減少の背景とは? わかりやすく解説

減少の背景

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/02 03:53 UTC 版)

ゲンゴロウ」の記事における「減少の背景」の解説

減少主な原因は以下のようなのである生息環境破壊本種を始めゲンゴロウ類生息域となる水辺環境(本種の場合池沼水田など)がまとまって存在することが個体群存続必要だが、池沼開発および灯火ゴルフ場造成は本種の生息域破壊し様々な環境悪化複合的に組み合わさったことで生息地分断される現象発生している。 水田の畔など水辺の岸は本種の幼虫になるために非常に重要な場所だが、畔のコンクリート化・水田全体を囲む波板設置都市近郊だけでなく山間部水田でも行われたため、本種幼虫蛹化所を失っていった。現在では恵まれた環境の池を除くと「水田の横に素掘りの溝が残っているような棚田」でしか生息できなくなったが、その溝も圃場整備進み消えつつある上、後述のように繁殖場所として利用していた苗代利用できなくなった都築谷脇猪田 (2003) は本種が激減した要因として「完全変態経由するゲンゴロウなど水生甲虫類不完全変態であるタガメなど水生カメムシ類半翅目)とは違い蛹化する場所として土の陸上部分が必要である。本種は仮に汚染されていない豊富な餌があってもゴムシート張りため池コンクリート護岸池沼では全く繁殖できず、繁殖場所の消滅そのまま種の絶滅直結する可能性が高い」と指摘している。 過疎化高齢化減反政策により増加した休耕田放棄水田溜まれば一時的にゲンゴロウ生息地となるが、水はけの悪い場所を除くと1年 - 2年程度乾燥してしまうた全体として水辺環境自体減少につながる。またため池管理放棄放棄水田植生遷移も本種の生存脅かしており、定期的な水抜きによる底泥の除去・堤の草刈りなどがなされなくなると底泥が溜まり樹木覆われ暗くなることで生き物生息しにくくなるため池改修宅地開発による生息域埋め立て脅威となっている。これに加えて本種やタガメ水銀灯などの街灯設置により街灯の光に誘引されて発生地から離れ戻れなくなることで死亡する個体多く、これも個体数原因重大な要因である。 農薬汚染本種・タガメ有機的な汚染には強いが農薬洗剤など化学的な汚染には弱い。1950年代 - 1960年代、および1970年代初めにかけて強毒性農薬ベンゼンヘキサクロリドBHC)・ピレスロイド系パラチオンなど)が空中散布含めて大量に使用されたため、本種は大きなダメージを受け、それとほぼ同時期に多く地域から絶滅した。本種を含めた多く水生昆虫多くの種が初夏 - 夏場新成と旧成虫世代交代なされるが、その時期に農薬散布される新成・旧成虫ともに多く死滅するほか、仮に旧成虫だけが死滅して新成生き残ったとしても農薬汚染され水生動物食べれば死に直結する1970年代以降農薬毒性効果持続性ともに低下したものの、1990年代ごろからは「人間対す毒性は弱いがゲンゴロウ類に対して毒性が強い」殺虫剤田植え同時期に使用されるようになっており、市川・北添 (2010) は「その影響かどうか不明だが、それとほぼ同時期からコシマゲンゴロウなどの小型種含めたゲンゴロウ類急速に減少している」と指摘している。また殺虫剤のみならず水田生える稲以外のすべての植物・畔の水田雑草として駆除するため水田に除草剤散布されると、ゲンゴロウは仮に殺虫剤使用されていなくても産卵床となるオモダカ・コナギなどの水草枯死しているためその水田では繁殖できない農法変化農薬災禍免れて生き残ったゲンゴロウ圃場整備による水田乾田化・水田脇の水たまり消失により減少したかつては4月上旬から苗代に稲の種籾蒔いて生育させた上で手植え行っており、本種・カエルなどが苗代繁殖場所として利用していたが、田植機普及すると稲のビニールハウス箱の中で栽培するようになったため、苗代姿を消し水田張られるのは4月下旬以降となった。そのため水田への湛水水張り)はそれまでより約1か月遅れるようになり、ゲンゴロウ産卵期初期産卵できる場所を失うこととなった。 また水田への湛水 - 土用干し中干し)までの期間が約30日 - 45日程度に短縮され結果田植え後に産卵され孵化した幼虫上陸前なくなって乾燥死してしまうようになったため、水田ではゲンゴロウ生活史カバーできなくなった市川・北添 (2010) はゲンゴロウ類保護活動保護重視した稲作などに関して「『完全な無農薬水田を耕さず土用干し中干しもしない自然農法水田ゲンゴロウ類にとって最も理想的だが、この農法収穫量減少などデメリット伴うためすぐに実行することは難しい。しかしゲンゴロウ類保護観点入れると『ゲンゴロウ産卵孵化してから成虫羽化するまで』の4月 - 7月ごろまでは減農薬無農薬にして土用干し控えめにし、畔際に素掘りの溝(ひよせ)を設けて土用干しの際にゲンゴロウ類などが逃げ込める場所を作ることから始めるとよい」と提言している。 侵略的外来種存在生息地侵入したブラックバスオオクチバスなど)・アメリカザリガニ・ウシガエルといった侵略的外来種放逐されコイ存在。これら外来種による食害も本種の減少拍車をかけており、実際に秋田県駆除のために捕獲されオオクチバスの胃から本種成虫やガムシ・オオコオイムシなど水生昆虫出てきている。 西原 (2008) は「かつて教科書などで水生生物代表格として挙げられていたタガメ・ゲンゴロウなど水生昆虫取り上げられなくなり逆に外来種であるアメリカザリガニ代表種として取り上げられたことが増えたことは水辺環境危機的状況映し出している。『アメリカザリガニ侵略的外来種だ』とはほとんど認識されておらず、幼稚園・小学校学校教材として利用までされていることは大問題だ」と指摘している。その上でゲンゴロウ類保護提言1つとして「オオクチバス侵入してしまったため池では3年間は継続して水抜き駆除を行うことが必要だ。またアメリカザリガニ学校教材ペットとして扱うべきではなく1日早く特定外来生物指定すべきだ」と述べている。 採集圧・乱獲前述のような理由だけでなく、近年ペットショップなどで高値取引されるため、業者マニアによる無秩序な採集脅威になっている1990年代以降にカブトムシ・クワガタムシ類と同様にゲンゴロウ類ペットとして需要高まったことで、特に高価に売買される希少な種類中心に収集販売目的捕獲が行われ、個体群再生産能力上回る採集圧・捕獲圧悪影響受けているほか、残った生息地でも環境破壊による絶滅個体数激減起きている。 無秩序な採集者(乱獲者)の中には1度100単位捕獲する者・限られた場所で何度も徹底して捕獲する者がいることからその地域希少種絶滅追い込むだけでなく、採集目的水辺何度も踏み込むことで泥をかき回し水生植物痛めつけたことで水辺環境悪化した例もある。各地域出されている昆虫目録レッドデータブック希少生物の生息地公表されるとそれが「採集のための案内となってしまうほか、インターネット上で貴重な生息地情報拡散されることも問題となっている。 矢崎充彦は『豊田生きものたち』(2009年豊田市)にて「人気種であるゆえに生息地明らかになる乱獲さらされ保全すべき場所すら公表しにくい事態起きており、それが希少生物保護をより難しくしている」と指摘している。 また一部愛好者の間ではチョウ・ホタルなどと同様にゲンゴロウ類放流行われているが、他地域ゲンゴロウ人為的に移入することは遺伝子攪乱要因となるため、西原 (2008) は「今後はトキ・コウノトリのようにゲンゴロウ類でも絶滅激減した地域再生され生息地で飼育個体放流する野生復帰が行われる可能性があるが、その際には他地域のものではなくその地域個体放流すべきだ」と提言している。

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減少の背景

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/18 19:58 UTC 版)

タガメ」の記事における「減少の背景」の解説

日本におけるタガメ有史以前洪水にたびたび見舞われる後背湿地の浅い池などで暮らしていたと考えられるが、人間稲作のために造り上げた水田ため池用水路などを主な生活場所とするようになり、人間開墾して水田面積広げるとともにその生息域拡大してきた。仮に年間通じて保たれている状態が必要な生物の場合秋に抜かれる死滅してしまうが、タガメ初夏に浅い水域水田)で繁殖し羽化した成虫秋に水田離れて周囲雑木林などで越冬するため、稲作始まってから水田広がりとともに繁栄することができた。 環境省は本種を平地湖沼における指標昆虫指定しているほか、かつて淡水生物扱った子供向け絵本図鑑ではゲンゴロウ・アメリカザリガニとともに水田・池に住む普通種として取り扱われていた。 「田にいるカメムシ」を意味するタガメ」の名を冠し多く地方名存在することからもわかるように、かつては日本人にとってなじみ深い昆虫一種で、農薬普及する以前1950年代初めまでは日本各地水田普通に見られゲンゴロウ並んで日本水田代表する昆虫だった。昭和30年代ごろまではアゲハ・モンシロチョウと同程度頻度見かけることができたため希少価値はほとんど感じられず、生息記録データとなる標本もほとんど残されていなかったほどだった。 しかしタガメベンゼンヘキサクロリドBHC)・ピレスロイド系などの農薬一度使用しただけで復活困難になるほど農薬弱く高度経済成長期以降日本各地農薬散布圃場整備盛んに行われたことで急速に生活場所を奪われた。以下の国立環境研究所による研究結果が示すように、タガメ農薬直接的間接的な悪影響強く受けている。 農薬により96時間以内タガメ1齢幼虫半数死亡する濃度LC50)は以下の通りBHC使用禁止) - 0.07ppb DDT使用禁止) - 3.6ppb ピレスロイド系 - 0.5ppb またタガメ残留農薬にも極めて弱く上記のような農薬1ppm溶液1時間曝露しグッピータガメの1齢幼虫与えると1回摂食すべての幼虫死亡することも確認された。 近年農薬は強い残留性こそないが昆虫を殺す能力強くタガメは5齢幼虫成虫なら濃度によっては耐えられるが、4齢以下の幼虫はほとんど死亡する。その上、タガメ・ゲンゴロウを含めた多く水生昆虫多くの種が初夏 - 夏場新成と旧成虫世代交代なされるが、その時期に農薬散布される新成・旧成虫ともに多く死滅するほか、仮に旧成虫だけが死滅して新成生き残ったとしても農薬汚染され水生動物食べれば死に直結する野外採集した餌の場合農薬などの化学物質汚染されていることがあり、そのような餌を与えると中毒死してしまう場合がある。実際に市川(2018)は「オタマジャクシ生物濃縮により農薬蓄積されている場合があるため、無農薬栽培行っている水田以外で採集したオタマジャクシを餌として与えるとタガメ死亡する可能性がある」と指摘している。 特に1970年代初めまで使用された高残留農薬BHCなど)・急性毒性の高い農薬パラチオンなど)によりタガメ大きく個体数減らし1975年ごろになる生息地は主に丘陵地ため池とその周囲水田限られるようになった丘陵地ため池はより上側に(農薬散布される水田があっても水代わりが良いことから農薬残留少なくタガメはそこで生き残ることができたが、バブル景気下の乱開発ゴルフ場開発など)によりそれらのため池次々と汚濁破壊されたため、さらなる生息地消滅による地域個体群絶滅個体数激減起こった。また水田耕作放棄ため池管理頻度減少結果的にタガメ生息地多く陸地化させ、生息適地面積や餌となる土壌両生類などを減少させてしまうため、その地に生息するタガメ個体群絶滅つながった現代日本淡水域は「山間部など一部除いてほとんどが殺虫剤除草剤合成洗剤といった化学的汚染物質汚染されている」状態となっているほか、大型耕作機械導入目的とした土地改良圃場整備により年間通じて湿田状態だった水田乾田化された。止水域における食物連鎖頂点に近い位置にいるタガメにとって、餌となる生物たちの減少は種の存続を脅かす問題で、それまで生物相豊富だった素掘り用水路三面コンクリート張り流れ速く隠れ場所もないため、生き物がほとんど生活できない)に改修されたため、タガメにとって適した生息地水草が豊かで水流穏やかな浅い水域)が急速に消滅したほか、1990年代には低山地の棚田などで生き残っていたタガメも餌となるメダカ・ドジョウ・カエルなど多く生物激減したことに伴い生息地奪われた。これに加えて水田への湛水 - 土用干し中干し)までの期間が約30日 - 45日程度に短縮されたことでゲンゴロウ・タガメなどの水生昆虫悪影響出ているほか、タガメ冬眠する際にゲンゴロウ類ヘイケボタル幼虫蛹化する際と同じく水田の畔の土に潜るが、重機硬く固めた土には潜ることができない近年はタガメ・ゲンゴロウなどに限らず日本水辺在来生物にとってはブラックバス・ブルーギル・ウシガエル・アメリカザリガニなど侵略的外来種による生態系破壊大きな脅威となっている。また農薬農地改良圃場整備)・侵略的外来種存在だけでなく、道路照明増加したことにより照明飛来し路面落ち死亡する個体増加したことも生息数激減要因とされている。このほか生息環境破壊によりタガメ生息地縮小および水域ネットワーク分断されることによりアリー効果が働くほか、個体群隔離により近親交配による近交弱勢進行加速させる可能性指摘されている。 またタガメ大型かつ希少魅力的な種であることからペットショップ・インターネットなどで高値取引されており、それに伴う採集圧が高まっていることも激減要因となっている。タガメ農薬洗剤などによる化学的水質汚染にはかなり耐性が低い一方有機的な水質汚染にはかなり強く清流域にはむしろほとんど見られない一方で化学的汚染物質流れ込まず、かつ生物相豊かな水域」である水田水田脇の生えた堀上流れが緩やかで淀んだ用水路などでは多く個体観察できるが、食物網の上捕食者であることから健全な生息地でも他の昆虫比べれば個体群密度が低いため、個人的に少数個体採集する場合でも多く人間同一産地採集することは個体群大打撃与えかねない

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