SRB-A3
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 19:50 UTC 版)
SRB-A3は、SRB-A改良型の使用によって減少した打ち上げ能力を初期型SRB-A使用時のレベルまで回復した上、より高い信頼性を獲得するために開発されたものである。H-IIAロケット14号機から使用されている。燃焼パターンの違いから高圧型(燃焼時間約100秒)と長秒時型(約120秒)の2種類がある。モータケース内面の断熱材の厚さの共通化や、結合構造部分の再設計によるSRB-A側結合部分の共通化といった、高圧型と長秒時型における仕様の共通化が行われており、打ち上げ計画変更への柔軟な対応が可能になったほか、同一仕様での継続生産による安定供給性の確保や不具合発生リスクの低減を実現している。 SRB-A改良型において8割まで下げられていた平均燃焼圧は初期型と同等まで回復され、外側の金属ホルダーをアルミ製ホルダに、断熱材ライナの1重化、スロートインサートの前方へ拡大などの設計変更が行われた。ノズルについては、局所エロージョンの発生メカニズム解明と極力排除を目的として、宇宙科学研究本部 (ISAS) の協力のもと、ITE (Integral Throat Entrance) 方式のノズルを採用した。ITE方式ノズルは高圧燃焼対応ノズルとして開発されたものであり、M-Vロケット5号機以降で使用されたM-25モータにおいて初めて採用されたものである。H-IIAロケット14号機では、SRB-A3の基本構造を適用しつつも(改良型と同様に)ノズルの断熱材のCFRP製ライナアフトを2重にし、板厚を増厚することで安全性に余裕を持たせた高圧型モータが用いられた。しかし、ノズル構造部に予測より100度程度温度の高い部位が発生した。その後の解析の結果、断熱材を増厚した14号機用SRB-A3ノズル特有の構造が原因であるとされ、以降の15号機から17号機とH-IIB試験機で使用される長秒時型SRB-A3では、ライナアフトを1重にし断熱材を薄くすることから問題がないものとされた。しかし、高圧型SRB-A3への適用評価を行ったところ、長秒時型よりも高い負荷がかかることが明かになったため、ノズル断熱材から発生する分解ガスがノズル内部に留まらないようにする改良を施した上、2009年11月11日の地上燃焼試験による検証を行った。この試験によって信頼性が確認されたため、初期型SRB-Aと同等の能力をもつ高圧型SRB-A3を18号機のみちびきの打ち上げから適用することが可能になった。
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