せっかい‐ちっそ〔セキクワイ‐〕【石灰窒素】
カルシウムシアナミド
石灰窒素
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/07 10:04 UTC 版)
石灰窒素(せっかいちっそ)は、炭化カルシウム(カーバイド)と窒素から合成されるカルシウムシアナミドを含む農業用品である。植物および動物・ヒトに対して毒性があるので、取り扱いがやや難しいものの、肥料と農薬の2つの効果を狙える利点がある。
成分
石灰窒素の農薬としての有効成分は、カルシウムシアナミド(CaCN2)である。工業的にはカーバイドを窒素ガス中で約1,200 ℃に加熱して製造する[1][2]。
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着衣の裾に石灰窒素が浸入したことにって皮膚に発生した薬傷。 - 皮膚に対して刺激性がある。汗と反応して化学熱傷を起こす。皮膚に付着した場合は、水で充分に洗浄すること。
- 眼に入ると強い刺激性があり危険である。眼に入った場合は、充分に水洗した後、眼科を受診すること。
- 散布直後に飲酒すると、急性アルコール中毒を引き起こす場合がある。これはシアナミドが、肝臓でのエタノールの代謝を阻害し、有害なアセトアルデヒドを体内に蓄積させるためであり、散布後24時間は禁酒が必要となる[7][8]。
- 上記のように危険性や毒性があるので、散布はマスク・ゴーグル・手袋を着用し、長袖・長ズボンで肌を露出させずに散布作業を行うこと。
歴史
1895年に、ドイツのアドルフ・フランクとニコデム・カローが、大気中の窒素とアルカリ土類カーバイドの結合に成功したことに始まり、この方法は「フランク・カロー法」(英語版)と呼ばれるようになった。なお、原料のカーバイド(カルシウムカーバイド)製造では、生石灰とコークスを大量の電気により強熱して化学反応させるため潤沢な電力の確保が重要であり、カーバイド製造には安価な水力発電による電力を用いることが一般的である。また前述したシアナミドの毒性や危険性があることから、石灰窒素を直接肥料にはせず、石灰窒素に加水して発生させたアンモニアを硫酸で中和させ、硫安を生成して肥料に用いることが多かった。ハーバー・ボッシュ法の発明以前は石炭を乾留して作られるコークス炉ガスからの副産物と石灰窒素とが、アンモニアの主な供給源だった。
脚注
- ^ “石灰窒素とは/石灰窒素が出来るまで”. 日本石灰窒素工業会. 2025年10月7日閲覧。
- ^ a b c d “1. 石灰窒素” (pdf). 全国農業組合連合会. 2025年10月7日閲覧。
- ^ “安全データシート (SDS) - 石灰窒素” (pdf). 全国農業組合連合会. 2025年10月7日閲覧。
- ^ “肥料の品質の確保等に関する法律に基づき普通肥料の公定規格を定める等の件”. 農林水産消費安全技術センター (FAMIC) (2024年7月10日). 2025年10月7日閲覧。
- ^ “石灰窒素”. デンカ株式会社. 2025年10月7日閲覧。
- ^ 黒井伊作、白石義行、今野茂「ブドウ樹の休眠打破に関する研究 (第1報) : ガラス室栽植樹の自発休眠短縮に及ぼす石灰窒素処理の効果」『園芸学会雑誌』第32巻第3号、1963年、175–180頁、doi:10.2503/jjshs.32.175、2025年10月7日閲覧。
- ^ シアナミドは処方箋医薬品として、抗酒剤として利用されている劇薬である。飲酒すると悪酔いを引き起こし、断酒させる薬である。
- ^ “日本石灰窒素工業会--技術情報--Q&A”. www.cacn.jp. 2021年7月8日閲覧。
外部リンク
「石灰窒素」の例文・使い方・用例・文例
- 石灰窒素という窒素肥料
石灰窒素と同じ種類の言葉
- 石灰窒素のページへのリンク
