天文学 天文学の各種分野

天文学

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/09/19 10:17 UTC 版)

天文学の各種分野

天文学は、天文現象へのアプローチの仕方によって大ざっぱにいって、観測天文学と理論天文学に分けることができる。観測天文学では、天体の現象を観測し、膨大なデータを収集する。理論天文学では、それらの現象を説明するモデルや理論、原理などを発見したり、作り出したりする。1980年代以降、大学や研究所の大型計算機センターに設置されたスーパーコンピュータを用いて、惑星や銀河の生成理論などにおいてはコンピュータによるシミュレーション実験も多用される。近年は、シミュレータそのものの専用計算機が開発され、多くの研究室で実験に供されるようになってきている。

より一般的には、それぞれの研究者の扱う研究対象や手法によって分野が分けられる。たとえば、銀河の挙動を中心に研究する銀河天文学など宇宙の特定の天体を扱うもの、宇宙論星形成論など特定の問題を扱うもの、電波天文学や光赤外天文学など天体を観測する手法による分類などができる。

研究対象に基づく分類

本分類は、歴史的発展に基づき作成したものである。天文学分野で最初に研究が行われたのは、暦を研究する暦学であり、そこから、海上を移動する際に現在位置を知るために発展した位置天文学へとつながる。そして、その位置天文学に基づく観測の結果から天体力学へと発展を遂げたものである。また、宇宙論は、神話や宗教等によって、それらはさまざまな伝承などの形で現在に至っている。宇宙論が、きちんと物理学的に探求されるようになったのは、近代に入ってからである。その他の、観測分野にしても同様であり、天体観測が系統的に行われるようになってからのことである。

本分類は、観測対象=研究対象という意味もある。の場合には、地球自転についての研究である。そこから発展する形で、惑星運動の研究が行われた(ケプラーの法則)。宇宙論に関しては、仮説から観測によって、ビッグバン宇宙論が確立し現在に至っている。銀河の観測については、彗星ハンターと呼ばれる人々によって開始され、大型の観測装置が設置されることになってから詳しく研究が行われるようになったものである(シャルル・メシエウィリアム・ハーシェル)。最後に地球に関しては、さまざまな神話の時代から探求が行われ、地上で起こる現象や地理学的な知見によって、地球物理学が発展してきたものである(関連項目:地震学)。地球化学に関しては、地球全体における化学的収支を明らかにするために、研究が行われている分野である(関連項目:環境問題)。

このように、地球-地球・月系-太陽系-銀河系-宇宙の大規模構造-宇宙誕生そして進化にいたる、幅広い研究領域を扱う学問である。

観測媒体による分類

電磁波を用いる天文学

天文学では、天体などの基本的情報を可視光線や、より多くを電磁波から得る[50]。一般に温度(エネルギー)の高い物体からは波長の短い電磁波が放射されるため、短い波長を用いれば、エネルギーの高い天体現象を観測することができる。天文学を以下に波長によって分類する。なお、宇宙膨張に伴い、宇宙誕生初期に発生した光などは、より長い波長の光や赤外線、サブミリ波で観測される(関連項目:ドップラー効果)。恒星や惑星、衛星や星間ダストの出す放射スペクトルは、一般に黒体輻射の法則に従う(関連項目:ボルツマン定数)。

電磁波以外の媒体を用いる天文学

コンピュータ機器を用いる天文学

関連分野

  • 宇宙化学 - 大型望遠鏡によって発展してきた分光学を支える学問分野。暗黒星雲内の化学研究や惑星探査機による惑星大気観測などの研究が行われている。
  • 宇宙医学 - 宇宙飛行士による、長期滞在実験(ソユーズ計画、スカイラブ計画サリュート計画、ミール計画、スペースシャトル計画、国際宇宙ステーション(ISS))によって、現在も研究が進められている。この目的は、当面はへの恒久基地建設に伴う長期滞在、火星への有人探査計画であるが、将来的には人類の宇宙活動が、生産や居住等にまで拡大した時代を見越して研究が進められている。
  • 宇宙生物学 - アストロバイオロジーともいう。比較的新しい分野であるが、地球以外の星に生命が存在する可能性の研究や、宇宙由来のタンパク質やDNA(まだ見つかっていない)等の研究を行う分野である。
  • 宇宙工学 - 宇宙開発を行うことに関連した工学の一分野。

学際分野

  • 天文学史 (history of astronomy)
  • 宇宙形状論 (cosmography)
  • 星座の記述 (uranography)
  • 星図の作成 (celestial cartography)
  • 星名の研究 (astronymy)
  • 天文考古学 (archaeoastronomy)
  • 古天文学 (palaeoastronomy)
  • 天文民俗学 (astronomical folklore):天文学と民俗学の学際領域
  • 占星術 (astrology)

[52]

なお、上述の中で、占星術、天文考古学、天文民俗学は、数理天文学者などからは疑似科学とみなされている[53]


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  40. ^ νομός (nomós) とは別語。なお、その語源となった動詞 νέμειν (némein) に「命名する」という意味はない。
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  44. ^ 例えば、梅文鼎 撰 『暦学疑問』 京都梶川利助等、1820年(文政3年)。
  45. ^ 例えば、渋川景佑 編 『星学手簡』 1795-1803年(寛政7-享和3年)。
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  51. ^ 重力波の初の直接検出とその意義 日本物理学会
  52. ^ 「文科的 (cultural) な分野、史的 (historical) な分野(史的天文学)は、数理天文学に対して天文学の傍径 (byway astronomy) と扱われている」(草下英明 「はしがき」『星の百科』 社会思想社〈教養文庫 734〉、1971年、3頁。)
  53. ^ 例えば、中山茂 『天の科学史』 朝日新聞社〈朝日選書 263〉、1984年、12-24頁。の指摘など。
  54. ^ http://www.afpbb.com/articles/-/2907768 『「4つの太陽を持つ惑星」、アマチュア天文家が発見』AFPBB 2012年10月16日 2015年9月17日閲覧


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