仏陀 仏陀の概要

仏陀

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/21 17:21 UTC 版)

銅造阿弥陀如来坐像(神奈川県鎌倉市高徳院・鎌倉大仏)
仏陀の座像(石窟庵新羅時代)

ブッダ(「仏陀」は漢字による音写の一つ)という呼称は、インドでは仏教の成立以前から使われていた。釈迦が説いた原始仏教では、仏陀は「目覚めた人」を指す普通名詞であり、釈迦だけを指す固有名詞ではなかった。現に原始仏典にはしばしば仏陀の複数形(buddhā)が登場する[3]。しかし釈迦の死後、初期仏教では、仏教を開いた釈迦ただ一人が仏陀とされるようになった[4]。初期の大乗経典でも燃燈仏過去七仏や、弥勒菩薩が未来に成仏することなど過去や未来の仏陀の存在を説いたものもあるが、現在の仏陀は釈迦一人だけであり、釈迦の死後には現在まで現れていないとされている[4]

原語と音写語

原語

ブッダ(: Buddha)は、サンスクリット語の「知る」「目覚める」を意味する動詞ブドゥ(: budh)の過去分詞形で[5]、「目覚めた者」[6][4]や「真理、本質、実相を悟った人」[4][7]、「覚者」・「智者」と訳す[1]。「正覚者」のことであり[4]、聖人・賢者をブッダと呼ぶようになった[5]。buddhaの語はインドでは、もとは諸宗教を通じて使われたものであり、ジャイナ教の開祖マハーヴィーラもこの名で呼ばれたことがある[2]

音写語

ブッダの名称は、中国に伝えられた当初、その音を写して(音写して)「浮屠(ふと)」「浮図(ふと)」などの漢字が当てられた[8]。またのちに、ブッダが別に仏陀(佛陀)と音写されることが増え、玄奘(602~664年)以降に固定する[8]。より古い時代に、末尾の母音の脱落などがあり「ブト」と省略され、それに「仏(佛)」の音写が当てられた[8]との考え方もある[注釈 1]

諸橋轍次[注釈 2]は、「佛」の字を「人であって人でない(人を超えている)」と解した[8]

仏陀の範囲

ジャイナ教の文献にはマハーヴィーラを「ブッダ」と呼んだ形跡があるが、仏教ではマハーヴィーラを仏陀とは認めていない。

しかし時代を経ると、他方世界という見方が展開し、釈迦以外にも数多くの仏陀が同時に他の世界で存在している事を説く仏典が現れた。例を挙げると、初期経典では「根本説一切有部毘奈耶薬事」など、大乗仏典では『阿弥陀経』や『法華経』などである。

多くの仏教の宗派では、「ブッダ(仏陀)」は釈迦だけを指す場合が多く、悟りを得た人物を意味する場合は阿羅漢など別の呼び名が使われる。悟りを得た人物を「ブッダ」と呼ぶ場合があるが、これは仏教を含む沙門宗教に由来するもので、ヴェーダの宗教の伝統としてあるわけではない。


注釈

  1. ^ 仏(ぶつ)は仏陀の略称であるとの説もある[2]
  2. ^ 漢字の研究者で「大漢和辞典」の編者。文学博士

出典

  1. ^ a b c 新村出『広辞苑』(第三版)岩波書店、1986年10月、2111頁。 
  2. ^ a b c d e 仏陀(ぶっだ)とは - コトバンク”. 朝日新聞社. 2017年9月26日閲覧。
  3. ^ 植木雅俊『今を生きるための仏教100話』(平凡社新書、2019年)p.83
  4. ^ a b c d e f g 馬場紀寿『初期仏教――ブッダの思想をたどる』〈岩波新書〉2018年、21-22頁。ISBN 978-4004317357 
  5. ^ a b 『中勘助の恋』富岡多恵子、 創元社 (1993/11)、p270
  6. ^ 中村・三枝 2009, p. 53.
  7. ^ 「仏陀」 - 日本大百科全書(ニッポニカ)
  8. ^ a b c d e 中村・三枝 2009, p. 55.
  9. ^ Vovin, Alexander (2006). “Why Manchu and Jurchen Look So Un-Tungusic”. In Alessandra Pozzi, Juha Janhunen and Michael Weiers. Tumen jalafun secen aku. Manchu Studies in Honour of Giovanni Stary. Wiesbaden: Harrassowitz. pp. 255-266. https://www.academia.edu/1804227/Why_Manchu_and_Jurchen_Look_so_Un-Tungusic 
  10. ^ Pellard, Thomas (2014). “The Awakened Lord: The Name of the Buddha in East Asia”. Journal of the American Oriental Society. doi:10.7817/jameroriesoci.134.4.689. 
  11. ^ 新村出『広辞苑』(第三版)岩波書店、1986年10月、2215頁。 
  12. ^ a b 岩波仏教辞典第2版 1989, p. 743.
  13. ^ 日本国語大辞典,デジタル大辞泉, ことわざを知る辞典,精選版. “仏の顔も三度とは”. コトバンク. 2022年12月12日閲覧。


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