しょくむ‐はつめい【職務発明】
職務発明(しょくむはつめい)(invention in service)
自然法則を利用した高度な技術を発明し、出願・登録すると特許権が認められる。特許法によると、たとえ職務上の発明であったとしても、特許権は従業員にあると定めている。
その一方で、あらかじめ契約や勤務規則などにおいて、従業員の特許権を会社のものにできるような規定を置くことも認めている。このような規則さえあれば、従業員の発明について個別の同意がなくても自動的に会社の権利となる。
従業員が特許権を会社に譲り渡すとき、会社は「相当の対価」を支払う義務がある。実際、従業員の職務上の発明に対する特許権は、対価を支払った上で会社が譲り受けている。とは言え、金額の算定には客観的な基準がなく、会社側の意のままに決められていて、発明者の権利が守られていないという実態も一部にはあるようだ。
現在、青色発光ダイオード(LED)の発明や人口甘味料「アスパルテーム」の製法の特許権などをめぐって、元従業員がかつての勤め先を相手取り、裁判所に訴えを提起する例が目立っている。
(2002.11.22更新)
職務発明(しょくむはつめい)
”職務発明”とは、使用者(会社)の業務範囲に入る発明であって、従業員が職務上行った発明をいう。
多くの会社においては、職務発明に関して社内規定をおき、(i)”職務発明についての特許を受ける権利は会社に譲渡しなければならない”、(ii)”職務発明についての特許を受ける権利は会社に帰属する”などと定めている。なお、従業員が職務と無関係に行った発明は、職務発明ではない。従業者が完成した職務発明以外の発明について、会社が特許を受ける権利を有するとすることを、(個々の発明がされる前に)予め定めた規定は無効である。
職務発明について特許を受ける権利を会社が持つようにした場合(上記(i)または(ii)の場合)、従業者は、会社から相当の利益を受け取ることができる。青色発光ダイオード事件など、「相当の利益」をいくらとすべきかを争った事件が多い。なお、「相当の利益」について、会社と従業者との間で合意ができていれば、その合意が相当の利益となる。
職務と無関係に完成された発明のうち、会社の業務範囲に入る発明を”業務発明”とし、会社の業務とも無関係の発明を”自由発明”として区別する場合がある。企業によっては、”業務発明”について、会社への報告義務を課している場合が多い。
知的財産用語辞典ブログ「職務発明」
(執筆:弁理士 古谷栄男)
職務発明
【英】 employee's invention 【独】 Diensterfindung
使用者,法人,国または地方公共団体(使用者等)の従業者がなした発明を「従業者発明」といい,そのうち,使用者等の業務範囲に属し,かつ,その発明をするに至った行為がその従業者の現在または過去の職務に属するものを「職務発明」という。職務発明については,使用者等は当然に無償の法定通常実施権を有する(特許35条1項)。また,使用者等は,職務発明につき,契約,勤務規則その他の定めであらかじめ特許を受ける権利もしくは特許権を承継させ,または専用実施権を設定することもできる(ただし,発明者はあくまでも自然人たる従業者である。)。この場合において,職務発明をした従業者は,その発明により使用者等が受けるべき利益の額およびその発明がされるについて使用者等が貢献した程度を考慮した相当の対価を受けることができる(特許35条3項,4項)。なお,職務発明ではない従業員発明(「自由発明」という。)については,上記のような契約,勤務規則その他の定めは無効である(特許35条2項)。
関連項目
(注:この情報は2007年11月現在のものです)
職務発明
職務発明
職務発明
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/27 17:16 UTC 版)
職務発明(しょくむはつめい)は、企業の従業者等が、その職務上で行った発明である。従業者発明とも呼ばれる。
- ^ “我が国、諸外国における職務発明に関する調査研究報告書” (PDF). 特許庁 (2013年3月). 2020年10月12日閲覧。
- ^ 東京地裁平成16年1月30日判決「青色発光ダイオード事件」、その後高裁で和解。
- ^ a b “「特許法等の一部を改正する法律案」が閣議決定されました”. 経済産業省 (2015年3月13日). 2018年3月23日閲覧。
- ^ a b “職務発明制度の概要”. 特許庁 (2017年7月27日). 2018年3月23日閲覧。
- ^ “職務発明の特許の会社帰属、社員の合意条件 法改正最終案”. 日経新聞電子版. (2015年3月9日) 2018年3月23日閲覧。
- ^ “特許法第35条第6項の指針(ガイドライン)”. 特許庁 (2016年4月22日). 2018年3月23日閲覧。
職務発明
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/07 09:09 UTC 版)
名古屋地方裁判所平成6年(ワ)第951号の経緯 1970年3月 AがX社を退職する。 1971年3月 Z社が設立される。 — Aは、Z社の常務取締役に就任する。 1971年5月ころ Z社は、Aをアメリカ合衆国に派遣する。 1972年9月ころ Z社は、Aをアメリカ合衆国に派遣する。 1972年の暮ころ Aは、アメリカ合衆国で傾床型自走式立体駐車場を見学するなどして駐車場の技術改良を研究した結果、現場打ち工法による傾床型自走式立体駐車場を発案し、Z社内部の検討会などで模型をつかって説明をした。 — (Y社の主張によれば、このころ、Aが発明αを完成させた。) 1973年ころ (Z社の主張によれば、このころ、Aが発明αを完成させた。) 1974年4月 X社は、Aを再び雇用する。 1976年3月 X社は、青山パーキングビル新築工事を請け負い、同社としてははじめて傾床型自走式の立体駐車場を施工する(同年11月に完成)。 1976年4月 X社の100%出資子会社として、Y社が設立される。ただし、Y社は、官庁が発注する仕事を請け負うためには設計と施工が分離していなければならないとする行政指導に従った、形だけのものであった。 — Aは、Z社在職まま、Y社の代表取締役に就任する。 1976年4月 X社は、Aを発明者として、青山パーキングビル新築工事とほぼ同じ設計思想に基づく技術を、特許出願する(発明β)。ただし、これは、アメリカ合衆国で既存の技術をほぼそのまま取入れたものだった。 1976年7月ころ X社は、Aを中心として、新岐阜駅前駐車場の設計を開始する。これは、発明βを多少改良したものだった。 1976年7月 Xは、Aを発明者として、新岐阜駅前駐車場で用いた技術を、特許出願する(発明γ)。ただし、これは、アメリカではほぼ公知の発明であった。 1977年5月 Aを責任者とした新潟丸大百貨店の駐車場の設計において、発明αと同一の技術に基づく図面を作成した。 1977年6月 新潟丸大百貨店の駐車場の実施設計図を作成した。 1977年7月 (X社の主張によれば、このころ、X社の代表者が主宰するプロジェクトチームにおいて、AほかX社のスタッフ全員が共同して、発明αを完成させた。) 1977年7月 Y社は、Aから特許を受ける権利を承継たうえで、本件発明を出願する。 1978年6月 Aが、X社を退職する。 著作権法における一定の場合に法人などが著作者になる職務著作(法人著作)の制度と異なり、特許法においては、会社員などの従業者のなした発明についての特許を受ける権利は、発明者である従業者自身のものとなる。ただし、従業者による発明で、その性質上、使用者の業務範囲に属し、かつ、その発明をするに至つた行為がその使用者における従業者の現在又は過去の職務に属する発明であった場合、この発明を「職務発明」といい、使用者は無償の通常実施権を得る。 「現在又は過去の職務」とは、同一企業内の過去の職務のことと解釈されており、従業者が退職後に発明を完成した場合は、職務発明とならないとするのが通説とされる。 名古屋地方裁判所1996年(平成8年)9月2日判決・平成6年(ワ)第951号では、Aが自動車立体駐車場を発売していたX社を退職後、駐車場の建設・販売等を目的とするZ社の取締役となり、その後、Z社を退職して再びX社に雇用されたのちに出願された傾床型自走式立体駐車場におけるフロア構造の発明(発明α)の完成時期が、職務著作による通常実施権をX社とZ社のいずれが有するのかの前提として、X社、Aから特許を受ける権利を承継したとするY社、Z社の三社で争われた。 名古屋地方裁判所は、まず、Y社とZ社が主張する1972年から1973年にAが発明αを完成させていた証拠がないことや、Aが傾床型自走式立体駐車場を施工したのは1976年3月の青山パーキングビルで発明βを利用したのがはじめてで、1976年7月ころに新岐阜駅前駐車場で発明γを利用し、1977年5月に作成した新潟丸大百貨店の駐車場の図面で発明αを利用したことなどから、AはX社在職中の1977年6月ころに発明αを完成させたと認定した。その上で、AがZ社によって派遣されたアメリカ合衆国でえた知見によって発明の着想をし、Z社在職中に創意工夫を行ったことを認めつつも、次のように述べて、Z社の通常実施権を認めず、X社の通常実施権を認めた: Aは、Z社在職中に、既存のアメリカの技術を基にして、雨漏りの欠点を改善することや日本の実状に合わせて敷地面積当たりの駐車効率を上げる必要があることを認識し、そのために創意工夫をしたものの、未だその発明を完成するには至らず、その後、X社の業務である新潟丸大百貨店の駐車場の設計業務を遂行する過程で、その責任者として本件発明を完成したものであるから、AがX社在職中に本件発明をするに至った行為は、使用者であるX社におけるAの現在の職務に属するものに当たるというべきである。 — 名古屋地方裁判所平成6年(ワ)第951号(引用者により、訴訟当事者を記号に書き換えた)
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