GM計数管とは? わかりやすく解説

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GM計数管

GM計数管は、放射線によって空気その他の気体中に生じたイオンガス増幅して、その放射線の量を測る検出器である。 円筒電極中に細い中心電極張った二極管に、アルゴンヘリウム等の不活性気体少量アルコールまたはハロゲンガスを封入したもので、両極間に高電圧をかけておくと、放射線管内入射したときに、生成したイオン引き金になって放電起る。この放電パルス)の回数一定時間数えることによって放射線強さ測定することができる。ガンマ線及びベータ線測定用いられる感度はよいが放射線エネルギー弁別することはできない。 GM計数管は信号電気的に増幅しているので、放射線一つ一つ測定できる

ガイガー=ミュラー計数管

(GM計数管 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/12 07:11 UTC 版)

ガイガー=ミュラー計数管。画像左下の黒い筒がガイガー=ミュラー管。

ガイガー=ミュラー計数管(ガイガー=ミュラーけいすうかん、: Geiger-Müller-Zählrohr、: Geiger-Müller counter)は、1928年ドイツハンス・ガイガーヴァルター・ミュラーが開発したガイガー=ミュラー管を応用した放射線量計測器である。

ガイガー・カウンター: Geiger counter)やGM計数管: GM-Zählrohr、: GM counter)とも呼ばれる。

概要

ガイガー=ミュラー計数管(GM管)は、主に放射線測定装置に用いられる部品である。電離放射線を検知し、その回数をカウントできる[1][2]

不活性ガスを封入した筒の中心部に電極を取付け陰陽両極に高電圧を掛けるが、通電はしていない。筒中を放射線が通過すると不活性ガスの電離により、陰極陽極の間にパルス電流が流れるのでこの通電回数を数える。この回数が多いほどに高い線量ということになる。

非常に利得が高く[3]強い信号を得られる半面、一回の電離で生じた電子が次々と電離を引き起こすことから放射線の持つエネルギーと出力信号の強さは比例関係にはならないため、放射線の持つエネルギー量の測定には利用できない。すなわちGM管は核種の同定には使えない。放射線のエネルギーを知るためには比例計数管などが必要である。

GM管はそのものはもっぱらパルス電流が流れた回数の計測に用いられるので、この装置を用いた線量計にはカウント値から崩壊数Bqや線量Sv[注釈 1]への換算表が添付されている。換算表の内容は核種ごとに固有の係数の一覧である。

このようにGM管では放射線のエネルギーを知ることができないため、線量は直接測定することはできない。しかしながらコバルト60セシウム137といった既知のガンマ線源を、GM管と線量がわかる測定器とで同条件のもと測定し、ある線量における計数値が何カウントであるかをあらかじめ対応づけておくことはできる。こういった対応付けのことを校正と呼び、校正の結果をもってカウント値を線量に換算することができる[4]。これは校正に用いた核種のガンマ線のみをカウントしたときの被ばく線量を表しているだけなので、他の核種には適用できない点に注意が必要である。崩壊数も同様にして校正しておけば求められるが、これも校正しておいた核種しか存在しないと仮定した場合のベクレルであり、他の核種には適用できない[5]

安価であり、また構造も取り扱いも簡単であるため、幅広い用途で使われている[6]。ただしGM管にはその動作原理上、いくつかの固有の限界・弱点がある。前述したエネルギーを測定できない点の他にも、高線量計測において徐々にカウント欠落が増える、電磁放射線の検出効率が低い等が挙げられる。

ガイガー=ミュラー管

ガイガー=ミュラー管: Geiger-Müller tube)、略称GM管: GM tube)は、1個からの電離放射線を検知することができる、GM検出器の検知部である。発明したハンス・ガイガーヴァルター・ミュラーにちなんで名づけられた。ガイガーはアーネスト・ラザフォードと共に1908年にこの検知器を開発したが、アルファ線だけを検知できるものだった。1928年にガイガーの教え子だったミュラーが、あらゆる種類の電離放射線を検知できるように改良した。

GM管は気体イオン検出器に分類される。

構造と動作原理

GM管の構造と原理。電離放射線が管内のガス分子を電離して流れたパルス電流の回数を右下のカウンターで記録する。

GM管はヘリウムネオン、またはアルゴンといった不活性ガス、もしくはペニング混合ガスを充填した中空の円筒と、その芯に取り付けられた電極から構成される。 円筒と芯の間には数百ボルトの電圧がかけられているが、通常はその間には電流は流れていない。 円筒の内壁は陰極とするため、金属またはグラファイトで作られるか、またはそれで表面をコーティングされている。 一方、円筒の中心を通る芯が陽極になっている。

GM管に加えられている電圧をだんだん大きくしていくと、電圧を少し変えても入射する放射線に対し、カウント数がほぼ一定となる。このカウント数が一定となる電圧領域をプラトーという[7]。それよりも電圧を上げると放電領域となり再び電圧に比例して出力が大きくなってしまうため、GM管を用いるにはプラトー領域の電圧で使用する必要がある。基本的に、このプラトーの傾きが少ないGM管ほど高性能であるといえ、とくに100Vあたりの放射線量が一定の時のカウント数の増加が5%以内のものが良好とされている[7]

電離放射線が円筒を通過すると、充填された不活性ガスの分子が電離され、正に帯電したイオンと電子を作り出す。円筒内にかけられた高電場のためにこのイオンは陰極に向かって加速され、電子は陽極に向かって加速される。これらのイオン対は加速によって運動エネルギーを得るので、移動中に衝突した気体分子もまた電離させる。こうして、ガスの中に荷電粒子のなだれが作られる。 この現象の結果、陰極から陽極に向かって短く強いパルス電流が(雪崩状に)流れ、このパルスを測定・計数することができる。

小型GM管

この電流が連続的に流れるとパルスの回数を計数できなくなるので、これを防ぐ(クエンチする)仕組みが存在している。 外部クエンチングは電極間の高電圧を取り除くために外部の電子機器を用いる方式である。 自己クエンチングまたは内部クエンチングは、外部の補助なしに電流を止める設計の管で、内部に微量の多原子有機物ガス(ブタンエタノール、または臭素塩素のようなハロゲン)を添加してある。 イオンはクエンチガスに衝突するとそれらを解離するためにエネルギーを失うのである。

また、計数が非常に多い場合ではパルスが出力される前に別の放射線が入射してしまい、数え落としが生じてしまう。このため低線量エリアであればほぼ放射線量にカウント数が比例する一次関数のようなグラフになるが、高線量領域になるとこの数え落としにより線量が増えてもカウント数に反映されなくなる。このグラフの傾きが悪くなりはじめたところでは、真の計数Nは

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GM管式サーベイメータ

表面汚染の測定管理の目的で用いられるサーベイメータは、国内では日立製作所(旧・日立アロカメディカル)などから発売されている[12]。測定放射線は「β(γ)線」[13]

入射窓に極めて薄いマイカ(雲母)膜を用いたGM管式サーベイメータのみα線を検出できる[14]。α線用のサーベイメータとして国内メーカーから市販されているものは、硫化亜鉛(ZnS(Ag))シンチレータを用いたシンチレーション式である[15]

自作

精度が低いものであれば、身近な材料で自作もできる。プラスチック容器とアルミホイルでつくるYY(矢野・米村)式GM管と、ブタン源として使い捨てライターのガスを用いたもの[16]、さらに蛍光灯グローランプも用いる例[17]、市販のGM管を用いる[18]などがあるが、いずれも危険を伴う実験であるため十分注意が必要である。

脚注

注釈

  1. ^ 防護量としては等価線量及び実効線量、実用量としては線量当量が用いられる。
  2. ^ NaI(Tl)シンチレーション検出器のガンマ線に対する検出効率は20~30%であり、GM管に比べて10~100倍も高い[11]
  3. ^ ガンマ線のさらに高度な分析、放射能(ベクレル)・エネルギー(スペクトル)・核種の同定の精密な計測には、素材にゲルマニウムなどを用いた半導体検出器が用いられるが、これは運用が非常に難しくコストもかかる。アルファ線やベータ線、中性子線などの測定には、ガンマ線専用とは違った素子を用いたそれぞれの線種に対応した専用のシンチレーション検出器などが用いられる。GM管でこれらを弁別するにはGM管を紙(アルファ線遮蔽)やアルミニウムアクリル樹脂(ベータ線遮蔽)などで覆うことによってアルファ線、ベータ線を遮蔽することによって、これらの差分をとることにより、アルファ線やベータ線の有無が判別出来る程度であり、アルファ線やベータ線を放出する核種やベクレルを精密に測定したい場合はそれぞれの線種に対応した専用の測定器を用いる必要性がある。

出典

  1. ^ 環境放射線の測定法 - 原子力百科事典ATOMICA
  2. ^ 神奈川歯科大 - ウェイバックマシン(2013年4月7日アーカイブ分)
  3. ^ GM 計数管の特性 一般の電気計測器に比較して桁違いに高い感度:東京理科大学理学部 物理学科
  4. ^ 大塚・西谷 2007, pp. 199–200.
  5. ^ 大塚・西谷 2007, p. 200.
  6. ^ 大塚・西谷 2015, p. 202.
  7. ^ a b 大塚・西谷 2007, p. 198.
  8. ^ a b c d e 大塚・西谷 2007, p. 197.
  9. ^ a b c d 大塚・西谷 2007, p. 196.
  10. ^ 大塚・西谷 2007, p. 199.
  11. ^ 大塚・西谷 2015, p. 222.
  12. ^ サーベイメータ 日本アイソトープ協会 (PDF)
  13. ^ GMサーベイメータ LUCREST TGS-1146 日立製作所 (PDF)
  14. ^ 放射線計測Q&A 公益財団法人放射線計測協会
  15. ^ α線用シンチレーションサーベイメータ TCS-232B 日立製作所 (PDF)
  16. ^ 放射線検出器(1) 兵庫県立篠山産業高等学校
  17. ^ 手作りセンサーで、放射線をキャッチしよう 日本ガイシ
  18. ^ Geiger counter(ガイガーカウンター)電脳実験室

参考文献

関連項目




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