原子力安全委員会の審査基準
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「もんじゅ訴訟」の記事における「原子力安全委員会の審査基準」の解説
本件申請に対する原子力安全委員会及び同委員会に置かれた原子炉安全専門審査会による原子炉施設の安全性に関する審査において用いられた審査基準に, 1980年(昭和55年)11月6日原子力安全委員会決定「高速増殖炉の安全性の評価の考え方について」(以下「評価の考え方」という。)がある。「評価の考え方」は、液体金属冷却高速増殖炉の特徴を十分踏まえて原子炉施設の位置、構造及び設備が災害の防止上支障がないものであることを評価する必要があるとし、その評価に当たっては、研究開発、建設及び運転を通じて蓄積されつつある多くのデータ、解析手法等の実績について十分考慮するとともに適切な余裕を見込む必要がある旨を述べ、その評価に当たって適用され、又は参考とすべき既存の各種安全審査指針との関係を示している。 これを踏まえて、本件安全審査においては、原子炉施設の基本設計又は基本的設計方針として、 原子炉の平常運転によって放射性物質の有する潜在的危険性が顕在化しないように、平常運転時における被ばく低減対策が適切に講じられていること、 原子炉施設に事故が発生することにより放射性物質の有する潜在的危険性が顕在化しないように、自然的立地条件との関係を含めた事故防止対策が適切に講じられていること が、確認されるべき事項とされていた。 発電用軽水型原子炉施設を対象とした指針である1978年(昭和53年)9月29日原子力委員会決定「発電用軽水型原子炉施設の安全評価に関する審査指針」(以下「安全評価指針」という。)は、原子炉施設の設計の基本方針の妥当性を確認するための安全評価として、 原子炉施設の「通常運転」の状態を超えた事象、すなわち、「運転時の異常な過渡変化」-原子炉の運転状態において原子炉施設寿命期間中に予想される機器の単一故障若しくは誤動作又は運転員の単一誤操作などによって、原子炉の通常運転を超えるような外乱が原子炉施設に加えられた状態、及びこれらと類似の頻度で発生し、原子炉施設の運転が計画されていない状態に至る事象 について評価を行い、 次いで、「事故」-「運転時の異常な過渡変化」を超える異常状態であって、発生頻度は小さいが、発生した場合は原子炉施設からの放射能の放出の可能性があり、原子炉施設の安全性を評価する観点から想定する必要がある事象 について評価を行わなければならない とするものである。 そして、「評価の考え方」は、その別紙「液体金属冷却高速増殖炉(LMFBR)の安全設計と安全評価について」のIIにおいて、液体金属冷却高速増殖炉の安全評価に当たっては、安全評価指針を参考とするとともに、液体金属冷却高速増殖炉の特徴を踏まえて評価する必要がある旨を述べ、 「運転時の異常な過渡変化」及び「事故」として選定して評価を行うべき代表的事象を掲げ、それぞれについての評価に関する判断の基準を示している。 このうち「事故」についての評価に関しては、想定した事故事象によって外乱が原子炉施設に加わっても、事象に応じて炉心の溶融のおそれがないこと及び 放射線による敷地周辺への影響が大きくならないよう核分裂生成物放散に対する障壁の設計が妥当であること を確認しなければならないとされ、このことを確認する基準は、炉心は大きな損傷に至ることなく、かつ、十分な冷却が可能であること、 原子炉格納容器の漏えい率は、適切な値以下に維持されること、 周辺の公衆に対し、著しい放射線被ばくのリスクを与えないこと、 とされている(「評価の考え方」別紙のIIの(3.2))。
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