第六基地航空部隊捷号作戦要領
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「捷号作戦」の記事における「第六基地航空部隊捷号作戦要領」の解説
(文中で「左にもとづく」とあるのは原文が縦書きであるため) 第六基地航空部隊捷号作戦要領 第一編 捷号作戦一般要領1、作戦区分(1)本土、南西諸島、台湾及び比島方面における決戦を捷号作戦と呼称しその区分を左の通りとす ・捷一号(比島方面) ・捷二号(九州南部、南西諸島及び台湾方面) ・捷三号(本州、四国、九州方面及び状況により小笠原諸島方面) ・捷四号(北海道方面) 捷号作戦実施の方面決定は大本営之を決定す (2)昭和19年8月1日以降の連合艦隊の作戦昭和18年8月15日以降の作戦に引き続き依然之を第三段作戦と呼称す 2、捷号作戦に於ける陸海軍航空作戦指導方針陸海軍航空部隊は速やかに決戦態勢を整備し敵の来攻に方りては両軍航空戦力を決戦要域に徹底的に集中し且之を統合発揮して敵進攻兵力を捕捉殲滅す 3、陸海軍航空兵力配置陸海軍航空兵力の基本配置を左の通りとし各地区における決戦にさいしては兵力の移動集中を行う ・北東方面第十二航空艦隊、第一飛行師団 ・本土方面(北海道を除く)第三航空艦隊、第三艦隊の本土所在の航空隊、教導航空部隊、第十飛行師団、第十一飛行師団、第十二飛行師団) ・南西諸島、台湾方面第二航空艦隊、第八飛行師団 ・比島、濠北、中部太平洋方面第一航空艦隊、第四航空軍 爾他正面は従来通り 4、陸海軍中央協定による陸海軍共用基地(1)陸軍主用し海軍共用するもの 都城、沖縄北、宜蘭第一、花蓮港第一、台東、恒春 (2)海軍主用市陸軍共用するもの 鹿屋、小禄(連絡用)、種子島(連絡用) 5、連合艦隊作戦指導要網(1)皇国の興廃を決すべき戦局に際して神厳なる統帥に徹し連合艦隊の全員大義に殉じて国防を完璧ならしむるを作戦指導の基調とす (2)戦力の充実に努め就中術力の錬成及び新兵器新戦法の実用化を一層促進す (3)大東亜要域就中我が国防要城における防備及び反撃の態勢を更に急速に強化し、海軍関係及び陸軍と緊密に共同して本要域の確保に努む。国防の要域は北海道、本州、四国、九州、南方諸島、南西諸島、台湾及び比島の要域並びに南方資源地及び本土より之に至る交通要線とす (4)敵の侵攻兵力を我が遊撃帯乃至其の至近に於いて反撃撃滅しつつ強靭なる作戦を実施す 6、捷号作戦に於ける部隊兵力運用要領並びに友軍航空部隊との関係捷一号作戦(主担当部隊:第一航空艦隊) 戦力投入規模:全力又は大部充当(1)全力台湾南部に展開作戦する場合 → 第一航空艦隊との共同作戦 (2)主力は台湾南部、一部または大部を比島北部に派遣作戦する場合 → 第一航空艦隊との共同作戦。但し比島派遣兵力は第一航空艦隊長官の指揮下に入る (3)主力又は全力比島北部に展開作戦する場合 → ①第一航空艦隊と共同作戦又は第二航空艦隊長官統一指揮 ②第四航空軍と共同作戦 捷二号作戦(主担当部隊:第二航空艦隊) 戦力投入規模:全力充当(1)主力を九州方面に配備作戦する場合 (2)主力を台湾に進出作戦する場合 → ①一航艦、三航艦よりの部隊は二航艦長官指揮下に入る ②その他一航艦、二航艦共同作戦 ③教導航空軍と共同作戦 捷三号作戦(主担当部隊:第三航空艦隊) 戦力投入規模:大部充当(1)主力を九州方面(又は関東方面)に配備作戦する場合 → ①第三航空艦隊と共同作戦 ②教導航空軍と共同作戦 (2)大部又は一部を関東方面に派遣作戦せしむる場合 → ①関東方面集中兵力は第三航空艦隊長官指揮下に入れる ②その他三航艦、教導航空軍と共同作戦 捷四号作戦(主担当部隊:第十二航空艦隊) 戦力投入規模:一部充当→派遣の一部兵力は第十二航空艦隊長官指揮下に入る 備考(1)各捷号作戦に於ける第八飛行師団兵力運用要領左の通り捷二号作戦→全力運用 捷一号作戦→重爆、軽爆、襲撃各1個戦隊 捷三号作戦→重爆1個戦隊 捷四号作戦→戦略予備 (2)右の他軍隊区分に以って当部隊又は作戦短刀正面基地航空部隊にT部隊を配置せらる (3)台湾及び南西諸島方面所在当部隊以外の海軍航空部隊は「捷二号作戦警戒」又は「発動」後、当部隊指揮下に入る予定 7、捷号作戦発令要綱(1)敵機動部隊、我予期決戦正面に近接するを偵知せば連合艦隊司令長官「捷○号作戦警戒」を下令す。但し敵の来攻方面捷号作戦区域の中間にありて其の何れに来るやを判別し得ざる場合は「捷○号及び捷△号作戦警戒」を令することあり (2)大本営の捷号作戦実施の方面に関する決定発令あり且つ敵の来攻企図に関する判定付かば連合艦隊司令長官より「捷○号作戦発動」を下令す 第二編 第六基地航空部隊捷号作戦要領第一章 作戦目的捷号作戦部隊の主力部隊として決戦に臨み敵の進攻兵力就中敵航空母艦群をまず撃滅すると共に友軍各部隊と協力して敵艦隊及び攻略部隊を撃滅し一挙に大東亜戦争の勝利を決せんとす 第二章 作戦指導要領1、皇国の興廃を決すべき危急戦局に際会して神厳なる統帥に徹し海陸軍航空部隊渾然一体となり全軍大義に殉じて宿敵を殲滅し以って国防を完備ならしむるを当部隊作戦指導の基調とす 2、各員超然力を奮って緊急戦備を急速に完整すると共に練度の急速向上、新兵器の実用化促進並びに新戦法の演練精到を期し以って皇軍独自の精神力発揮と必勝の陣を完成す 3、全軍鉄の如き結束の下強靭鮮烈なる戦力を決戦点に徹底的に集中投入すると共に関係陸海軍部隊と緊密周到なる協同作戦を実施して全力の統合発揮に万遺憾なきを期す 4、常に情勢に適応する警戒を実施して敵の急襲に備ふると共に各部の急速移動準備を完整して軽快神速なる機動作戦を実施し敵を致して好機断乎たる攻撃を加える 5、以上皇軍本来の特質と戦略態勢の利点をいかんなく発揮し天佑神助の下敵艦隊を撃滅して作戦目的の完遂を期す 第三章 基本作戦方針第一節 決戦の一般方針1、予期決戦正面の概要地域に敵来攻せば敵進攻兵力の大部を極力我に引き付け好機に全軍を挙げて決戦に転じ友軍空海陸の全力集中攻撃と策応して一挙に敵を撃滅す 2、捷号作戦に於いては当部隊航空兵力は決戦の根幹として全力を挙げて進攻作戦に邁進し一撃の下敵進攻主力を覆滅する如く使用するを原則とす 3、決戦に於いて当部隊は敵進攻の推進力たる航空母艦群特に正式航空母艦群を一挙に全滅すると共に極力敵攻略部隊を洋上に撃滅す。為之空襲部隊の主作戦目標並びに海陸軍航空部隊の機種に応ずる使用を概ね左の如く区分す西第一ないし第三空襲部隊 (敵航空母艦群) 西第四空襲部隊(大部は輸送船団、一部は航空母艦群) 機種別仕様標準空母攻撃→海軍:戦闘機、陸攻、陸爆(銀河)、艦攻(天山)、艦爆(彗星) 陸軍:新重爆(飛龍) 油槽船攻撃→海軍:九六陸攻、九七艦攻、九九艦爆、水上機各種 陸軍:九九襲、九九双軽爆、一式戦、二式複戦、三式戦、重爆 対空砲火制圧→陸軍:一式戦、重爆 爆撃掩護→海軍:戦闘機、陸軍:二式戦、四式戦 偵察→海軍:陸偵、丙戦(月光) 陸軍:100式司偵 備考:機種別戦闘要領に関しては戦策所定による 4、捷号決戦の際の敵航空母艦群攻撃に於いては爾後空海陸の全力統合発揮により敵進攻兵力全部の一挙殲滅を容易ならしむる為特に所在空母群前部の機能封殺を重視。就中敵正式空母群は第一撃により全部之が撃沈撃破を期す。但し決戦に先行して実施することあるべき敵機動部隊分撃などに於いては確実撃沈主義を採るものとす 5、敵機動部隊に対する攻撃に於いては夜間雷撃及び悪天候を利用する攻撃を最重視し、各種新兵器及び新戦法の採用と有力なる兵力の集中使用により一挙敵正式空母群の覆滅を期す。敵機動部隊に対する昼間強襲は一般に夜戦に先行する準備戦として敵機動部隊大部の活動を封じ又は夜戦戦果の拡充戦として残存敵空母の殲滅を期す 6、敵輸送船団に対する攻撃は敵機動部隊に対する中間攻撃開始と概ね時を同じくして開始するを例とし敵上陸兵団の大部を其の上陸前に撃滅す 第二節 総攻撃開始までの作戦方針1、決戦次期以前に於いては航空兵力を努めて縦深に配備し主導的にして柔軟なる作戦(戦闘)を実施し、以って敵戦力の撃滅を図り我が戦力の漸耗を防止す。 為之敵が上陸作戦実施に先立ち、機動部隊の大部をもって其の攻略正面に対し航空撃滅戦を企図し来る場合にありては、一般に之と真面目なる戦闘を実施するを避け、同方面配備航空を一時後方基地に分散避退する等、機宜配備の変更をもって初動に於ける敵の鋭鋒を躱しつつ極力敵の全貌偵知に努め戦機の至るを待って決戦配備に移行するを一般とす。敵が機動部隊の一部を分派して攻略正面以外の地域に対して攻撃を加え来る場合にありても右に準ず。 但し、敵情比較的明らかにして我が方の兵力集中を了しある場合又は敵襲回避困難なる場合には、戦機に投じて先制攻撃を断行することあり。この場合は手段を尽くして敵情偵知に努め極力当面兵力を集中して先制攻撃を断行す。また情況により決勝点への集中不可能なるか、または同方面所在兵力をもって充分の攻撃成果を収め得る見込み有り、かつ全般作戦遂行上当面の敵を攻撃するを有利とするときは、当該方面集中可能の全力を挙げて当面の敵を攻撃殲滅することあり。この場合にありても充分敵を引き付けたるあと、一挙にこれを攻撃撃滅するに努める。 2、敵機動部隊の急襲並びに支那及び「マリアナ」方面よりする敵大型機の常続的来襲に対しては各種の手段を尽くして事前諜知に努め適切なる配備変更をもって応ずると共に、航空築城の強化、基地の分散配備等により、被害の極限に努める。そして敵機動部隊の航空撃滅戦に対しては前記記載の方針に則り、決戦までは極力之を回避するものとし、戦闘機による邀撃もなるべくこれを避けて基地の直接防空などは電波哨戒見張り、地上砲火などに依存するを原則とす。 但し、大型機の常続的空襲に対しては被襲地区配備兵力に応じ、機宜戦闘機をもって邀撃戦闘を実施し、有力兵力の損耗を防止す 3、決戦以前に敵と基地航空戦を交えるの要ある場合には、特に適切なる奇襲攻撃及び機略に富む邀撃を実施するにつとめる 第三節 捷二号作戦方針当部隊は情勢特に変化なければ敵が南西諸島の中枢要地(沖縄島、宮古島など)攻略を企図する場合に対応する如く、常時展開配備し敵が台湾に来攻する場合は移動集中をもって之に即応しえる如く準備す。 敵機動部隊の南西諸島方面来攻を知るに至らば来攻正面所在航空部隊は所要の偵察兵力の外其の大部の兵力を一時急襲方面及び台湾方面に配備を急変して、敵機動部隊初動の攻撃を避けると共に、手段を尽くして敵全貌の偵知に努める。 敵機動部隊の動静に応じ、逐次台湾方面若しくは九州方面に集中すべき友軍各航空部隊と緊密に連携し、または指揮下に入るべきそれら兵力を速やかに掌握し、情況によってはこの間好機に投ずる奇襲攻撃(主としてT攻撃)をもって敵航空母艦の漸減を図りつつ、以って敵攻略部隊の近接を待って全航空兵力の総攻撃を為し得る如く攻撃準備を完成す。事後敵情に応じ基地を躍進して上陸前日又は当日総攻撃に展示敵機動部隊並びに攻略部隊を攻撃撃滅す。 敵が攻撃部隊の一部を分派して九州南部または台湾方面に攻撃を加える場合の作戦要領も前項に準ず。 前諸項の避退並びに決戦配備への急速移動に際しては、特に敵艦上戦闘機の邀撃並びに在支敵航空部隊の奇襲に対し厳戒し、適時掩護戦闘機隊、空中哨戒隊を配備し警戒着陸を行うと共に、無線通信を極限し我が配備行動の秘匿に努める。 総攻撃開始の際は各飛行隊は敵襲回避の配備より、神速に決戦配備に転換して決戦攻撃に転じ、爾後反復攻撃を続行する。その為決戦配備基地たる基本配備基地及び機動作戦基地は敵空襲後速やかに補修を了し置くものとす。そして情況によっては避退基地より直に攻撃に発進し又は南西諸島基地に中継使用して攻撃を実施することあり。また敵情天候などによりては、九州より発進して攻撃実施後台湾方面に異動し爾後の作戦を同方面より実施するなど機動作戦を行う。 西第四空襲部隊所属の航空部隊は敵機動部隊来攻当初は正面配備航空兵力の大部を台湾及び情況によっては一部を支那三角地帯に温存し、総攻撃開始前に神速に決戦配備に転じ、南西諸島基地を機動基地として決戦に転ず。 悪天候を利用する奇襲攻撃は決戦正面に実施するを建前とするも総攻撃開始時機に関わらず特定部隊をもって随時実施することあり。之が作戦要領に関しては別に定める。 第四節 捷一号作戦方針敵の比島方面来攻の算濃厚となるを察知せば、渋滞なく大部を挙げて急速に台湾南部又は比島北部に移動す。その為兵力集中に必要な諸般の準備を促進すると共に情勢に応Zして適時各機種毎に飛行隊の一部を台湾南部に移動し、または艦隊司令部を高雄に進出す。この場合特に支那方面よりする奇襲攻撃に対し厳戒するものとす。 捷一号作戦の「警戒」または「発動」の令あらば敵機動部隊の台湾方面又は比島北部に対する航空攻撃に対し厳戒しつつ台湾南部又は比島北部展開の準備を完了し急速に之に移動して総攻撃に転ず 捷一号作戦に於いて飛行第八師団兵力の一部は当部隊作戦指揮下より離れ比島に展開の上、本作戦井充当せらるる予定。爾余の同師団兵力作戦に関しては後令す。 その他作戦方針に関しては捷二号作戦に準ず 第五節 捷三号作戦方針敵機動部隊の本土要域来攻を偵知せば攻略企図を有する否とに拘わらず来攻正面基地航空部隊(第三航空艦隊)は機先を制して敵機動部隊を攻撃撃破するに努む。この場合当部隊は大部を九州方面又は関東方面に移動し第一編第八項記載要領により本作戦に従事せしむ 第六節 捷四号作戦方針敵の北海道に対する攻略企図を偵知し得るに至らば情況により当部隊の一部兵力を北海道に派遣し第二基地航空部隊指揮官の指揮を受け捷四号作戦に従事せしむ 第七節 兵力部署 第四章 作戦要領第一節 航空部隊配備計画第一、基地配備の要旨 第二、基地配備の区分 第三、各捷号作戦配備基地計画 第二節 配備変換並びに機動作戦要領第一、要旨 第二、配備変換要領 第三、飛行機隊移動部署 第三節 捷号作戦発動前各部隊作戦要領 第四節 捷二号作戦各部隊作戦要領 第五節 捷一号作戦各部隊作戦要領 第六節 捷三号及び捷四号各部隊作戦要領 第七節 各部隊戦闘要領 第八節 友軍の作戦要領並びに友軍各部隊間共同要領
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