アルトアイゼン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/26 02:57 UTC 版)
【ALTEISEN = 独語で「古い鉄」】 「絶対的な火力をもって正面突破を可能にする機体」という開発コンセプトの元、ゲシュペンスト試作3号機に極端な改造を加えて完成した重PT。開発担当者マリオン・ラドム博士の意向で、EOTは一切使われていない。 本機の武装は全て固定兵装となっている。これは、戦闘中に武器弾薬を使い果たしたりマニピュレーターが破壊されたPTが徒手空拳以外の戦闘方法を失うという問題を解消するためであった。以前にも中・遠距離戦用の固定兵装を備えたシュッツバルトが開発されているが、アルトアイゼンの固定兵装は近・中距離戦のものでまとめられており、破壊力を重視したスクエア・クレイモアとリボルビング・ステークを主武装とする。PTに要求されていた汎用性をある程度損ねる結果となったが、ラドム博士は中・遠距離戦は同時期に開発されていたヴァイスリッターに委ねるつもりでおり、アルトアイゼンには必要ないと考えていた。 突撃機としての特性上、機体出力に依存し不安定になりがちなビーム兵器は搭載されておらず(『OG』シリーズの武装変更除く)、武装は実体弾・実体剣(角と杭)のみで構成されている。重量のある装備を多数搭載したため機動性能の低さが欠点に上げられたが、大推力バーニア・スラスターを装備させることで半ば強引にこれを解決、通常推進器に加えて宇宙空間での別途加速のためのアフターバーナー(一般的な大気圏内でのアフターバーナーとは意味が異なる)や過給器まで搭載されている。また、ダッシュ力を重視した高出力のエンジンを搭載し、可能な限り遠くの敵機の懐に飛び込み、必殺の一撃を撃ち込んだ後、急速離脱する戦法を実現した。それゆえの耐久性能の向上が求められた結果、過剰とも言える重装甲化が推し進められ、対ビームコーティングまでもが施された。そして、その増加重量分をさらにバーニア・スラスターを増設し補うなどの改造を重ねた結果、近接戦闘能力・突破力・装甲防御力に優れたPTが誕生した。 一方でそれ以外の運用が極めて困難となってしまい、運動性を始めとして機体バランスが著しく損なわれた操縦し辛い機体でもある。操縦時にはパイロットにかなりの加速度がかかるらしく、『Record of ATX』ではブリットがシミュレーターでアルトアイゼンを操縦した際には実機ではないにもかかわらず体調を崩していた(なお、キョウスケは平然と「Gが軽すぎて参考にならない」と口にした)。加速、制動を精密繊細に行えるパイロットでなければまともな操縦は困難であるとされる。直線以外の機動が困難で、近接戦闘用のR-1に乗っているリュウセイは「扱いが難しく、リーチも短い」と評し、エクセレンからは「キワモノ」、キョウスケ自身にも初見で「馬鹿げた機体」と言われるなど、パイロットを選ぶ機体である。また、空の敵に対して有効な攻撃手段を持たず、実戦での運用においては基本としてヴァイスリッターとの連携が不可欠となっている。 こうした開発経緯からテスト運用の是非すら問われていたが、ATX計画の責任者でラングレー基地司令のグレッグ・パストラル少将は「極端な発想の中にこそ、飛躍的な進歩への手がかりがある」とし、ラドム博士の極端な開発コンセプトを容認していた。ATX計画開発スタッフの多くは、計画の本命はPT-X構想においてゲシュペンストの課題となっていた重力下空戦能力をテスラ・ドライブ搭載によってクリアしたヴァイスリッターと見ていたらしく、アルトアイゼンはPTの方向性を探るための試金石であると考えられていた。ラドム博士はそのような考えを快く思わず、あくまで次期主力機としての正式採用を目指していた。しかし時代に逆行した開発コンセプトと扱いづらさから到底実現はせず、試作機の域を出ることはついになかった。そして正式採用後につけられるはずであった「ゲシュペンストMk-III」ではなく、試作段階でのコードネームであった「アルトアイゼン」(古い鉄)がそのまま正式名称となった。 不名誉な名を与えられた本機であったが、DC戦争直前にキョウスケ・ナンブという、戦法スタイル、操縦技術、機体特性のマッチした稀有なパイロットを得ることになる。不得手とする戦闘領域もエクセレン・ブロウニングの操るヴァイスリッターのカバーによって絶妙なコンビネーションを発揮し、オペレーション・プランタジネットまで幾多の戦場を戦い抜いた。こうして異端の試作機として終わるはずだったアルトアイゼンは、地球圏の行方を左右する戦いを代表する1機に数えられ、PT開発史上に名を残すことになったのである。 なお、『OG2』でシャドウミラーがいた「向こう側」の世界では、細かな仕様が異なるがゲシュペンストMk-IIIとして採用され、ベーオウルブズ隊長機として「向こう側」のキョウスケが使用していた模様。 武装 スプリットミサイル ゲシュペンスト系PTが装備する中射程ミサイル。『COMPACT2』『IMPACT』『OG』(GBA版)で装備。 ヒートホーン (Heat Horn) 頭部に装備された加熱式の実体刃。頭突きのようなモーションで敵を切り裂く。本来は腕部が破損した場合などに使う緊急に使用されるべき武器。プロデューサーの寺田によると『IMPACT』での切り払いもこれで行っている。 3連マシンキャノン (Autocannon) 左腕に装備された実体弾機関砲。キョウスケが射撃を苦手とする点と、威力の面から主に牽制に使われる。本機の固定兵装の中では比較的射程が長い。 リボルビング・ステーク (Revolver Stake) 右腕に装備された杭打ち機(いわゆるパイルバンカー)。根元にリボルバーのような回転式薬室があり、ビームを封入した専用のビームカートリッジを使用する。装薬数は6発。突進の勢いでステーク(杭)を突き立てた後、ビームカートリッジを撃発させ、ステークを介して標的に強烈な衝撃を叩き込み、破壊する。リーチが短く扱い辛いが、耐久性や貫通力に優れており、機体本体の出力に依存せずジェネレーターに負担をかけないため、キョウスケはこの武器を好んで使用する。 スクエア・クレイモア (Heavy Claymore) 両肩に装備されている特殊武器。両肩に2発ずつ計4発装填される「近距離指向性・近接戦闘用炸裂弾M180A3」の通称。クレイモア地雷を大型化したもので、チタン合金製・平均直径120mmの炸裂鋼球弾を大量に発射し、目標を粉砕する。外見的にも重量バランスの点でも、跳弾の危険性があるにもかかわらず、射角が広いために近接して使わないと流れ弾の被害が出るという点でも、さらには誘爆の危険性の意味でも、この機体の本質を体現した武器と言える。本来は、ある程度距離を置いての使用が望ましいとされている。『OGs』では全体攻撃属性。 必殺技 「切り札」 ("Trump Card") 本機の持つ武装を連続で叩き込む。モーションは作品によって異なるが、マシンキャノンやクレイモアで牽制後にヒートホーンで突撃、さらにステークを全弾打ち込む攻撃となっている。いずれの作品でも射程が1で移動後の使用不可、弾数も1発きりと威力だけでなく癖も非常に強い。『IMPACT』から登場。 ランページ・ゴースト (Rampage Ghost) ヴァイスリッターとの連係攻撃で、ゲームでは合体攻撃として扱われる。直訳すると「暴れ回る幽霊」。アルト、ヴァイスの両機が突撃し、敵機を前後から挟み込み、互いの必殺武器を至近距離で叩き込む。技の初出は『IMPACT』だが、第3部でアルトアイゼン・リーゼ入手後に使用可能となるため、改修前のアルトで使用するのは『OG』からである。 デザイン デザイナーは斉藤和衛。機体カラーは赤を基調とし、各部に白と黒が使われている。 ゲシュペンストの改造機ということで、足のラインや腕の突起などにゲシュペンストらしさを残しているが、肥大した両肩や額の角などシルエットは大幅に変わっている。突進力を高めるために背部に相当数のブースターが装備されており、『OGs』の「切り札」カットイン時に見ることができる。 元々立体化を全く意識せずデザインされたため、肩や腕の可動領域が考慮されておらず、商品化の際にはこれらをどう処理するかが問題となっている。またスクエア・クレイモアのシャッター部分も、独自解釈で処理されることが多くなっている。 劇中、機体色と頭部のヒートホーンからテンザンは「赤いカブトムシ」と揶揄した。 劇中での活躍 COMPACT2 ゲシュペンストMk-IIIの試作1号機。形式番号は「PTX-03-001」。正式量産には至らず、極東基地(獣戦機隊基地)送りになっていた。武装5種類のうち、スクエア・クレイモアを含む3種類が射撃扱いである。性能はリアル系に寄っており、装甲値や耐久力もモビルスーツ並の能力で、設定ほど頑丈ではない。第3部終盤でアルトアイゼン・リーゼに強化される。 A アクセルもしくはラミアが正式に味方になった際の会話で、並行世界でシャドウミラーを撃退した部隊の隊長機がゲシュペンストMk-IIIであると語られている。 リアルロボットレジメント 未完成のままだったフリッケライ・ガイストを急遽出撃させるため、ゲシュペンストMk-IIIの四肢が流用された。武装などはほぼアルトアイゼンと共通である。 IMPACT 『α』の設定に合わせ型式番号が3桁ナンバーに変更。後の設定と同様にゲシュペンスト試作3号機の改造機とされた。スクエア・クレイモアは格闘射撃武器に変更、武装に「切り札」が追加されるなど攻撃面で強化され、格闘の得意な機体という方向性が確立した。本作からスプリットミサイルの設定が多弾頭型に変更された。 OGシリーズ DC戦争前にラングレー基地付近で人型飛行兵器の襲撃にあった輸送機救出のため、開発主任のマリオンが独断でキョウスケに搭乗を命じ出撃させた。キョウスケは「馬鹿げた機体だが自分向きだ」と高く評価しており、初の搭乗にもかかわらず高い戦果を挙げマリオンを満足させた。以後もキョウスケがメインパイロットを務める。DC戦争ではグルンガスト零式、L5戦役ではR-GUNリヴァーレなどの強敵相手に戦い抜いた。インスペクター事件時もスレードゲルミルやソウルゲインなどの特機と渡り合ったが、キョウスケは本機の突破力をもってしても当たり負けすることを危惧し、強化プランを考案する。そのプランが実現する前に、本機も参加したオペレーション・プランタジネットの最終フェイズでラングレーから撤退する際、ソウルゲインの攻撃で行動不能となり四肢を破壊されてしまう。大破した機体とキョウスケはゼンガーのダイゼンガーにより回収された。残された四肢の残骸は後にツェントル・プロジェクトに渡り、『第2次OG』にてフリッケライ・ガイストに組み込まれた。 スプリットミサイルはGBA版『OG』では汎用武器扱いで、『OG2』で削除された。また『OG』中盤でバリアがビームコートからABフィールドに変化したが、『OG2』ではビームコートに戻っていた。『OGs』では最初からミサイル非装備、バリアの変化なしである。 『クロニクル』ではアフリカ戦線にアルトアイゼン風に偽装されたゲシュペンストが投入されているが、居合わせたアクセルのソウルゲインによって破壊されている。ゲームでのイベント再現はされていないが、『OGs』でアクセルがシャドウミラーに合流する際にちらりと語られている。 OGIN スレードゲルミルやドルーキンなどの特機相手に渡り合うも押し負けてしまう面が見られるようになり、オペレーション・プランタジネットの最終フェイズでアクセルの駆るアシュセイヴァーとの戦闘で大破。ブリットとクスハのグルンガスト参式1号機に回収された。 なお、本作にはゲシュペンストMk-II・タイプSをアルトアイゼン風に改装した「タイプSA」が存在し、アルトのオーバーホール時や修理・強化改造時にキョウスケが搭乗した。 α外伝 設定のみ存在。量産型ゲシュペンストMk-IIのカスタム機。
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