著作権法 著作権の制限

著作権法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/09 09:05 UTC 版)

著作権の制限

著作権の行使は、著作権者の利益を侵害しない範囲で制限されることがある。例としては、私的利用における制限等が挙げられる。

著作者人格権

著作者人格権とは、著作物を創作した著作者に認められる人格的利益を保護するための権利である。著作権(著作財産権)とは異なり、一身専属的な権利であるため、他者に譲渡することはできない。公表権氏名表示権同一性保持権の3種の権利が存在する。

著作隣接権

著作隣接権とは、「著作物を公衆に伝達する役割を果たす行為に対して与えられる独占的な財産権」のことを指す[16]。具体的には、実演家・レコード製作者・放送事業者・有線放送事業者に認められる権利のことを指す[17]
なお、著作隣接権は、著作者の権利に影響を及ぼす物として解釈してはならない。

法による定義

「実演」とは、著作物を、演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演ずること(これらに類する行為で、著作物を演じないが芸能的な性質を有するものを含む。)をいう。 「実演家」とは、俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他実演を行う者及び実演を指揮し、又は演出する者をいう。

「レコード製作者」とは、「レコード」(音盤、テープやストレージなどに音を固定したもの(音を専ら影像とともに再生することを目的とするものを除く。))に固定されている音を最初に固定した者をいう。(原盤権

実演家の権利

実演家に対し、あるいは実演家の実演に対して認められる権利を列挙する。

  • 氏名表示権 - 実演に対する、著作物における氏名表示権と同様の権利。
  • 同一性保持権 - 実演に対する、著作物における同一性保持示権と同様の権利。
  • 録音権録画権 - 実演を録音し、又は録画する権利。
  • 放送権有線放送権 - 実演を放送し、又は有線放送する権利。
  • 送信可能化権 - 実演を送信可能化する権利。
  • 譲渡権 - 実演を、その録音物・録画物の譲渡により公衆に提供する権利。
  • 貸与権 - 実演を、それが録音された商業用レコードの貸与により公衆に提供する権利。
  • 報酬請求権 - 実演家の許諾範囲内で、実演の録音物または録画物を放送等しまたは有線放送等する場合に、放送事業者等から実演家が相当額の報酬の支払を受ける権利。
  • 二次使用料請求権 - 商業用レコードを用いて実演を放送または有線放送した場合[注 2]に、文化庁指定の実演家構成団体が放送事業者等に対し二次使用料を請求できる権利。

氏名表示権と同一性保持権を実演家人格権、その他の権利を著作隣接権という。

レコード製作者の著作隣接権

レコード製作者に対して認められる権利を列挙する。(原盤権と呼ぶ)

  • 複製権 - レコードを複製する権利。
  • 送信可能化権 - レコードを送信可能化する権利。
  • 譲渡権 - レコードを、その複製物の譲渡により公衆に提供する権利。
  • 貸与権 - レコードを、それが複製された商業用レコードの貸与により公衆に提供する権利。
  • 二次使用料請求権 - 商業用レコードを放送または有線放送した場合に、文化庁指定のレコード製作者構成団体が放送事業者等に対し二次使用料を請求できる権利。

(有線)放送事業者の著作隣接権

(有線)放送事業者に対して認められる権利を列挙する。

  • 複製権 - その(有線)放送を受信して、その(有線)放送に係る音又は影像を録音し、録画し、又は写真その他これに類似する方法により複製する権利。
  • 送信可能化権 - (有線)放送を受信して、その(有線)放送を送信可能化する権利。
  • 放送権、再(有線)放送権、有線放送権 - (有線)放送を受信してこれを放送または再(有線)放送し、又は有線放送する権利。
  • 伝達権 - (有線)テレビジョン放送又はこれを受信して行なう有線放送を受信して、影像を拡大する特別の装置を用いてその放送を公に伝達する権利。

権利侵害

著作権が侵害された場合の救済手段として差止請求権が認められている。損害賠償請求は一般法である民法の規定によるが、損害額の算定に関して特別の規定が設けられている。さらに権利侵害に対しては刑事罰も規定されている。これらは原則として親告罪であるが一定の要件を満たす場合非親告罪である(「著作権等侵害等罪の非親告罪化」参照)。コピーを防ぐためのプログラムを解除する装置ソフトを販売したり、著作者名を偽って販売を行ったりした場合も非親告罪である。

非親告罪化

海賊版対策の観点から、2006年(平成18年)より内閣府で行われた「知的創造サイクル専門調査会」の報告書(2007年2月26日)に、親告罪の一部非親告罪化、海賊版の広告への規制が盛り込まれた。報告書は、親告罪の状態では海賊版を取り締まる際に以下のリスクがあると述べ、それを解消するため、一定の場合(営利目的の海賊版の販売など)においては非親告罪の適用範囲拡大の見直しが提言された。また、海賊版の広告についても、権利侵害として法律の整備を提言している。この報告書などに際し日弁連が反対意見を述べている。

現行著作権法第123条は、第119条、第120条の2第3号及び第4号、第121条の2並びに前条第1項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない、と、規定している。しかし、後述の「TPP整備法による改正」に基づいて、一定の条件下で著作権等侵害等罪を非親告罪化する法改正案が可決成立し、非親告罪化規定が、TPP11協定発効日である2018年(平成30年)12月30日から施行された[18]




  1. ^ 著作物、実演、レコード、放送又は有線放送。以下同じ
  2. ^ 送信可能化されているレコードを直接放送または有線放送した場合を含む(後述のTPP11改正による)
  3. ^ 改正法(平成二十八年法律第百八号)附則第7条の規定により、著作物、実演及びレコードに関し、改正前の著作権法によると2017年12月29日時点で著作権又は著作隣接権が存するものについては改正後の保護期間が適用され、改正前の著作権法によると2017年12月30日時点で著作権又は著作隣接権が消滅しているものについては改正前の保護期間が適用される。
  4. ^ 著作者人格権若しくは著作権、出版権又は実演家人格権若しくは著作隣接権
  5. ^ 技術的利用制限手段に係る研究又は技術の開発の目的上正当な範囲内で行われる場合その他著作権者等の利益を不当に害しない場合を除く
  6. ^ a b c d e f 著作物、実演、レコード又は放送もしくは有線放送
  7. ^ a b (プログラムの著作物にあっては、当該著作物を電子計算機において利用する行為を含む
  8. ^ 電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によつて認識することができない方法
  9. ^ a b 著作権者、出版権者又は著作隣接権者
  10. ^ 日本国外で行われた提供又は提示については、日本国内で行われたものとみなす。
  11. ^ 公衆送信には、放送、有線放送、送信可能化が含まれる
  1. ^ 著作権法2条1項2号
  2. ^ 著作権法15条1項
  3. ^ b:著作権法第16条
  4. ^ b:著作権法第14条
  5. ^ 著作権法63条1項
  6. ^ 北川善太郎京都大学法学部教授『ソフトウェアの使用と契約-開封契約批判』NBL435号11~12頁
  7. ^ b:著作権法第21条
  8. ^ b:著作権法第2条1項15号
  9. ^ 著作権法2条1項15号イ
  10. ^ 著作権法2条1項15号ロ
  11. ^ b:著作権法第49条
  12. ^ b:著作権法第79条
  13. ^ 岡田有花 (2017年10月10日). “「日本は機械学習パラダイス」 その理由は著作権法にあり”. ITmedia. http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1710/10/news040.html 2017年10月16日閲覧。 
  14. ^ 著作権法2条5項
  15. ^ 著作権法38条1項
  16. ^ 高林龍 『標準 著作権法』(有斐閣、2010年)230頁
  17. ^ 高林龍 『標準 著作権法』(有斐閣、2010年)230頁
  18. ^ 平成30年12月30日施行 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11協定)の発効に伴う著作権法改正の施行について | 文化庁” (日本語). www.bunka.go.jp. 2018年11月8日閲覧。
  19. ^ “音楽など著作権保護70年に 文化審議会改正案、TPPに対応”. 産経新聞. (2016年2月29日). http://www.sankeibiz.jp/compliance/news/160229/cpd1602290500002-n1.htm 
  20. ^ 平成28年3月8日(火)定例閣議案件
  21. ^ 閣法 第190回国会 47 環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案
  22. ^ “環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う 関係法律の整備に関する法律案の概要”. 内閣官房. (2016年3月). http://www.cas.go.jp/jp/houan/160308/siryou1.pdf 
  23. ^ 平成30年3月27日(火)定例閣議案件
  24. ^ a b 閣法 第196回国会 62 環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案” (日本語). www.shugiin.go.jp. 2018年11月9日閲覧。
  25. ^ 環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付):本会議投票結果:参議院” (日本語). www.sangiin.go.jp. 2018年11月9日閲覧。
  26. ^ “CPTPP underway – tariff cuts for our exporters on December 30” (英語). The Beehive. https://www.beehive.govt.nz/release/cptpp-underway-%E2%80%93-tariff-cuts-our-exporters-december-30 2018年11月9日閲覧。 
  27. ^ “違法動画、紹介サイト排除…政府が法改正を検討”. 読売新聞. (2016年4月7日). http://www.yomiuri.co.jp/national/20160407-OYT1T50090.html 
  28. ^ “平成 23 年度 知的財産権侵害対策ワーキング・グループ等 侵害対策強化事業 (リーチサイト及びストレージサイトにおける 知的財産権侵害実態調査) 報告書”. 国立大学法人 電気通信大学. (2012年3月). http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2012fy/E002243.pdf 
  29. ^ “国境を容易に越える侵害 マンガ海賊版の最新状況とその対策”. 集英社 知的財産課. (2015年11月15日). http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/kokusai/h27_02/pdf/shiryo2.pdf 
  30. ^ “国境を越えるインターネット上の知財侵害への 対応について (討議用)”. 内閣官房 知的財産戦略推進事務局. (2016年2月). https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kensho_hyoka_kikaku/2016/jisedai_tizai/dai5/siryou2.pdf 
  31. ^ “国境を越えるインターネット上の知財侵害への 対応について (討議用)”. 内閣官房 知的財産戦略推進事務局. (2016年4月). https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kensho_hyoka_kikaku/2016/jisedai_tizai/dai8/siryou1.pdf 
  32. ^ “知的財産推進計画2016”. 内閣官房 知的財産戦略推進事務局. (2016年5月9日). https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/kettei/chizaikeikaku20160509.pdf 
  33. ^ 改正著作権法が成立 漫画・書籍など違法DLの対象拡大 21年1月1日に施行” (日本語). ITmedia NEWS. 2020年6月13日閲覧。






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