原子力安全・保安院とは? わかりやすく解説

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原子力安全・保安院

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/18 15:43 UTC 版)

日本行政機関
原子力安全・保安院
げんしりょくあんぜんほあんいん
原子力安全・保安院が設置されていた
経済産業省総合庁舎別館
組織
上部組織 資源エネルギー庁
内部部局 審議官4
地方機関 産業保安監督部、原子力保安検査官事務所
概要
所在地 東京都千代田区霞が関1丁目3番1号
定員 803名
(本院443名、監督部等360名)
2007年10月
年間予算 376億4000万円[1]
(2008年度)
設置 2001年(平成13年)1月6日
廃止 2012年平成24年)9月19日
前身 科学技術庁原子力安全局の原子力安全部門、通商産業省環境立地局の産業保安部門など
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原子力安全・保安院(げんしりょくあんぜん・ほあんいん、英語: Nuclear and Industrial Safety Agency、略称:NISA)は、かつて存在した日本官公庁のひとつで、原子力その他のエネルギーに係る安全及び産業保安の確保を図るための機関[2]であり、経済産業省の外局である資源エネルギー庁特別の機関であった。

2012年(平成24年)9月19日に廃止され、環境省外局である原子力規制委員会へ移行した[3]。また同院の産業保安各課は、経済産業省商務情報政策局(商務流通保安グループ→産業保安グループ)に移管された。

東京都千代田区霞が関の本院の下、地方機関として、全国の所要の地に産業保安監督部、原子力保安検査官事務所などが置かれていた。

組織の位置付け

経済産業省の一機関であり、法令上の位置付けは「資源エネルギー庁の特別の機関」とされた。2001年(平成13年)1月6日、中央省庁再編の際に新設され[4]、初代院長には佐々木宜彦が就任した。この再編で経済産業省に原子力安全・保安院が新設された代わりに、経済産業省工業技術院独立行政法人に移行している。

任務

原子力安全・保安院は、次の各号に掲げる事務をつかさどっていた[5]

  1. 原子力に係る製錬、加工、貯蔵、再処理及び廃棄の事業並びに原発に関する規制その他これらの事業及び施設に関する安全の確保に関すること[6]
  2. エネルギーとしての利用に関する原子力の安全の確保に関すること[6]
  3. 火薬類の取締り[7]高圧ガスの保安[8]鉱山における保安[9]その他の所掌に係る保安(以下「産業保安」という。)の確保に関すること。
  4. 所掌事務に係る国際協力に関すること[10]
  5. 前各号に掲げるもののほか、法律(法律に基づく命令を含む。)に基づき経済産業省に属させられた事務

このように、本院は「原子力安全」と「産業保安」とが主な所掌事務で、決して原子力関係のみを専門としている組織ではない。原子力電力都市ガス、高圧ガス、液化石油ガス、火薬、鉱山関係の施設や産業活動の安全規制、保安を所管し、これらの施設に対しては必要に応じて、立入検査、報告徴収、改善命令等を行うことができた。

電力安全課の作成した電気設備の技術基準の解釈は民間の電気工事でも参照されていた。

エネルギー行政の変遷

中央省庁再編前の所掌

中央省庁再編前は、関係する行政事務は次のように分散して所掌されていた。

  • 原子力安全
    • 科学技術庁原子力安全局の所掌事務
    • 資源エネルギー庁の所掌する原子力発電施設の安全に関する事務
  • 産業保安
    • 通商産業省環境立地局の所掌する、高圧ガス、液化石油ガス、火薬類、鉱山の保安に関する事務
    • 資源エネルギー庁の所掌する、電気工作物、都市ガス、熱供給の保安に関する事務

中央省庁再編後の所掌

上記の中央省庁再編前の所掌のうち、科学技術庁原子力安全局が所掌していた事務の中で試験研究用原子炉についての安全規制など一部の事務は文部科学省が承継したが、その他については新たに設置された原子力安全・保安院が一元的に所管することとしたものである。

地方機関

地方機関については当初は一元化せず、旧通商産業省の地方支分部局だった鉱山保安監督部を原子力安全・保安院の地方機関として移行させ、産業保安事務のうち鉱山保安のみを引き続き所管し、その他の産業保安事務については各経済産業局が引き続き所管していた。2005年4月1日に鉱山保安監督部を改組して経済産業局から鉱山保安以外の産業保安事務を移管承継し、これら産業保安事務を一元的に所管する産業保安監督部を設置した。

検査事務

原子力施設に対する検査事務のうち、専門的実務的検査については自ら行わず公益法人に第三者委託されていたが、公益法人制度改革の流れの中で行政委託型公益法人のあり方が見直され、これら一部の検査事務を原子力安全・保安院から切り離し独立行政法人に行わせることとなり、2003年10月1日に新たに独立行政法人原子力安全基盤機構が設立され業務が移管された。

組織

原子力安全・保安院が設置されていた頃の経済産業省総合庁舎別館の銘板

廃止時の組織図[11]

  • 院長
  • 次長
  • 審議官核燃料サイクル担当、実用炉担当、原子力安全基盤担当、産業保安担当各1名)
  • 首席統括安全審査官(審議官級)
  • 企画調整課
    • 政策企画官(併)制度審議室長
    • 統括安全審査官
  • 国際室
    • 業務管理官 (併)業務管理官室長
  • 原子力安全広報課(原子力保安管理課を廃止し2004年4月新設)
  • 原子力安全技術基盤課
    • 統括安全審査官(併)新型炉規制対策室長
    • 統括安全審査官
  • 原子力安全特別調査課
  • 原子力発電安全審査課
    • 統括安全審査官(2名)
  • 原子力発電検査課
    • 統括安全審査官
  • 核燃料サイクル規制課
  • 核燃料管理規制課
  • 放射性廃棄物規制課
  • 原子力防災課
    • 原子力事故故障対策室長
  • 保安課
  • 電力安全課
  • ガス安全課
  • 液化石油ガス保安課
  • 鉱山保安課

歴代院長

原子力安全・保安院長の官職にある者は国庫から指定職5号俸が支給されていた(自衛隊方面総監自衛艦隊司令官及び航空総隊司令官並びに海上保安庁海上保安監と同等)。

脚注

  1. ^ 平成20年度原子力安全・保安院関係予算案の概要(2012年4月18日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
  2. ^ 経済産業省設置法(平成11年法律第99号)20条2項。
  3. ^ 原子力規制委、人事は横滑り 保安院と安全委19日廃止”. 朝日新聞社 (2012年9月18日). 2012年9月18日閲覧。
  4. ^ 原子力安全・保安院(2009年6月30日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
    ※よくある質問と回答
  5. ^ 経済産業省設置法20条3項、4条1項57号から59号まで、62号及び64号。
  6. ^ a b 原子力安全・保安院(2009年6月30日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
    ※規制のあらまし
  7. ^ 原子力安全・保安院>火薬類の安全(2009年6月30日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
  8. ^ 原子力安全・保安院>高圧ガス・コンビナートの安全(2009年6月30日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
  9. ^ 原子力安全・保安院>鉱山の安全(2009年6月30日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
  10. ^ 原子力安全・保安院(2009年6月30日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
    ※国際協力活動
  11. ^ a b 幹部一覧(METI/経済産業省)(2012年9月19日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
  12. ^ 幹部名簿−ご案内−経済産業省(2006年2月16日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
  13. ^ 原子力安全・保安院>原子力安全保安院ってどんなところ?>本部>幹部紹介(2006年2月13日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
  14. ^ 幹部名簿−ご案内−経済産業省(2008年2月6日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
  15. ^ 原子力安全・保安院(METI/経済産業省)(2009年7月17日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project

関連項目

外部リンク


原子力安全・保安院

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/15 03:36 UTC 版)

寺坂信昭」の記事における「原子力安全・保安院」の解説

2010年5月衆議院経済産業委員会質疑応答の際、日本共産党吉井英勝より自然災害時における原発事故発生可能性指摘されたが、「実質的に起こり得ない」との認識示した東北地方太平洋沖地震に伴い発生した福島第一原子力発電所事故では、原子力安全・保安院の職員率いて対応に当たっている。また、内閣総理大臣菅直人により内閣府原子力安全委員会委員長班目春樹内閣府原子力委員会委員長近藤駿介とともに緊急招集されから3機関連携強化し事態対処するよう指示された。 5月3日事故初め福島市福島県災害対策本部訪れ佐藤雄平福島県知事謝罪したが、佐藤知事に「(原発は安全とする)保安院説明見事に裏切られた。事故54日目になってから来たのも理解できない」と指摘された。また、面会後の記者会見福島県に対して謝罪した8月12日経済産業省人心一新により、原子力安全・保安院院長早期勧奨退職8月30日読売新聞単独取材応じ福島第一原子力発電所事故の対応のまずさを次のように述べ反省している。『保安院および首相官邸東京電力情報十分に評価共有できなかった。あと追いの形でしか人員配置できなかった。初期対応では保安院人員不足し、さらに一部通信機器ダウンした地震と津波による複合災害必要な準備不足していた。原発1号機ベント成功しその後爆発想定していなかった。原因がしばらく判らず官邸への連絡遅れた3月15日統合本部設置についても、情報東京電力有り、もっと早くから保安院職員派遣して情報収集するべきだった。』

※この「原子力安全・保安院」の解説は、「寺坂信昭」の解説の一部です。
「原子力安全・保安院」を含む「寺坂信昭」の記事については、「寺坂信昭」の概要を参照ください。

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