じゅう‐けん【銃剣】
【銃剣】(じゅうけん)
bayonets バヨネット
小銃を携えたまま白兵戦を行う際、銃身の先端に装着する槍の穂先のような武器。
取り外して護身用のサーベル・短剣として利用可能なものが多いため、日本語では「銃剣」と称される。
多くの銃剣は片刃で、持ち上げた銃を振り下ろす「アメリカ式」の用法に合わせて刃を下向きにするのが一般的。
旧ソ連のAKシリーズなどでは、突き刺してから斬り上げる「ロシア式」に沿って上向きに取り付ける。
どちらにせよ基本的な用途は突き刺す事であり、刃を使って斬る技術は熟練を要する。
小銃がセミオートもしくはボルトアクションであった第二次世界大戦の時代までは、白兵戦用の武装として広く用いられた。
しかし自動小銃の登場後、旧来の白兵戦は至近距離での銃撃戦へと変質していった。
また、近年の小銃は小型軽量化されたため、槍として使う場合にも小型軽量で威力が頼りない。
このため、近年の銃剣は戦場で歩兵が使う「銃剣としても使える多用途工具」へと変質しつつある。
しかし、古くから伝統的に使われてきた装備であるため、軍隊の儀礼的象徴として今でも広く用いられている。
銃剣道
銃剣は、小銃の銃身を柄として用いる槍の一種であり、用法も短槍のそれに類似する。
このため日本では槍術を参考にして考案された「銃剣道」なる武道も存在する。
とはいえ、そうした武術に「実戦的価値があるか否か」を疑問視する向きもある。
体力練成や精神的鍛錬としてはともかく、銃剣を振るう技巧を高める意味はない、というのである。
ただし、これは「槍では銃に勝てないから」という意味ではない。
銃剣で生じる戦果の大半は、錯乱して逃げ惑う無防備な人間を背後から襲った結果だと推定されているためである。
銃剣突撃
歩兵が銃を持っていて当然の時代になぜ銃剣突撃が行われ、成功を収めたかについては説明が必要だろう。
銃剣突撃は状況次第では極めて有効な戦術であり、現代でも実行する価値がないわけではない。
力学的に考えた場合、銃剣を構えて突撃した兵士達は、マスケット銃の斉射で薙ぎ倒されて全滅するのが自然である。
だが多くの戦場ではそうはならなかった。突撃に対する狙撃は人間工学的に多少無理があったからだ。
「雄叫びを挙げて突進する血走った目の男」が与える恐怖は、銃声のそれを遙かに上回る。
よって、突撃する部隊に対する迎撃は強烈な恐怖を伴い、多くの兵士はこれによって錯乱状態に陥る。
銃剣突撃が成功するか否かは、敵が冷静さを取り戻す前に肉薄できるかどうかにかかっている。
いったん槍の穂先が届く距離まで接近してしまえば、狼狽えた犠牲者に抵抗の余地はほとんどない。
ただし、銃剣突撃に遭遇してから1秒未満で冷静さを取り戻すような人間も希にいる。
そういう人間がフルオート掃射できる武器を持っていれば、突撃部隊には悲劇が待っている。
また、重機関銃などチームを組んで撃つ武器は、互いを励まし合って素早く冷静さを取り戻す傾向にある。
つまり、銃剣突撃の本質は雄叫びをあげて突撃する事にあり、要するに単なる脅しである。
しかし、歩兵の役割は敵の拘束もしくは排除であり、そのためには威嚇さえできれば良かった。
逃げ出した敵は馬で追いかける騎兵か狙撃で仕留めればよく、殲滅する必要がある場合は砲兵の出番になる。
構えた銃剣はもっぱら防御のためか、泣きわめく敵兵を黙らせるために振るわれた。
ちなみに、突撃の恐怖による錯乱は、銃剣を構えて突撃する当人達にも当てはまる。
このため、敵味方が共に銃剣突撃を選択した場合には悲惨ながら滑稽な光景が展開された。
両軍ともに錯乱状態での激突は、さながら泥酔者が千鳥足で銃剣道の試合をするようなものだった。
事実、隊列を維持したまま激突が続く段階で死傷者が発生したという記録はほとんどない。
銃剣突撃で惨劇が発生するのは形勢が定まって敗者がいよいよ恐慌し、勝者が一呼吸置いてからである。
銃剣
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/28 07:40 UTC 版)
銃剣(じゅうけん)は、銃の先端部に装着して、槍のような戦い方ができるように工夫された武器のことである。現代では短剣に着剣装置をつけたものが一般的だが、歴史上では刺突に特化した針(スパイク)状のものも多い。
注釈
出典
- ^ Needham, Volume 5, Part 7, 456.
- ^ Binglu 《兵錄》, Scroll 12.
- ^ “官軍兵士軍服 付 外套・シャツ - 港区の文化保護目録 | 港区立郷土歴史館”. www.minato-rekishi.com. 2021年7月6日閲覧。
- ^ 新たに「コンバットナイフ」としての役割が与えられ(中略)『M9銃剣』などがその代表『図解ミリタリーアイテム (F-Files)』146Pより引用
- ^ “Last charge for the bayonet - a victim of modern warfare”. The Telegraph (2002年9月15日). 2015年12月1日閲覧。
- ^ “Argylls fight hand to hand in Iraq”. The Scotsman (2004年5月17日). 2015年12月1日閲覧。
- ^ “Royal Marine awarded gallantry medal proposes at Buckingham Palace”. The Telegraph (2009年12月12日). 2015年12月1日閲覧。
- ^ “Soldier who led Afghanistan bayonet charge into hail of bullets honoured”. The Telegraph (2012年9月28日). 2015年12月1日閲覧。
- ^ “ARMY RESUMES BAYONET TRAINING”. The New York Times (1981年11月7日). 2015年12月1日閲覧。
- ^ “2010 brings major transformation to Basic Combat Training”. U.S. Army (2010年7月19日). 2015年12月1日閲覧。
- ^ “Army drops bayonets, revamps training”. Army Times (2010年3月16日). 2015年12月1日閲覧。
- ^ “One less skill for soldiers to master at boot camp: bayonet training”. The Christian Science Monitor (2010年9月28日). 2015年12月1日閲覧。
- ^ “Has the Army eliminated bayonet training?”. Stars and Stripes. 2015年12月1日閲覧。
- ^ 写真の説明文では、第1の標的を銃剣で突き、第2の標的を射撃すると記述されている。
- ^ a b c 「「国際協調」のオバマ氏と「強いアメリカ」のロムニー氏 最後の討論会で激突」 (日本語) 産経新聞(MSN産経ニュース)の記事(2ページ構成の2ページ目)。2012年10月23日配信、2013年1月5日閲覧
- ^ 英文では“You mentioned the Navy, for example, and that we have fewer ships than we did in 1916. Well, governor, we also have fewer horses and bayonets, because the nature of our military’s changed. We have these things called aircraft carriers, where planes land on them. We have these ships that go underwater, nuclear submarines.”となっている
- ^ a b 池原麻里子「アメリカ大統領選挙UPDATE 8:「2012年ディベートの総括」」 (日本語) 東京財団による2012年の合衆国大統領選に関するレポート。2012年10月30日掲載、2013年1月5日閲覧
- ^ a b 「世界・地域分析レポート 2012年10月24日 (PDF) 」 (日本語) 三井物産戦略研究所が発表している世界情勢等に関する分析レポート。2ページ目に「軍馬と銃剣」発言に関する記述がある
- ^ a b c 「いざ、天下分け目の関ヶ原「オハイオ」へ 外交論争でロムニーを一蹴するも、支持率は変わらず」 (日本語) 日経BPに掲載された、ジャーナリスト・高濱賛の記事。2012年10月29日掲載、2013年1月5日閲覧
- ^ a b 「UPDATE7: 米大統領選最終討論会、大統領がロムニー氏を猛攻 オバマ氏勝利との見方優勢」 (日本語) ロイター通信が「軍馬と銃剣」発言が出た大統領候補討論会について報じた記事。2012年10月23日配信、2013年1月5日閲覧
- ^ a b c 第3回米大統領候補討論会 ライブブログ (日本語) ウォールストリート・ジャーナル (WSJ) 日本版が「軍馬と銃剣」発言が出た大統領候補討論会についてライブ形式のブログで報じたもの。2012年10月23日配信、2013年1月5日閲覧
- ^ a b c “So, Does the Military Still Use Bayonets?” (英語) オバマ大統領の「軍馬と銃剣」発言を受けて、「軍は今現在も銃剣を使用しているのか」という点を特集したタイム誌の記事。2012年10月23日配信、2013年1月5日閲覧
- ^ a b c d “How Many Bayonets Does the U.S. Have? Quite A Few” (英語) オバマ大統領の「軍馬と銃剣」発言を受けて、「軍は今現在いくら銃剣を保有しているのか」という点を特集したアメリカ・ABCニュースの記事。2012年10月23日配信、2013年1月5日閲覧
- ^ a b “Obama Wins Twitter War With ‘Horses and Bayonets’” (英語) オバマ大統領が「軍馬と銃剣」発言で注目を集めたことで、2012年の大統領選挙での「Twitter戦争」を制したと評するABCニュースの記事。2012年10月23日配信、2013年1月5日閲覧
銃剣
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 15:52 UTC 版)
「陸上自衛隊の装備品一覧」の記事における「銃剣」の解説
名称愛称(※は部隊内通称)画像調達数注釈64式銃剣 ※新ゴボウ剣 64式小銃用。同時代の他国の自動小銃用銃剣に比べ刃渡りが長いのが特徴。※画像下のものはレプリカ品 89式多用途銃剣 ※多用途銃剣、マルチ銃剣 89式小銃用。銃剣としての他、金属ノコギリ、鞘と組み合わせてワイヤーカッタとするなど多用途に用いることのできる複合型銃剣。※画像下のものはレプリカ品 儀じょう用銃剣 儀じょう銃用。2019年にM1小銃を更新した儀じょう銃用として、7.62mm小銃M1用のM1905銃剣/M1銃剣に代わり銃本体とセットで調達された儀仗用装備。全体的な形状はM1905銃剣を踏襲している。 退役 名称愛称(※は部隊内通称)画像調達数注釈三十年式銃剣 ※ゴボウ剣 ※旧日本軍装備の再利用 九九式短小銃(改)用。旧日本軍の装備していたものを再使用したもの。九九式の使用中止に伴い用途廃止。教練用としては九九式と共にその後もしばらく使用された。 M1905銃剣 ※長銃剣、儀礼用銃剣(M1905)、ガーランド銃剣 (供与) 7.62mm小銃M1903および7.62mm小銃M1用。刀身の長いM1905の他、短縮型のM1905E1を使用。儀仗用に少数が現在でもM1小銃と共に装備されている。 M1銃剣 ※短銃剣、ガーランド用銃剣(短) (供与) 7.62mm小銃M1用。7.62mm小銃M1の退役に伴い用途廃止。少数が儀仗用として7.62mm小銃M1とともに現在でも使用されている。※画像中段上。 M4銃剣 ※カービン銃剣、短銃剣 (供与) M1騎銃用。M3ファイティングナイフに着剣装置を装備して銃剣としたもの。M1騎銃の退役に伴い用途廃止。
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銃剣
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「ファンタシースターZERO」の記事における「銃剣」の解説
今作から登場。接近戦は勿論、銃としても使用する事が出来、単発であるが3体に攻撃できる。フォトンアーツは近距離むけの銃撃メインのものが多い。レンジャーとハンターが装備可能。
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銃剣
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一部のモデルには着剣装置が付属しており、AK用の銃剣を装着できる。
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銃剣
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 14:21 UTC 版)
「M1941ジョンソン小銃」の記事における「銃剣」の解説
軍部が特に懸念を示したのは着剣時の動作である。着剣時には銃剣の重さによって反動が相殺され、銃身を十分後退させることができない可能性があった。また、刺突の際には当然銃身が後退するため、閉鎖が解除されて一時的に射撃が行えなくなった。最初に提案されたのは、17インチの銃剣をハンドガードの側面に取り付けるというアイデアである。この案は却下され、最終的には8インチのスパイク型銃剣(英語版)を銃身下に取り付ける方式が採用された。この銃剣の重量は0.35ポンドほどで、銃身の後退に影響を与えないものとされた。
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銃剣
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/05/04 06:30 UTC 版)
「ウィンチェスター M1200」の記事における「銃剣」の解説
軍用モデルは、先端に銃剣の装着が可能である。銃剣を使用するシチュエーションとしては、白兵戦・捕虜の警備・暴動への対処が想定されている。最も用いられた銃剣は、1917年にM1917エンフィールドの銃剣として採用されたM1917である。これは、第一次世界大戦後、M1903を制式ライフルとして維持したため、M1903に装着できないM1917の余剰が大量に存在し、これを着剣可能な散弾銃を設計したことに端を発するものである。
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銃剣
出典:『Wiktionary』 (2021/06/13 12:33 UTC 版)
名詞
発音(?)
- じゅ↗ーけん
翻訳
- アイスランド語: byssustingur (is) 男性
- アルバニア語: bajonetë (sq)
- アルメニア語: սվին (hy) (svin)
- イタリア語: baionetta (it) 女性
- イド語: bayoneto (io)
- インドネシア語: bayonet (id)
- ヴィラモヴィアン語: bȧjönett (wym)
- ウェールズ語: bidog (cy) 男性
- ウクライナ語: багнет (uk) (bahnét) 男性
- 英語: bayonet (en)
- エスペラント: bajoneto (eo)
- オランダ語: bajonet (nl) 女性
- カタルーニャ語: baioneta (ca)
- ギリシア語: ξιφολόγχη (el) (ksifolónxi) 女性
- スウェーデン語: bajonett (sv) 通性
- スペイン語: bayoneta (es) 女性
- スロヴェニア語: bajonet (sl) 男性
- チェコ語: bajonet (cs) 男性, bodák (cs) 男性
- 中国語:
- デンマーク語: bajonet (da) 通性
- ドイツ語: Bajonett (de) 中性
- トルコ語: süngü (tr)
- ノルウェー語: bajonett (no)
- ノルマン語: baïonnette (nrf) 女性
- ハンガリー語: szurony (hu), bajonett (hu)
- フィンランド語: pistin (fi)
- フランス語: baïonnette (fr) 女性
- ブルガリア語: щик (bg) (štik) 男性, байонет (bg) (bajonét) 男性
- ベトナム語: lưỡi lê (vi)
- ヘブライ語: כידון רובה (he) 女性
- ベラルーシ語: багнет (be) (bahnét) 男性
- ポーランド語: bagnet (pl) 男性
- ポルトガル語: baioneta (pt) 女性
- マン島語: cliwe-gunney (gv) 男性
- ラトヴィア語: durklis (lv) 男性
- リトアニア語: durtuvas (lt) 男性
- ルーマニア語: baionetă (ro) 女性
- ロシア語: штык (ru) (štyk) 男性, багинет (ru) (baginét) 男性
関連語
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