安達太良山とは? わかりやすく解説

あだたら‐やま【安達太良山】

読み方:あだたらやま

福島県中北部火山標高1700メートル。麓に岳(だけ)など温泉が多い。

安達太良山の画像

安達太良山(福島県)

 1709m 北緯373757秒 東経140度1659秒 (鉄山)(三角点)  ※座標世界測地系による

安達太良山地図安達太良山の写真
                                  (写真クリック拡大:54KB)

概要

 安達太良山は、福島市南西位置する玄武岩安山岩SiO2 5464%)の成層火山群で、東西9km、南北14kmにわたる。山頂部は、北から鬼面山(きめんざん)、箕輪山、鉄山、安達太良山(本峰)、和尚山などが南北連なる主峰安達太良本峰の山頂部には西に開く沼ノ平火口直径1.2km深さ150m)がある。明確な記録のある噴火活動は、沼ノ平火口での明治以後の活動限られる。この火口内外には、硫気・温泉地帯が諸所存在する
 別名、吾田多良山、岳山沼尻山、硫黄山西岳
 安達太良山は大規模な火砕流噴出始まり、約4555万年前の鬼面山などの活動経て、約35万年前の前ヶ岳を中心とした活動へと続いている(藤縄1980藤縄ほか:2001)。約25万年前に箕輪山から和尚山にかけての火山列主要部形成された。この時期におけるマグマ噴出率は最大であって、0.1km3/kaと見積もられる(阪口:1995山元・阪口:2000)。約12万年以降から約3万年前まで、1~2万年間隔で小規模なマグマ噴出繰り返された。1万年前からはマグマ水蒸気ないし水蒸気爆発繰り返しとなり、最新マグマ噴出活動は約2400年であった山元1998山元・阪口:2000)。

最近1万年間の活動

 最近1万年間では総マグマ噴出107m3前後の中噴火5001500年間隔発生し最後マグマ噴出は約2400年前に発生している(山元1998)。

記録に残る火山活動

  過去の火山活動履歴

※「概要」及び「最近1万年活動」については日本活火山総覧第3版)(気象庁編、2005)、「記録に残る火山活動」については前述活火山総覧及び最近観測成果よる。

火山観測

 気象庁では、地震計2台(うち常設1台)、空振計1台、GPS観測装置3点遠望カメラ1台を設置し、そのデータ仙台火山センター常時伝送し火山活動監視観測行ってます。
 また年に1、2回の現地観測実施して赤外熱映像装置による地熱地帯状況噴気地帯状況等の把握行ってます。さらに沼ノ平における地熱状況把握のため、地磁気観測所気象研究所とともに全磁力観測行ってます。

火山活動解説資料

 気象庁実施した火山観測データ解析結果や、火山活動診断結果掲載します毎月1回上旬公表します
 最新号(2009年6月の火山活動解説資料(pdf:576kb))  (なお、2009年7月活動解説資料は、2009年8月7日発表予定です。)


安達太良山

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/28 23:39 UTC 版)

安達太良山
南東から 大玉村より撮影
標高 最高峰 箕輪山 1,728[1] m
所在地 日本
福島県福島市二本松市郡山市
安達郡大玉村耶麻郡猪苗代町
位置 北緯37度38分50秒 東経140度16分51秒 / 北緯37.64722度 東経140.28083度 / 37.64722; 140.28083座標: 北緯37度38分50秒 東経140度16分51秒 / 北緯37.64722度 東経140.28083度 / 37.64722; 140.28083[1]
山系 奥羽山脈南部
種類 成層火山 (活火山ランクB)
最新噴火 1900年
安達太良山 (福島県)
安達太良山 (日本)

安達太良山(箕輪山)の位置
プロジェクト 山
テンプレートを表示
安達太良火山の火山体地形図
北方上空より >解説画像
南南東からの安達太良山(郡山ビッグアイ展望階より)

安達太良山(あだたらやま)は、福島県中部にある活火山磐梯朝日国立公園の南端に位置する安達太良連峰に属する山である[2]日本百名山[2]新日本百名山花の百名山[2]およびうつくしま百名山[2]に選定されている。山頂には二等三角点「大関平」1699.6m が設置されている。別名は、岳山(だけやま)、安達太郎山。

本項では安達太良連峰全体についても述べる。

特徴

安達太良連峰は複合火山で、洪積世前期からの激しい火山活動の後、洪積世の終わりにはほぼ現在の形になった[3]

主な地形

北から

  • 鬼面山   1,482 m
  • 箕輪山   1,728 m (最高峰)[1]
  • 鉄山    1,709 m[4][注釈 1]
    • 沼ノ平火口
  • 篭山    1,548 m
  • 矢筈森   1,673 m
  • 安達太良山 1,700 m
  • 船明神山  1,667 m
  • 薬師岳   1,322 m
  • 和尚山   1,602 m
  • 前ヶ岳   1,340 m

火山活動

約80万年前の大規模な火砕流の噴出で始まったとされ[5]、その後溶岩流を噴出する活動に移行した[6]。藤縄明彦 (1980)[7] は、地質学的に活動を三期に分けた。

第1期
約45万年前から60万年前の鬼面山などの活動、約35万年前の前ヶ岳を中心とした活動。
第2期
活動が最も活発であった時期で、約25万年前に箕輪山から和尚山にかけての山体主要部を形成。この時期におけるマグマ噴出率は最大であって、1,000年あたり0.1立方キロメートルと見積もられる[6]
第3期
南北に連なる鬼面山、箕輪山、鉄山、安達太良山、和尚山の上部を形成。約12万年前以降から約8万年間の活動が平穏な期間をはさみ約3万年前からは、1万年から2万年間隔で小規模なマグマ噴出が繰り返された[5]。1万年前からは沼ノ平火口からのブルカノ式噴火を6回繰り返し、最新のマグマ噴出活動は約2,400年前であるが[6]、少量の堆積物を残すような活動は500年から1,500年間隔で生じている[5]。約2,400年前の活動では酸川流域に、沼ノ平火口壁崩壊に伴うラハール(火山泥流)堆積物を残している[5][8]

有史以降

  • 1899年(明治32年)
    • 年初から沼ノ平火口で噴気活動が活発化し火焔現象を観測。
    • 8月24日 水蒸気噴火。25日噴気孔縁を破壊し、灰や硫黄泥を噴出。
  • 1900年(明治33年)7月17日 沼ノ平火口で中規模な水蒸気噴火。火山爆発指数:VEI2
    噴出物総量1.1×106立方メートル。低温の火砕サージ。沼ノ平に長径300メートル、短径150メートルの火口を生じた。火口の硫黄採掘所全壊。死者72名、負傷者10名。山林耕地被害。
  • 1950年(昭和25年)2月25日 噴煙。噴煙高度50メートル。
  • 1995年(平成7年) 火山性微動
  • 1996年(平成8年) 沼ノ平火口で泥水噴出。
  • 1997年(平成9年) 9月 火山ガスにより死者4名。(安達太良山火山ガス遭難事故
  • 1998年 - 2003年(平成10年 - 15年) 地熱活動が活発化。

災害対応

磐梯山から望む安達太良山系の全容と山名

噴火時のハザードマップは、沼ノ平火口が西側を向いているため主に猪苗代町を被害の対象としている。ただし西よりの風が常風のため、噴火時には二本松市側にも大量に降灰する可能性は高い。気象庁では地震計、空振計、GPS観測装置、カメラを設置して常時観測を行っている。

火山噴火予知連絡会によって火山防災のために監視・観測体制の充実等の必要がある火山(常時観測火山)に選定されている[9]

観光

沼ノ平周辺の荒涼とした火山の景観がみどころ。また、ガンコウラン(岩高蘭)、クロマメノキ(黒豆の木)などの高山植物を始めとし、ヤエハクサンシャクナゲ(八重白山石楠花)、サラサドウダン(更紗灯台)、レンゲツツジ(蓮華躑躅)などが咲き誇り、田中澄江著『花の百名山』の一座にも選ばれている。この火口を中心とする優れた景観と、そこに生育する高山植物等を保護するため、磐梯朝日国立公園に指定されている。

また周辺には、岳温泉、奥岳温泉、塩沢温泉野地温泉横向温泉沼尻温泉など、多くの温泉場がある。冬期には、あだたら高原塩沢箕輪の各スキー場が運営される。緩やかな山体から山スキーのメッカとしても名高い。

文化

文学

万葉集』にも歌われ、また高村光太郎の『智恵子抄』の「樹下の二人」や「あどけない話」の節にも「阿多多羅山」の名が見える。深田久弥随筆日本百名山』にも登場する。

絵画

東山魁夷『青響』は、安達太良山の登山口のひとつ「旧土湯峠」あたりのブナ林をモチーフにした作品。[10]

硫黄鉱山

西側斜面、現在の沼尻元湯温泉と呼ばれる野湯がある一帯では昭和40年代まで硫黄の採掘が行われていた。1900年の噴火では鉱山に火砕流が到達し、多くの死者を出している。採掘された硫黄の搬出のために磐梯急行電鉄が敷設され、その終点である沼尻駅へは、鉱山から索道で硫黄が輸送されていた。

登山

薬師岳展望台より望む安達太良山
山頂部の溶岩ドームは「乳首」と呼ばれる
安達太良山頂「乳首」
主稜線西側にある沼ノ平火口
かつては火口を横切る登山道があったが、1997年の火山ガス事故発生以降は通行禁止となっている
鉄山東腹・湯川源流に位置するくろがね小屋
小屋より湯川源流部を遡る鉄山への登山道があったが、こちらの道も火山ガス発生のため現在通行禁止となっている

全体として緩やかな山体で、夏期でも奥岳から薬師岳にスキー場のゴンドラリフトが運行されており、標高1,300メートル付近までは難なく上れるため、初心者でも比較的登りやすい。主な登山口は、奥岳(二本松市)、塩沢温泉(二本松市)、野地温泉福島市)、沼尻(猪苗代町)、石筵(郡山市)である。稜線付近は森林限界を超えているために樹木がほとんど無いことから、身を隠せるような場所はなく、雷雲がやってきた際は非常に危険である。加えて、悪天候時は稜線付近に強風が吹き荒れる上に、目標物に乏しく視界不良時は立ち入りは避けた方がよい。

1997年に沼ノ平火口で登山者4名が有毒火山ガスのため死亡した。この事故以来沼ノ平コースとくろがね小屋 - 鉄山コースは通行禁止となった。2020年現在も沼ノ平火口の周辺は火山ガスを噴出し続けている。

登山コース

  • 奥岳登山口 - 勢至平 - くろがね小屋 - 峰の辻 - 安達太良本山
    所要約3時間
  • 奥岳登山口 - 薬師岳 - 五葉松平 - 安達太良本山
    所要約2時間30分。奥岳 - 薬師岳はゴンドラ「あだたら山ロープウェイ」を使う
  • 表登山口 - 仙女平 - 安達太良本山
    所要約3時間30分
  • 塩沢温泉登山口 - くろがね小屋 - 峰の辻 - 安達太良本山
    所要約3時間30分。塩沢温泉からくろがね小屋までの約4キロメートルは湯川渓谷と呼ばれる渓谷沿いを通る[3]。冬季通行止。
    途中に滝(三階滝、八幡滝、想恋の滝、霜降りの滝など)や絶壁(屏風岩、天狗岩など)がある[3]。紅葉がとても美しい。
    途中、深い渓谷沿いの鎖場など危険な箇所あり
    かつて八幡滝から僧悟台までの登山道があったが現在は廃道
  • 沼尻登山口 - 胎内岩 - 鉄山避難小屋 - 鉄山 - 安達太良本山
    所要約3時間15分。硫黄川流域の荒涼とした風景と胎内岩の岩くぐりが楽しめる
  • 沼尻登山口 - 障子ヶ岩 - 船明神山 - 安達太良本山
    所要約3時間15分
  • 野地温泉登山口 - 鬼面山 - 箕輪山 - 鉄山避難小屋 - 鉄山 - 安達太良本山
    所要約4時間45分(縦走コース)
  • 横向登山口 - 箕輪山 - 鉄山避難小屋 - 鉄山 - 安達太良本山
    所要約3時間45分
  • 銚子ヶ滝登山口 - 和尚山 - 安達太良本山
    所要約4時間。途中、石筵川上流の渡渉があり水量の多い時期は要注意

山小屋

  • くろがね小屋
通年営業している山小屋で、源泉の引いてある温泉山小屋として知られる。くろがね温泉を名乗っている。日帰り入浴もでき、登山客に人気がある。この温泉の歴史は古く1,000年以上前に記された文献にも登場する。なお、岳温泉はここから引湯している。
2023年4月1日から老朽化による改修工事で休業している。完成予定は2025年頃とされていたが、3年程度遅延の見込み[11]
  • 鉄山避難小屋
冬期間は積雪が多く利用が困難。水場、トイレともになし。

参考画像

脚注

注釈

  1. ^ GNSS測量等の点検・補正調査による2014年4月1日の国土地理院『日本の山岳標高一覧-1003山-』における改定値。なお、旧版での標高は1,710メートル。

出典

  1. ^ a b c 日本の主な山岳標高(福島県)”. 国土地理院. 2011年11月15日閲覧。
  2. ^ a b c d 管内の百名山「安達太良山」”. 福島森林管理署. 2024年12月4日閲覧。
  3. ^ a b c 安達太良連峰トレッキングガイド”. 二本松市観光連盟. 2024年12月4日閲覧。
  4. ^ “標高値を改定する山岳一覧 資料2”. 国土地理院. https://www.gsi.go.jp/common/000091073.pdf 2014年3月26日閲覧。 
  5. ^ a b c d 山元孝広、阪口圭一、テフラ層序からみた安達太良火山, 最近約25万年間の噴火活動 地質学雑誌 Vol.106 (2000) No.12 P865-882
  6. ^ a b c 安達太良山 気象庁
  7. ^ 藤縄明彦、安達太良火山の地質と岩石 岩石鉱物鉱床学会誌 Vol.75 (1980) No.12 P385-395
  8. ^ 今井英治ほか、安達太良山・酸川の複数のラハール堆積物に含まれる埋没林群の組成と年代 福島大学理工学群共生システム理工学類 共生のシステム : 磐梯朝日遷移プロジェクト 2014/3 14巻
  9. ^ 火山防災のために監視・観測体制の充実等の必要がある火山”. 気象庁. 2016年2月25日閲覧。
  10. ^ 征, 大内. “テーマで歩く山の旅 #01 安達太良山×東山魁夷”. 山旅旅. 2020年10月12日閲覧。
  11. ^ くろがね小屋”. 2023年10月23日閲覧。

参考文献

関連項目

外部リンク




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