真空管 高信頼管

真空管

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/24 12:44 UTC 版)

高信頼管

Hi-Fi真空管の一例、東芝製12AU7A

高信頼管は上記の合格品からさらに特性別で選別したものや、ラインやロットの管理、精度の高い部品使用を行っている。官公庁や研究所の機器、無線機器、軍事、医療向けの真空管となっている。軍用の高信頼管は一般に数字表記となっている(例 : 6BA6は5749、6AQ5は6005)。これらの真空管は一般では高価かつ入手が難しいものだったが、1990年代以降は軍の放出や倉庫在庫の流通によって比較的安価である。

また高信頼管に似たものに堅牢管が存在する。振動や衝撃に耐えうるように設計、製造された真空管で、真空管名の末尾にWがつく(例 : 6BA6W)。尚、高信頼と堅牢の双方を備えた真空管も存在する(例 : 5749W)。こちらは軍用である場合が多い。

軍用の高信頼管は一般的に無地の箱に真空管名、メーカー名、製造国、梱包日、オーダー元が明記してあり、それらとともに乱数状の数字コードが書かれている。米軍向け真空管はJAN規格に基づくためJAN 5749Wのように表示される。英国軍用は同様にCV規格が存在する。またCVという表示はオーダー元表示に米軍でも用いることがある。オーダー元は基地や部隊コードの他、空軍ではP-51 等使用する機体名と機体番号が書かれる。梱包日はOCT1951や89/02などと表示される。軍用管は多数の真空管メーカーの入札制によって発注するため、箱の中の真空管メーカーが一致しないことがある。

ごく稀にNOS品として白丸に航空検や桜のマークに航空検と印字された真空管が流通しているが、前者は航空機向けに航空会社や旧運輸省が試験した真空管、後者は航空自衛隊が選別したことを示すものでメーカーが選別した真空管(高信頼管)をさらに選別し、特性を規定値以上に揃えたものである。同様に日本放送協会を示すNHKと印字した真空管が存在しているが、こちらも放送機材向けに選別した真空管である。NOS品や中古球として流通しているがこれら放出品はすべて一定の条件によって使用・交換されたものである。価格は捨て値同然のものからオーディオ用ペア管に相当する高額なものまで存在している。

一般向けの高信頼管はアマチュア無線用に通信用、測定機向けに測定用、双方に利用できる通測用、オーディオ向けのHi-FiハイファイHi-S が存在する他、ただ単に高信頼と書かれる場合もある。東芝、松下、TEN等各社から販売され価格は一般用と大差はなかった。2013年現在の販売価格もオーディオ向けを除き汎用(通常の真空管)と大差ない。

真空管名末尾の記号表示には堅牢管のWの他、傍熱管でヒーターが13秒で完全点灯することを示したAが存在する。こちらは21世紀現在、オーディオ向け真空管によく見られる(例 : 12AU7A)。

以上の真空管はそれぞれの用途向けに製造、選別した真空管ではあるが、他の用途にも使用しても全く問題ない。


注釈

  1. ^ : electron tube
  2. ^ : thermionic valve
  3. ^ 「電子管」は熱電子を利用しないものなど、より広い範囲の素子を指して使われることもある。
  4. ^ : diode
  5. ^ : triode
  6. ^ : tetrode
  7. ^ : pentode
  8. ^ : rectifier
  9. ^ どちらも直熱型三極管
  10. ^ 後のUZ-2A5。
  11. ^ : Nuvistor
  12. ^ GTは「glass tube」の略とされる。
  13. ^ 油脂等の汚れがフィラメントからの熱を吸収し、その部分の温度を上げることでガラスを歪ませるため。製造管理の行き届いた現代の白熱電球においてもハロゲンランプなど、大きさの割には消費電力の大きい電球は、同じく油脂汚れ厳禁である[23]。日本放送協会編 ラジオ技術教科書(1946〜1947年)、電気学会編 電気材料(1960年)にも記述がある。
  14. ^ 高周波での増幅特性で半導体素子を凌駕する事は現在でも珍しくはない。事実、高信頼性と低消費電力が要求される放送衛星通信衛星等の人工衛星では現在でも送信用に真空管の一種である進行波管が使用される

出典

  1. ^ 広辞苑第六版【真空管】定義文
  2. ^ 広辞苑第六版【真空管】定義文の後の叙述文
  3. ^ 平凡社『世界大百科事典』vol.14, p.261【真空管】
  4. ^ "管球". 精選版 日本国語大辞典(小学館). コトバンクより2021年5月22日閲覧
  5. ^ 用例: 論文検索 "球スーパー"”. 日本の論文をさがす. 国立情報学研究所 (NII). 2021年5月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年5月22日閲覧。
  6. ^ a b 用例:通商産業大臣官房調査統計部(編)「1 生産動態統計」『平成元年 1989 機械統計年報』、通商産業省、1990年、286-288頁、2021年5月22日閲覧 
  7. ^ "石". 精選版 日本国語大辞典(小学館). コトバンクより2021年5月22日閲覧: 「せき【石】(2)〘接尾〙(2)」
  8. ^ http://www.at-s.com/news/article/economy/shizuoka/456410.html デブリ撮影に浜ホト貢献 真空管カメラ、福島原発投入へ 静岡新聞 2018年3月15日閲覧
  9. ^ https://gigazine.net/news/20140626-nasa-vacuum-transistor/ 半導体に取って代わられた真空管に復権の兆し、超高速のモバイル通信&CPU実現の切り札となり得るわけとは? GIGAZINE 2018年5月18日閲覧
  10. ^ Bijl著「The Thermionic Vacuum Tubes and It's Applications」、1920年
  11. ^ タイン著「Saga of Vacuum Tube」、1977年
  12. ^ 浅野勇著「魅惑の真空管アンプ 上巻」
  13. ^ a b c 甘田, 早苗『初級ラジオ工作』誠文堂新光社、東京、1949年10月10日、86頁。doi:10.11501/1169566https://dl.ndl.go.jp/pid/1169566/1/48 
  14. ^ a b c ラジオ科学社 編『真空管の話』ラジオ科学社、東京〈ラジオ・サイエンス・シリーズ ; 第1集〉、1953年1月20日、29頁。doi:10.11501/2461951NCID BA65558749NDLJP:2461951https://dl.ndl.go.jp/pid/2461951/1/17 (要登録)
  15. ^ Donovan P. Geppert, (1951). Basic Electron Tubes, New York: McGraw-Hill, pp. 164 - 179. Retrieved 10 June 2021
  16. ^ Winfield G. Wagener, (May 1948). "500-Mc. Transmitting Tetrode Design Considerations" Proceedings of the I.R.E., p. 612. Retrieved 10 June 2021
  17. ^ Staff, (2003). Care and Feeding of Power Grid Tubes, San Carlos, CA: CPI, EIMAC Div., p. 28
  18. ^ GE Electronic Tubes, (March 1955) 6V6GT - 5V6GT Beam Pentode, Schenectady, NY: Tube Division, General Electric Co.
  19. ^ J. F. Dreyer, Jr., (April 1936). "The Beam Power Output Tube", Electronics, Vol. 9, No. 4, pp. 18 - 21, 35
  20. ^ R. S. Burnap (July 1936). "New Developments in Audio Power Tubes", RCA Review, New York: RCA Institutes Technical Press, pp. 101 - 108
  21. ^ RCA, (1954). 6L6, 6L6-G Beam Power Tube. Harrison, NJ: Tube Division, RCA. pp. 1,2,6
  22. ^ エレクトロニクス術語解説 1983, p. 256.
  23. ^ 自動車用電球ハンドブック 第6版” (PDF). 日本照明工業会. p. 26. 2022年9月24日閲覧。






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