浮遊ゲートMOSFET
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/01/11 04:03 UTC 版)
浮遊ゲートMOSFET(ふゆうゲートMOSFET、floating-gate MOSFET、FGMOS)とは、通常のMOSFETと似た構造を持つ電界効果トランジスタ。 FGMOSではゲートが電気的に絶縁されており、直流での浮遊ノードを作る。多くの第2ゲートやインプットが浮遊ゲート(FG)の上に堆積され、電気的に絶縁されている。インプットは、FGに容量結合しているだけである。 FGは電気抵抗の大きな物質に完全に囲まれているため、FGに蓄えられている電荷量は長期間変わらない。 FG中の電荷量を変更するために、Fowler-Nordheimトンネル効果やホットキャリア注入が通常用いられる。
FGMOSの応用として、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリでのデジタル記憶素子、ニューラルネットワークでのニューラル計算素子、アナログ記憶素子、デジタルポテンショメータ、シングルトランジスタD/Aコンバータがある、
歴史
最初の浮遊ゲートMOSFETは1967年にカーンとジィー[1]によって報告された。最初のFGMOSの応用は、EEPROM、EPROM、フラッシュメモリでのデジタルデータの保存であった。
1989年にインテルはETANNチップでのアナログ不揮発性メモリ素子としてFGMOSを使い[2]、他のデジタルメモリではなくFGMOSデバイスを使う可能性を示した。
現在の多くのFGMOS回路開発の基礎作りをした3つの研究がある。
- ThomsenとBrookeによる標準的なCMOSダブルポリプロセスでの電子トンネル効果の実証[3]。これにより特殊な製造プロセスを使わずにFGMOS回路を調査できるようになった。
- 柴田と大見によるνMOSまたはニューロンMOS回路のアプローチ[4]。これは線形計算でキャパシタを使うインスピレーションと枠組みを最初に与えた。彼らはデバイス特性ではなくFG回路特性に注目した。電荷を等しくするためにUV光を、またはMOSFETスイッチを開閉することでシミュレートされたFG素子を使った。
- Carver Meadの適応網膜(adaptive retina)[5] は適応回路技術の骨格としてUV光による連続動作FG書込み/消去技術の最初の例を与えた。
構造

FGMOSは標準的なMOSトランジスタのゲートを、ゲートとの抵抗接続が無いように電気的に孤立させることで作ることができる。多くの第2のゲートやインプットが浮遊ゲート(FG)の上に堆積され、電気的に孤立している。これらのインプットはFGと容量結合している。なぜならFGは電気抵抗の大きな材料によって完全に囲まれているからである。よってDC動作の観点から見ると、FGは浮遊ノードである。
FGの電荷を変化させる場合、注入とトンネリングを制御するためのトランジスタ対が各FGMOSトランジスタに付け加えられる。 全てのトランジスタのゲートは互いに繋がれる。トンネリングトランジスタは、容量性のトンネリング構造を作るために相互接続されたソース/ドレインとバルク末端を持つ。注入トランジスタは正常に接続され、浮遊ゲートへの電場によって注入されるホットキャリアを作るために、固有の電圧が与えられている。
純粋にキャパシタとして用いるFGMOSトランジスタはNまたはP型で製造できる[6]。 電荷を変化させる用途では、トンネリングトランジスタ(ひいては動作するFGMOS)はウェルへ埋め込まれる必要がある。このため製造されるFGMOSのタイプは技術の影響を与える。
モデル化
大信号DC
FGMOSを構築するMOSトランジスタの動作を記述する式から、FGMOSのDC動作をモデル化する式が導出できる。 FGMOSデバイスのFGでの電圧が決定できれば、標準的なMOSトランジスタのモデルを用いてドレイン-ソース電流を求めることができる。 よってFGMOSデバイスの大信号動作をモデル化する一連の式を導出するためには、実効インプット電圧とFGでの電圧との関係を見つける必要がある。
小信号
N-インプットFGMOSデバイスは1つのMOSトランジスタよりもN−1個だけ多く末端を持つため、N+2個の小信号パラメータが定義できる。N個の実効インプット相互コンダクタンスと、アウトプット相互コンダクタンス、バルク相互コンダクタンスである。それぞれ、
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