脳内出血
脳内出血
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/11 09:52 UTC 版)
脳内出血の画像所見について述べる。 頭部 CT 血液が血管外に流出すると凝固して血漿成分が吸収されるためヘモグロビン濃度が上昇する。そのためCTでは高吸収域を示し、診断は比較的容易である。 頭部 MRI 超急性期は脳出血と脳梗塞の鑑別も MRI にて行うことができる。但し、CTでもほぼ脳出血の検出能は変わりはないとされている。 画像超急性期脳出血超急性期脳梗塞発症直後所見 発症直後からT2WI、DWIにて信号変化が認められる 発症直後は所見は認められない。 T2WI T2WIでは血腫中心部の中等度高信号と辺縁部に低信号、周囲の浮腫性変化 T2WIでは発症後数時間しないと血管性浮腫による信号変化は認められない。 DWI 血腫中心部の高信号とその辺縁部の低信号 発症30分以後ならば所見は出現しうるが最終梗塞とくらべるとまだ限局している。 MRI の意義はヘモグロビンの生化学的状態が鑑別できることである。 病期ヘム鉄の性状磁性局在T2WIT1WICT超急性期 (24時間以内) オキシヘモグロビン Fe2+/反磁性 赤血球内 軽度高信号 軽度低信号 高吸収域 急性期 (3日以内) デオキシヘモグロビン Fe2+/常磁性 赤血球内 低信号 軽度低信号 高吸収域 急性期 (7日以内) メトヘモグロビン Fe3+/常磁性 赤血球内 低信号 高信号 高吸収域 亜急性期 (2週間以内) フリーメトヘモグロビン Fe3+/常磁性 赤血球外 高信号 高信号 辺縁部から低下 慢性期 (1か月以後) ヘモジデリン Fe3+/常磁性 赤血球外 低信号 低信号 低吸収域 脳内出血発症直後は血腫内の赤血球膜は正常であり、内部のヘモグロビンの多くは酸素を含むオキシヘモグロビンである。オキシヘモグロビンは反磁性体のため T1 緩和時間、T2 緩和時間に影響を与えないが、血餅は水分を含むため、軽度のT2延長を示すのが一般的である。オキシヘモグロビンは数時間以内にデオキシヘモグロビンとなる。デオキシヘモグロビンは常磁性体であり、T2WI にて著明な低信号を示すようになる。磁化率効果に鋭敏なのはグラディエントエコー法であるT2*強調画像である。この画像では急性期血腫は著明な低信号を示す。しかしT2*強調画像では急性期血腫と慢性期血腫の区別が難しい。急性期から亜急性期にかけてデオキシヘモグロビンは辺縁から酸化されメトヘモグロビンに変化していく。メトヘモグロビンは常磁性体であり著明なT1短縮効果を示すため T1WI にて高信号化してくる。この時期には同時に血腫融解がはじまる。赤血球膜破壊によるメトヘモグロビンの血球外流出、浮腫性変化によって T2WI にて高信号化してくる。このころはCTでは血腫の辺縁が低吸収域になってくるため、MRI の方が血腫の境界、浮腫性変化を正確に判定できる。慢性期になるとメトヘモグロビンはヘモジデリンとなり、浮腫も落ち着き、T1WI、T2WI ともに低信号となる。T2*強調画像でも低信号を示す。
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