8
- ^ “アマチャ”. 東邦大学薬学部付属薬用植物園. 2012年6月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年5月27日閲覧。
- ^ “自然毒のリスクプロファイル:高等植物:アマチャ”. 厚生労働省. 2014年12月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年11月25日閲覧。
- ^ 山田 陽城・花輪 壽彦・金 成俊(編集), ed (2007年4月20日). 薬学生のための漢方医薬学. 南江堂. p. 331. ISBN 978-4-524-40214-4
- ^ 谷村 顕雄 (1992年4月16日). 食品添加物の実際知識 (第4版 ed.). 東洋経済新報社. pp. 229、231. ISBN 4-492-08349-9
- ^ 谷村 顕雄 (1992年4月16日). 食品添加物の実際知識 (第4版 ed.). 東洋経済新報社. pp. 222、231. ISBN 4-492-08349-9
- ^ ブイティ・ゴク・ハー「食品添加物の安全性評価の手法に準じたアマチャヅル製品の安全性の検討」。
- ^ a b 本山 荻舟『飲食事典』平凡社、1958年、13頁。
- ^ “除けの歌”. goo国語辞書,デジタル大辞泉,小学館. 2023年2月22日閲覧。
関連項目
外部リンク
- アマチャ - 厚生労働省
甘茶
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/24 02:01 UTC 版)
アマチャの乾燥させた若葉を湯で抽出した飲料を甘茶と呼ぶ。この甘茶の甘味成分の1つが、フィロズルチンであり、甘茶の他の甘味成分としてイソフィロズルチン(英語版)が知られる。
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