仏陀 仏陀への信仰

仏陀

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/21 17:21 UTC 版)

仏陀への信仰

釈迦は自分の教説のなかで輪廻を超越する唯一神(主宰神、絶対神)の存在を認めなかった。その一方、経典のなかでは、従来は超越的な「神」(deva, 天部)としてインド民衆に崇拝されてきた存在が仏陀の教えに帰依する守護神として描かれている。その傾向は時代を経ると加速され、ヴェーダの宗教で「神」と呼ばれる多くの神々が護法善神として仏教神話の体系に組み込まれていった。また仏滅500年前後に大乗仏教が興隆すると、人々は超越的な神に似た観念を仏陀に投影するようにもなった。

釈迦が出世した当時のインド社会では、バラモン教が主流で、バラモン教では祭祀を中心とし神像を造らなかった。当時のインドでは仏教以外にも六師外道などの諸教もあったが、どれも尊像を造って祀るという習慣はなかった。したがって原始仏教もこの社会的背景の影響下にあった。そのため当初はレリーフなどでは、法輪で仏の存在を示していた。しかし、死後300年頃より彫像が作られはじめ、2019年現在は歴史上もっとも多くの彫像をもつ実在の人物となっている。ただし、死後300年を過ぎてから作られはじめたので実際の姿ではない。仏陀の顔も身体つきも国や時代によって異なる。

十号

仏典では仏陀をさまざまな表現で呼んでおり、これを十号という。

  1. 如来(にょらい、: tathāgata) - 多陀阿伽度と音写されている。真如より来現した人。真実に達した者[4]
  2. 応供(おうぐ、: arhat) - 阿羅訶、阿羅漢と音写されている。煩悩の尽きた者。
  3. 明行足(みょうぎょうそく、: vidyācaraṇa-saṃpanna) - 宿命・天眼・漏尽の三明の行の具足者。
  4. 善逝(ぜんぜい、: sugata) - 智慧によって迷妄を断じ世間を出た者。
  5. 世間解(せけんげ、: lokavid) - 世間・出世間における因果の理を解了する者。
  6. 無上士(むじょうし、: anuttara) - 悟りの最高位である仏陀の悟りを開いた事から悟りに上が無いと言う意味。
  7. 調御丈夫(じょうごじょうぶ、: puruṣadaṃyasārathi) - 御者が馬を調御するように、衆生を調伏制御して悟りに至らせる者。
  8. 天人師(てんにんし、: śāstā-devamanuṣyāṇāṃ) - 天人の師となる者。
  9. (ぶつ、: buddha) - 煩悩を滅し、無明を断尽し、自ら悟り、他者を悟らせる者。
  10. 世尊(せそん、: bhagavat) - 福徳あるひと。幸いあるもの[4]

日本語の「ほとけ」

ブッダが漢字に音写された「浮屠(ふと)」、「浮図(ふと)」が日本に伝えられる過程で、「ふと」という読みに「け」を付し、「ふ」は「ほ」に近づいて、「ほとけ」の語が生まれた[8]と言われる。一方、古代朝鮮語の*Pwutukye(中世朝鮮語形は부텨(Pwuthye))や満州語ᡶᡠᠴᡳᡥᡳ(Fucihi)との関連性も指摘されている[9][10]

日本では「ほとけ」は、死者またはそのをも意味する[11]。ほとけが死者の意味で使われるようになったのは、日本中世以降、死者をまつる器として(ほとき)が用いられて、それが死者を呼ぶようになったという説もある[12]。しかし、日本では人間そのものが神であり(人神 = ひとがみ)、仏教が伝来した当初は仏も神の一種と見なされたこと(蕃神 = となりぐにのかみ)から推察して、人間そのものを仏と見立てて、ひいては先祖ないし死者をブッダの意味で「ほとけ」と呼んだとも考えられている[12]。他にも滅多に怒らない温厚な性格の例えとしても用いられ、「仏の顔も三度」などの諺もある[13]


注釈

  1. ^ 仏(ぶつ)は仏陀の略称であるとの説もある[2]
  2. ^ 漢字の研究者で「大漢和辞典」の編者。文学博士

出典

  1. ^ a b c 新村出『広辞苑』(第三版)岩波書店、1986年10月、2111頁。 
  2. ^ a b c d e 仏陀(ぶっだ)とは - コトバンク”. 朝日新聞社. 2017年9月26日閲覧。
  3. ^ 植木雅俊『今を生きるための仏教100話』(平凡社新書、2019年)p.83
  4. ^ a b c d e f g 馬場紀寿『初期仏教――ブッダの思想をたどる』〈岩波新書〉2018年、21-22頁。ISBN 978-4004317357 
  5. ^ a b 『中勘助の恋』富岡多恵子、 創元社 (1993/11)、p270
  6. ^ 中村・三枝 2009, p. 53.
  7. ^ 「仏陀」 - 日本大百科全書(ニッポニカ)
  8. ^ a b c d e 中村・三枝 2009, p. 55.
  9. ^ Vovin, Alexander (2006). “Why Manchu and Jurchen Look So Un-Tungusic”. In Alessandra Pozzi, Juha Janhunen and Michael Weiers. Tumen jalafun secen aku. Manchu Studies in Honour of Giovanni Stary. Wiesbaden: Harrassowitz. pp. 255-266. https://www.academia.edu/1804227/Why_Manchu_and_Jurchen_Look_so_Un-Tungusic 
  10. ^ Pellard, Thomas (2014). “The Awakened Lord: The Name of the Buddha in East Asia”. Journal of the American Oriental Society. doi:10.7817/jameroriesoci.134.4.689. 
  11. ^ 新村出『広辞苑』(第三版)岩波書店、1986年10月、2215頁。 
  12. ^ a b 岩波仏教辞典第2版 1989, p. 743.
  13. ^ 日本国語大辞典,デジタル大辞泉, ことわざを知る辞典,精選版. “仏の顔も三度とは”. コトバンク. 2022年12月12日閲覧。


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