自然災害 自然災害の概要

自然災害

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/15 02:22 UTC 版)

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スマトラ島沖地震 (2004年)の津波で破壊されたスマトラ島西部の街

日本の法令上では自然災害は「暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波、噴火その他の異常な自然現象により生ずる被害」と定義されている(被災者生活再建支援法2条1号)。

単なる自然現象が、人的被害を伴う自然災害に発展したり、災害が拡大したりするには、現地の社会条件が大きな影響を及ぼす[1]

ディザスターとハザード

自然災害がなぜ起こるかについては、次の公式に帰結している。

Disasters occur when hazards meet vulnerability.[2]
災害は、危機が脆弱性と出会うことで起こる

社会の持つ脆弱性(災害に対する弱さ)は、防災計画が無かったり、適切な危機管理がなされなかったりすることでさらに大きくなり、人的被害、経済的被害、環境に対する被害を大きくする。最終的な被害の大きさは、被害者を支援し災害拡大を抑えるための人員の数や、災害からの回復力の大きさに依存する [3]

disaster」(「災害」)と 「hazard」(「危機」、「現象」)は意味が異なる。ユネスコの地球科学プログラム [1] では、「ナチュラル・ハザード」(Natural Hazard、自然現象)と「ナチュラル・ディザスター」(Natural Disaster, 自然災害)を次のように定義している[4]

ナチュラル・ハザード」とは、大気・地質学水文学的原因で、太陽系規模・地球規模・地域規模・国家規模あるいは地方規模の範囲を、急速または緩慢に襲う事象により引き起こされる、自然に発生する物理的現象である。地震、火山噴火、地すべり、津波、洪水、干ばつが含まれる。
ナチュラル・ディザスター」(自然災害)とは、ナチュラル・ハザードの結果または影響である。社会の持続可能性の崩壊と、経済的・社会的発展の混乱を意味する。

もし天変地異などの「自然現象」(ナチュラル・ハザード)が起こったとしても、その場所に脆弱性が無ければ(例えば異変の起こった一帯にだれも住んでいない場合)、「自然災害」(ナチュラル・ディザスター)が起こることはない。その環境に人間活動も社会も無ければ、自然現象は単なる現象であり、誰も被害を受ける可能性はないため「危機」にも「災害」にもならない。このため、「自然災害」の「自然」(natural)という部分に対する異議も一部にある[5]

自然災害は、人為的な原因による災害(「人災」)に対して、天災とも呼ばれる。しかし実際に「天災」と呼ばれているものは、社会の脆弱性など人為的な原因により人的被害が拡大されている側面が大きいため、「天災」という呼び方は適切なものではない。地震は自然現象だが、脆い建物が崩れたり救援の手が届かなかったりすることによって地震災害は拡大する。自然現象である大雨は、森林の乱伐などによって土砂災害の危険性を拡大させたり、低地への居住などによって浸水による被害を拡大させたりする。大雨とは逆の自然現象である干ばつは、社会の不平等や政府の失策により、都市や軍隊には食物が確保される一方で農村の貧しい人々に食物が行き届かなくなることで、飢饉という災害へと拡大する。干ばつのため食糧不足にさらされる人達に食物や雇用を供給する政策が、民主主義のインセンティブによって実行に移されきちんと機能する場合、飢饉という災害は発生しないが、貧しい人々の声を聴く必要の無い権威主義的体制や無政府状態では、干ばつは容易に飢饉へと拡大する[6]

自然現象

「ナチュラル・ハザード」(自然現象による危機)は、人間社会や環境に対して否定的な影響を持つ現象が起こる脅威を指す。ナチュラル・ハザードの多くは連続的に起こる。例えば、地震は津波を起こし、干ばつは飢餓や疾病を起こす。

1995年1月17日に起こった「兵庫県南部地震」は「ナチュラル・ハザード」(自然現象)であるが、その結果引き起こされ、数年にわたり大規模な人的被害や経済的被害などが続いた「阪神・淡路大震災」は「ナチュラル・ディザスター」(自然災害)である。

また「ナチュラル・ハザード」という言葉は将来起きる可能性のある脅威(例えば発生が予想される地震や、大雨が降った場合の洪水)を指す場合に使われるが、「ナチュラル・ディザスター」(自然災害)は過去に起こった、あるいは現時点で起こっている社会的出来事に関連付けて使われる。


  1. ^ 社会格差と自然災害による人的被害 -インド洋大津波によるタイにおける被害を中心に- ,中須 正, 防災科学技術研究所研究報告 第69号 2006年8月
  2. ^ B. Wisner, P. Blaikie, T. Cannon, and I. Davis (2004). At Risk - Natural hazards, people's vulnerability and disasters. Wiltshire: Routledge. ISBN 0-415-25216-4 
  3. ^ G. Bankoff, G. Frerks, D. Hilhorst (eds.) (2003). Mapping Vulnerability: Disasters, Development and People. ISBN 1-85383-964-7 
  4. ^ http://www.unesco.org/science/disaster/about_disaster.shtml より引用
  5. ^ D. Alexander (2002). Principles of Emergency planning and Management. Harpended: Terra publishing. ISBN 1-903544-10-6 
  6. ^ アマルティア・セン『貧困の克服』 pp.112-114 集英社、2002年
  7. ^ http://www.afpbb.com/articles/-/2718762 「アイスランドの噴火で欧州の空に混乱、英国では全飛行を禁止」AFPBB 2010年04月15日 2020年3月12日閲覧
  8. ^ https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/18/031400115/?P=1 「古代の超巨大噴火、人類はこうして生き延びた」ナショナルジオグラフィック 2018.03.14 2020年3月28日閲覧
  9. ^ 「基礎地球科学 第2版」p186 西村祐二郞編著 朝倉書店 2010年11月30日第2版第1刷
  10. ^ 「基礎地球科学 第2版」p185 西村祐二郞編著 朝倉書店 2010年11月30日第2版第1刷
  11. ^ 「基礎地球科学 第2版」p187 西村祐二郞編著 朝倉書店 2010年11月30日第2版第1刷
  12. ^ 「基礎地球科学 第2版」p194-196 西村祐二郞編著 朝倉書店 2010年11月30日第2版第1刷
  13. ^ https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1902Z_Z10C11A4CC1000/ 「東日本大震災の死者、ほぼ津波が原因 60歳以上が65%」日本経済新聞 2011/4/19 2020年3月12日閲覧
  14. ^ a b http://jssspn.jp/info/nuclear/post-23.html 「津波関連情報(1):津波・高潮による塩害(1)」日本土壌肥料学会 2020年3月28日閲覧
  15. ^ 「基礎地球科学 第2版」p199-200 西村祐二郞編著 朝倉書店 2010年11月30日第2版第1刷
  16. ^ https://www.nhk.or.jp/sonae/column/20120911.html 「第3回  天然ダムの危険性と対策」(NHKそなえる防災)池谷浩 2012年9月24日 2020年3月23日閲覧
  17. ^ https://www.jst.go.jp/global/case/disaster_prevention_2.html 「湖で静かに成長する災害の種~二酸化炭素が引き起こす災害から人命を守れ!」国立研究開発法人 科学技術振興機構 2020年3月23日閲覧
  18. ^ 「海の気象がよくわかる本」p172-173 森朗 枻出版社 2012年3月30日第一版第一刷
  19. ^ 「海の気象がよくわかる本」p212-213 森朗 枻出版社 2012年3月30日第一版第一刷
  20. ^ 「海の気象がよくわかる本」p210-211 森朗 枻出版社 2012年3月30日第一版第一刷
  21. ^ 「図解 異常気象のしくみと自然災害対策術」p64 ゲリー・マッコール著 内藤典子訳 原書房 2019年7月31日第1刷
  22. ^ 「図解 異常気象のしくみと自然災害対策術」p89 ゲリー・マッコール著 内藤典子訳 原書房 2019年7月31日第1刷
  23. ^ https://www.kodomonokagaku.com/hatena/?989d10945af54bad03babf0b28945a40 「高波、津波、高潮はどう違う?」子供の科学 誠文堂新光社 2020年3月27日閲覧
  24. ^ http://www.mlit.go.jp/river/kaigan/main/kaigandukuri/takashiobousai/02/index.html 「高潮は恐ろしいの?」日本国国土交通省 2020年3月23日閲覧
  25. ^ 「海の気象がよくわかる本」p204-205 森朗 枻出版社 2012年3月30日第一版第一刷
  26. ^ http://www.bousai.go.jp/kohou/kouhoubousai/h27/81/special_01.html 「特集 大雪への備え~雪害では、どのような災害が起こるのか」(平成27年度 広報誌「ぼうさい」冬号(第81号))日本国内閣府 2020年3月23日閲覧
  27. ^ 「図解 異常気象のしくみと自然災害対策術」p61 ゲリー・マッコール著 内藤典子訳 原書房 2019年7月31日第1刷
  28. ^ https://dil.bosai.go.jp/workshop/01kouza_kiso/13kaze.html 「防災基礎講座 基礎知識編:13.強風・たつ巻・降雹」防災科学技術研究所 2020年3月24日閲覧
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  30. ^ https://www.rinya.maff.go.jp/j/hogo/yamakaji/con_1.htm 「日本では山火事はどの位発生しているの?」日本国林野庁 令和2年2月21日 2020年3月28日閲覧
  31. ^ https://news.yahoo.co.jp/byline/morisayaka/20200211-00162510/ 「30年ぶりの大雨ですべての山火事が収束へ オーストラリア」森さやか ヤフーニュース 2020年2月11日 2020年3月28日閲覧
  32. ^ 『アフリカを知る事典』、平凡社、ISBN 4-582-12623-5 1989年2月6日 初版第1刷 p.333
  33. ^ https://news.yahoo.co.jp/byline/tatsumiyoshiyuki/20200129-00160738/ 「恐竜絶滅を引き起こした「隕石の冬」と「火山の冬」」巽好幸 ヤフーニュース 2020年1月29日 2020年3月19日閲覧
  34. ^ 「トコトンやさしいエネルギーの本 第2版」(今日からモノ知りシリーズ)p142 山﨑耕造 日刊工業新聞社 2016年4月25日第2版第1刷
  35. ^ 「流系の科学 山・川・海を貫く水の振る舞い」p109 宇野木早苗 築地書館 2010年9月10日初版発行
  36. ^ 「基礎地球科学 第2版」p200 西村祐二郞編著 朝倉書店 2010年11月30日第2版第1刷
  37. ^ 「せまりくる「天災」とどう向き合うか」p152-153 鎌田浩毅監修・著 ミネルヴァ書房 2015年12月15日初版第1刷
  38. ^ 「せまりくる「天災」とどう向き合うか」p96 鎌田浩毅監修・著 ミネルヴァ書房 2015年12月15日初版第1刷
  39. ^ 「せまりくる「天災」とどう向き合うか」p84-85 鎌田浩毅監修・著 ミネルヴァ書房 2015年12月15日初版第1刷
  40. ^ 「世界と日本の激甚災害事典 住民から見た100事例と東日本大震災」p30 北嶋秀明 丸善出版 平成27年月30日発行
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  42. ^ 「世界と日本の激甚災害事典 住民から見た100事例と東日本大震災」p17 北嶋秀明 丸善出版 平成27年月30日発行
  43. ^ 「世界と日本の激甚災害事典 住民から見た100事例と東日本大震災」p11 北嶋秀明 丸善出版 平成27年月30日発行
  44. ^ 「世界と日本の激甚災害事典 住民から見た100事例と東日本大震災」p18-19 北嶋秀明 丸善出版 平成27年月30日発行
  45. ^ 「世界と日本の激甚災害事典 住民から見た100事例と東日本大震災」p14 北嶋秀明 丸善出版 平成27年月30日発行
  46. ^ https://www.unocha.org/about-ocha/history-ocha 「HISTORY」OCHA 2020年3月28日閲覧
  47. ^ 『シュメル - 人類最古の文明』p13-14 小林登志子 中央公論新社〈中公新書 1818〉、2005年10月。ISBN 978-4-12-101818-2
  48. ^ http://www.bosaijoho.jp/topnews/item_5826.html 「日本の災害・防災年表:「災異改元」編」防災情報新聞 2018.10.5 2020年3月25日閲覧






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