西部諸国
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/05 08:37 UTC 版)
文化面では大陸で最も先進的な地域であるとされ、10の都市国家が存在することから「10の子供たち」(テン・チルドレン)と呼ばれている。この呼び名は、東の大国などから小国であることを揶揄する意味で使われだしたが、現在では一般的な通称として定着しており、当初の蔑称的な意味合いは希薄になっている。 東に隣接する中原で、ファン王国の滅亡とファンドリア・オーファンの建国、ロマールのレイド併合といった波乱が続いたことで危機感を抱いた各国が、新王国暦500年のタイデルの盟約によって、東の大国に対する同盟関係を結んでいる。ただし、軍事面は総じて貧弱であるため、実際には10国併せたところで東の大国(オーファンやロマール)の武力には遠く及ばない。 ベルダイン王国 現国王はブラウン・ハディス、騎士団は真紅の星騎士団。「真紅の星」はベルダイン城の形に由来する。 王国暦430年のコリア湾沖地震後に建設された新市街と、それ以前からの旧市街(港湾部)とで「親子都市」と呼ばれる。 コリア湾に面し、比較的温暖で冬でも雪はほとんど降らず、農業と牧畜が主産業。しかし都市部では商業が盛んで西部諸国中最大の経済力を誇ると共に、「芸術の街」と異称されるほど芸術も盛んである。芸術の神ヴェーナーの信者が多い。 ガルガライス 現国王は黒真珠の女王ベイブリス。王城のガルガライス城は海岸から1km沖合いの小島にあり、日に2回の干潮時だけ陸路が出現する。 コリア湾の東岸に位置し、真珠漁とオリーブを始め農業が主産業で、海路を用いた東の国との交易も盛んに行われている。一年中真夏のような気候のため「終わりなき夏の街」と呼ばれる。海に面した傾斜地に村がそのまま巨大化したかのような外観で、50m幅のメインストリートが放射状に配置されている。 ガルガライス人は健康的な肉体を晒すことをごく自然なことと考えており、他国でもよほど寒くない限りは出来るだけ肌を晒す服装を好む。 ザーン 現国王はギャスクV世。 西部域最小の王国であるが、オパール鉱山の跡地を利用した「岩の街」と呼ばれる城塞都市であり、西部域最大の防衛力を有するとされる。 特産のワインを中心にした農業と牧畜の国。街の南側の岩壁に建国の女王ナイアフェスの上半身が彫られており、ちょうど冠に当たる部分が王族の居住部分となっている。また街の最上部には「空中庭園」と呼ばれる上流階級だけが入れる庭がある。 この街の盗賊ギルドは、隣国ドレックノールのギルドと比べれば規模が小さいながらも、国内での影響力が大きく国家運営にも関与している。ドレックノール盗賊ギルドから度々干渉・策謀を受けているが、すべて退けて独立を守っている。 ドレックノール 現国王はショルスIX世であるが、彼は傀儡に過ぎず、人並みの能力は何ひとつ持たぬと言われている。実質上の支配者は盗賊ギルドのギルドマスターのドルコン。 コリア湾に面するシエント川の河口に位置し、都市は三角州の中にある。比較的温暖で冬でも雪はほとんど降らず、輸入品を扱う商業と漁業が主産業。 住人の一割が盗賊ギルドの構成員だともいわれており、盗賊ギルドが事実上の支配権を握っていることから「盗賊都市」と呼ばれる。盗賊ギルドに保護料さえ払えば、闇司祭やダークエルフも居住することが可能と言われる。西部域のみならず大陸全体でもロマールに次ぐ規模を誇る盗賊ギルドは、ドレックノールの尖兵として他国で勝手に活動する事があり、他の盗賊ギルドからは警戒されることが多い。隣国ザーンやリファールの盗賊ギルドとは明確に対立している。 リファール 現領主はリュキアン・ラジール王女。リファールでは「女王」は王の夫人のみ名乗るため、領主になっても独身の間は王女を名乗っている。 サイモーン王国を崩壊させたダッカ・ラジールによって建国され、楽観的な住民気質から外敵に備えた城壁を作らず、他国からは少なからず嘲笑を込めて「夢見る都」と呼ばれている。 西部域のほぼ中央に位置し、シエント河中流に川を挟む形で街が形成され、気候的に農業や牧畜に適しており、街の西地区を中心に染物、陶器、金属細工、革細工などの二次産業が発展している。そのため商業の神チャ=ザに入信している者が多く、事実上の国教の地位を得ている。 騎士団は少数精鋭主義で編成されており、数こそ40人しかいないが西部諸国で最強との呼び声が高い。兵数の少なさは冒険者・傭兵などから構成されるフリーガードと呼ばれる巡回守備隊を組織することによって補完している。 現領主のリュキアン・ラジール王女は、その美貌と優しい性格から国民の人気は非常に高いが、優柔不断な性格のため政治には不向きで(ただし、小説「ジェライラの鎧」に於いて理に適った経済論を見せているため、人物紹介と言動が不一致である)、既に老境にさしかかった大蔵大臣ピド・オレイアスが治世を補佐している。また適齢期に達した王女の結婚話は西部諸国全体の話題になっている。北のゴーバとの間で領土紛争が存在している。 ラバン 現国王はフォルク・ブリード。「女たらし」の異名があり、独身ながら隠し子10人以上と噂されるが、統治者としては水準以上で、国民の評判は悪くはない。 王国暦379年の建国で、西部諸国内でも歴史の最も浅い国ゆえ「新しき街」と呼ばれる。農業と牧畜が盛んな国で、名馬の産地として有名。 約150年前にサイモーン王国の「無能王」マバーロIII世が、巨大な地下迷宮を作るために平原だった地に人を集めたことに由来する。そのため、高度な石工技術を有する西部域最大の石工ギルドがある。また、建設途中で放棄された地下迷宮が街の地下に広がっているといわれている。 タイデル 現国王はアルバスIV世。 ヤスガルン山脈とクロスノー山脈の間に位置し、西部諸国で最大の国土と軍事力を誇り、軍事・政治面では西部諸国の中核的存在。 農業と牧畜が盛んであるが、中原地方と西部諸国との結節点でもある交通の要衝で、東西南北の四方に街道が伸びていることから「十字路の街」と呼ばれる。必然的に交易・商業が発達し、物資と共に情報も集まることから情報戦の技術にも長けている。この国の諜報機関(ディスポーザル・スプライツ)の優秀さは裏の世界では有名で、現諜報大臣アルトニー・カントロは「千の目と耳を持つ」と異称される。さらに西部諸国ではドレックノールに次ぐ規模の盗賊ギルドがある。 タラント 現国王はカーナニスIII世。 「空への梯子」と言われ大陸で最も高い山々を有するクロスノー山脈のうち、ヤスガルン山中の盆地にある。「森と草原の王国」とも呼ばれ、街はテーブル状の岩山の上に作られ「空に近い街」と呼ばれる。そのため街に入るには、隣の山から渡された吊り橋を利用するか、「牛の坂」と呼ばれる急坂を登ることになる。 主な産業は鉱業と牧畜で、人口の1割以上をエルフが占める。当然ハーフエルフも多く、精霊魔法を使う魔法戦士も多い。現王のカーナニスもエルフの血を引くと噂されるほか、王妃はエルフ、王太子と妹姫はハーフエルフと、国の中枢部にもエルフやハーフエルフが食い込んでいる。そのため、表面的な差別は少ないが、一部の人間至上主義者が過激化して問題になっている。 ゴーバ 王城は荒鷲城、現領主はサナンI世。 シエント川の上流にあり鉱山と林業が主産業で、斜面に階段状に都市が形成されていることから「階段都市」と呼ばれる。概ね機能別に5層に分れ、金(上流居住区)、銀(商業地区)、銅(工業地区)、鉄(精錬地区)、石(採掘場)と呼ばれる。 最上部の王城へ通じる道は、急坂の「王の道」、ゆるやかな「臣の道」、荷物や病人用のゴンドラの3本がある。国王は必ず「王の道」を使わねばならず、これに耐えられなくなったら退位と定められている。 人口の4割をドワーフ族が占め、戦の神マイリーと鍛冶の神ブラキが広く信仰されている。森林伐採に伴う森の民との確執が問題化している。 プロミジー 王城は白骨の城(巨大海獣の牙や骨で飾られている)、現領主は「狩人王」タズラン。彼は異名の通り元狩人で、その腕と活躍を見込まれて先代の国王の娘婿となり、後を継いだ。なお王妃とは死別している。 タイデルから北に伸びる街道の終点で、氷結海と呼ばれる氷の精霊力が非常に強い海に面したプロム湾岸に築かれた「さいはての街」。人口約2,500人の西部諸国で最小規模の王都は、高い丸太を並べた城壁を持ち、猟師や漁師、鉱夫の交易所として機能している。 気象条件から事実上農業は不可能で、狩猟と小規模な鉱業が主産業。特にバリスタ付きの氷上帆船を使った巨大アザラシ狩りが有名で、アザラシの皮から作られるレザー・アーマーを特産品として輸出している。この地の戦士達は、厳しい気象条件から凍傷の危険性がある金属製の鎧や装具は好まず、武器も柄の長い斧や槍を扱うのが一般的となっている。また盗賊ギルドにはスリや物乞いがおらず、漁師や狩人を副業としている者が多く、国内的には自警団的な性格を持っているが、諜報機関として国外での活動も盛んだといわれている。 ソリの付いた氷上帆船で構成された海軍があり、旗艦である大型戦艦「嵐の大帝」(ストームカイザー)を擁する。 パルマー 国家に属さない500人ほどの自由開拓民の村で、「自由人たちの街道」の西の終端。村の名前は「自由人たちの街道」建設を主導したパルマー・ローリに由来する。 住人の多くは「自由人たちの街道」を建設した人々の末裔で、そのため西部諸国のうちにありながら東方語を日常語としている。ドレックノールからパルマー村までの自由人たちの街道は、馬車1台がやっと通れるほどの小道になる。 精霊力を矯正することで病気を治す術が、混沌の地から渡ってきた一人の男によって授けられたと伝えられている。 サイモーン王国 新王国暦324年に、現在のドレックノール・リファール・ゴーバ・ラバンを含む地域に、当時のドレックノール侯だったマバーロI世により建国された。 「無能王」と呼ばれたマバーロIII世の失政から、後のリファール建国王ダッカ・ラジールの叛乱を招き滅亡。 パイニーヒル神殿 リファールとゴーバの国境付近にある男子禁制のマーファ神殿で、通称「縁切り神殿」とも呼ばれる。不幸な女性の救済を目的としており、主に結婚の解消を望む女性を保護している。 創建時から一切の公権力の介入を断固拒否し続けるなど、マーファ神殿としては異例と思えるほど戦闘的な面があり、「タイデルの盟約」でも特別に不介入・独立を不文律として認めている。またこの神殿の神官戦士団は、西部諸国屈指の戦闘力を持つといわれている。
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