ネオ・ダダとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > 言葉 > 状態 > 動向 > ネオ・ダダの意味・解説 

ネオ‐ダダ【neo-Dada】


ネオ・ダダ

読み】:ネオ・ダダ
【英】:NEO-DADA

1950年代の末、ニューヨークにおいて、ラウシェンバーグジャスパー・ジョーンズが、あいついで個展開いた当時美術の世界は、抽象表現主義全盛きわめていたが、その中で彼らは、日常具体的、卑俗的な、すぐそれと知れるようなものを画面登場させ、大胆な画風示したラウシェンバーグは、絵画に布や写真印刷物などを加えて雑多なイメージ画面集めてくるコンバイン・ペインティングを、ジョーンズ国旗標的などを画面クローズアップすることで、反芸術新し表現スタイルうちだした。これらの創作活動を、芸術対す挑戦的な姿勢とみなし、「ダダ再来」という意味でジャーナリスト名付けたものが「ネオ・ダダ」である。日本1960年読売アンデパンダン展に、ネオ・ダダ・オルガナイザーズというグループ出品するなど、影響受けている。ネオ・ダダは抽象表現主義につづき、後のポップ・アート出現をまつことになる。

ネオダダ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/03 04:54 UTC 版)

ネオダダ (Neo-Dada) は、作品制作の方法論や意図が初期のダダイスムと類似点を持つ、1950年代後半から1960年代アメリカ合衆国美術家や美術運動(アート・ムーブメント英語版)を表すのに使われた用語[1]である。

起源

もとは、1958年のアートニューズ誌において、当時廃物や大衆的なイメージを使用した絵画で抽象表現主義に替わり注目を浴びつつあったロバート・ラウシェンバーグジャスパー・ジョーンズといった画家、ハプニングなどのパフォーマンスアート活動を行っていたアラン・カプロークレス・オルデンバーグジム・ダインなどの作家たちを一括りに特集し、美術評論家ハロルド・ローゼンバーグ英語版がこれらにネオダダと名づけたことがはじまりである。以後、評論家バーバラ・ローズ英語版によって「ネオダダ」という用語は1960年代に広まり、おおむね1950年代1960年代にこれらの作家によって行われた活動を指して使われる。

特徴

ネオダダの作品の例としては、既製品の使用(レディメイド)や大衆的な図像の流用(アッサンブラージュコラージュ)、そしてその不条理性などがある。また伝統的な芸術美学の概念を否定する反芸術的なところもある。これらの手法や反芸術性が、新たなダダイスムとみなされた要因である。確かにロバート・ラウシェンバーグの、既製品を組み合わせて(コンバインして)その上から絵具を塗りつけたコンバイン・ペインティングなどはレディメイドやアサンブラージュなどと形式上共通点がある。

しかし、ネオダダは、概念言葉の実験としてのレディメイドなどを制作した第一次世界大戦後のダダイスムとは時代背景が異なり、より工業化や大量生産・大量消費が進み廃物があふれていた時代のアメリカを舞台としているため、新品よりは廃物を好んで用いたり新品を廃物同様にするなどより即物性や即興性が強い。これらの作品はジャンク・アート(ゴミ芸術、廃物芸術)などとも呼ばれていた。反芸術でありながら、環境を埋め尽くしていた廃品を新たな自然と見て、そこにを見出そうとしたネオダダを「工業化社会の自然主義」と呼ぶ向きもある。

ネオダダに属する作家たちのうち、ロバート・ラウシェンバーグらは1930年代から1950年代にかけて存在したノースカロライナ州ブラックマウンテンのリベラル・アーツ・カレッジブラック・マウンテン・カレッジ」で学んでいた。ここでは美術家のみならず音楽家、詩人、思想家らが教えており、なかでも教鞭をとっていた音楽家ジョン・ケージの、音響を即物的に考えることや偶然性を利用するといった活動から強い思想的な影響を受けている。もともと「何もせずに黙りこくる」という発想はケージのオリジナルではなく、エルヴィン・シュルホフの「五つのピトレスク」で初めて楽譜になったものであり、これをケージが「4分33秒」にしたこと自体がネオ・ダダの発端であった。ヨーロッパで発案されたものがアメリカ流に改良され、理論化されたものがネオダダなのである。

ジャンク・アート、反芸術の世界同時多発

この時代には、同じく廃物を寄せ集めた芸術作品や、従来の美術の範疇をはみでたハプニング、パフォーマンス、「反芸術」的な潮流が、工業化した欧州や日本など各国に現れた。

  • フランスではこの頃、収集した生ゴミを透明ケースに入れたり、同じ種類の機械や道具の残骸を無数に収集して組み合わせたアルマン、くず鉄を寄せ集めて溶接した「アマルガム彫刻」や自動車をプレス機に入れて直方体に圧縮する「圧縮彫刻」を行ったセザール、日用品などを梱包していたクリストら、工業社会の「自然」をあるがままに受け容れそこに意味を見出そうとする作家たちが活躍していた。1960年、こうした傾向の作家たちを集めて評論家ピエール・レスタニによる展覧会が行われ、これに、さまざまなパフォーマンスを行っていたイブ・クラインや、ジャン・ティンゲリーニキ・ド・サンファルらが集まり、「ヌーヴォー・レアリスム」というグループを組んだ。グループは数年で解体したが、その思想や活動はネオダダと通じ合うものがある。
  • ドイツでは美術家や音楽家詩人などをメンバーとするパフォーマンスアートのグループが現れ、1961年フルクサスの名が使われた。流転・変転し、二度と同じことを繰り返さないという彼らのパフォーマンスは各国の芸術家を巻き込み、1960年代前半にかけてドイツやアメリカなどで非常に活発に活動した。
  • 日本でも反芸術の動きが1960年前後に活性化していた。
    • 1954年から関西に具体美術協会が現れ、1950年代後半にかけてアクション・ペインティングや野外におけるインスタレーションなど矢継ぎ早に活動を行った。ここにはネオダダ的な身近な素材の利用やハプニング、反芸術の要素が多く含まれていた。
    • また、1950年代後半ごろから、東京都美術館で行われていた無審査公募展読売アンデパンダン展」(世界中で行なわれているアンデパンダン展の一つ)に廃物などを利用した作品が数多く出展されるようになり、1960年に評論家・東野芳明がこの展覧会に出展していた工藤哲巳の作品を評して「反芸術」の語を使用し、日本の若手美術家に反芸術ブームを起こした。
    • 1960年荒川修作吉村益信篠原有司男風倉省作(風倉匠)・赤瀬川原平ら、読売アンデパンダン展に出展していた若い作家たちがネオ・ダダイズム・オルガナイザーズという組織を結成。その後「ネオダダ」と名称を簡略化し、3度の展覧会を実施したが、荒川修作の除名問題や吉村益信の結婚による活動場所の問題を経るなどわずか1年たらずで解体する。しかし、その間に社会風俗現象として週刊誌などマスコミを大いに賑わせ、一部美術評論家に注目されるアナーキーな作品や構想を数多く残し、スキャンダリズムを旨とする日本の前衛美術のひとつの傾向を示す典型となった。
    • その後、メンバーの大半が渡米したが、赤瀬川原平は1963年高松次郎中西夏之と「ハイレッド・センター」を結成して反芸術的なパフォーマンスを開催し、篠原有司男らは新たなアメリカの動向であったポップ・アートにいち早い反応を見せた。

ネオダダの影響

ネオダダや反芸術の運動は、現在に至るまで多くのパフォーマンスアートや芸術表現に影響を与えている。また、アメリカではすぐ後に来るポップアートに手法的・理論的な影響を与えた。

作家

脚注

  1. ^ Chilvers, Ian and John Glaves-Smith. A Dictionary of Modern and Contemporary Art. Oxford University Press (2009), p. 503

参考文献

  • Dorothée Brill, Shock and the Senseless in Dada and Fluxus, Dartmouth College 2010
  • Catherine Craft, An Audience of Artists: Dada, Neo-Dada, and the Emergence of Abstract Expressionism, University of Chicago 2012
  • Susan Hapgood, Neo-Dada: Redefining Art, 1958-62, Universe Books and American Federation of Arts (1994)
  • David Hopkins, Neo-avant garde, Amsterdam, New York 2006
  • Cecilia Novero, Antidiets of the Avant-Garde: From Futurist Cooking to Eat Art, University of Minnesota 2010
  • Owen Smith, Fluxus: The History of an Attitude, San Diego State University 1998
  • Alan Young, Dada and After: Extremist Modernism and English Literature, Manchester University 1983, pp.201-3 and Brill
  • Robert Goldwater in A Dictionary of Modern Sculpture, London 1962
  • Bertram Mourits, The Conceptual Poetic of K. Schippers: the aesthetic implications of literary readymades, Dutch Crossing 21.1
  • Hugo Brems, Contemporary Poetry of the Low Countries, Flemish Netherlands Foundation, 1995

関連項目


ネオダダ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/31 14:14 UTC 版)

ダダイスム」の記事における「ネオダダ」の解説

詳細は「ネオダダ」を参照 アメリカではダダ流れを汲むニューヨーク・ダダニュー・バウハウスなどの土壌があったが、1960年代ダダイスム運動復興し、ネオダダと呼ばれ、「反芸術運動として隆盛した。のちのポップアートやコンクレーティズム(日本では具体派)、コンセプチュアリズムなどへ分岐していった。この意味第二次世界大戦以後現代美術震源地となったといえる

※この「ネオダダ」の解説は、「ダダイスム」の解説の一部です。
「ネオダダ」を含む「ダダイスム」の記事については、「ダダイスム」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「ネオ・ダダ」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

「ネオダダ」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



ネオ・ダダと同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ネオ・ダダ」の関連用語

ネオ・ダダのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ネオ・ダダのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
徳島県立近代美術館徳島県立近代美術館
Copyright:徳島県立近代美術館.2025
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのネオダダ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaのダダイスム (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS