炎術師:神凪一族・宗家
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初代宗主の血脈を受け継ぐ者たち。 神凪 重悟 (かんなぎ じゅうご) 声 - てらそままさき 神凪一族の現宗主であり、綾乃の父親。 「紫炎」と呼ばれる神炎の使い手。厳馬と共に200年ぶりに誕生した「神炎」の術者。交通事故により片足を失ってからは一線を退いている。その強さは、和麻に「今の神凪で、自分を止められる唯一の存在」と言わしめ、綾乃からも「一対一なら和麻や厳馬と戦っても負けない」と考えられている。 常に和服を着用し、厳しさを感じさせる雰囲気を纏っているが、娘には甘い。一族のお荷物として疎まれていたかつての和麻や風牙衆にも分け隔てなく接し、力に驕る一族の傲慢な態度を変えようと努力したが、結局実らず兵衛の反乱が起きてしまった。 和麻の追放を止められなかったことを悔やんでおり、現在でも彼の心情を察して尊重している。そのため、和麻もその器の大きさには敬服している。和麻の力を必要としてではなく純粋に神凪に戻ってほしいと願っており、綾乃との仲を取り持とうと画策しているが、今のところあまり成果は上がっていないように見える。だが、重悟の謀略とは無関係に確実に綾乃と和麻の距離は縮まっていっている。 綾乃を溺愛しており、娘に誇れるような父親でありたいと常々考えていた。そのため厳しくも優しい父親として綾乃に接していたが、実際はデレデレなのでその点においては神凪関係者から呆れられている。しかし、和麻の帰国と同時に綾乃の悪い部分(力でなんでも解決しようとする傾向)が目立ち始め、父親が部屋にいることも気づかず和麻を焼き殺そうと全力の攻撃をしたので激怒。綾乃を怒鳴りつけ、今後は本当に厳しい父親として接するようになった。アニメでは初期から厳しさが強調されており、門限を二時間破った(七瀬曰く「まだそんなに遅くない時間」)だけで綾乃は激しく怯えていた。 風牙衆が壊滅した後、その代わりを和麻に望んではいるが、それ以上に彼に「居場所」を作ってあげたいと考えていた。娘とくっ付けようとしているのはその度合いが強い。二人で遊園地に行くように適当な依頼をでっち上げたこともあるが、成果の有無は不明瞭。 片足を失ったことですでに一線を退いているため、重悟の戦闘描写はない。しかし、横暴な父親(頼道)の影響を受けず厳然な術者として育ち、かつては厳馬を破った神凪最強の術者の威厳は今も存在している。和麻でも咄嗟に防げなかったほどの威力を持つ綾乃の炎の精霊を奪い取り、攻撃を無力化したり、和麻と厳馬の同時攻撃を捌いたりなど力は健在。 作者の後書きで、和麻と厳馬の同時攻撃を受け流せたのは「重悟が二人を合わせた力より強い」というわけではない、と述べられている。アニメ版 尺の都合上、原作にあった「交通事故で隻脚になった」という設定が消滅し、『継承の儀』を行った理由も明かされなかった。また、実力に関する描写のほとんどがカットされ、未知数という扱いになっていた。 技一覧 浄化の炎(仮称) 任意のものだけを燃やす炎術における高等技術。ヴリトラ戦の前に、この高等技術ができるのは厳馬と重悟だけと綾乃が口にしている。 炎の精霊奪取 1巻で綾乃が和麻を殺そうとしたのを防ぐ際に使用。「喝」の一言で綾乃が使役する炎の精霊の支配権を奪い取り炎術を霧散させた。アニメ版では炎雷覇がまとった炎を霧散させるシーンに変更された。 紫炎(しえん) 神炎の一種。 神凪 厳馬 (かんなぎ げんま) 声 - 小山力也 和麻・煉の父親であり、重悟の従兄。 神凪一族における現役最強の術者。「蒼炎」と呼ばれる「神炎」の使い手。重悟と共に200年ぶりに誕生した「神炎」の術者。その強さは、和麻が「炎雷覇を持った綾乃の十倍強い」と断言し、アニメ版でヴェルンハルトから「契約者(コントラクター)の和麻に匹敵する力を感じる」と称されている。入院中には見舞いに来る人が多かったと綾乃が述べていることから人望もあり、顔も広い様子。 風術を蔑み、戦闘力を史上としている生粋の術師。自分にも他人にも「神凪の人間として」常に厳しい態度で接する。その一方、和麻に酷似した冷徹な面も持っている。 和麻に対しては父親としての愛情を持っていたが、神凪一族を第一に考える思考と自分にも他人にも厳しい性格から、炎術の才能を一向に見せない和麻に一日の休みも与えないで修行させ、弟の煉とも滅多に会わせないなど、厳しく接することしかできなかった。力も度量もないのに謀略とパワーバランスで宗主になった頼道のようにはさせたくなく、和麻を実力で宗主に就かせようとしてのことだった。 和麻からは誤解されていたが、融通の利かない不器用な性格から誤解を解くことができずにいた。勘当した理由も、神凪一族という枷から解き放とうとしたためであり、彼なりの愛情であった。その後、風術師として大成した和麻のことを不器用ながら誇らしげにし、風牙衆の一件が終わった後は息子に対して「気が済むのなら土下座でもなんでもする、だから自分の息子として神凪家に戻ってこい」と言ったこともある。さすがにこのときばかりは和麻も驚き、心を揺れ動かしていた。結果的に「今さら、やり直しは不可能」だとして、和麻に拒絶されるものの(断られることは厳馬も承知の上だったらしく、落胆する様子を見せなかった)、父子間では実質和解しており、互いに「親父」「息子」と認める関係に戻っている。親子のように守る守られるではなく、互いに一人の男として肩を並べる対等の関係になった(アニメ版では、尺の関係でこのシーンは割愛されている)。 作中で二度にわたり和麻と対決しているが、いずれも敗北している。 一戦目は、身内殺しの疑いのかかった和麻を確保すべく連絡を取ったが、挑発されたことで戦いとなる。和麻の実力が「本気を出すに値する」と見て蒼炎を呼び出そうとしたが、直後、「本気を出しても勝てるかわからない」ほどに成長した息子の力量を目にし動揺。数秒の間を作ってしまい、このため蒼炎が完成するよりも速く和麻の方が術式を完成させたので痛恨の敗北を喫した。アニメ版でも同経緯で敗北するが、気を失う寸前に息子の成長を認め微笑を浮かべるシーンが追加された。 二戦目は、和麻との対決で受けた負傷が治った後、神凪邸でぱったりと出会った和麻と失言の応酬を行い、最終的に彼の方から勝負を仕かけられて再戦となった。体術による壮絶な「親子喧嘩」を展開するが、体力差で防戦一方に追い込まれ、二度目の敗北を喫してしまった。 その後、息子が膝を突いた父親に手を差し伸べるというシチュエーションを見せて綾乃を感動させたが、その直後に和麻が本気で厳馬を殺そうとし、さらに厳馬は隙をついて「炎の精霊を宿した蹴撃」を放った。親子揃って「勝つためには手段を選ばない性格」だったことが明らかになり、綾乃を呆れさせていた。戦いは重悟の介入で中断したが、親子揃って素直ではない相手の評価(「まだまだ未熟」「もうトシだな」など)を重悟と綾乃に聞かせていた。 綾乃とは「伯父と姪」以上の関係ではなく、互いに干渉のない薄い間柄だった。しかし、5巻では暴走した和麻を止める役割を綾乃に任せ、最後に微笑を向けている。「宗主の娘」でしかなかった綾乃の成長を認めていることがうかがえる。アニメでは綾乃から「次期宗主として自分と煉にまかせてほしい」と突っぱねられ、人知れず「頼んだぞ綾乃」と独白していた。 6巻では煉と共に仕事で遠出していたが、ガイアVS和麻戦に駆けつけ風喰を消滅させて上手い具合に息子の窮地を救っている。この時、ガイアは死んだ振りをしていたが見抜いており、「息子がこの程度の相手に負けるわけがない」と信じてあえて和麻に任せた。 唯一の弱点としては傲慢から生まれる油断で、和麻との初戦でもこれが原因で敗北。また、和麻の捕獲を弟を殺されて怒る慎吾に命じ、余計に事態を悪化させてしまっている。アニメ版 先述の重悟に代わって、名実ともに「神凪最強の術者」という扱いになっている。風牙衆に対する扱いも原作とは異なり、上記のように一定の配慮を意識している。 ストーリー全般にかけて出番が増え、霧香と個人的に接する様子まで描かれた。また、原作以上に和麻のことを気にかける描写が散見された。原作で見られた「失敗作だから殺したい」と和麻が誤解しているやり取りも見られなかった。 技一覧 気の拳打(仮称) 和麻との2度目の戦いで使用。蹴りは一切用いらず、絶大な気を乗せた拳や肘打ちを主体に戦う。 アニメ版でも使用しているが、和麻に見切られてしまった。 浄化の炎(仮称) 任意のものだけを燃やす炎術における高等技術。和麻との戦いでは周囲に危害を加えず炎術を行使していた。当初、この高等技術ができるのは厳馬と重悟だけと綾乃が口にしていたが、3巻にて煉も会得した。 追尾火炎弾(アニメ版) 掌に宿した炎から対象を追尾する無数の火炎弾を放つ。これは厳馬曰く「手加減し過ぎた」らしく風の結界で凌がれているが、和麻も息切れを起こしていた。 八岐大蛇(原作) 炎術によって生み出した幾本の火柱を竜の顎のように操って攻撃する。これを見た和麻は恐怖で竦み、風の結界も一秒も持たないと判断し回避に努めていた。ただし厳馬からすればこれは小手調べだという。 炎を纏った蹴撃(原作) 和麻への不意打ちで使用。獲物を狙う蛇の如く地を這うように急接近し、相手の顎を目掛けて蹴り上げる。 精霊魔術を一切使わないという暗黙の了解の中で使用したため「勝つためには手段を択ばない性格」というのが露見した。アニメ版では、パンチに差し替えられている。 厳馬の戦闘理論に蹴りはないはずだが、好機と見れば使用するところからして「勝てればそれでいい」という彼のやり方が窺える。 蒼炎(そうえん) 神炎の一種。霊気に染まった絶大な威力の蒼い炎を放つ。和麻との戦いで二度使用したが、いずれも不発に終わっている。 一度目は精霊の召喚速度を利用され、真価を発揮する前にカウンター(万分の一撃)を喰らい、そのまま木っ端微塵に破壊される。 二度目は重悟の介入により無力化された。 神凪 深雪 (かんなぎ みゆき) 声 - 佐藤しのぶ 厳馬の妻であり、和麻・煉の母親。 昔から性格に難があったらしく、温厚な重悟にすら「昔から自分勝手な女だった」と思われている。厳馬と違い、炎術の才能のない和麻に愛情の欠片もなく、逆に煉のことは溺愛している。 絶縁を突きつけられた和麻が助けを求められて際、悲しむどころか逆に「炎術さえ使えれば優秀な息子として愛せた」と告げ、一千万を渡して神凪家を出るよう促した(このことは厳馬も重悟も知らず、前述の二人が知った後も綾乃と煉には知られていない。また、アニメ版では厳馬や重悟すら知らされていない)。 この行動によって、和麻は「親子の縁を簡単に切り捨てられる両親が何よりも恐ろしい」と思うようになり、重悟にも相談せず国外へと逃げていった。なお、彼女から渡された一千万のキャッシュカードは和麻が翠鈴と出会って立ち直った後、へし折られてしまっている。 その際、親子の縁は完全に切れており、和麻から「あの女は俺を愛さなかったけど、俺も愛した覚えはない。お互い様さ」と厳馬に告げ、「自分を産んだ女」以上の感情は持ち合わせていないことを告げた。その証拠に恐怖の対象でしかなかった父のことはまだ「親父」と呼んでいるが、母に対しては「あの女」としか呼んでいない。 和麻に対して敬語敬称で接しており、とても息子と会話しているようには見えず他人行儀(あるいは普段からこうなのかは不明)。彼が助けを求めてくるまで一度も自室に入れたことがなかった。 1巻の回想シーンにしか登場せず、以後は名前しか出てこない。和麻が帰国してからの動向は不明だが、少なくとも彼を気にかけている様子は見受けられない。3巻では煉が行方不明になったのを心配していたことが綾乃から語られているが、和麻が出奔した時はまったく気にした様子がなかったことと比べ疑問に思っていた。 アニメでは3話に登場。「これからの生活の足しに」とキャッシュカードを差し出すと「炎術さえ使えれば貴方を誇りに思えたでしょう」と告げ退室していった。顔は描写されておらず、黒髪を丸くアップにした着物姿。 『超解!』では「何よりも能力を重視する女性」と記されている。 神凪 頼通(かんなぎ よりみち) 先代の宗主。重悟の父親、厳馬の伯父。 かなり我儘な性格。引退してからも先代宗主の立場を利用して好き放題しているため、一族全のほぼ全員から嫌われているが、本人は全く気付いていない。厳馬によれば「信念を持たず、権力欲しかない人物」と評されている。 炎術師としての資質も低く、智謀と一族内のパワーバランスで宗主を継いだ過去を持つ。それ以降、神凪の力は三十数年史上最低にまで落ち込み、炎雷覇を扱うことすらできずに死蔵され、他者の手に渡らせる度量もなかった。 それらが災いし、甥の厳馬からは毛嫌いされている。厳馬の方も「一族最強が炎雷覇を継ぐべし」と考えているため、大した実力もなかった頼道を特に嫌い、心の底から軽蔑していた。お互いに嫌い合っていることを隠そうともしないため、非常に仲が悪い。 1巻のワンシーンにしか登場はせず、和麻が分家の連中を殺したと思い込んでおり、「和麻を抹殺しろ!」と叫び、更には「厳馬が煉に炎雷覇を継がせるために、和麻にやらせたのではないか」と邪推までしていた。重悟の命令で従者に両腕をつかまれて荷物のように扱われて退席させられてしまった。以後の消息は不明。 アニメ版未登場。 長老 現役を退いた老人たちの総称。先述の頼通も含まれる模様。 若い術者たちを管理する立場にあるらしいが、実際はかなり暇を持て余している。それなりの権限はあるらしく、慎治に謹慎を命じている。 存在が触れられたのは第1巻だけ。アニメ版では、存在自体が消滅している。 周防(すおう) 重悟の側近。感情が希薄そうな中年男性。 脈絡もなく突然姿を消すという技法を持っており、和麻でもどうやって行ったのかまったく見破れず驚いていた。重悟から風牙衆を全員拘束するように命じられるなど、術者としての実力は高い模様。 「超解!」では「和麻でも察知できない瞬間移動能力(?)を持ち合わせている」と記されているが、彼に関してのデータはほとんどなく何者なのかは不明。 煉から連絡を受けて迎えに着たりと、神凪宗家の執事的なポジションを取っている。出番自体はかなり少なく、大事の際の雑用くらいにしか登場しなかった。またストーリーに絡まない。 風の聖痕リプレイでも名前が出てきており、どうやって姿を消しているのかをネタにされていた。 アニメ版未登場。
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