交響曲
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/16 16:56 UTC 版)
交響曲の副題
ハイドンやモーツァルトにおいては、交響曲が音楽以外のものと結びついた副題を予め与えられることは、一部の特殊な製作事情をもつ作品を除き、ほぼなかった。これは交響曲が絶対音楽として成立していたことを示す。
ハイドンにおいては、第45番『告別』や第94番『驚愕』・第101番『時計』・第104番『ロンドン』などの名前を持つものがあるが、これは曲の特徴や初演された場所を愛称として付したものであり、副題の内容を音楽として表現したものでないため、絶対音楽と言える。モーツァルトの第31番『パリ』・第35番『ハフナー』・第41番『ジュピター』なども同様である(第35番はハフナー家のために作曲された)。ただし、ハイドンの第6番『朝』、第7番『昼』、第8番『晩』は、当時仕えていたエステルハージ侯爵から題を与えられて作曲したものであるとされ、標題音楽的側面も持つといえよう。また、第8番『晩』の第4楽章にはハイドンによって『嵐』という副題がつけられている。
ベートーヴェンは、第3番『英雄』・第6番『田園』において自ら副題を与えるというやり方を開始した。第3番は、最初『ボナパルト』と題されて作曲されたことからも、ナポレオン・ボナパルトを念頭においた標題音楽であると言うこともできる。なお、第5番『運命』、第9番『合唱(合唱付き)』は後世の人が与えた愛称であり、標題ではない。ただし、第9番はシラーの詩による「歓喜の歌」を含み、その言語により意図していることは明確であり、絶対音楽ではない。
以降のロマン派の交響曲は、絶対音楽と標題音楽の狭間を揺れ動きつつ、発展を遂げることになった。
ベルリオーズは『幻想交響曲』において、1人の女性の幻影につきまわれるという筋立てのもと、女性の幻影を旋律にし、固定観念(イデー・フィクス)として用いた。5つの楽章は「夢と情熱」、「舞踏会」、「野の風景」、「断頭台への行進」、「悪魔の祝日と夜の夢」という副題を持つ。この曲は、後の交響詩の発展の先駆けともなった。
シューマン、メンデルスゾーンの交響曲も副題を持つものがあるが、形式的には絶対音楽の範疇にとどまっている。
ブルックナーはかたくななまでに絶対音楽の形式を守った。マーラーは1番と3番で作曲途中に標題を付けたが、最終的には標題を削除している。2番「復活」、7番「夜の歌」、8番「千人の交響曲」は他人によってつけられた通称であり、6番「悲劇的」もマーラー自身によって付けられたものかは定かではない。マーラー本人が明確に題を残したものは歌曲集と交響曲との中間的な存在である「大地の歌」のみである。ただし、マーラーの交響曲には声楽を含むものも多く、意味のある歌詞を含むようになった以上、それらは絶対音楽ではあり得ない。また、最終的に標題を削除した交響曲についても、作曲の過程で標題を意識したものがほとんどであり、いずれの交響曲も大なり小なり標題性を持つ。
リストの『ファウスト交響曲』と『ダンテ交響曲』、シベリウスの『クッレルヴォ交響曲』、マーラーの交響曲『大地の歌』、チャイコフスキーの『マンフレッド交響曲』など、番号付き作品の系列外に標題を持つ作品もある。
エドゥアール・ラロの『スペイン交響曲』(ヴァイオリン協奏曲第2番)、ヴァンサン・ダンディの『フランスの山人の歌による交響曲』、伊福部昭の『ピアノと管絃楽のための協奏風交響曲』など、実質は独奏楽器と管弦楽のための協奏曲であるが規模の大きな作品を、あえて交響曲と呼ぶ例もある。
注釈
出典
- ^ “三度浮上し、最高位大幅更新〜佐村河内守が異例のロングセールス”. ORICON BiZ. オリコン・リサーチ (2013年4月8日). 2013年5月6日閲覧。
- ^ a b 最新名曲解説全集補巻1 交響曲・管弦楽曲・協奏曲」(音楽之友社)参照
- ^ 4と5は「最新名曲解説全集3 交響曲Ⅲ」(音楽之友社)参照]
- ^ 「最新名曲解説全集3 交響曲Ⅲ」(音楽之友社)参照
- ^ 2, 5, 8は「最新名曲解説全集3 交響曲Ⅲ」(音楽之友社)参照
- ^ 2と6は「最新名曲解説全集3 交響曲Ⅲ」(音楽之友社)参照
- ^ 共に『最新名曲解説全集補巻1 交響曲・管弦楽曲・協奏曲』(音楽之友社)参照
- ^ 6は、「最新名曲解説全集補巻1 交響曲・管弦楽曲・協奏曲」(音楽之友社)参照
- ^ 2は、最新名曲解説全集3 交響曲Ⅲ」(音楽之友社)参照
- ^ 最新名曲解説全集3 交響曲Ⅲ」(音楽之友社)参照
- ^ 3は、「最新名曲解説全集3 交響曲Ⅲ」(音楽之友社)参照
- ^ 「最新名曲解説全集3 交響曲Ⅲ」(音楽之友社)参照
- ^ 1と3は、「最新名曲解説全集3 交響曲Ⅲ」(音楽之友社)参照
- ^ 1は、「最新名曲解説全集3 交響曲Ⅲ」(音楽之友社)参照
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