精液
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交尾や産卵の際、メスの卵細胞と受精するために、オスの生殖器から放出される。メスの体内で精液を放出し体内受精をする動物の射出は「射精」、水中に精液を放出して体外受精する貝や両生類などの水棲動物の射出は「放精」と呼ばれる。本記事では、主としてヒトの場合について述べる。
呼称
精液はヨーロッパでは「ザーメン」(英語: semen、ドイツ語: der Samen、「種子」の意味)」や「スペルマ」(ギリシア語: σπέρμα、イタリア語: sperma、フランス語: sperme、ロシア語: Сперма、「撒き散らされたもの」の意味)とも呼ばれる。日本語では「精子」と呼ばれることもある。中世から近世の文芸作品においては「腎水」(じんすい)[1]、「契水」(きっすい)、「精水」(せいすい)[2]のほか、「水飴」[3]、「白酒」「しろみず」「白い吐血」「白き涙」「白血」「松脂」「玉水」「納豆汁」「菩提水」といった表現もある[4]。地域や時代によっては「お汁[注 1]」などとも呼ばれる。性犯罪の報道では、直接表現を避けて「体液」と呼称される。産科学や幼児教育においては卵子と精子を「あかちゃんのもと」ともいう[5]。官能小説では、「子種」「雄汁」「男汁」「白濁液」「迸り」「滾り」「樹液」「牡のエキス」「快感の証[6]」などの表現が見られる。
成分
精液は液体成分の「精漿(せいしょう)」と細胞成分の「精子」で構成される。
精液は、その3割程度が前立腺の分泌液(前立腺液)で、残りの7割程度が精嚢からの分泌液(精嚢分泌液)で、これらの混合物の中に精子が懸濁している状態である。倍率400倍程度の顕微鏡で精液を観察すると、精子が鞭毛を動かしながら泳いでいるのを観察することができる。一般的には、精液といえば、精子も混ざった液体を指すが、無精子症、精管結紮(けっさつ)後の精液などでは、精子が含まれていない精液が体外に放出されることになる。
精嚢からの分泌液には果糖が多く含まれていて、細胞内部に栄養源をもたない精子の鞭毛運動を起こすエネルギー源に用いられる。精嚢の分泌液と合わさることで精子は初めてその鞭毛を動かして泳ぎ続けることが出来る。前立腺液にはクエン酸が多く含まれ、pHを弱アルカリ性に維持し、精子の生存を助ける。これ以外にも、精液からは多くの物質が分離、精製されており、精液の成分として知られている。例えば、前立腺液には多くの種類のタンパク質分解酵素(セリンプロテアーゼ)が含まれている。これは、精液をさらさらの液体にしたり、精子の細胞表面や女性生殖器内の物質に作用し、受精を起こりやすくするのにも役立っていると考えられている。
射精された直後から、精子は精液中の果糖を消費しつつ鞭毛運動を行うが、無酸素運動であるため精液中に次第に乳酸が形成され液性が酸性に傾く。また、精子は単体では空気中・水道水中等において生存できない。(しかし、実際の性交においては精液内に存在し保護されていることから、長時間にわたって活動を継続できる。したがって、「一度空気中に出たからあとは大丈夫だろう」という考えは非常に危険である。)精子はほとんどがタンパク質でできており、デオキシリボ核酸も多く含まれる。
タンパク質分解酵素セリンプロテアーゼに、PSA (Prostate-specific antigen)、前立腺特異抗原と呼ばれる酵素がある。この酵素は前立腺から分泌され精液中にたくさん含まれている。前立腺肥大症や前立腺癌などの病変があると、精液中に分泌されるのとは別に、血液中にも分泌されてしまうことから、前立腺の腫瘍マーカーとして広く用いられている(前立腺を参照)。
プロスタグランジンは、前立腺からの分泌液に含まれていることが最初に調べられたため、前立腺 (prostate gland) にちなんでこの名があるが、精嚢からの分泌液に、より多く含まれていることが後に分かった。
射出時の精液体内における流れ
(射精を参照のこと)精巣(睾丸)で作られた精子は、運動性を持たない未成熟な状態で、隣接する精巣上体(副睾丸)下部の少量の液体中に蓄えられ、そこで成熟しつつ射精の瞬間を待っている。射精は、まず蓄えられていた精子が精巣上体の平滑筋の収縮により精管へと送り出され、精管の蠕動運動によって押し出されるように精管末端の精管膨大部へと到達する。精管膨大部の開口部は精嚢に合流して射精管に至り、ここで精子と精嚢の分泌液が混合される。この液体は精嚢の平滑筋の収縮により前立腺に送られ、前立腺の分泌液と混合されて精液となる。
さらに前立腺の平滑筋の収縮により尿道に押し出され、尿道に入った精液は、陰茎先端の外尿道口から体外に射出される。つまり、射精時に精液が射出されるのは精嚢や前立腺などの壁の平滑筋が射精反射によって協調して収縮することで起きている。尿道球腺液(尿道球腺(カウパー腺)の分泌液)も精液の成分となるが、尿道球腺液は射精時以前に分泌が起こっており、その粘液状の分泌液は尿道を予め湿らせ、すべりをよくし射精に備えるのに役立っている。
注釈
出典
- ^ 日本国語大辞典、デジタル大辞泉、小学館
- ^ 新潮日本古典集成『好色一代女』村田穆校注、17頁
- ^ 膝栗毛8巻の下
- ^ 原田種夫「エロスの教養」弘文堂、1966年、78-79頁
- ^ “妊娠・出産の正しい知識”. 丘の上のお医者さん. 神奈川県健康医療局保健医療部. 2021年7月28日閲覧。
- ^ chi-co (2012). 真っ白な嘘【特別版】. 笠倉出版社
- ^ カダベリン
- ^ Trevor G. Cooper, Elizabeth Noonan, Sigrid von Eckardstein, Jacques Auger, H.W. Gordon Baker, Hermann M. Behre, Trine B. Haugen, Thinus Kruger8, Christina Wang, Michael T. Mbizvo, and Kirsten M. Vogelsong (2010). “World Health Organization reference values for human semen characteristics”. Human Reproduction Update 16 (3): 231-245. doi:10.1093/humupd/dmp048 .
- ^ 精液(精子)を飲むのはOK?精飲の効果や健康への影響
- ^ ☆精子は ためた方がよい?
- ^ Relationship between the duration of sexual abstinence and semen quality: analysis of 9,489 semen samples.
- ^ 法医学鑑定研究所. “精液判定”. 2020年7月21日閲覧。
精液と同じ種類の言葉
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