三体問題とは? わかりやすく解説

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さんたい‐もんだい【三体問題】


三体問題

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/12/02 03:45 UTC 版)

三体問題の近似解の一例。三つの質点が非常に複雑かつ不規則な運動をすることが分かる。

古典力学において、三体問題(さんたいもんだい、: three-body problem)とは、互いに重力相互作用を及ぼす三質点系の運動がどのようなものかを問う問題である[1][2][3]天体力学では万有引力により相互作用する天体の運行をモデル化した問題として、18世紀中頃から活発に研究されてきた[4][5]。運動の軌道を与える一般解が求積法では求まらない問題として知られる。

概要

ふたつの質点が互いにニュートン重力を及ぼし合って運動するとき、その軌道は楕円放物線双曲線のいずれかになることが知られている(ケプラーの法則)。三体問題はこの系にさらにひとつの質点が加わった場合の進化を求めるもので、太陽-地球-系や、太陽-木星-土星系など、天体力学の様々な局面で必要となるため古くから調べられてきた。現実的に三体問題を取り扱う場合、問題の簡略化のために、いくつかの仮定がなされることがある。三体ともに同一平面上を運動するという仮定を置く場合、平面三体問題と呼ばれる。三体のうち、一体の質量が他の二体に影響を及ぼさないほど微小で無視できるとする仮定を置いた場合、制限三体問題と呼ばれる。特に制限三体問題において、残り二体の軌道を円軌道と仮定する場合、円制限三体問題と呼ばれる。

よく知られた特殊解としては、円制限三体問題におけるラグランジュ点や、三体の質量が等しい場合に8の字型の軌道をとる8の字解[6]等が存在する。

三体問題が求積可能であるかという可積分性についての否定的な結果は、フランスの数学者アンリ・ポアンカレによって、導かれた[7]。1889年にスウェーデン兼ノルウェー国王オスカー2世の還暦を祝うために開催されたコンテストで、ポアンカレはいくつかの仮定を置いた制限三体問題を考察し、運動を定める第一積分がある種の摂動級数では表現できないことを示した(ポアンカレの定理)。さらに、ポアンカレはこの研究の中で安定多様体、不安定多様体が交差するために生じるホモクリニック軌道と呼ばれる極めて複雑な運動の挙動の概念に到達した[8]

こうした三体問題を端緒とする積分可能性やカオス現象の研究は、現代的な力学系理論の発展の契機となっている。

問題

一般三体問題

第一体(黄)と第二体(青)がつくる重力場中を運動する第三体の回転系での平衡点(ラグランジュ点)。

円制限三体問題において、共動回転系において第三体が静止することが可能な5つの点をラグランジュ点と呼び、記号 L1, L2, L3, L4, L5 により表される。このうち L1 から L3 の3点は第一体、第二体、第三体が一直線上に並ぶもので、オイラーの直線解として知られる。一方 L4 と L5 は三体が正三角形を描くもので、ジョゼフ=ルイ・ラグランジュによって1772年に発見された[15]。ラグランジュの正三角形解は一般三体問題の場合にも存在する[16]

月の運動

の運動は主として地球の重力場によるが、太陽の重力もまた無視できない寄与を持つ。月の軌道の理論は三体問題として定式化され、その運動を正確に求めるために詳細に調べられてきた[17]。この理論はアレクシス・クレロージョージ・ウィリアム・ヒルシャルル=ウジェーヌ・ドロネーアーネスト・ウィリアム・ブラウンらの研究によって発展した[17]

周期解

三体問題の解のうち周期解(ある時間

8の字解のアニメーション。レムニスケート状ではないことは別途証明されている[23]

計算機時代に入ると様々な周期解を数値的に求めることが可能になった。1963年に Richard Arenstorf は現在Arenstorf orbit[24]として知られる制限三体問題の周期解を数値的に計算した[25]。1967年に Szebehely らはピタゴラス三体問題の研究を通じてひとつの周期解を数値的に構成した[26]。1970年代にはMichel Hénonらによってひとつのパラメータで特徴づけられる周期解の族が発見された(このクラスの解は Broucke-Hadjidemetriou-Hénon family として知られる)[27][28][29][30][31][32][33][34]。1990年代には三体が単一の閉曲線上を運動する解(例えば8の字を描く「8の字解」)の存在が証明され、注目を集めた[35][36][37]。この解のクラスは Carles Simó によって舞踏解英語版 (choreography) と命名され、同様の手法によってn体問題の周期解が多数得られた[38]

解の性質

求積不可能性

三体問題の求積可能性は、19世紀末に証明されたブルンスの定理[39]およびポアンカレの定理[7]によって否定的に解決された[40]

1887年に出版されたブルンスの定理は次のことを主張する[41]

一般三体問題について、座標

ピタゴラス三体問題の数値解。これは一体がエスケープし二体が連星を組むhyperbolic-elliptic型の最終運動に到達する[66]

Chazy (1922)[67] は、三体問題の特異性のない解の


三体問題

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/02/15 05:56 UTC 版)

古在メカニズム」の記事における「三体問題」の解説

詳細は「三体問題」および「摂動」を参照 相互に重力的な作用及ぼし合う3体からなる系の力学は複雑である。一般に三体系の振る舞い初期条件鋭敏に依存するカオス的なものになる。したがって3つの天体動き決め問題である三体問題は、特別な場合除いて解析的に解くことができないその代わりに、数値解析用いられる古在メカニズムは、「階層的」な三重星系、すなわち摂動起こす1つ天体が、内側連星をなす残りの2天体から離れた位置公転している系で見られる現象である。摂動起こす天体と、内側連星質量中心が、「外側連星」を構成するこのようなはしばしば、内側連星外側連星孤立した進化対応した2つの項の合計と、その連星同士2つ軌道結合を表す3番目の項として、階層的な三体系のハミルトニアン記述した摂動理論用いて研究される。このハミルトニアンは以下のように書かれるH = H i n + H o u t + H p e r t . {\displaystyle {\mathcal {H}}={\mathcal {H}}_{\rm {in}}+{\mathcal {H}}_{\rm {out}}+{\mathcal {H}}_{\rm {pert}}.} ここで、 H i n {\displaystyle {\mathcal {H}}_{\rm {in}}} は内側近接した連星進化記述する項、 H o u t {\displaystyle {\mathcal {H}}_{\rm {out}}} は「外側連星」の進化記述する項、 H p e r t {\displaystyle {\mathcal {H}}_{\rm {pert}}} はその2つを結び付ける摂動に関する項である。この摂動項は、内側連星外側連星軌道長半径の比 α {\textstyle \alpha } で展開される。したがってこの α {\textstyle \alpha } は階層的な三重星系においては小さな量となる。摂動項の級数急速に収束するため、階層的な三重星系定性的振る舞いは、展開の低次の項で決まる。それぞれ四重極 ( ∝ α 2 {\textstyle \propto \alpha ^{2}} )、八重 ( ∝ α 3 {\textstyle \propto \alpha ^{3}} )、十六 ( ∝ α 4 {\textstyle \propto \alpha ^{4}} ) の項であり、以下のように記述されるH p e r t = H q u a d + H o c t + H h e x + O ( α 5 ) . {\displaystyle {\mathcal {H}}_{\rm {pert}}={\mathcal {H}}_{\rm {quad}}+{\mathcal {H}}_{\rm {oct}}+{\mathcal {H}}_{\rm {hex}}+O(\alpha ^{5}).} 多くの系では、天体の運動摂動展開の最も低次四重極項で十分に記述されることが分かっている。八重極の項は特定の条件において支配的な項となり、これが古在振動振幅長期進化原因となっている。

※この「三体問題」の解説は、「古在メカニズム」の解説の一部です。
「三体問題」を含む「古在メカニズム」の記事については、「古在メカニズム」の概要を参照ください。

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