構成と証明
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/25 15:39 UTC 版)
有理数体 Q は実数体 R の普通の加法についての部分群を成す。なので加法の商群 R/Q (つまり、有理数分の差を持つ実数同士を集めた同値類による剰余群) は有理数集合の互いに交わらない"平行移動コピー"によって出来ている。この群の任意の元はある r ∈ R についての Q + r として書ける。 R/Q の元は R の分割の1ピースである。そのピースは不可算個あり、各ピースはそれぞれ R の中で稠密である。R/Q の元はどれも [0, 1] と交わっており、選択公理によって [0, 1] の部分集合で、R/Q の代表系になっているものが取れる。このようにして作られた集合がヴィタリ集合と呼ばれているものである。すなわち、ヴィタリ集合 V は [0, 1] の部分集合で、各 r ∈ R に対して v − r が有理数になるような一意的な v を要素に持つものである。ヴィタリ集合 V は不可算であり、 u , v ∈ V , u ≠ v {\displaystyle u,v\in V,u\neq v} であれば v − u は必ず無理数である。 ヴィタリ集合は不可測である。これを示すために V が可測だったとして矛盾を導く。q1, q2, ... を [−1, 1] の有理数の数え上げとする(有理数集合は可算なのでこれは可能)。V の構成から、平行移動による集合 V k = V + q k = { v + q k : v ∈ V } {\displaystyle V_{k}=V+q_{k}=\{v+q_{k}:v\in V\}} , k = 1, 2, ... はそれぞれ互いに交わらない。さらに、 [ 0 , 1 ] ⫅ ⨄ k V k ⫅ [ − 1 , 2 ] {\displaystyle [0,1]\subseteqq \biguplus _{k}V_{k}\subseteqq [-1,2]} である。ここで、ルベーグ測度のσ-加法性を使うと: 1 ≦ ∑ k = 1 ∞ λ ( V k ) ≦ 3. {\displaystyle 1\leqq \sum _{k=1}^{\infty }\lambda (V_{k})\leqq 3.} である。ルベーグ測度は平行移動について不変なので λ ( V k ) = λ ( V ) {\displaystyle \lambda (V_{k})=\lambda (V)} である。ゆえに、 1 ≦ ∑ k = 1 ∞ λ ( V ) ≦ 3. {\displaystyle 1\leqq \sum _{k=1}^{\infty }\lambda (V)\leqq 3.} であるが、これは不可能である。一つの定数の無限和は 0 であるか無限大に発散するので、いずれにせよ [1, 3] の中には入らない。すなわち V は可測ではない。つまりルベーグ測度 λ はいかなる値も λ(V) の値として定義できない。
※この「構成と証明」の解説は、「ヴィタリ集合」の解説の一部です。
「構成と証明」を含む「ヴィタリ集合」の記事については、「ヴィタリ集合」の概要を参照ください。
- 構成と証明のページへのリンク