構成と諸元
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/27 08:57 UTC 版)
主要諸元一覧各段第1段固体ロケットブースタ第2段衛星フェアリング全長38.2 m 15.1 m 10.7 m 15.0 m (5S-H)16.0 m (4/4D-LC) 外径5.2 m 2.5 m 4.0 m 5.1 m (5S-H)4.0 m (4/4D-LC) 各段質量202 t(段間部含む) 306 t(4本分) 20 t 3.2 t (5S-H)(アダプタ、分離部含む) エンジン(モータ)LE-7A(再生冷却長ノズル) SRB-A3 LE-5B-2 N/A 推進薬重量177.8 t 263.8 t(4本分) 16.6 t 推進薬種類LOX/LH2 ポリブタジエン系HTPBコンポジット LOX/LH2 真空中推力2,196 kN(224 tf)(エンジン2基) 9,220 kN(940.8 tf)(最大4本分) 137 kN(14 tf) 真空中比推力440.0 sec 283.6 sec 448.0 sec 燃焼時間352 sec 114 sec(長秒時燃焼モーター) 499 sec 姿勢制御方式ジンバル 駆動ノズル ジンバルガスジェット装置 主要搭載電子装置誘導制御系機器指令破壊システムレートジャイロパッケージ横加速度計VHFテレメトリ電力 誘導制御系機器慣性計測装置レーダトランスポンダ(Cバンドトラッキング)テレメータ送信機(UHFテレメトリ)指令破壊装置(指令破壊システム、指令破壊コマンド受信機)電力 H-IIBロケットの部品総点数は約100万点である。H-IIAと同じく、材質は機体外壁と推進剤タンクとフェアリングがアルミニウム合金、SRB-AがCFRPであり、強度を確保したまま機体を軽量化するためにアルミ合金製の推進剤タンクの内面が格子状に抉られたアイソグリッド構造をしている。推進剤の温度は-250度℃となっており、この温度を維持するために燃料タンクの周りに断熱材(耐久温度は約120℃)が塗装されている。断熱材はスプレーにより約20mmの厚さに塗装されており、断熱材は元は白色であるが紫外線を浴びると橙色に変色する。 燃料、火薬類 7号機では、SRB-Aの固体推進薬は265.5t(4本合計の最大値、試験機では263.8t)、1段目の液化酸素は152.7t(最大値、試験機では150.7t)、1段目の液化水素は27.2t(最大値、試験機では27.0t)、2段目の液化酸素は14.1t(最大値、試験機では13.9t)、2段目の液化水素は3.1t(最大値、試験機では3.0t)となっている。この他に、1段目気蓄器の常温ヘリウムは84リットルが5個(最大予想作動圧力(MEOP)は30.8MPaG、試験機では83.5リットルが5個)、2段目気蓄器の常温ヘリウムは84リットルが2個(30.8MPaG、試験機では83.5リットルが1個)、2段目気蓄器の極低温ヘリウムは85.5リットルが3個(13.0MPaG、試験機では11.0MPaG)で、また、SRB-Aの分離モーター(最大値)とイグナイターの固体推進薬は合わせて206.3kg(試験機では203.9kg)、ロケット各段・SRB-A・ペイロード分離部・フェアリングの火工品は合わせて18.5kg(試験機では18.3kg)、2段ガスジェットのヒドラジンは108kg(最大値、試験機では72kg)、1段目エンジン部の作動油は84リットルが2個(試験機では83.5リットルが2個)となっている(以上試験機の数値は標準値)。 第1段機体 LE-7A(再生冷却長ノズル)型ロケットエンジン(推進剤:液体酸素/液体水素)をクラスター化し2基搭載、キャビテーション対策にインデューサの改良をした液体酸素ターボポンプを適用している。開発段階において一部メディアで、実質新規開発エンジン「LE-7B」を第1段に使用するとの誤報があった。LE-7Aは当初からクラスター搭載に対応して設計されており、H-IIBに使用されるLE-7AはH-IIA用とほぼ同一設計である。クラスター化に伴い、2基1組でないと作動しないということはなく、領収燃焼試験は1基ずつ行っている。クラスター化の開発には新規性があまりなく、次世代へのエンジン設計技術の継承にあまり役に立たなくて困ったという。 H-IIAからタンク直径を4mから5.2mに拡大、全長を1m伸長することにより推進薬量を約1.7倍に増大させている。従来よりタンクの溶接はTIG溶接(Tungsten Inert Gas(Welding Method))で行われてきたが、MHI名古屋航空宇宙システム製作所によりロケットタンクの溶接では世界で初めて円周方向にもFSW(摩擦攪拌接合)が導入された。タンクドームにはMHI広島製作所にて開発された大型スピニング成型ドーム(これまでボーイングのみ実用化)が採用され国産化されている。 推進系では、エンジン2基に対しタンク底部から2系統独立した推進薬供給配管を適用し開発リスクを低減、バルブやアクチュエータ等のコンポーネントは極力H-IIAと共用とした。エンジンカバーはアルミ合金製セミモノコック構造で、楕円形に2機をまとめて覆っている。 段間部はH-IIAロケットと同じ炭素繊維複合材ハニカム構造で、長さが短縮され(円錐台形状のアルミ合金製セミモノコック構造の段間部アダプタがあるため)補強も行われている。試験機では白色塗料の耐熱コーティングがされていたが、2号機以降は削除し黒色にすることで、軽量化による打ち上げ能力の向上を図っている。 第2段機体 LE-5B-2型ロケットエンジン(推進剤:液体酸素/液体水素)を1基搭載。基本仕様は14号機以降のH-IIAロケット第2段と共通であるが、フェアリングの大型化に伴う応力の増加に対応して外板部の一部が補強された。2号機では第2段機体の制御落下実験を実施致するため、機体の改修(タンク加圧用ヘリウム気蓄器追加、2段エンジン再着火信号回路遮断機能追加、搭載機器等の熱対策、制御落下シーケンスの追加等)を行った。 制御落下は、主ミッション終了したのちに第2段機体をより安全に処置することを目的とし、地球1周回後に種子島から確認できる約300秒間にLE-5Bエンジンのアイドルモード燃焼(推力3%)で第2回燃焼を60秒間行い、機体を南太平洋へ落下させる。制御落下は日本のロケットとしては初めてで、試験機では確実な打ち上げを優先したため、その成果を踏まえ2,3号機で技術開発のための落下実験が行われた。南太平洋が落下地域に選ばれたのは、陸地から離れており、波が高く船舶がいないためで、また2段機体は地球2周目以降は電池が持たないので制御落下は地球1周回後の1度きりであり、GO/NOGO判断は機械が自動的に判断する。その後のHTVミッションの打上げでは、第2段制御落下を定常的に実施している。7号機と8号機には第2段機体の気蓄器の搭載箇所に円錐形をした「ロケット再突入データ取得システム」が取り付けてあり、第2段の破壊の様子や、再突入時やのデータを分離、再突入後に海面から送信する。 固体ロケットブースタ(SRB-A3) IHIエアロスペースが製造する固体ロケットブースタでH-IIAロケットと共通。SRB-A3を4本装着する。H2A204と同じく長秒時型モータを使用し最大動圧を低減する推力パターンをもつ。2号機の打上げにおいて、片方のストラットが抜けにくくなり分離のタイミングに差が見られた。このためストラットのホルダ部分の設計変更を行った。 衛星フェアリング 川崎重工が開発・製造するフェアリングで、打ち上げ時の振動や大気圏を抜けるまでの空気抵抗、空力加熱から衛星を保護するためのカバーである。アルミ合金製で、ハニカム構造の部材を両側から挟み込む形となっており、表面には白色の断熱塗料が塗布されている。チタン製のノッチボルト550本で固定されていて、分離の際に誘導線の爆発によりノッチボルトを切断して切り離す。HTVミッションには、H-IIAロケットで用いているフェアリング(5S型、12m)を3m伸ばしたHTV用フェアリング(5S-H型、15m)を用いる。1,300mmの大型のアクセスドアを設け、打上げ前にフェアリング内のHTVにアクセスできる構造とした。GTOミッションには、4/4D-LC型フェアリングによる衛星2機同時打上げを想定し、ロケット全体の設計を実施している。 H-IIBの開発で苦労したのがこの5S-H型フェアリングであった。5S型に比べて大型化したことによりかかる力が変わったため、フェアリングと第2段を接合するボルト部分が打ち上げ時に想定される荷重の1.25倍の負荷をかける荷重試験に耐えられなくなり、1回目と2回目の試験で破断が相次ぎ、3回目は第2段とフェアリングの直径が違うことにより接続部分で横に力がかかったため挙動が不安定になり試験が中止されている。H-IIBは安価な開発を目標としていたため、特注品のボルトと接合部分の大幅な設計変更は不可能であり、軽量かつ強固なフェアリングを実現するのに苦労し、4回目の試験で合格したのが打ち上げ1ヶ月前の2009年8月11日、フェアリングが完成したのは打ち上げの1週間前になってからであった。この問題の対策として、1号機では破損部および周辺部の補強と荷重をかけた時の分離面の滑りを抑制するピンの設置等を実施し、2号機には更なる分離機構の強度余裕を向上させることを目的として、分離機構の設計変更(分離ボルトの形状変更と分離機構部の構造の最適化)を実施した。 アビオニクス 2号機までは、H-IIAと同じく、RX616リアルタイムOSと32ビットMPUのV70を採用したNECが開発した誘導制御計算機を搭載していた。3号機からはJAXA情報・計算工学センターが開発した新型のTOPPERS/HRPリアルタイムOSと、NECが開発したV70より10倍高性能の64ビットMPUのHR5000を採用した新型誘導制御計算機と新型慣性センサユニットが搭載される。新型誘導制御計算機は高速・小型・軽量・モジュール化が図られており、新型MPUボードはイプシロンロケットも含んだ今後のJAXAロケットの共通基盤となる。この新しいアビオニクスはH-IIAの22号機以降にも適用される。 射点設備 移動発射台(ML)は、旧増強型対応で設計されコア位置の変更等が容易な第3移動発射台(Yoshinobu Movable Launcher 3:ML3)を改修して用い、射点は種子島宇宙センター吉信第2射点(LP2)を使用する。VABは、H2A204にも対応可能な第1整備組立棟(VAB1)を避け、第2整備組立棟(VAB2)を改修して用いる。 8号機では移動発射台開口部からの火災発生により打ち上げが中止になった。火災原因はエンジンから滴り落ちた液体酸素が開口部の耐熱材にかかり静電気が発生、着火源となり断熱材が燃焼したこと。この日の天候は風が弱く酸素の拡散が少なかったことなど。(詳細はH-IIBロケット8号機#火災事故を参照)。静電気防止対策や耐熱材の破損対策はH-IIAやH3の移動発射台にも反映される。
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構成と諸元
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ファルコン9には最初の打ち上げ以後、随時改良が加えられており、中でもv1.1, FTと呼ばれるバージョンアップでは別のロケットと呼べるほどの変更が行われている。
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