著作権法 著作権の内容

著作権法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/09 09:05 UTC 版)

著作権の内容

著作権は、個々の支分権の総体であり、一個の「著作権」という権利があるわけではない。著作権者は、自己が著作権を有する著作物を自分で利用するだけでなく、他人に対し、その利用を許諾することができる[5]。なお、著作権法には「使用権」というものは規定されておらず、「使用権」を他者に「許諾」するということも著作権法上の権利に関しては特に意味を持たない[6]。著作権法には、以下のような支分権が規定されている。

複製権

複製権とは、著作権制度において全ての著作物を対象とする最も基本的な権利で、著作物を複製する権利である[7]。著作権法において複製とは、手書き、複写、写真撮影、印刷、録音、録画、パソコンのハードディスクやサーバーへの蓄積その他、どのような方法であれ著作物を形のある物に再製すること(有形的再製)を指す[8]。したがって、複製の結果出来上がった複製物は物に固定されている必要があるが、複製の対象となる著作物の方は必ずしも物に固定されている必要はない。例えば、演劇用の脚本の複製といった場合、脚本を直接コピー機を使って複写した場合だけでなく、その脚本に基づいて上演されたり放送されたりした演劇(無形的再製)をCDやDVDに録音、録画する行為も脚本の複写にあたり、複製権が及ぶことになる[9]。また、建築の著作物については、その設計図に従って同じ建築物を建てれば、建築の著作物の複製となる[10]

さらに、映画(映像)の作品の中で音楽や美術作品が使われている場合、その映画の著作権とは別に音楽や美術作品の著作権が独立して成立しているので、その映画を複製しようとする場合には、映画の著作権者だけでなく、その映画の中で使用されている音楽や美術作品の著作権者(複製権者)の許諾も必要となる(同じことは、二次的著作物や、著作物性を有する素材からなる編集著作物やデータベースについてもいえる)。

複製権侵害の要件としては、判例は原著作物と複製物との同一性の他に原著作物に「依拠したこと」も求めている。従って、原著作物の存在を知らずに創作し、結果的にたまたま同一の著作物が出来上がったにすぎない場合は、そもそもアクセスしていないため、複製に該当せず、複製権侵害にもならない。

また、著作権法第30条から47条の7に規定されている著作権の制限規定に該当する場合、基本的には複製権者に無断で複製しても例外的に複製権の侵害とはならないが、法が許容する目的以外でその複製物を利用すると、その行為は複製とみなされる[11]

なお複製権者は、その複製権の目的たる著作物について出版権を設定することができるが、その複製権を目的とする質権が設定されているときには、当該質権者の承諾を得なければならない[12]

また、著作権法第30条の4では情報解析についての規定があり、この条文では「非営利」に限定していない。このため、営利企業が他人の著作物を使って機械学習を行ったり、学習済みモデルを販売しても、著作権侵害には当たらないとされる。諸外国の著作権法にも同様の規定はあるが、大抵は「非営利」に限定されており、営利での利用が可能であることは、日本の著作権法の特徴となっている[13]

上演権・演奏権・上映権・口述権

  • 上演権 - 著作物を公に上演(演奏以外の方法で演じること)する権利
  • 演奏権 - 著作物を公に演奏(歌唱を含む)する権利
  • 上映権 - 著作物を公に上映(著作物を映写幕その他の物に映写すること。映画の著作物に固定されている音楽を再生することも含む)する権利
  • 口述権 - 言語の著作物を公に口述する権利

演劇や落語、講談、漫才の著作物等[注 1]は上演権の対象となるが、詩や小説の朗読は口述権の対象とされ、上演権の対象に含まれない。

「公に」とは、「公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として」いることを指し、「公衆」とは著作権法上は不特定多数だけでなく、特定多数を含む[14]。したがって、特定少数に対して上演することは上演権の行使にはあたらない。また、劇団員が公演前に特定多数の関係者の見ている前で練習しても、あくまで練習であって「直接見せ又は聞かせることを目的として」いないので、上演権の行使にはならない。しかし、公演本番で幕が開いた状態で演じた場合は、誰も観客が来ていなかったとしても、「公衆に直接見せ又は聞かせること目的として」上演している以上、上演権の行使となる。

ただし、既に公表された著作物を非営利・無料・無報酬で上演した場合は、たとえそれが公に行うものであっても、権利の範囲外である[15]。学校の文化祭等での劇の上演はこれにあたる。一方で、チャリティーショー等でその収益をすべて慈善団体などに寄付する場合は非営利・無報酬であるが、観客から料金を徴収している場合は無料の要件を充たさず、無許諾で上演すれば上演権の侵害となる。

公衆送信権等

著作物を公衆送信や送信可能化する権利である。

翻訳権、翻案権等

著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利である。

その他の支分権

  • 展示権 - 美術の著作物又はまだ発行されていない写真の著作物を、原作品により公に展示する権利。
  • 頒布権 - 映画の著作物をその複製物により頒布する権利。
  • 譲渡権 - 映画の著作物以外の著作物を、その原作品又は複製物の譲渡により公衆に提供する権利。
  • 貸与権 - 映画の著作物以外の著作物を、複製物の貸与により公衆に提供する権利。



  1. ^ 著作物、実演、レコード、放送又は有線放送。以下同じ
  2. ^ 送信可能化されているレコードを直接放送または有線放送した場合を含む(後述のTPP11改正による)
  3. ^ 改正法(平成二十八年法律第百八号)附則第7条の規定により、著作物、実演及びレコードに関し、改正前の著作権法によると2017年12月29日時点で著作権又は著作隣接権が存するものについては改正後の保護期間が適用され、改正前の著作権法によると2017年12月30日時点で著作権又は著作隣接権が消滅しているものについては改正前の保護期間が適用される。
  4. ^ 著作者人格権若しくは著作権、出版権又は実演家人格権若しくは著作隣接権
  5. ^ 技術的利用制限手段に係る研究又は技術の開発の目的上正当な範囲内で行われる場合その他著作権者等の利益を不当に害しない場合を除く
  6. ^ a b c d e f 著作物、実演、レコード又は放送もしくは有線放送
  7. ^ a b (プログラムの著作物にあっては、当該著作物を電子計算機において利用する行為を含む
  8. ^ 電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によつて認識することができない方法
  9. ^ a b 著作権者、出版権者又は著作隣接権者
  10. ^ 日本国外で行われた提供又は提示については、日本国内で行われたものとみなす。
  11. ^ 公衆送信には、放送、有線放送、送信可能化が含まれる
  1. ^ 著作権法2条1項2号
  2. ^ 著作権法15条1項
  3. ^ b:著作権法第16条
  4. ^ b:著作権法第14条
  5. ^ 著作権法63条1項
  6. ^ 北川善太郎京都大学法学部教授『ソフトウェアの使用と契約-開封契約批判』NBL435号11~12頁
  7. ^ b:著作権法第21条
  8. ^ b:著作権法第2条1項15号
  9. ^ 著作権法2条1項15号イ
  10. ^ 著作権法2条1項15号ロ
  11. ^ b:著作権法第49条
  12. ^ b:著作権法第79条
  13. ^ 岡田有花 (2017年10月10日). “「日本は機械学習パラダイス」 その理由は著作権法にあり”. ITmedia. http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1710/10/news040.html 2017年10月16日閲覧。 
  14. ^ 著作権法2条5項
  15. ^ 著作権法38条1項
  16. ^ 高林龍 『標準 著作権法』(有斐閣、2010年)230頁
  17. ^ 高林龍 『標準 著作権法』(有斐閣、2010年)230頁
  18. ^ 平成30年12月30日施行 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11協定)の発効に伴う著作権法改正の施行について | 文化庁” (日本語). www.bunka.go.jp. 2018年11月8日閲覧。
  19. ^ “音楽など著作権保護70年に 文化審議会改正案、TPPに対応”. 産経新聞. (2016年2月29日). http://www.sankeibiz.jp/compliance/news/160229/cpd1602290500002-n1.htm 
  20. ^ 平成28年3月8日(火)定例閣議案件
  21. ^ 閣法 第190回国会 47 環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案
  22. ^ “環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う 関係法律の整備に関する法律案の概要”. 内閣官房. (2016年3月). http://www.cas.go.jp/jp/houan/160308/siryou1.pdf 
  23. ^ 平成30年3月27日(火)定例閣議案件
  24. ^ a b 閣法 第196回国会 62 環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案” (日本語). www.shugiin.go.jp. 2018年11月9日閲覧。
  25. ^ 環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付):本会議投票結果:参議院” (日本語). www.sangiin.go.jp. 2018年11月9日閲覧。
  26. ^ “CPTPP underway – tariff cuts for our exporters on December 30” (英語). The Beehive. https://www.beehive.govt.nz/release/cptpp-underway-%E2%80%93-tariff-cuts-our-exporters-december-30 2018年11月9日閲覧。 
  27. ^ “違法動画、紹介サイト排除…政府が法改正を検討”. 読売新聞. (2016年4月7日). http://www.yomiuri.co.jp/national/20160407-OYT1T50090.html 
  28. ^ “平成 23 年度 知的財産権侵害対策ワーキング・グループ等 侵害対策強化事業 (リーチサイト及びストレージサイトにおける 知的財産権侵害実態調査) 報告書”. 国立大学法人 電気通信大学. (2012年3月). http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2012fy/E002243.pdf 
  29. ^ “国境を容易に越える侵害 マンガ海賊版の最新状況とその対策”. 集英社 知的財産課. (2015年11月15日). http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/kokusai/h27_02/pdf/shiryo2.pdf 
  30. ^ “国境を越えるインターネット上の知財侵害への 対応について (討議用)”. 内閣官房 知的財産戦略推進事務局. (2016年2月). https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kensho_hyoka_kikaku/2016/jisedai_tizai/dai5/siryou2.pdf 
  31. ^ “国境を越えるインターネット上の知財侵害への 対応について (討議用)”. 内閣官房 知的財産戦略推進事務局. (2016年4月). https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kensho_hyoka_kikaku/2016/jisedai_tizai/dai8/siryou1.pdf 
  32. ^ “知的財産推進計画2016”. 内閣官房 知的財産戦略推進事務局. (2016年5月9日). https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/kettei/chizaikeikaku20160509.pdf 
  33. ^ 改正著作権法が成立 漫画・書籍など違法DLの対象拡大 21年1月1日に施行” (日本語). ITmedia NEWS. 2020年6月13日閲覧。






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