酒池肉林
「酒池肉林」とは、豪勢な酒宴のことを意味する表現である。
「酒池肉林」とは・「酒池肉林」の意味
「酒池肉林」は、数多くの食事や酒を用いた、豪勢な宴会を指す言葉だ。紀元前の中国にあったとされる、殷王朝にまつわる言葉である。殷の最後の王である紂王は、贅沢の限りを尽くし、自らを諫める臣下を残虐な方法で処刑した王として有名だ。その紂王が贅沢の一環として行ったのが、酒池肉林の宴である。紂王は、池ができるほどの大量の酒を使い、林の木々に肉を吊るしながら宴会を行ったという逸話が残されている。そのような贅沢を繰り返し、悪政を行った紂王は、周の武王に討たれ、殷は滅びることとなった。酒池肉林は、現代の日本では、贅沢の限りを尽くした宴会を指す言葉として使用される。紂王に関する中国語の記述が、日本の四字熟語として定着した形だ。そして、紂王が行った宴のように、過剰に贅沢な宴会という意味合いで使用されることが多い。ただ、単純に食事が豪華である様子を表すために使用することも不可能ではない。しかし、贅沢すぎるという意味合いを含んでいるので、相手のもてなしを褒める時などに、良い言葉として用いられることは少ない。
酒池肉林は原則として、豪勢な宴会を指す言葉であるが、性的な要素を含んだ宴会の意味合いで使われることもある。殷の紂王は、酒池肉林の豪華な宴を行った際、肉を吊るした林の中で、裸の男女を走り回らせたとされている。そのことから、豪勢な料理や酒を伴った、性的に淫らな宴と解釈される形だ。そして、酒池肉林の「肉」の部分が、肉欲、つまり性欲だと捉えられる場合も多い。
しかし、酒池肉林には、原則として性的な意味合いは含まれない。酒池肉林の元となった記述では、酒池肉林に当たる豪勢な宴会を指す部分と、裸の男女を走らせたという部分は、別となっている。また、酒池肉林の「肉」には、肉欲の意味はなく、解釈違いである。したがって、酒池肉林を性的な意味合いで使用することは、間違いだ。ただ、性的な意味が含まれると誤解している人は、決して少なくない。そのため、酒池肉林を使用する場面によっては、性的な発言をしていると受け取られる恐れがある。
また、中国語では、前後を入れ替えた肉林酒池が使用されることもあるが、日本語の表現で肉林酒池を用いることはまずない。肉林酒池でも、意味が伝わる可能性はあるが、正しい言葉を覚えていないと受け取られかねない。よって、酒池肉林を使用することが望ましい。
「酒池肉林」の語源・由来
「酒池肉林」という言葉の元となったのは、中国の正史のひとつとされている「史記」に出てくる記述である。殷の紂王が開いた宴会に関する「酒を以て池となし、肉を懸けて林となす」という記述が、酒池肉林という四字熟語として使用されるようになった。「酒池肉林」の使い方・例文
「酒池肉林」を使用して例文を作ると、「先日開かれたパーティーには、豪勢な食事が数多く並べられ、まさに酒池肉林であった」
「この武将は、和平のために酒池肉林のような宴を開いたとされる」
「彼の夢は、食べきれないほどの食材を使った酒池肉林だそうだ」
「今週末は、友人同士で酒と料理を持ち寄って、酒池肉林をするつもりだ」
「あの企業は、酒池肉林のような接待を繰り返して散財したため、倒産してしまった」
「私は質素な食事が好きであるため、酒池肉林のような場は苦手だ」
「コンビニで食べたい惣菜を無造作に買った結果、酒池肉林のようになってしまった」
「彼女は、お金持ちの家に生まれたため、いつも酒池肉林のような食事をしているそうだ」
といった表現になる。
また、酒池肉林は、
「この絵画では、一糸まとわぬ男女が入り乱れる、酒池肉林の様が描かれている」
「あのホテルでは、酒池肉林のようなパーティーが開かれていたため、警察に取り締まられたようだ」
のように、性的な意味合いで使用されることもある。しかし、このような使い方はあくまでも誤用表現だ。
酒池肉林
酒池肉林とは、酒池肉林の意味
酒池肉林(しゅちにくりん)とは、贅を極めた宴を指す意味で用いられる表現。果てしなく豪奢な・奢侈な宴。はしたない宴会騒ぎ、淫靡な乱痴気騒ぎ、といったニュアンスを含めて用いられる場合も多い。そのような淫らなニュアンスを含めずに用いられることも多い。酒池肉林の語の由来・語源
「酒池肉林」の語の由来は古代中国の歴史書「史記」における殷王朝の記述である。殷の王が寵姫の気を引くために「酒をもって池とし、肉を縣けて林とし」宴会を繰り広げたという記述がある。 池に喩えられるほど大量の酒と、同じく林に喩えられるほど大量の肉が用意された、とんでもなく奢侈な宴を「酒池肉林」と表現したわけである。当該の記述は「~、肉を縣けて林とし、男女をして裸ならしめ、互いに追わせる」と続く。この脈絡もあってか、あるいは「肉」の字面からか、「酒池肉林」には肉欲・色欲が渦巻くニュアンスを伴って用いられやすいといえる。
酒池肉林の語の使い方(用法)、例文
酒池肉林は、基本的には宴会が非常に贅沢な様子を形容する表現として用いられる。性的ニュアンスを特に含まない宴会(たとえば新歓や打ち上げ)を酒池肉林と形容することもできるが、人によっては違和感を持つかもしれない。性的ニュアンスを多分に含む場面、たとえばキャバクラで豪遊するような宴は「酒池肉林」の語が似つかわしい。酒池肉林の類語と使い分け方
酒池肉林の類語としては「どんちゃん騒ぎ」や「狂宴」などが挙げられる。「どんちゃん騒ぎ」は、歌ったり踊ったりして騒ぐ賑やかな(やかましい)宴というニュアンスが強い。「狂宴」は、めちゃくちゃな大騒ぎをする宴会というニュアンスが強い。どんちゃん騒ぎにや狂宴が必ずしも奢侈な「酒池肉林」であるとは限らないが、酒池肉林はきっとどんちゃん騒ぎの狂宴である。酒池肉林の英語
酒池肉林を英語で表現する語としては revelry(飲めや歌えの大騒ぎ)や spree(酒宴の馬鹿騒ぎ)のような語が挙げられる。しゅち‐にくりん【酒池肉林】
酒池肉林
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/21 04:29 UTC 版)
酒池肉林(しゅちにくりん)は、酒や肉が豊富で豪奢な酒宴という意味の四字熟語である。「肉林」の「肉」に「肉欲」の意はなく、女性に囲まれて大騒ぎをする宴というのは誤用である[1]。
語源
中国前漢時代の歴史家司馬遷によって編纂された中国の歴史書『史記』「殷本紀」に記された一節が語源である。殷の紂王が愛姫である妲己の歓心を買うため、その言うがままに日夜酒色に耽り、民を虐げた(とされる)故事に由来する[2]。
妲己を愛しみ、妲己の言これ従う。(中略)賦税を厚くして、もって鹿台の銭を実(み)たし、鉅橋の粟を盈たす。(中略)ますます沙丘の苑台を広め、[1](中略)酒をもって池と為し、肉を縣けて林と為し、男女をして倮[注釈 1]ならしめ、あいその間に逐わしめ、長夜の飲をなす。百姓怨望して諸侯畔く者有り、是において紂すなわち刑辟を重くし、炮烙の刑有り。
その他の文書における扱い
前漢以前の先秦時代に書かれた歴史書『書経』で殷代を扱った商書、周書には、同様の記述はない。
前漢より後、西晋の歴史家である皇甫謐が著した『帝王世紀』には、「夏桀は肉山脯林を為し、殷紂は酒池肉林を為す」と書かれている。肉山脯林は、肉は生肉、脯は干し肉の意味があり、豪華な宴会が開かれている様子である[3]。
脚注
注釈
- ^ 『裸』の異体字。
出典
- ^ 『言葉の作法』電子版「酒池肉林」
- ^ 史記 殷本紀第三 帝辛
- ^ 日本国語大辞典,四字熟語を知る辞典, デジタル大辞泉,精選版. “肉山脯林とは”. コトバンク. 2022年5月16日閲覧。
参考文献
関連項目
- 鹿台
- 炮烙
- 肉山脯林(夏桀の同様の故事)
- 天国 (イスラーム)
- 太公望
- 妲己
- ワインレイク - ワインの過剰在庫
- バター・マウンテン - ヨーロッパの過剰生産で出来たバターの山。ほかに milk lakes、beef mountains も作られた。
外部リンク
- 商紂王の「酒池肉林」の存在確認、偃師で大型人工池発見←中国通信社:文化・科学・スポーツ - ウェイバックマシン(2008年9月18日アーカイブ分)
- 『酒池肉林』 - コトバンク
酒池肉林
出典:『Wiktionary』 (2021/08/28 10:11 UTC 版)
成句
- [原義] はしたなく奢侈な酒宴。過度な贅沢さで(飲み干せないほどの)酒や(食べ尽くせないほどの)肉を揃えた享楽的宴。由来の伝承が淫猥な享楽的エピソードであるため、それが強く含意される。
- (語義1から淫猥なニュアンスが抜け落ちて、) 享楽的ではあっても淫猥ではない、酒や肉をふんだんに揃えた豪華な宴。
由来
中国の歴史書『史記』巻3「殷本紀」に記された一節が語源。酒色に耽って民を虐げた(と記されている)殷の暴君・紂王の故事に由来する。 「酒を以て池と為し、肉を縣けて林と為し、男女をして倮ならしめ、其の間に相逐わしめ、長夜の飲をなす」から来ており、すなわち、宴の趣向として、数多くの肉を天井から吊るして林に見立て、大量の酒を窪みに注いで池に見立てては、これらを縦に飲み食いした。重ねて、裸の男女に追い駆け合いをさせながら、愛姫と享楽に耽ったのであり、それゆえに、四字熟語としても本来は淫猥な意味合いが含まれる。
類義語
酒池肉林と同じ種類の言葉
血・肉に関連する四字熟語 | 羊頭狗肉 中肉中背 酒池肉林 反間苦肉 肉山脯林 |
茶・酒に関連する四字熟語 | 茶番狂言 家常茶飯 日常茶飯 酒池肉林 酒嚢飯袋 |
肉に関連する四字熟語 | 羊頭狗肉 中肉中背 酒池肉林 反間苦肉 肉山脯林 |
状態に関連する四字熟語 | 牽強付会 豪華絢爛 酒池肉林 無理矢理 紆余曲折 |
史記に由来する四字熟語 | 人面獣心 長頸烏喙 酒池肉林 遠交近攻 悲歌慷慨 |
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