技術・開発思想
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/13 15:31 UTC 版)
トヨタ車は信頼性が高く故障が極めて少ないことで知られており、特にカローラ、ランドクルーザー、ハイラックス、ハイエースの信頼性の高さは「耐久性=トヨタ」のイメージを万国共通のものにまで高めた。日本市場1位の乗用車もさることながら、ランニングコストが重要な、商用車の需要も極めて高い。 例えばタクシー専用車のコンフォートは、100万キロメートル近く走行可能であるため、日本のタクシー車の8割を占める人気車種になった。高品質とコストダウンを両立するノウハウは、自動車のみならずあらゆる製造業で参考にされるほど高水準で知られる。特にドアやトランクリッドなどと外板の隙間(チリ)を狭く均一に仕上げる技術や、ドアの閉まり音、遮音性といった品質管理は定評があり、信頼性調査や顧客満足度の順位は安定して高い。 トヨタが世界をリードしている環境技術に、スプリット式ハイブリッド技術の「トヨタ・ハイブリッド・システム(THS-II)」がある。1997年12月に世界初の量産ハイブリッド車、プリウスを市場に送り出した。初代はマイナーな存在であったが、二代目は原油価格高騰を背景に販売台数を伸ばし、三代目に至っては最初の1か月間の受注台数が月販目標の1万台の18倍にあたる約18万台で、納車が最大で10か月以上待ちになるなど空前のヒットを記録した。これにより「トヨタ=ハイブリッド」のイメージが不動のものとなった。2017年2月にはハイブリッド車の世界累計販売台数が1000万台を突破している。苦手だった高速道路の走行を克服し、ヨーロッパでもハイブリッド車の販売が順調である。トヨタの世界販売台数におけるハイブリッド車の割合は12%と、世界の自動車メーカーの中で最も多いものとなっている。 また燃料電池車(FCV)分野でも旗振り役となっており、2014年12月に世界初の量産型燃料電池車であるMIRAI(ミライ)を発売。試作車は1台数億円ともされたが、技術開発により売価は1台700万円に抑えた。最初の1か月間の受注台数は年間販売目標400台を大きく上回る約1,500台を記録。約7割が個人客であり、北海道など遠方からの注文も相次いだ。 内燃機関技術では、1960~70年代にヤマハ発動機にスポーツカーエンジンのDOHC化を委託したり、1970年代に本田技研工業からCVCCの技術供与を受けたりするなど後れを取っているイメージがあるが、ホンダ・日産が排ガス規制の厳しさに、DOHCエンジンを諦めてOHV・SOHCへと回帰する中でも、トヨタだけは頑強に三元触媒、TGP燃焼、酸化触媒の三方式にEFI(電子制御燃料噴射装置)、可変吸気システムなど様々な技術を開発して、ベースエンジンのDOHC化を可能にし続けた実績がある。 1981年にソアラ専用(後にセリカに搭載)として単独開発した5M-GEUに世界で初めてDOHCに油圧式ラッシュアジャスターを搭載しメンテナンスフリーを実現した。また当時の国産エンジンでは初の2000ccを越える大排気量DOHCエンジンであり、新たな国産DOHCエンジンのジャンルを築いた。他にも焼結中空カムシャフトや焼結鍛造コンロッドなど最新の生産技術を駆使した軽量・高機能なエンジン「LASRE(Light-weight Advanced Super Response Engine)」を推進し、低回転にも強いDOHCエンジンの「ハイメカ・ツインカム」を単独開発。それまでスポーツカーだけのものであったDOHCを、トヨタはいち早く全乗用車にラインナップした。1990年代には可変バルブ技術の「VVT-i」 により大幅な燃焼効率アップを達成し、2005年には世界で初めて筒内直接噴射・ポート噴射を併用する技術の「D-4S」を誕生させている。2015年発売の4代目プリウスでは、世界で初めて最大エンジン効率40%の大台に到達し、2017年登場の『ダイナミックフォースエンジン』では、さらに41%に伸ばしている。 またクリーンディーゼル技術も戦前から研究が進めており、1959年のクラウンでは日本で初めて乗用車向けディーゼルを搭載した。その後は大型商用車・SUVをメインに開発が続けられ、2004年に日野と共同で、小型トラック初のディーゼル・ハイブリッドを開発している。トヨタのディーゼルエンジンは、開発途上国の劣悪な環境や軽油でも使用できることを想定した高圧縮比ディーゼルで、マツダ・ボルボのような、先進国向けの低圧縮比クリーンディーゼルと同水準の燃費を実現している。 1960年代の業界再編期以降はグループ内各社との共同開発も多く、小型車用エンジンの新規設計や一部の小型車の企画はダイハツ工業の、トラック開発は日野自動車の参画を得ている。採算の取りづらいスポーツカーに関しても、2UR-GSEなどのエンジンはヤマハ発動機、86/BRZはSUBARUなどグループ外企業との共同開発でコストを削減し、消費者のニーズに応えている。逆にハイブリッド技術を日産、マツダ、BMWなどに提供したり、燃料電池車の特許5,000点以上を無料で開放するなど、他社への技術供与も多く行っている。またロータス・カーズは、2006年以降の公道車モデルは全てトヨタエンジンを搭載している。 2006年、トヨタの研究開発費は2位の米製薬会社ファイザーを抑え、世界一となった。2017年も国内企業で唯一年間1兆円を超える開発費をかけている。 また将来の中核事業としてロボット技術にも注力、実際の事業化前提の積極的な開発が行われている。各地のイベントでも家庭内や介護医療で使われる事を想定したトヨタ・パートナーロボットを披露している。 静岡県裾野市の東富士研究所と北海道士別市、田原工場内に巨大なテストコースを持っており、世界中の走行環境を再現した走行試験や、高速域や極寒冷下の試験などをはじめ、日本国外向け商品の開発にも多面的に取り組んでいる。 トヨタが日本で初めて量産車に用いた技術・機構 四輪独立懸架式サスペンション(1947年SA型乗用車) カーエアコン(1957年クラウン) ディーゼルエンジンの乗用車(1959年クラウン) トルクコンバータ式AT(1959年マスターライン) 水平対向エンジンの乗用車(1961年パブリカ) クルーズコントロール(1964年クラウンエイト) ハードトップ(1965年コロナ) リトラクタブルヘッドライト(1965年2000GT) 5速トランスミッション(1965年2000GT) 丸型メーター(1966年カローラ) ツインターボエンジン(1981年1G-GTEUエンジン) ポップアップ式ヘッドランプ(1981年セリカ、国産車唯一) ミッドシップカー(1984年MR2) トラクションコントロール(1987年クラウン) バタフライドア(1990年セラ) 6速トランスミッション(1993年スープラ) 12気筒エンジン(1997年センチュリー、国産車唯一) シーケンシャルシフト(1999年MR-S) 横滑り防止装置(2004年クラウンマジェスタ) トヨタが世界で初めて量産車に用いた技術・機構 電子制御式エアサスペンション(1986年ソアラ) アルミ鍛造アッパーアーム(1986年ソアラ) 水冷インタークーラー(1983年M-TEUエンジン) エアロダイナミックグリル(1983年カローラレビン) デュアルマスフライホイール(1984年マークII) 可変吸気システム(1984年1S-iLUエンジン) アクティブコントロールサスペンション(1989年セリカ) 超音波雨滴除去ミラー(1989年セルシオ/LS) トルセンLSD(1993年セリカ) 動力分割(スプリット)式ハイブリッドシステム(1997年プリウス) 回生協調ブレーキシステム(1997年プリウス) リトラクタブルリアシート(1999年ファンカーゴ) 衝突被害軽減ブレーキ(2003年ハリアー/RX) アダプティブ・フロントライティング・システム(2003年ハリアー) 低速追従モード付レーダークルーズコントロールシステム(2004年クラウンマジェスタ) 筒内直接噴射・ポート噴射併用技術(2005年D-4S) シフト連動機能付電動パーキングブレーキ(2006年LS460) クロールコントロール(2007年ランドクルーザー) LED光源ヘッドランプ(2007年LSハイブリッド) オートマチックハイビーム(2007年LSハイブリッド) 燃料電池車(2014年MIRAI) ソーラーパネル付き量産車(2016年プリウスPHV) マルチステージハイブリッド(2017年LC500h) 連続可変容量ポンプ(2017年カムリ)
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