混合診療
健康保険の対象となる「保険診療」と併せて、保険適用範囲外で自己負担となる医療サービスを併用すること。
日本では、平等な医療サービスを提供するため、混合診療を原則として禁止している。例外的に、入院時の個室ベッド利用などの付加価値に対して支払う「差額ベッド」や、保険診療の適用されていない高度先進医療を受ける場合などに限り、併用が認められている。こうした認められている範囲を超えて混合診療を行った場合には、全面的に自由診療を行ったと見なされ、患者は全額を保険非適用で支払う必要があることになっている。
2004年に混合診療の可能な範囲が一部拡大された。その後も全面解禁を望む声が上がっているが、2010年12月現在も混合診療の全面的な解禁には至っていない。なお、日本医師会では保険診療サービスの平等な提供という観点から混合診療の全面解禁に反対している。
2011年11月現在、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の参加の是非をめぐり国内で激しく議論されているが、TPPへ参加する場合には、混合診療の全面解禁が議論の対象となる可能性がある。
関連サイト:
混合診療ってなに?~混合診療の意味するものと危険性~ - 日本医師会
混合診療ってなに?:日本医師会はこう考えています - 日本医師会
こんごう‐しんりょう〔コンガフシンレウ〕【混合診療】
読み方:こんごうしんりょう
公的医療保険制度が適用される保険診療と、適用されない自由診療とを併用した診療のこと。
[補説] 併用した場合は公的保険が適用されずに全額負担となる原則があるが、平成19年(2007)11月東京地裁が、併用を禁止した国の政策には法的根拠がないという判断を示した。また、平成18年(2006)改正健康保険法では、国民の選択肢を拡げ、利便性を向上するという観点から、厚生労働大臣が認める評価療養と選定療養の場合は、保険診療部分について保険外併用療養費を支給すると定めた。また、平成20年(2008)4月に高度医療評価制度が新設され、治験などを除き認められないケースの多かった先進医療を対象とする混合診療による保険外併用療養費制度の利用拡充が一層図られることとなった。
混合診療
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/03/09 01:47 UTC 版)
混合診療(こんごうしんりょう、Mixed billing[1])とは、国際的に明確な定義はない[2]が、厚生労働省は日本国内での「一連の医療行為について、保険診療と保険外診療の併用を認めること」としている[3]。日本医師会によれば『保険診療と保険診療外の診療行為自体の混在ではなく、日本の国民皆保険体制の公的医療保険制度の主幹システムである「医療の現物給付」の中での「費用の混在」(一部負担金を含む保険給付と保険外の患者負担との混合)を指す』とされる[4]。
注釈
出典
- ^ OECD 2009, pp. 123.
- ^ いわゆる「混合診療」・「保険診療と保険外診療の併用について」厚生労働省ホームページ ホーム > 政策について > 分野別の政策一覧 > 健康・医療 > 医療保険 > 先進医療の概要について > 保険診療と保険外診療の併用についてより [1]
- ^ 厚生労働省 いわゆる「混合診療」に係る説明資料 中医協 総-6 16.11.10
- ^ 日本医師会医療政策会議 2003, はじめに.
- ^ 「未承認薬のコンパッショネート・ユース」『日経メディカルオンライン』2006年7月19日。
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- ^ 寺岡章雄、津谷喜一郎「医薬品のコンパッショネート使用制度(CU)―なにがCUか・なにがCUではないのか―」『薬理と治療』第40巻第10号、2012年。
- ^ a b 混合診療に関する一考察 ― 先進諸国の状況を参考に 明治安田生命福祉社会研究部
- ^ a b c “混合診療及び保険外併用療養費制度が医療制度に与える影響に関する研究”. フィナンシャル・レビュー (財務総合政策研究所) 111: 48-73. (2012-09) .
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- ^ a b “Health insurance – Obtaining basic insurance, its costs and services”. スイス官房. 2014年12月1日閲覧。
- ^ a b OECD 2009, p. 124.
- ^ 総合規制改革会議第2回アクションプラン実行ワーキンググループ (平成15年3月17日)の資料等提出依頼に対する 厚生労働省の文書回答
- ^ 日本経済新聞 2004年10月20日
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- ^ 『読売新聞』2007年11月7日
- ^ “混合診療禁止は適法 がん患者が逆転敗訴”. 共同通信. (2009年9月29日)
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- ^ a b c 「混合診療」解禁についての当会の考えNPO法人がんと共に生きる会
- ^ 中間とりまとめ別紙規制改革推進会議
- ^ 混合診療って何?Q5日本医師会
- ^ “政策部長談話「保険外併用療養費の拡大は、混合診療の解禁ということ 皆保険を崩し、医療の安全を損なう規制改革の撤回を求む」” (プレスリリース), 神奈川県保険医協会, (2010年5月10日)
- ^ 日本医師会医療政策会議 2003, II-2.
- ^ 「混合診療」の解禁の意義(総合規制改革会議作成)首相官邸
- ^ 病院経営が抱える諸問題財務省
- ^ 全国保険医団体連合会 2004, Chapt.2.
- ^ 全国保険医団体連合会 2004, Chapt.6.
- ^ a b 混合診療問題ニュース12神奈川県保険医協会
- ^ 国民皆保険の崩壊につながりかねない最近の諸問題について (Report). 日本医師会 .
- ^ 混合診療問題ニュース9神奈川県保険医協会
- ^ a b OECD 2009, pp. 125.
- ^ 「交渉参加 TPP<3> 医療制度は守れるのか」『東京新聞』2011年11月17日
- ^ 日医NEWS第1205号
- ^ 米、TPPで「皆保険不介入」の意向 事前協議前に駆け引き 焦点は自動車SankeiBiz
混合診療
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/23 07:31 UTC 版)
2009年のOECD対日審査では、混合診療を禁じる制度は日本独自のものであり英国でのかつての同様制度は現在撤廃されていると報告し、「患者ニーズの多様化と医療技術の進化を考慮し、自由診療との混合が認められる請求範囲を拡大する必要があり、それによって先進的な治療・医薬品へアクセス可能となり、医療の質が向上する」「これによって医療機関間の競争が活性化する」とOECDは勧告している。
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