日本医師会 綱領

日本医師会

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/14 15:30 UTC 版)

綱領

2000年4月1日に医の倫理綱領、2013年6月26日に日本医師会綱領を定めている。

医の倫理綱領

医学および医療は、病める人の治療はもとより、人びとの健康の維持もしくは増進を図るもので、医師は責任の重大性を認識し、人類愛を基にすべての人に奉仕するものである。

  1. 医師は生涯学習の精神を保ち、つねに医学の知識と技術の習得に努めるとともに、その進歩・発展に尽くす。
  2. 医師はこの職業の尊厳と責任を自覚し、教養を深め、人格を高めるように心掛ける。
  3. 医師は医療を受ける人びとの人格を尊重し、やさしい心で接するとともに、医療内容についてよく説明し、信頼を得るように努める。
  4. 医師は互いに尊敬し、医療関係者と協力して医療に尽くす。
  5. 医師は医療の公共性を重んじ、医療を通じて社会の発展に尽くすとともに、法規範の遵守および法秩序の形成に努める。
  6. 医師は医業にあたって営利を目的としない。

日本医師会綱領

日本医師会は、医師としての高い倫理観と使命感を礎に、人間の尊厳が大切にされる社会の実現を目指します。

  1. 日本医師会は、国民の生涯にわたる健康で文化的な明るい生活を支えます。
  2. 日本医師会は、国民とともに、安全・安心な医療提供体制を築きます。
  3. 日本医師会は、医学・医療の発展と質の向上に寄与します。
  4. 日本医師会は、国民の連帯と支え合いに基づく国民皆保険制度を守ります。

以上、誠実に実行することを約束します。

高齢者医療費増大を巡る論争

少子高齢化によって、高齢者の医療費1割負担や無償の継続に不可能なために改革を即座に行う必要性が指摘されている。小泉政権の改革前には高齢者医療費は現役世代の4倍であり、全世代からの保険料収入を総医療費支出が約6万円も上回っていた。国民1人当たり6万円の赤字のために全体で毎年約7兆円赤字の状態かつ、増加傾向にある。そのため、小泉純一郎は「聖域なき構造改革」を掲げ、少子高齢化による医療費増大を抑制する必要があるとして、医療制度改革をいくつか行った。それでも2019年時点で医療費が右肩上がりを続け、過去最高の42兆6000億円となっている。それでも非課税世帯の高齢者のみを除いた全世代の医療費負担を現役世代と統一する抜本的改革などが求められている[9][10]

小泉政権の医療改革に対して、日本医師会は「世界保健機関(WHO)が加盟191カ国の保健医療システムについて比較した結果、総合評価では、日本が世界で一位」「経済協力開発機構(OECD)の調査では、国内総生産(GDP)に対する総医療費の比率は、日本は先進国の中で最も低いレベル」などを挙げて反対した。また、米国の医療はGDP比14%にも上る高額の医療費を使いながらWHOの総合評価は37位であり、これは民間医療保険であるが故の高額な患者負担に対して医療が見合っておらず、保険に加入できない国民が4000万人にも達していると主張した。

小泉内閣は「聖域なき構造改革」への世論の支持を背景に、経済財政諮問会議は規制改革に関する基本方針を発表した[9]。その骨子と医師会の意見は以下である[11]。小泉総理は患者・医療機関・保険者の「三方一両損」による改定を指示した[11]。株式会社の医療参入に対しては、実利追求型の企業論理が横行して医療倫理が崩壊する。『医療というのは儲かるらしいから俺たちにも一枚噛ませろ』と言う連中に医療を任せてはいけないとした[11]。医療費総額の伸びの抑制に対しては、出血は止めなければならない、診療報酬改定は実質マイナスで構わないと認めた[11]。公的保険による診療と自由診療(保険外診療)との併用(混合診療)に対しては、風邪引き腹痛など、誰にでも必要になる医療ほど保険でカバーすべきであり、それを実現している皆保険制度を維持すべきである[11]一方、生殖医療や遺伝子治療など、誰もが利用するわけではない医療や、患者が選択できる医療については、自己負担・民間保険を考えるべきと賛成した[11]。保険者と医療機関との直接契約に対して、平等性が崩壊し、フリーアクセスが崩壊するとした。

勤務医による日本医師会への批判

日本医師会は「診療報酬にしか興味がない圧力団体である」との批判もある。『誰も書かなかった日本医師会』にも、過去に日本医師会を牛耳っていた会長武見太郎が、著者に対して「会員の3分の1は欲張り村の村長だ」との記述がある。また医療政策についても、開業医の利益を優先し、勤務医をないがしろにしていると指摘されている。日本医師会自身も2012年の定例記者会見で日本医師会の現状が開業医のための団体になっていることを認め、「多くの勤務医にとって、相変わらず医師会は疑念の対象で、診療報酬でも冷遇されてきた」「B会員として勤務医は冷遇され議決権もない」「医療安全調査委員会設置問題でも勤務医の考えを分かっていない」「幹部が開業医ばかりで勤務医の意見を聞かない」と考えていると述べている。「確かに変わった」と勤務医たちから感じられる方策が日本医師会には必要と指摘されている[5]

日本医師会の最高意思決定機関は代議員会だが、その代議員の選挙が都道府県医師会に委託されている為、階層的組織である現況のもと、必然的に長年会務に携わった比較的高齢の会員のみで構成され、若手の会員からは甚だしく年齢構成が偏っているとの批判がある。一方で若い医師は、業務に多忙であり、無給ボランティアに限りなく近い、医師会業務を嫌う会員が大半である。更に高い年齢層だけでなく、時間に余裕がある割合の高い勤務医らが代議員の大半を占める。2011年8月での勤務医は日医会員の47.2%いるのに、代議員357人中38人で勤務医代議員は10.6%しかいない[5]




  1. ^ 日本国語大辞典,世界大百科事典内言及, ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典,デジタル大辞泉,百科事典マイペディア,日本大百科全書(ニッポニカ),精選版. “日本医師会とは” (日本語). コトバンク. 2021年3月3日閲覧。
  2. ^ 「勤務医にとって医師会は疑念の対象」|医療維新 - m3.comの医療コラム” (日本語). www.m3.com 29万人以上の医師が登録する日本最大級の医療従事者専用サイト. 2020年11月15日閲覧。
  3. ^ 2012年3月時点で、会員のうち47.2%が勤務医だが、執行部は開業医が全て占めていて、勤務医の代議員は357人中38人(10.6%)である。[要出典]
  4. ^ https://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000187439.html」テレ朝ニュース2020年7月1日
  5. ^ a b c 「勤務医にとって医師会は疑念の対象」|医療維新 - m3.comの医療コラム” (日本語). www.m3.com 29万人以上の医師が登録する日本最大級の医療従事者専用サイト. 2020年11月15日閲覧。
  6. ^ 日医ニュース(平成26年5月5日号)
  7. ^ 日刊スポーツ(2020年4月18日)
  8. ^ 共同通信2020年12月21日付「日本医師会などが「医療緊急事態宣言」」
  9. ^ a b c 「投資型医療 医療費で国がつぶれる前に」p23 武内和久, 山本雄士 · 2017年
  10. ^ 湧, 古川. “医療費が過去最高の42兆6000億円、それでも進まない抜本的改革日経ビジネス電子版” (日本語). 日経ビジネス電子版. 2020年11月15日閲覧。
  11. ^ a b c d e f 飯島勲 『小泉官邸秘録』 日本経済新聞社、2006年、86-88頁。ISBN 4532352444 
  12. ^ 薬業界の役員報酬‐12社29人が1億円以上 薬事日報(2012年7月3日)
  13. ^ 医師は粥すすり、薬剤師はすき焼き三昧日医・鈴木常任理事 “敵陣”日薬学術大会で分業批判の大立ち回り 医薬経済社(2013年9月24日)
  14. ^ 薬のカルテ17万件未記載 調剤薬局「くすりの福太郎」 朝日新聞(2015年2月10日)
  15. ^ 「行きすぎた医薬分業、押し戻す」中川日医副会長2016年度改定に向け調剤報酬の議論にも関与 m3.com(2015年6月28日)
  16. ^ 分業批判一色、日医「そもそも論」繰り返し中医協で次期改定の議論開始、日薬「建設的な議論を」PHARMACY NEWSBREAK(2015年7月22日)
  17. ^ 診療所の無資格調剤、医師の指示があれば問題ない薬剤師とは法の組み立て異なるPHARMACY NEWSBREAK(2015年9月1日)
  18. ^ 日薬・山本会長「調剤は少なくとも薬剤師の仕事」 日医・松原副会長に反論、「誤解生じているのではないか」PHARMACY NEWSBREAK(2015年9月3日)
  19. ^ 【日薬】医師の調剤行為、例外除き禁止‐日医総研の解釈に反論 2016年3月11日薬事日報 http://www.yakuji.co.jp/entry49553.html
  20. ^ 第101回国会衆議院社会労働委員会議事録第19号 http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/101/0200/10106280200019.pdf#page=22
  21. ^ 日本調剤 中医協・中川委員の中医協での不正請求発言に猛抗議 2017年3月30日ミクスオンライン https://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/57345/Default.aspx
  22. ^ いつまで「医薬分業の是非」を蒸し返すのか 2018/7/24日経DIオンライン https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/column/kumagai/201807/557114.html
  23. ^ 高度薬学管理の担い手巡り、議論が紛糾 2018/7/26 日経DIオンライン https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/trend/201807/557176.html






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