交響曲第1番 (デ・メイ)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/11/03 06:44 UTC 版)
Jump to navigation Jump to search交響曲第1番『指輪物語』(Symphony No.1 "The Lord of the Rings")は、オランダの作曲家ヨハン・デ・メイが作曲した交響曲。
概要
イギリスの作家ジョン・R・R・トールキンのファンタジー小説『指輪物語』を題材に、1984年3月から1987年12月にかけて作曲された、デ・メイの最初の本格的な作曲作品である。5楽章からなる演奏時間約42分の吹奏楽のための交響曲として書かれた。当初は作品1という作品番号が付けて呼ばれていた。各楽章には登場人物や情景に基づくタイトルが付けられているが、原作のストーリーとは異なる順に並べられている。
1989年にサドラー国際吹奏楽作曲賞を受賞し、1990年にはオランダの作曲家基金「音楽創造基金」(nl:Fonds voor de Scheppende Toonkunst)の賞金を得た。
アメリカの指揮者デイヴィッド・ウォーブル(David Warble)の勧めで、オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団の首席打楽器奏者で編曲家としても著名なヘンク・デ・フリーヘルに依頼し、管弦楽版も作られた。
初演
吹奏楽版
- 世界初演
- オランダ初演
- 日本初演
- 第1楽章のみ1991年4月27日に大阪市中央区の森ノ宮ピロティホールにて、全楽章は1992年5月13日に同市北区のザ・シンフォニーホールにて、いずれも木村吉宏の指揮、大阪市音楽団の演奏による。
管弦楽版
- 世界初演
- 作曲者公認の公式な世界初演は、2001年9月28日、29日、30日の3日間、ロッテルダムのデ・ドゥーレン(en:De Doelen)にて、ディルク・ブロッセの指揮、ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団の演奏による。
- 日本初演
- その他
- ナレーション入りバージョン
- レコーディング
編成
吹奏楽版
木管 | 金管 | 弦・打 | |||
---|---|---|---|---|---|
Fl. | 2 (doubl. 2 Picc.), Picc. 1 (doubl. Fl.) | Tp. | 4 (doubl. Fl.Hr.) | Cb. | ● |
Ob. | 2 (doubl. E.Hr.) | Hr. | 4 | Timp. | ● |
Fg. | 2, Cfg. | Tbn. | 4 | 他 | S.D., T.D., B.D., Tom-t., Cr.Cym., Sus.Cym., Tam-t., Anvil, Tamb., Cast., Tri., T.B., W.B., Whip, Ratchet, Indian Bell (or Bell Tree), Xylo., Gl.sp., T.Bells, Mari. |
Cl. | Solo+3, E♭Cl., Alto, Bass | Eup. | ● | ||
Sax. | Sop. 1 Alt. 2 Ten. 1 Bar. 1 | Tub. | ● | ||
その他 | Piano |
管弦楽版
木管 | 金管 | 打 | 弦 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
Fl. | 2 (doubl. 2 Picc.), Picc. (doubl. Fl.) | Hr. | 4 | Timp. | ● | Vn.1 | ● |
Ob. | 2, E.Hr. | Trp. | 4 | 他 | S.D., T.D., B.D., Tom-t., Cr.Cym., Sus.Cym., Sizzle Cym., China Cym. (or small Tam-Tam), Tam-t., Anvil, Tamb., Cast., Tri., T.B., W.B., Whip, Ratchet, Large Rattle, Vibraslap, Xylo., Gl.sp., T.Bells, Mari., Glass Chimes | Vn.2 | ● |
Cl. | 2 (doubl. E♭Cl.), B.Cl. | Trb. | 3 | Va. | ● | ||
Fg. | 2, C.Fg. | Tub. | 1 | Vc. | ● | ||
他 | Sop.Sax. (doubl. A.Sax.) | 他 | ‐ | Cb. | ● | ||
その他 | Piano (doubl. Celesta), Harp |
出版
吹奏楽版
1988年に、デ・メイ自身が設立したアムステル・ミュージック(Amstel Music BV)から出版。オランダのデ・ハスケおよびアメリカのハル・レナード(アメリカ、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアのみ)から販売。
2013年には、初演、出版から25周年を記念して、自筆譜のファクシミリ版にインタビュー記事や写真、初演のライブ録音を収録したCDを付けた25周年記念フルスコアが出版された[1]。
管弦楽版
2001年に、アムステル・ミュージックから出版。オランダのアルベルセン(Albersen Verhuur)から貸し譜で提供。
構成
- 第1楽章 魔法使いガンダルフ(Gandalf (The Wizard))
- Andante maestoso - Allegro vivace、3/4拍子
- 『指輪物語』の主要な登場人物である灰色の魔法使いガンダルフを描く。ファンファーレに続いて、賢明で高潔なガンダルフの主題が現れる。アレグロ・ヴィヴァーチェでは愛馬飛蔭に跨り疾走する様子がスピード感豊かに描かれる。これらのモチーフは全曲に渡って現れ、交響曲全体を有機的に統合している。
- 第2楽章 エルフの森ロスローリエン(Lothlórien (The Elvenwood))
- Lento, rubato、4/4拍子 - Allegretto grazioso、6/8拍子
- エルフが治める森の国ロスローリエンを描く。神秘的な森の様子や鳥のさえずりが木管楽器のソロで表される。エルフの女王ガラドリエルの鏡に映し出される情景がフロドの鼓動のリズムとともに移りゆく。
- 第3楽章 ゴクリ(スメアゴル)(Gollum (Sméagol))
- Agitato、3/4拍子
- 一つの指輪の魔力によって邪悪な心と醜い体を持つ生き物となったゴクリの狡猾さや素早さが、ソプラノサクソフォーンのソロで描かれる。
- 第4楽章 暗闇の旅(Journey in the Dark)
- a) モリアの坑道(The Mines of Moria)
- b) カザド=ドゥムの橋(The Bridge of Khazad-Dûm)
- 4/4拍子
- 2つの部分からなる。指輪の仲間が廃墟となったドワーフの地下都市モリアの暗い道を進む様子と、そこを住処にしていたオークやトロル、バルログとの戦い、バルログとともに闇の底に落ちていったガンダルフ、指導者を失い重い足取りで先に進む一行を描く。
- 第5楽章 ホビット(Hobbits)
- Andante maestoso、3/4拍子 - Allegretto、2/2拍子
- 争いを好まず、食事とたばこを愛する楽天的な小さい種族ホビットたちの陽気な踊りや、一つの指輪を破壊して中つ国を守ることになるホビットの勇敢さと気高さを表す賛歌が歌われ、最後は物語と同様にフロドがビルボやガンダルフたちとともにエルフの船に乗って西の果ての国アマンへと旅立っていくように静かに曲を閉じる。
脚注
参考文献
![]() | 出典は列挙するだけでなく、脚注などを用いてどの記述の情報源であるかを明記してください。記事の信頼性向上にご協力をお願いいたします。(2012年12月) |
- 吹奏楽版 フルスコア解説
- 樋口幸弘 CD解説:ヨハン・デメイ:交響曲第1番「指輪物語」(名古屋フィルハーモニー交響楽団、指揮:大勝秀也) スペース・コーポレーション BPHCD-8001
- 作曲者のホームページ (管弦楽版)
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