山下商事
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 05:33 UTC 版)
拳願絶命トーナメント参加権を獲得するために急遽設立された企業。そのため、業種も社名も乃木が適当に決めたものとなっている。創業から短期間で拳願会の中枢に食い込んだことから他の拳願会員や各国の首脳部に注目されているが、所属している当人たちにその自覚はない。企業序列ランク外。 トーナメント終了後は正式に「株式会社 山下商事」として起業。起業から2年後も社員は3名で表向きは単なる人材派遣会社だが、実情は「闘技者を死なせた企業を罰する」新ルールに対応するための「闘技者の紹介窓口」として設立された、単発〜短期契約が可能な闘技者を派遣する部門。拳願会の一機関であるため会員権を保有していない。登録中のフリー闘技者は500名余。予算は拳願会から出ており、契約金は全額闘技者へ渡る仕組みで仕合に勝利しても成功報酬を受け取ることはなく、不正をするメリットがないので特定の企業を贔屓することもない。さらにルール改正にて企業が新しい闘技者を雇用したい場合は、山下商事に登録しているフリー闘技者から必ず雇わなければならなくなっている。 十鬼蛇 王馬(ときた おうま) 声 - 前野智昭(ドラマCD) / 鈴木達央(Webアニメ) 『ケンガンアシュラ』第1部・第2部の主人公。通称『阿修羅』。年齢不明。山下商事闘技者かつ元・乃木グループ闘技者だが、出自・流儀は一切不明。古代ギリシャ像のような、美の観点から見ても最高レベルの肉体を有している。 性格は傲岸不遜で自分より強い存在がいることを許せず、己の最強を信じて疑わない。人の名前をカタカナフルネームで呼ぶ癖を持つ。以前は廃墟を住まいとしており、イノシシなどの野生動物を仕留めたりゴミの埋立地から使えそうなものを拾ったりして生活していた。そのためかやや社会常識に疎く、水着や国家予算といった知識は持っていないが上納金などVシネマ由来の偏った知識はある。 生まれて間もない頃に十鬼蛇区と呼ばれる無法地帯に捨てられ、12歳の時に二虎に拾われた。出会った場所が「十鬼蛇」と「七王馬」の境界だったことから「十鬼蛇王馬」の名を与えられる。二虎から武術を教えられて育ち、4年ほどの間に奥義を含めたすべての技を習得するもある日に二虎が敗死してしまい、以来10年間その仇敵を倒すためだけに鍛錬を重ねていた。 二虎が命を落とす前に「憑神」での暴走を止めるため、「絶氣」で背骨の一部を歪めたことで肉体に「枷」がはめられ実力を十分発揮できずにいたが成長によって徐々に綻びが生じ、トーナメント前の桐生との邂逅で完全に「開錠」された。 使用武術は一代で途絶えたと言われていた謎の武術「二虎流」で、一部では『二虎流を継ぐ者』『虎の器』とも呼ばれている。スピードタイプ寄りのオールラウンダー型ファイターで突き・蹴りともにバランスの良いキックボクシング風の構えを取り、単純な殴り合いでも他の闘技者を圧倒するパワーとスピード、そしてテクニックを誇る。並外れた動体視力を活かす操流ノ型「柳」を主に得意とする。聴覚も優れており、蕪木戦で身につけたカクテルパーティー効果で相手の動作音だけに集中する技術を用いて、視力を失った状態でも高速で飛来する物体を回避・迎撃も可能。幼少期からナイフなどの扱いにも長けていたが、武術を学び始めてからは使用していない。ただし、トーナメント2回戦まではあくまで二虎から「借りている」という感覚で武術を使っており、しばしば「アンタの二虎流」と口にしていた。また、エンジンのような音と共に体色を赤く変化させ獣じみた状態となり、スピードを急上昇させる謎の技「憑神」も持っている(本人は「前借り」と呼んでいる)。さらに、あえて体力を限界まで使い切りハウスキーピングタンパクのみで肉体を淀みなく動かすという技術を、奥義伝授の際の極限状態の中で習得している。 拳願絶命トーナメント開催を狙う乃木の意向で、デビュー戦で期待の新人とされる理人、2戦目で闘技者潰しで知られる蕪木を、3戦目にして現役トップクラスの闘技者である関林を撃破する。 トーナメント1回戦では因幡良と対戦、身体能力で優っていながら序盤は「髪」を使うトリッキーな戦法に翻弄されるも、最終的には「前借り」を使用し圧勝。 仕合終了後から夢のみならず現実でも二虎の幻覚を見るようになり、その際に今の自分が実力を出し切れていないことと二虎と修行していた頃の記憶の一部が失われていたことを知る(後にこれらの「力の枷」以外の症状はすべて「前借り」による副作用であることが判明)。トーナメント1日目終了後、二虎の幻覚に勧められるまま精神を統一した結果、自らも理由はわからないながらアギトに匹敵するレベルまで体のキレが増すも急激な力の上昇を上手く制御できなくなる。 2回戦では雷庵と対戦。上昇した力も呉一族の身体能力の前には通じず、「前借り」を発動しても「外し」た雷庵に決定打を与えられないまま肉体の崩壊が始まり、「前借り」が解けてしまう。だが幻覚の二虎との対話で自分自身の二虎流を見つけ出し、わずかな勝機を逃さず満身創痍の状態で辛勝。 負ったダメージはあまりにも深刻で、英の治療により一命をとりとめたものの仕合後すぐに意識を失い、3日目が終わる頃になってもまだ目を覚まさなかった。クーデター開始後しばらくして眠りから目覚め、直後に「憑神」を使う守護者を一蹴するも残り3戦戦い抜けるかすら危うい状態が続いており、呉一族秘伝の治療法の数々を受けたことでなんとか戦えるまでには復調。そして記憶の回復と共に精神的な危うさも消えた。自身の命を案じた一夫から棄権するよう必死の説得を受けるも、次の機会はないという自覚から「ワガママを通させてほしい」と頼み、願いを聞いてくれた一夫に礼を述べて3回戦に臨んだ。 3回戦では互いに満身創痍のままコスモと対戦。壮絶な組み技合戦の末にあえて体力を使い尽くすことで、死の淵でさらなる戦闘力を発揮。覚悟を決めたコスモに右手の小指を折られたが、相手の「先読み」と「ゾーン」を逆に利用して絞め落とし、去り際にコスモの健闘を称え準決勝へ進出。 準決勝直前に串田から一夫が桐生に連れ去られたことを知らされ、その暴走を止めるため交戦。決して軽くはないダメージを受けながらも二虎流の技のみで勝利し、「絶氣」で背骨の歪みを治療した後、護衛者に身柄を引き渡す。 準決勝では若槻と対戦。重篤なダメージを負っていたことや、どちらが勝利しても会長に推薦されるのが乃木であることから八百長での敗戦を提案されたが、それを拒否し出場。仕合本番では圧倒的なパワーと油断のない猛攻に苦しめられ、切り札の「鬼鏖」も不発に終わり窮地に追い込まれる。しかし一夫の声援で奮起し2度目の「鬼鏖」を成功させ、これが決め手となり決勝へと駒を進める。 決勝では黒木と対戦。格上の相手に対し、「前借り」と二虎流を組み合わせた「自分だけの武」を完成させ、決して万全とは言えない状態ながら戦いを成立させるも徐々に押されていき、右腕を折ることで巻き返そうと賭けに出るが、失敗して逆に大腿を貫かれる。出血で「前借り」を維持できなくなり、徐々に追い詰められていく。リスクを覚悟で「前借り」と鬼鏖を同時に使うも、あと一歩で届かず敗退。滅堂のメディカルチームによる治療で一度は目を覚ましたものの既に肉体は限界を超えていたため、二虎の幻覚と最後に話を交わしてから眠りにつき、願流島のはずれで一夫に発見された。 『ケンガンオメガ』では、トーナメント準優勝後に忽然と姿を消した伝説の闘技者として知られており、死亡説も流れているが実際のところは一般会員には知られていない模様。だが実は「前借り」の多用によって限界を超え著しく衰弱していた自らの心臓の代わりに、自らの組織から器官培養されて「誰か」が英へ預けた心臓を移植したことで死を免れていた。己の異常な事情に一夫や楓を巻き込む訳にはいかないと考えて以降2年以上にわたって生存を隠しており、その間は迦楼羅の婿候補ということで呉の里に身を寄せ、驚異的な治癒力によってわずか1年で手術前と同じ水準の力を取り戻した。そして2年あまりが経過した11月30日の夜、夏忌とその弟子に襲われ絶体絶命だった一夫の前に雷庵と共に健在な姿で現れ、圧倒的な力で蹂躙していく。その足で呉の里へと向かい、一夫に事情を説明した後で対抗戦に出場する意思を表明、蟲に生存が知られたこともあって拳願会にも生存を公表した。負傷した光我に出場を辞退するよう忠告すると共に友人の一夫を助けてくれたことに感謝し、彼が強くなったことを認めた。呉一族のもとで読唇術などを習得したほか、里で暮らす間に色々と常識を学んで他人を名前か名字のどちらか一方で呼ぶようになったが、一夫だけは未だにカタカナフルネームで呼んでいる。また、光我と龍鬼の成長を考えて言動を選ぶなど、人間的にも成熟している。 モデルは『仮面ライダーカブト』の主人公・天道総司。使用武術・二虎流 王馬が使用する謎の武術。その正体は臥王鵡角が考案した新たな武術で、古流柔術「臥王流」を源流とし、その中で現代においては不要な様式を切り捨てて新たな技術を加え、怪腕流の下地が技術の編纂に協力したことで生まれた武術である。 世間では十鬼蛇二虎が創設し、1代で途絶えたとされている。身体などの力の操作を行う「操流ノ型」、歩法・走法が中心の「火天ノ型」、肉体硬化と打撃技に特化した「金剛ノ型」、肉体軟化と関節技に特化した「水天ノ型」という大きく4つの系統と、番外扱いの「無ノ型」に分かれ、さらに4系統の技には「極(キワミ)」という単に強力なだけでなくどのような状況でも最後まで使える奥の手がある。2つの系統を複合した技も存在する他、4系統を極めて初めて習得可能になる「奥義」も存在する。無手の武術であり、銃火器などで武装した相手を素手で制するための技も存在する。 王馬は操流ノ型と火天ノ型を得意としており、特に操流ノ型に関してはトーナメント最終戦の時点で全盛期の二虎を超えたとされるが、逆に金剛ノ型と水天ノ型を苦手としている。後に、憑神の出力を抑えつつ二虎流の技を制限なく使うという「2つの二虎流」を我が物とした。 また、王馬に伝えられた物は二虎が下地の後継者である黒木の協力で完成させた物だが、元々鵡角が複数の「十鬼田二虎」に授けた武術なので、王馬が使うのとは異なる二虎流も存在する。実際、桐生や加納は「本物の二虎」を名乗る人物から別口で二虎流を学んでいる。 主な技 操流ノ型「柳(ヤナギ)」 相手の力の流れを見極め、タイミングを見計らってほんの少しだけその力に加重し、力の流れを乱して暴走させ、力の潮流を己の支配下に置き相手の攻撃を逸らす柔の技。上手く使うには力の流れを見切るだけの優れた動体視力が必要。集団戦では敵の攻撃を逸らし、別の敵と同士討ちさせることも可能。 ただし、強靭な体幹を持つ相手に使用した場合には十分に体勢を崩し切れないことがある。また、あくまで「崩し技」なので技自体の威力は低く、投げに利用してもこの技だけで止めをさすことは難しい。 臥王流の同名の技が元になっている模様。 操流ノ型「絡み(がらみ)」 力の進行方向を変えるカウンター技。相手の攻撃を受け止めるようにして使い、打撃の力をそのまま返し関節を破壊する。 操流ノ型「流刃(リュウジン)」 側面から力を加え、打撃の軌道をずらす操流守の型。理論上は銃弾をも防ぐことが可能であり、銃弾の入射角を見極め、手の甲の骨で銃弾の方向を変える。王馬は音速で振るわれる鞭の先端を切断してみせた。 操流ノ型「絶氣(ゼッキ)」 相手の胸の中央部を掌で強打し神経を破壊する技。背骨の一部を歪めて自律神経を抑制する応用法もあり、神経異常による幻覚や幻聴を治療することも可能。 操流ノ型・極「傀儡(クグツ)」 操流ノ型における「極」。体内の力の流れを「操流」で増減、必要最小限の力で体を動かす技。残された体力が少ないとき、体力を温存して大技につなげたいときに使う。 金剛ノ型「不壊(フエ)」 攻撃のインパクトの瞬間に当たる部位の筋肉を締め、あらゆる攻撃に耐える剛の技。極めればコンクリート片を投げつけられてもびくともせず、ナイフすら刺さらなくなり、「羅刹掌」の螺旋エネルギーすら防ぐことができる。衝撃の際に地面に根を張るイメージをすることで、少々体格の勝る相手からの打撃にも力負けしなくなる。基本的には受け身などでも使える防御の型だが、肉を締めたまま相手を迎え撃つことにより攻めに転じることも可能。 固められるのは筋肉だけなので頭部のように筋肉の少ない場所は防御できず、長時間使い続けることもできない。また繊細な動きが必要な「操流ノ型」とは複合できない。王馬自身は「ダサいから」「性に合わない」という理由で、あまりこの技を使いたがらない。 臥王流にある「纏鎧」が元になっている模様。 金剛ノ型「鉄砕(テッサイ)」 「不壊」の要領で拳を固め攻撃する技。一見すると単なるパンチ技だが、その威力は手に何か握り込んでいるかと錯覚させるほど。元々骨を砕くだけの威力はあったが、「無」で重心などを調整した結果、岩壁に自身の身長を超えるクレーターを穿つほどの破壊力を出せるようになった。 金剛ノ型「鉄指(テッシ)」 筋肉で指関節を固定し急所を突く技。相手の骨を握り砕く、指で刃物を挟みへし折るという応用も可能。また指を骨折した際に拳を固める場合にも使用できる。 臥王流にある「穿」が元になっている模様。 金剛ノ型「鉄砕・蹴」 蹴り技。 金剛ノ型・極「抱骨(ホウコツ)」 金剛ノ型における「極」。筋肉をコントロールする技で、適切な応急措置が施されていれば骨が折れていても平然と体を動かすことができる。怪腕流にも類似する技が存在する。 火天ノ型「火走(ヒバシリ)」 焔のごとく揺らめき敵を幻惑する歩法。 火天ノ型「烈火(レッカ)」 瞬発力を生かして一気に間合いを詰める歩法。直線的ながら目にもとまらぬスピードで移動する。 火天ノ型「幽歩」 瞬時に死角へ移動し、まるで攻撃をすり抜けたかのように錯覚させる歩法。 火天ノ型・極「縮地(シュクチ)」 火天ノ型における「極」。筋肉に頼らず、「骨で立つ」ことを極意とする、仙術「縮地」から名を頂く歩法。重心の移動によって移動するため、通常の動きとは明らかに「間」が異なり、突如として間合いが伸縮したかのように錯覚する。これによりバックステップしたように見せかけて前進し攻撃を行うことなどが可能。 水天ノ型「水草取り(みなくさとり)」 腋と手の甲で絡めるようにして槍などの突き込みを封じる技。 水天ノ型「首断(シュダン)」 相手の隙をついて背後に回り、背中合わせになった状態で喉に両手を回して組んだまま体を屈め、頸部を締め上げると同時に海老反りさせて背骨を極める技。 水天ノ型「捻切地蔵(ネジキリジゾウ)」 投げ飛ばしてうつ伏せに倒した相手の腕を抱え込み、背中側に体ごと倒すことで肩と肘の関節を極める技。 水天ノ型「海月固め」 相手の懐に入り、ヘッドロックを逆向きにする要領で上腕部を使って頸部を締める技。状況によってはそのまま投げ技へと繋げる。 水天ノ型「水龍脈」 組みついた相手の腰を取って投げ、腕で首と脚を上から押さえつけると同時に脛の部分で相手の背を下から押し上げることにより、首と背骨を一度に極める技。本来は技をかけて「即折る」ためのものだが、手加減すれば絞め技としても使うことができる。 水天ノ型「双魚之縛(ソウギョノシバリ)」 相手の突き手を取って腕ひしぎ十字固めの要領で抱え込んで腕を破壊すると同時に、逆の手を両足で抑え込んで相手の動きを封じる技。 水天ノ型・極「水鏡」 水天ノ型における「極」。相手の体を利用して関節技・絞め技をかけるという技で、骨折などで自分自身の腕では絞め・極めをかけられない状態でも使うことができる。 コスモ戦では相手に投げ技をかけ、掴んだ相手の腕と自身の上腕と肩を使って首を絞めると共に自分自身の体で相手の内臓を圧迫するという形で使用した。さらに場合によっては技を外されないよう関節技で相手の抵抗を封じる。 「極」の割に地味で不細工な技なので、王馬はあまり好んでいない。 無ノ型「空」 鳩尾から丹田にかけて意識を集中させる、空手の息吹や中国拳法の内功に類似する呼吸法。腹圧を高め一気に空気を放出することで、精神の統一や体内機能の調整を行う。 操流・火天ノ型「不知火(シラヌイ)」 相手の頭部をハイキックで蹴り飛ばし、その勢いを保ったまま体を一回転させ、同じ脚で頭部を踏み付け追撃する技。 操流・火天ノ型「畝焔(ウネリホムラ)」 最高速度を保ったまま上半身を一気に傾け、急激な方向転換を行う走法。重心の移動を利用することで90°近く進行方向を変えられるが、無理な動きを行うため足への負担が大きい。 操流・水天ノ型「水燕」 拳を緩く握り、不規則な起動でラッシュを叩き込む技。 金剛・火天ノ型「瞬鉄(シュンテツ)」 火天ノ型「烈火」のスピードを乗せた状態で金剛ノ型の技を繰り出す技。二虎流で最も速い攻撃だが、攻撃が直線的でタイミングを読まれやすいという弱点がある。この技はカウンターで使用する時二最も高い効果を発揮する。 作中には全身を固める「不壊」を使った状態で肘から相手に突進するという「瞬鉄・爆(シュンテツ・バク)」と、拳を固めて殴りかかる「鉄砕」との複合技の「瞬鉄・砕(シュンテツ・サイ)」、「鉄指」で固めた指を使い高速の貫手を放つ「瞬鉄・穿」が登場した。 金剛・水天ノ型「鉄砕・廻(テッサイ・カイ)」 大外刈りに近い形で相手を投げ飛ばし、その勢いのままに倒れた相手に「鉄砕」の拳を叩き込む技。 火水天ノ型「炎水(エンスイ)」 突進した速度を維持したまま急に上体を低くして相手に組み付く技。 奥義「鬼鏖(キオウ)」 二虎流の4系統全てを修めることで初めて伝授される技。その名は「鬼をも殺す」ことを意味する。4系統全ての要素を持つ唯一の攻撃だが、二虎によればこの技は全系統の上位にあるわけではなく中にあるのだという。 その正体とは、相手の攻撃をそっくり受け流すことのできるカウンター技。原理としては、操流で力の方向をずらし、水天で脱力した体に威力を素通りさせ、火天でポジショニングを確保、金剛で受け流した威力を自分の力をプラスして敵に返すというもの。操流、水天、火天、金剛と繋げるカウンターを全て鬼鏖と呼び、ありとあらゆる局面で相手の攻撃の種類に応じて形を変える無形の技である。特に重要なのは力を流す方向を決める操流と脱力で威力を流しきるための水天。使い手の瞬発力・決断力・想像力・創造力などの質に直結するため、技の性質を見切ったとしても防ぐことが難しい。 習得には「感覚」をひたすら研ぎ澄ます過程が必須であり、そのために死の森として知られる餓鬼ヶ原樹海の内部に篭り、ひたすら組手を重ねることで心身を極限まで追い込むという形で行われる。二虎流の他の技に比べてはるかに習得難度が高く、命がけの荒業を乗り越える必要があるので、二虎も伝授にはあまり乗り気ではなかった。加えて自分の体を「道」にして力を返すため、内臓への負担も大きい。 体外離脱 睡眠中に行うイメージトレーニング。現実と同じ環境を作り、対戦相手のイメージと戦闘をすることで戦闘経験を積む。 王馬は二虎に教わってから14年毎日行っており、1回の睡眠で平均8戦している。ただし、相手の実力を一部しか見ていない場合、仮想敵の強さも不完全なものとなる。 奥義「前借り」/ 「憑神(つきがみ)」 意識的に心拍数を高めることで血流を加速させ、発生した熱量を運動能力に変換しスピードを急上昇させる技。速度の上昇に比例して打撃の威力が増し、同時に圧倒的に手数が増加するので攻撃の「回転力」も上がる。しかも「攻撃が途切れない」ため、反撃しようとする相手にとっては非常に厄介。心拍が高まることで心音がエンジン音のように鳴り響き、体表の血管が腫脹するためか体色も赤く変化、暴走して状態が進行すると白目が呉一族と同様に黒く染まる。 最も有効なのは、体格や身体能力で勝る相手を短時間で蹂躙する場合。反面、巨漢との相性は悪く、一時的に互角の戦いを繰り広げられるようになるものの、戦闘後には反動で肉体に大きなダメージを負う。加えて動きに精彩が無くなり、二虎流の一部の技が使えなくなる欠点もあり、特に金剛ノ型との相性は最悪で、コントロールできていない状態で使えば、最悪血管が裂けてしまう恐れがある。 使用時には心臓に平常時の4〜5倍に相当するほどの負荷がかかり、全身の血管にも損傷が生じて吐血や鼻・目からの出血を起こすばかりか、脳内出血が原因で記憶の喪失や混濁、幻覚、幻聴など重篤な症状が現れる。また、記憶の混濁によるものか普段以上に好戦的な性格へと変化する。そして最大の欠点として、血液の循環を速めるという性質上、出力に比例して出血量が増加するため、裂傷を負った状態で使い続けると失血死する可能性がある。 王馬の切り札で、雷庵戦までは追い込まれると安易に利用してしまうクセがあったが、使えば使うほど命をすり減らす、諸刃の剣ともいうべき危険な技であり、王馬自身も自分の命がそう長くないと理解していた。 実は出力のコントロールも可能であり、力の上昇率を抑える代わりに体の負担を軽減することもできる。これにより、併用できないとされた金剛ノ型を含め、二虎流の全ての技を十全に使用可能になり、2年後の王馬は自身の二虎流の奥義としてこの技を使っている。 二虎ではなく「蟲」に所属していた「本物の二虎」を名乗る男から授けられたもの。だが、王馬は誰に教わった技なのかを思い出せず、「憑神」という本当の技名も忘れており、記憶を取り戻すまでは「前借り」と呼んでいた。開発者によれば、呉一族の「外し」に対抗するために考案された技術であるらしく、潜在能力の解放を行う「外し」とは似て非なるものである。また、守護者の上位ランカーなどもこの技術を使うことができる。 山下 一夫(やました かずお) 声 - チョー(ドラマCD・Webアニメ) 乃木グループ傘下の乃木出版の社員。56歳。うだつの上がらないサラリーマンであり、妻とは10年前から別居中、長男は引きこもりで同じ家にいながら3年もの間姿を見ておらず、次男は暴走族所属の不良。後に息子は2人とも王馬がきっかけで更生の道を歩むが、妻は現時点で作中未登場。中年男性でありながら本作の公式ヒロインとして扱われている。 ある日に王馬と駒田のストリートファイトを偶然目撃。その後、突如として乃木から直々に王馬の世話係に任命される。王馬の破天荒ぶりに振り回され、今まで培ってきた常識が全く通用しない拳願仕合に圧倒されながらも、本人の意思とは無関係に拳願仕合の世界へと急速に巻き込まれていく。 プロレスラーに憧れていたが、ひ弱なせいで幼少期にはガキ大将からいじめられ中学で柔道部へ入部するも才能の限界を自覚し格闘技の道を完全に諦めた。しかし己の夢を王馬の姿に重ね、彼の活躍を心から応援するようになっていった。 王馬の拳願絶命トーナメント出場のために、山下商事社長として拳願会の会員にさせられ、会員獲得の非公式仕合への挑戦料、トーナメント出場料と合わせて計51億円の借金を背負う。さらに借金の担保として全ての個人資産を差し押さえられ、乃木が拳願会々長に就任できなかった場合にはなし崩しで職も家も失う崖っぷちに立たされてしまった。当初は返済しようもない額の借金に心底慄いていたが、王馬への絶対的な信頼もあり、ヤケクソ気味に腹をくくった様子。 格闘技観戦を長年の趣味としており、表で有名な格闘家や技には明るく格闘家の体つきなどを多彩な語彙で表現する。 拳願仕合の雇用主側としては裏表の全くない実直な善人であり、串田からの評価は「ウチの雇用主ここがイヤだ」の質問に対し、無理やりに絞り出して「眼鏡をかけているところ」。その善人ぶりゆえか人望を集め、楓・串田も山下商事起業の際についてきてくれた。 実は江戸時代に乃木屋の闘技者だったが断絶したとされていた山下一族の末裔。「拳眼」と謳われた先祖の優れた動体視力の一端を受け継いでおり、トーナメント予選の際には勝ち抜く5人の闘技者を全員的中させ、組み合わせのスロットマシーンでは驚異的な最高得点を叩き出すという驚異の眼力を発揮するが、身体能力の低さから性能を100%発揮することはできない。人を見る目にも優れ、トーナメント日程の違和感や阿古谷の戦い方の不自然さに早々に気付くなど鋭いところもあるが、勢いに任せて2800億円相当の賭けをしたり説明されるまでルール変更の真意に気付かなかったりと、間の抜けたところもある。 意外と負けず嫌いで大人げないところがあり、「ひねり飛車のカズちゃん」「長サウナのカズちゃん」などの異名を持っている。割と多芸で、将棋、遠投、水泳、釣り、素潜りなどの特技を持つ。ヘリコプターは苦手で乗り物酔いしてしまう。 起業から短期間で拳願絶命トーナメントに参加したこともあり各界から注目を浴びているが、肝心の本人は気づいていない。 2回戦前夜、長男が呉一族を飼いならそうと画策していたことに激怒した恵利央により、UM社との2仕合目で息子の命を賭けた勝負をすることになる。王馬が仕合に勝利した際、呉一族が約束を反故にした場合に備え、自らも恐怖を押し殺して恵利央と対峙。対峙する前に抹殺指令は解かれていたためその行動はあまり意味のあるものとはならなかったが、恵利央は姿も才覚も器もまるで違うのに一夫の姿がどこか滅堂と重なって見えたように感じた。 限界を超えても戦い続ける王馬を見て、息子ほどに年の離れた彼に頼りきっていた己を恥じ「恩人であり友人でもある王馬を死なせるわけにはいかない、誰も傷つくところを見たくない」とトーナメント棄権を決意。「敗退しても長男が借金を肩代わりしてくれる」と王馬を涙ながらに説得するも「次」がないと考えた彼には棄権を拒否された。以降は王馬の覚悟を尊重し、乃木からの八百長負けの指示も断る。300年前からの悲願についても教えられ、贖罪しようとする乃木に対して「先祖は恨んでいないだろう」と告げ、自分の意思で戦おうとする王馬の決着を見届けることを提案した。 トーナメント終了後、王馬の最期を看取り本土へ帰還。その後は34年間勤めた乃木出版を退職し、正式に「株式会社 山下商事」の代表取締役社長として新たなスタートを切った。 2年後には拳願会でもかなり顔が知られた存在になっている。自らに接触してきた光我を仕合の「見学」に連れて行き、彼の実力では通用しないことを示して翻意を促すが王馬と同じく「この世に自分より強い奴がいることが許せない」と発言したことで考えを変え、今のままでは確実に無駄死にすることを念押しした上で、彼を山下商事の闘技者見習いとして雇用。また滅堂の紹介でやって来た龍鬼もフリー闘技者として採用し自宅に下宿させる。 「煉獄」との合併をかけた対抗戦が行われることになり、乃木からの指示で代表闘技者選出を任されることになり、フリー闘技者の選考を担当。選考の過程において目黒正樹と速水正樹という瓜二つの2人を見たことで、王馬と龍鬼が血縁者あるいは同一人物ではないかという疑念を強め、毛髪を使ってDNA鑑定を試みる。だが配送の過程で夏に妨害され、数ヶ月後に山下商事を訪問した長男から禁忌に触れている可能性があると忠告を受けるも、その日の夜に夏とその弟子により自宅を襲撃され、光我によって逃されるも再び包囲され絶体絶命になる。だがその時、2年前から行方不明だった雷庵と2年前に死亡したはずの王馬によって救出され、死を偽装していた事情を説明された。 対抗戦本番では拳願会チームの監督を任され出場順の裁量を委ねられている。当初はそれぞれ自己主張が強くまとまりのないチームをまとめられず苦心したが、ガオランが煉獄ルールの洗礼を浴びて敗北したことへの危機感からチームが団結し始めたため、闘技者たちの判断を尊重しつつ最終決定を下す立場として行動できるようになる。 『ダンベル何キロ持てる?』では、アマチュア将棋トーナメントの出場者としてゲスト出演するも優勝を逃した。 串田 凛(くしだ りん) 拳願絶命トーナメントにあたり、乃木から直々に山下に送られた秘書。24歳。「ッス」という語尾が口癖のフランクそうな美女だが、乃木から「トーナメント水面下で権謀渦巻く企業間の不正から山下を守る」ことを任されただけはあり、普段見せる顔とは裏腹に相当のキレ者である模様。その一方で色々と重要な情報を山下に説明し忘れていることが多い。顔のパーツが金田とほぼ同じであるが本人たちに自覚はない。実は面食い。 乃木グループ本来の秘書である楓よりも多くの情報を会長から与えられており、王馬たちグループ傘下の闘技者の動向を密かに監視し、調査結果をつぶさに報告している。 その正体は滅堂直属の諜報員。「中」の九蜘出身で、身勝手で後先考えず暴力で全てを解決しようとする死にたがりである同郷の人間を嫌っているが、王馬や氷室は例外として親しく接している。「中」から出てきたばかりの自分に親身になってくれた滅堂に恩義を感じているが、善人すぎて危なっかしい一夫を放っておけず、トーナメント後は本来の主人から離れ、一夫の補佐に努めることを決める。 『ケンガンオメガ』の開始時は闘技者スカウト部部長としてエジプトに長期出張中で、12月にはフランスで闘技者の勧誘に励んでいる。 現在のアニメ版では登場していない。 成島 光我(なるしま こうが) 『ケンガンオメガ』の主人公の一人。西日本出身の青年。20歳。 「無力だった自分への失望」と「圧倒的な暴力への憧れ」を抱え、無力感にイラついて物心ついた頃にはすでにグレていた。まともに学校に通っていたのは小学4年生までで、勉強が苦手。特に地理に弱い。ことわざの勉強だけは好きだが、どれだけ勉強しても1日経つと全部忘れてしまう。 父親は幼少期に失踪、母親はおらず、反りの合わなかった親代わりの祖父によって「道徳」を学ばせるために空手道場に押し込まれ、そこで手に入れた力を思うままに奮って生きてきた。王馬と同じく「自分より強い奴がいることを許せない」と考えており、プロの格闘家になるのではなく、ノールールの殺し合いを生き抜く本物の強さを求めている。父方のはとこおじはフルコン空手団体「六真会館」の師範・成島丈二。 あちこちの道場に入門しては道場破りのような真似をして追い出されることを繰り返しており、キックボクシングと総合格闘技を1回ずつ、空手は4回破門されている。丈二の紹介で、一時は自身も六真会館に所属していたが、喧嘩をして破門された。この経緯から面子を潰してしまったと考えているので、丈二には頭が上がらない。 良くも悪くも田舎のヤンキー気質であり、身内には優しい反面、敵と認識した相手には敵意を剥き出しにするが、一夫達との出会いで性質が少しずつ変化している。軟派で喧嘩っ早いが、意外に義理堅いところもある。好きな物はスカジャンで、裁縫が得意。服の好みは王馬に近い。 群れて粋がっていた3年前(『ケンガンアシュラ』の開始1年前)に出会った王馬に惨敗しており、恨みを持っている。王馬の足跡を辿り裏格闘技界の情報を集めていたところ、拳願絶命トーナメントで彼が戦っている静止画を発見したことで、相手が拳願仕合に参戦していたことを知る。そこで、友人の浅利に頼んで拳願仕合について調べてもらい、山下商事に接触。山下に連れられて見学した拳願仕合でレベルの差を痛感するも、誰より強くなるという野心を捨てられなかったため、見習い闘技者として山下家に居候しながら山下商事で働くことになる。 金田に案内されて超日本プロレスを訪れ、全国巡業までの1か月間、関林たちからプロレス修行をつけてもらい、続いて蔵地に紹介されたクレイシ道場に通い始め、同時にかつて在籍していた六真会館で丈二から指導を受けて必殺技の開発を進める。 基礎体力は十分で、超日で受けたわずか2週間のトレーニングで元々持っていた身体能力の使い方にも慣れるなど環境適応力も高く、ひと月の修行でフィジカルとメンタルはかなりタフになった。現役闘技者に比べれば実力で大きく劣るものの、「センス」に関しては彼らの多くからも認められており、立会いをした黒狼や龍鬼を驚かせている。“拳眼”に匹敵する驚異的な眼力(動体視力)と非常に優れた観察力を有し、複数の格闘技を学んだ経験から技の仕組みや使用武術の流儀を見抜く力に長ける。 フットワークが雑で無駄な動きが多いせいで動きを読まれやすくすぐ疲れることと、力みが強すぎて力を無駄にしていることの2つが弱点で、そのせいでどんな攻撃が来るのかバレバレで簡単に対処されてしまっていたが、前者は龍鬼から臥王流の運足を教わったこと、後者は暮石の下で「力みと脱力のアンバランス」を指摘されたことで是正される。そして2か月後、余計な力みが消えて打撃が読まれにくくなり、コスモたちとスパーリングを繰り返したことで寝技にも強くなった。卒業試験としてホセと再戦、条件付きだが格上相手に見事に勝利し、関林から合格を言い渡される。その後は朝の超日での基礎トレ、昼間のクレイシ道場での総合格闘技修行と並行して、夜には六真会館本部にも通い、丈二の指導で三日月蹴りやブラジリアンキックといった「必殺技」を「軸」にする戦い方を学び、修行開始から3ヶ月目にして晴れて闘技者に合格する。3ヶ月前は手も足も出なかった黒狼を相手に勝てないまでも戦いが成立するレベルまで成長し、以降はそれまでの練習だけでなく1日の締めに黒狼とマンツー修行を加えしている。 同居することになった龍鬼とは、因縁のある王馬と瓜二つなこと、自分より後に山下商事に入ったのに先に闘技者に抜擢されたことなどから折り合いが悪かったが、修行を手伝ってもらったことなどで関係は次第に軟化し、2ヶ月後には友人になる。さらにその約1ヶ月後、龍鬼が人を殺している場面に遭遇し、彼がその事に全く罪悪感を抱いていないという価値観の違いに愕然とし、自分では説得することも止めることもできない無力感を抱えたまま絶縁を宣言するも、それから数日後に行われた阿古谷との仕合後に殺人が過ちではないかと考え始めたのを見て、まだ救えるのではないかと思い和解した。 対抗戦が間近に迫った11月30日の夜、山下家を襲撃した夏の一派から一夫を逃すため単身で夏の弟子たちを相手に奮戦し、ナイフで背中、腕、足などを刺されて重傷を負うが、駆けつけた護衛者の一団によって救出される。聖ガッデム病院で緊急手術を受け一命を取り止めたものの、1ヶ月後の対抗戦には出場が難しい状態になり、王馬からも諭されて出場辞退を表明した。その際、王馬から強くなったことを認められて感涙し、以降はわだかまりもなくなっている。使用武術・伝統空手など 打撃系の格闘技が得意だが、柔道の経験もある。 主な技 三日月蹴り 丈二の指導で習得した必殺技の一つ。空手の蹴り技で、右脇腹の肝臓を狙って左足を回し蹴りと前蹴りの中間軌道で繰り出す。煉獄の見学に行った際に、弓ヶ浜に脇腹を殴られて膝を付いたことから着想を得た。体格差のある巨漢にも十分な威力を発揮する。 ブラジリアンキック 練習中の必殺技の一つ。相手の頭部を目掛けて足を振り下ろす蹴り技。三日月蹴りと組み合わせることで有効打を取りやすくしているが、採用試験時点では威力も精度もまだまだで、直撃してもタフな相手を倒しきれず、必殺技候補の域を出ていなかった。 臥王 龍鬼(がおう りゅうき) 『ケンガンオメガ』の主人公の一人。通称『龍王』。臥王鵡角の血族と思われる青年。王馬と瓜二つの顔立ちをしているが、体格はやや小柄で、年齢も20歳ほど。また、ちゃんと人の名前を漢字で呼ぶ。「蟲」のナイダンからは「オメガ」「最後の子」と呼ばれるが、自分では何のことかのか分かっていない。 二虎の遺言に従い殺人はしなかった王馬とは違い、かなりの数を「殺している」。「爺ちゃん」こと老いた鵡角から「蟲は悪なので、皆殺しにしなければならない」と教えられて育ち、「殺し方」として臥王流を伝授された。鵡角との組手はしているので実戦経験は豊富で、二階堂を圧倒するほどの実力者であるものの、登場時点では仕合の経験はない。実力は申し分ないのだが、殺人に対する「罪悪感」が欠落しており、試験であることを忘れて対戦相手を殺害しようとするなど、欠けている部分も多い。その後は仕合での殺人は控えているが、それも倫理感からではなく「ルールだから」というだけである。根本から誰も信じておらず、全てに心を閉ざしているため、教育係を担当した氷室も何を考えているか分からなかった。山下はその人格を「何もない」と評し、悪い人間ではないが良い人間でもなく、周囲の人間によってどのようにも変化しうると考えられている。 拳願仕合に参加するために「中」を離れ、鵡角からの紹介で接触を図った滅堂から山下を紹介され、山下家で下宿し始める。黒狼を倒したことで正式にフリー闘技者となる。鵡角からは、拳願仕合では地伏龍以外の技は使わないように言いつけられている。 他人とのコミュニケーションが苦手で、一言多いのが欠点。失言して光我を怒らせることが多いものの、彼を弱いとは思っていても嫌ってはいないため、動きに無駄が多いことを指摘して臥王流の運足の練習法を教えるというお節介を焼いている。また、服装センスは壊滅的。 「蟲」と敵対しており、拳願仕合に参加したのも彼らをおびき出すためである。敵のことは同じ人間だとは思っておらず、見つければ単に目障りだからという理由で自ら率先して殺害する。流石に一般人を手にかけることはないが、幽崎(偽)に襲撃されたことをきっかけに、拳願会関係者に変装した夏の弟子を4名殺害している。 殺人現場を目撃した光我と仲違いしたまま臨んだ阿古谷との仕合では地伏龍が通用せず、「爺ちゃん」との約束を破り他の技も使って殺してでも勝とうとしたが、戦いの中で光我にかけられた言葉を思い出し、おかしいのは自分かもしれないという思いが芽生えたことで反撃を中止し、マウントをとられたまま敗北する。仕合後に光我に自分の思いを伝えた事で和解し、同時に山下の意向で6人目の対抗戦代表選手に内定する。光我の努力を近くで見ていたために、「蟲」の襲撃で重傷を負った彼に対抗戦出場を辞退するよう宣告した王馬を嫌っている。 対抗戦本番では、「蟲」であるナイダンから話を聞くために第5試合に出場する。殺さずに倒すために速攻を狙うが、光我との約束で殺しを禁じたために力を出しきれず、スピードでは勝っていても焦りから攻撃が直線的になり過ぎて、「天空の目」で完璧に対応されて厳しい戦いを強いられる。試合中に鵡角を否定されたことに怒りを感じてもなお殺す気にはなれず、これまで殺してきた「蟲」とは桁違いの強さを前に追い詰められていくが、ナイダンが光我を殺そうとしたことで遂に本気を出し、双方本気で殺し合う中でマウントポジションから首を絞められて絶体絶命となる。そこで起死回生の「穿」で頸動脈を打ち抜いて致命傷を負わせてしまい、さらにナイダン自身がダメ押しで首の傷を広げて死亡。相手を殺害したことで試合は反則負けになった。 光我や一夫と交わした約束を破ってしまったことで消沈し、一人で控室を離れていると、会場を訪れていた桐生に話しかけられる。使用武術・臥王流 臥王鵡角が使用していたという古流柔術。二虎流の源流と言える武術。 「弱き者達」が受け継いできた技で、その本質は「奇襲」にある。故に種が割れてしまえば脅威が半減する事から、仕合向きの技とは言えない。この弱点こそが、鵡角が臥王流を捨て、二虎流を生み出した理由のひとつと考えられる。 主な技 地伏龍(チフクリュウ) 土下座のような低い姿勢から相手を突き上げる技。本来は小型の刃物と併用し、胸部や頸部を狙って相手を殺傷する技だが、武器の使用が禁じられる拳願仕合では、上半身を極端に脱力し目線を下に向けたタックルを狙うかのような姿勢からアッパーを放つという形で使用している。 臥王流の技の例に漏れず「奇襲」で死角を突くため、黒狼戦で衆目に晒された後は闘技者相手には通じなくなっている。 纏鎧(てんがい) 筋肉を収縮、硬化させて衝撃に備える鎧に変え、敵の攻撃を受ける技。受け、避け、捌きが使えない局面で選択されることが多い。発展系である二虎流では、金剛ノ型「不壊」として取り入れられている。 裂空(レックウ) 地に伏せるまでは地伏龍と全く同じ動きを取るが、その姿勢から一気に垂直跳びして相手の頭部へ回転蹴りを浴びせる技。 柳(ヤナギ) 二虎流の操流ノ型「柳」と同じ、相手の力の流れを逸らして体勢を崩す技。 蛇伸拳(ジャシンケン) 間合いに入った瞬間に方向転換して側面に回り込み、攻撃を放つと思われる技。技を決める前にナイダンに潰されているので詳細不明。 双龍突(ソウリュウトツ) 両手で相手を挟むように下から拳を放つ技。 柔打(ヤワラウチ) 威力を内部に浸透させる、所謂「鎧通し」の打撃。頭部にクリーンヒットすれば、タフなナイダンでも膝をつくほどのダメージを負う。 穿(ウガチ) 「纏鎧」の応用で、指の筋肉を硬化させ、敵の急所を打ち抜く技。発展系である二虎流では金剛ノ型「鉄指」として取り入れられている。
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