懲戒免職
別名:懲戒免職処分、懲免
不適切な行為があった公務員に対し懲戒として行う免職処分のこと。民間企業における懲戒解雇に該当する。
公務員に懲罰として科される懲戒処分には、免職処分の他に停職、減給、戒告がある。懲戒免職は4種の懲戒処分の中で最も重い。通常、懲戒免職者には退職金が払われず、経歴も大いに傷つくといえる。
懲戒処分は、その不適切行為の内容によって重さが加減される。中でも、その立場や職掌にあるまじき行為、公務員としての道義にもとる行為をはたらいた者などに対して、懲戒免職の処分が下されることが多い。
懲戒免職になった公務員の例として、万引きした警察官、ひったくりした警察官、女子生徒にわいせつ行為をした教員、酒気帯び運転の果てに事故を起こした市職員などがある。
なお、免職処分には懲戒免職の他に分限免職がある。
免職
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免職(めんしょく)とは、任命権者が公務員の職を一方的に免じ(解き・剥奪し)身分を失わせる処分をいう。
通常は免職という表現は公務員に対して使われ、民間企業では解雇という表現が一般的だが、両者に法的な違いはない。
免職を表す語では、殆どの動物が頭部を切断されると死亡するのに例えて、「馘首(かくしゅ)」・「首を切る(或いは切られる)」・「首が飛ぶ」または、単純または平易に「クビ(になる、にする)」・「切る」と表現されることが多い。処分の態様として、懲戒免職と分限免職に区分される。
懲戒免職
懲戒免職(ちょうかいめんしょく)とは、職場内の綱紀粛正及び規律と秩序の維持を目的として懲罰の意味で行う免職のことであり、職務に関するあらゆる懲戒処分の中で最も重い処分である。具体的には、法規違反や職務上の義務違反、職務懈怠、全体の奉仕者としてふさわしくない非行などを理由に行う。
任命権者は懲戒免職を行う前に、国家公務員は人事院、地方公務員は人事委員会もしくは公平委員会へ解雇予告の除外を申請し、認定が得られた場合には通常の退職手当を支給せず、即日(即時)に免職できる。この認定が得られない場合には、免職の際に解雇予告手当にあたる「予告を受けない退職者の退職手当」を支給しなければならない。
懲戒免職の宣告を受けた場合、その対象が20歳以上の成人では多くの場合で氏名や職名などが公表され[1][2]、再就職も非常に困難となる。また、公務員は雇用保険に加入しないため、同制度上の失業給付を受けることもできず、再就職しない限り収入を得る手段がまったくなくなる。さらに、宣告を受けた日から2年間、国家公務員の場合は国家公務員に、地方公務員の場合は当該地方公共団体の地方公務員に就職することはできない(国家公務員法・地方公務員法ともに『欠格事項』として定められている)。年金も、職域年金相当部分の額の2分の1が60か月間支給停止される。
以上のようにきわめて厳しい処分であるため、その運用は厳格[3]に定められており、民間企業であれば確実に懲戒解雇となるような行為であっても、多くの場合は停職以下の処分や諭旨免職相当の処分となる。このため、懲戒免職となるのはきわめて悪質なケース[注 1]に限られている。
分限免職
分限免職(ぶんげんめんしょく)は、公務員に対する「身分保障の限界」という意味で、組織の能率的運営の維持・確保を目的として行われる免職のこと。具体的には、財政悪化などに伴う人員の整理削減、事故・災害による死亡または長期間の行方不明、心身の故障等による職務への従事不能・勤務成績不良、公務員としての適格性を欠くことなどを理由に行う[4]。通常の退職手当が満額支給されるが行方不明の場合、その理由が単なる出勤拒否や職務の放棄、借金取り立ての回避など、著しく正当性を欠いている場合には職務懈怠として懲戒免職になることがある。社会保険庁が日本年金機構に移行した際に、懲戒処分を受けた社会保険庁職員に対して、大量の分限免職者が発生した。
諭旨免職(依願退職)
諭旨免職(ゆしめんしょく)とは、任命権者が公務員の非行を諭し、自発的に辞職するように促す退職勧奨の通称。
趣旨としては懲戒に近いものがあるものの、履歴書上の扱いは免職ではなく自己都合退職となる。具体的には、停職以下の懲戒処分にしたうえで自己都合退職を認める形態をいう。退職手当は懲戒処分により一定割合を減額したうえで支給されるが、処分が国家公務員法・地方公務員法上の懲戒処分未満(訓告や注意など)の場合は減額されない。免職と呼びながら通常の退職手当が支給されることに世間から非難があったため、現在ではこの用語は使われず、報道では「停職6ヶ月の処分となり、同日付で依願退職した」などと表現される。また警察組織を中心に諭旨免職者に対して再就職先が斡旋されることも多い[注 2]。
根拠法規及び参考文献
- 国家公務員法第78条、第82条
- 地方公務員法第28条、第29条
- 人事院規則11-4、12-0
- 公務員等の懲戒免除等に関する法律
- 人事法令研究会『人事小六法』<平成20年版>学陽書房、2008年
- 退職手当制度研究会『公務員の退職手当法詳解』<第4次改訂版>学陽書房、2006年
- 退職手当制度研究会『公務員の退職手当質疑応答集』<全訂第4版>学陽書房、2007年
脚注
注釈
出典
- ^ (例)防衛省・自衛隊:懲戒処分の公表(防衛省HP,「お知らせ」項)
- ^ 懲戒処分の公表指針について(平成15年人事院事務総長発)、ただし、20歳未満の者で懲戒免職に処された場合は本人の将来性などを考慮して公表されない場合もあるが、最終的な判断は任命権者の裁量に委ねられる
- ^ “水巻町職員の懲戒処分に関する基準”. 水巻町ホームページ. 2020年7月15日閲覧。
- ^ 知恵蔵mini『分限免職』 - コトバンク
関連項目
懲戒・免職
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/21 19:03 UTC 版)
第28条(降任、免職、休職等) 職員が、次の各号の一に該当する場合は、降任または免職することができる。勤務実績が良くない場合 心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、またはこれに堪えない場合 その職に必要な適格性を欠く場合 職制もしくは定数の改廃又は予算の減少により廃職または過員を生じた場合 職員が、次の各号の一に該当する場合においては、休職することができる。心身の故障のため、長期の休養を要する場合 刑事事件に関し起訴された場合 職員は次の一に該当するときは、その職を失う(欠格)。禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまでまたはその執行を受けることがなくなるまでの者 人事委員会または公平委員会の委員の職にあつて、罰則条項に規定する罪を犯し刑に処せられた者 日本国憲法またはその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、またはこれに加入した者 第29条(懲戒) 職員が次の各号の一に該当する場合においては、懲戒処分として戒告、減給、停職または免職の処分をすることができる。法律もしくは規則等に違反した場合 職務上の義務に違反し、または職務を怠った場合 全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合
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「懲戒免職」の例文・使い方・用例・文例
- 懲戒免職という行政処分
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